わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

国際女優キム・ユンジンが久しぶりに映画出演

2009-07-01 23:13:20 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img117 韓流映画ブームに火をつけたのが、朝鮮半島の南北分断をテーマにしたカン・ジェギュ監督のサスペンス・アクション大作「シュリ」(99年)でした。新開発の爆弾をめぐる北朝鮮特殊部隊と、韓国情報機関とのすさまじい戦い。このとき、映画デビューしたのが、新進女優キム・ユンジンです。彼女は、北朝鮮特殊部隊のスナイパーと、韓国情報機関の情報部室長の婚約者という二つの顔を巧みに演じわけた。とりわけ、韓国に潜入した暗殺者の素顔を見せたときの冷徹な行動力に、新時代の女優像を垣間見ることができました。
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 そのキム・ユンジンが久しぶりに映画出演したのが、ウォン・シニョン監督のサスペンス「セブンデイズ」(7月11日公開)です。彼女が扮するのは、幼い娘を人質に取られて、有罪が確定的な殺人犯の無罪を立証しなければならない立場に追い込まれた敏腕弁護士役。誘拐犯との息づまる駆け引き、殺人容疑者との困難なやりとり、事件の真相の追究、自ら罠にはまって拘束されるエピソード、そして法廷での必死の弁護…と、サスペンスの連続。「シュリ」のときは25~26歳だったユンジンも、もう35歳。それでも、ひとり主役をはって、しっとりした美貌で、迫力のある演技を繰り広げています。
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 キム・ユンジンのキャリアはユニークです。1973年にソウルで生まれた彼女は、10歳のときに家族とニューヨークに移住。ロンドン・アカデミーとボストン大学で演劇を専攻。大学卒業後は、MTVなどの仕事をしながら、オフ・ブロードウェイの舞台にも立つ。96年にマンハッタンに撮影に来た韓国のテレビ局の仕事を手伝ったのを機会に、帰国して祖国のテレビ・ドラマに出演。「シュリ」のヒットで人気を得たあと、日本映画に出演したり、カネボウ化粧品のイメージ・キャラクターをつとめたりした。また、サッカーの日韓ワールドカップ開催時には、<日韓国民交流年02>の韓国側親善大使にも選ばれました。
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 その後、数本の韓国映画に出演後、アメリカのエージェンシーと契約、ABC放送のドラマ・シリーズ「LOST」のサンファ・クォン役を獲得し、国際的なスターに。要するに、彼女の演技力と風格は、少女時代からの海外生活でつちかわれたものだと思われます。日本でも、国際的な舞台を踏んでから逆輸入される映画人が増えているけれど、キム・ユンジンの場合も、アメリカを活躍の主舞台にしながら自国の作品にも出演する国際人。現在はハワイ在住。次回作は、韓国映画「ハーモニー」(カン・テギュ監督)だそうです。

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