【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「最強のふたり」

2012-09-06 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


こりゃ毒蝮三太夫だな。
誰が?
主役の黒人さ。無神経とも思えるほど歯に衣着せぬ言動で雇い主の身障者から信頼を得て行く黒人青年は、平気でババア呼ばわりしながらおばあちゃんたちの懐に飛び込んでいく毒蝮三太夫とそっくりじゃないか。
そういう例え方をすると何かこの映画、野暮ったい印象がしちゃうけど、パリを舞台にした生粋のフランス映画だからね。首から下が麻痺した大富豪と、彼を介護するスラムの黒人青年の友情を描く上質なヒューマンドラマよ。
いやいや、揶揄しているわけじゃなくて、相手が身障者だろうがなんだろうが素直な気持ちで接していくのがいちばんだっていう当たり前のことを嫌味なく再認識させてくれる映画だったってことさ。
ほんとに嫌味がない。身障者ものというとどうしてもお尻がこそばゆくなるような映画が多いんだけど、この映画は四角四面の身障者ものとは距離を置いているから、肩の力を抜いて観ていられる。
監督は、あまり馴染みのないエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ。演出や俳優も含めて、映画の技術の成果なんだろうな。
なんといっても主役コンビのコントラストが効いているのよ。仕事にあぶれ貧しいけれど心根はいい黒人青年と、裕福で教養はあるけど手足の自由が効かない壮年男性の組み合わせの妙。
人種も文化も生い立ちも違うからこそ、身障者かどうかなどという問題を超えていけるというパラドックス。
たっぷり笑ったあと、人間なんて結局ひとりひとり違うにすぎないっていう思いに至る。
だからこそおもしろいし、わかりあえるんだっていうことだな。
あれ、なんだかあなた、いつもと違って妙にものわかりのいい人になってない?
それだけの力がこの映画にはあるってことかな。
「最強のふたり」というタイトルにふさわしい鉄板のコンビぶりだったわね。
それにひきかえ俺たちは・・・。
「最低のふたり」って言いたいんでしょ。
少なくとも、ふたりとも裕福とは程遠い。
遠い、遠い。