さて
先週放送されたトーク番組「Derksen &…」にて、ファンボメルが2010W杯・決勝戦の映像を見た時のリアクションが話題になりました。
ロッベンがカシージャスとの1対1を決め切れなかったシーンでファンボメルの表情は苦しげに歪み、あの試合について語り始めるのですが、言葉に詰まり、「Sorry...」と言ったまま、押し黙ってしまいます。
カメラを止めることもその場を離れることもできないまま、咎められた子供のように身を縮こまらせて、腹に力を込め、こみあげるものを必死でこらえるファンボメル。
インタビュアーのデルクセンに何事か聞かれて、蚊の鳴くような声で短く答えるのが精いっぱい。
「(この試合映像を)見るのは初めてだ。この試合は自分のキャリアの中で最もつらいものだ。バイエルンでのCL決勝よりも。運河パレードとオランダ女王への訪問でいくらかポジティブにはなったけれども、二度と見直すことは出来なかった」
この、唐突でどこか珍妙なリアクションに、後日、別の番組で「ハラでもこわしたのかとオモタ」とかなんとか、デルクセン本人がネタにしておちゃらかしていた(多分)のを見て脱力しましたが。
ワタシはもう、ファンボメルのあの試合に賭けていた想いと、あと少しのところで失ってしまったものに対する、巨大な後悔というか哀惜の念というか、彼の心に重くのしかかっている業の大きさを感じて圧倒されてしまいました。
あの時もまた子供のように、メダルの帯を噛み締めて、珍妙な表情で佇んでいました。
そうしていないと、きっと、誰よりもみっともなく、声を上げて大号泣してしまうから。
PSVでCL準決勝に敗れた時や、ミランの退団会見でははばかることなく涙を流したファンボメルですが、本当に悔しい気持ちで流す涙は人に見せたくないのかも知れません。
あの試合が終わった直後、私は、なりふりかまわず、決死の覚悟で勝利をもぎ取ろうとしたオランダ代表とファンボメルに感動したし、誇りにさえ思いました。
だけどその後、まるで犯罪者であるかのように叩かれたデヨンクとファンボメルはじめ、世界中からオランダ代表が厳しく批判されるのを見聞きするにつけ、自分に自信がなくなり、言い訳したり、ムキになったり、ふてくされたり、「どうせバカですから」と卑屈になったりして、とにかくブレまくってしまいました。
しかし今回、苦しむファンボメルを見て、二度と振り返れなくなるほどに、魂が血を流す激しい情熱を込めてプレーしたあの試合の彼らのことを、もっと誇っても良いのではないか、と改めて思ったのです。
そして、それをリアルタイムで正面から受け止めた(と自負しております)自分のことも、ちょこっとだけ。ブレてる場合じゃなかったのだわ。
美しくて華麗で速くて上手いサッカーも魅力的です。
だけどやっぱり、ワタシが一番心動かされるのは、ただの暴力的なラフサッカーでないことはもちろんですが、醜くても時代遅れでも見苦しくても、何よりも、勝利を求める気持ちがこもった熱いサッカーと、プレーヤーなのです。