ある日突然、母親が若い男と結婚すると宣言、娘がびっくらこく。
こりゃあ、意外だ。こりゃあ、おもしろい。こりゃあ、映画になる。
・・・と、制作者たちが飛びついたか、どうか。でも、いまどき、その設定自体はそれほど新鮮じゃない。
でも、大阪を舞台に、大竹しのぶと宮崎あおいを母娘にして、大阪弁をしゃべらせれば、それなりにおもしろい映画になるんじゃないの?
・・・と、制作者たちが考えたかどうか。大竹しのぶはそれなりに達者で、宮崎あおいはそれなりに健気で、たしかに“それなり”の映画にはなっていたけど。
母娘の葛藤と和解、そして母親の花嫁姿。まるで映画ゴコロを刺激しない展開。
唯一、異彩を放っていたのは、母親の結婚相手になる桐谷健太か。
たしかに姿かたちの異様さは目を引くけど、根は善良そうな仕草がその後の展開を予測させてしまう。
大竹しのぶが「ヌードの夜 愛は惜しみなく奪う」くらいとち狂ってくれれば別の映画になったんだろうけど、そこまでなりふり構わない潔さはないしな。
大竹しのぶと桐谷健太が夫婦なんて、ある意味、相当気持ち悪いんだけど、そういう設定でツカミを取っておきながら、その気持ち悪さというか危なっかしさが映画的に浮き上がってこないし、年の差夫婦ゆえのなまめかしさも漂ってこない。
宮崎あおいちゃんは、なんだかんだ言ってひたすらかわいいしなあ。
彼女はそもそも「EUREKA ユリイカ」とか「害虫」といった、相当ひねくれた映画で登場してきたのに、最近はひたすら優等生になってしまって、これでいいんだろうか、と余計な心配をしてしまう。
うん、この映画自体、優等生的。
呉美保監督って冒険を嫌う監督なのかな。
そもそも、桐谷健太の女系家族に対する涙ぐましいほどの気の遣いようを見ていると、これ、「オカンの嫁入り」というより「ケンタの婿入り」っていうほうがふさわしい感じだな。
あるいは「オカンの余命入り」。
こら、ネタばれは反則だぞ。