【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ハッピーフライト」:東小松川二丁目バス停付近の会話

2008-11-15 | ★錦25系統(葛西駅~錦糸町駅)

江戸川防具?ここで剣道の防具を買っておくか。
剣道なんかしないのに?
いや、こんど久々に飛行機に乗るからさ。
だから?
飛行機が落ちたとき、防具があれば役に立つかもしれないだろ。
どうして?
防具をつけてりゃ、飛行機が落ちたとき、目の前に飛んできた荷物から顔や体を守れるかもしれないぜ。メーン、コテ、とか言って。
うーん、ついていけない、そういう発想。
はっ、そう?
あのねえ、飛行機で事故に遭う確率なんて、毎日乗ったって400年に一回くらいだって、矢口史靖監督の新作「ハッピーフライト」で言ってたでしょ。
その「ハッピーフライト」を観たから、いざという場合に備えようという気になったんじゃないか。鳥がぶつかって飛行機が操縦不能になるなんて、小室哲哉が逮捕されたのと同じくらいありえないことなのに、それが起きちゃう映画なんだから。
うーん、例えがヘン。
それにうちの家系は過去400年以上飛行機事故に遭ったことがない。俺の代で事故に遭っても不思議じゃないんだ。
そんな昔、飛行機なんて飛んでないし。
でも、この映画を観て以来、鳥を見るたび恐ろしくて恐ろしくて・・・鳥肌が立つ。
おちょくってるのかい!
いやいや、ヒッチコックの「鳥」みたいに、群れをなして襲ってきたらどうするんだよ。
だいじょうぶだって。実際には、そんなこと起こらないように、いろんな対策を取っているらしいから。
飛行場に鳥を撃つ猟師を配置するとか?
そうそう。本当にいるんだって、ああいう空港専門の猟師。空砲らしいけど。
主役のキャビン・アテンダントを演じるのが、日本屈指のタレ目女優・綾瀬はるかだっていうから、堀ちえみの「スチュワーデス物語」みたいなドジで間抜な新人アテンダントのお気軽コメディだと思ったら、あれよあれよという間に本格的な航空大パニック映画になっていくんだもん、予想外だったぜ。
航空パニック映画の先駆け「大空港」がアメリカで誕生して38年、日本映画もやっとこういうものをつくれる時代になったのね。
とはいえ、監督が「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖だから、緊張感あふれるドラマチックな展開というより、少々抜けたところがある人々の愉快な話になっていて、観ていて手に汗握るというより、微笑ましくも愛すべき映画になっていた。
力を入れているんだか、力を抜いているんだかよくわからない。そこが魅力なんだから、おかしな監督よね。
話はアンハッピーフライトなのに、「ハッピーフライト」なんてお茶目なタイトルつけちゃうし。
思わず吹き出しちゃうエピソードが満載なんだけど、笑いを取るためだけのエピソードじゃなく、みんながベストをつくしているからこそ起きちゃうできごとだから、ドタバタな展開にもどこか共感しちゃう。
それにしても、わざわざ台風の真っ只中の成田空港へ引き返すとか、時任三郎の機長が「そのときはそのときだ」なんて発言するとか、相当いいかげんな航空会社だよな、この航空会社。
堂々と出てたけどね、「ANA」って。
こんな、航空業界を茶化したような映画に協力するなんて、太っ腹だなあ。
でも、観終わってみれば、飛行機一機を飛ばすためにいろんな部署のプロフェッショナルたちがいろんなところでがんばっているんだなあっていう感慨が残って、ANAに対するイメージも相当上がったわよ。
そこまで見越してたってことか、ANAは。隅に置けないねえ。
残念なのは、そのANAで検査漏れの機体が見つかったっていう、ついこの間のニュース。
ありゃ、じゃあ乗るときはやっぱり剣道の防具が必要だ。
だから、ついていけないって、その発想。



この記事、まあまあかなと思ったら、クリックをお願いします。



ふたりが乗ったのは、都バス<錦25系統>
葛西駅前⇒長島町交差点⇒葛西中学校前⇒新川橋⇒三角⇒船堀七丁目⇒陣屋橋⇒船堀中組⇒船堀小学校前⇒船堀駅前⇒船堀一丁目⇒松江第一中学校前⇒東小松川小学校前⇒東小松川二丁目⇒東小松川一丁目⇒京葉交差点⇒小松川警察署前⇒小松川三丁目⇒中川新橋⇒浅間神社⇒亀戸九丁目⇒亀戸七丁目⇒亀戸六丁目⇒水神森⇒亀戸駅通り⇒亀戸一丁目⇒江東車庫前⇒錦糸町駅前