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わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

よさこい踊りにかける青春ドラマ「君が踊る、夏」

2010-09-06 16:57:16 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Img329 舞台は高知県高知市。名物・よさこい祭り。伝説のよさこい踊りのチーム復活をめざす若者たち。そして、小児がんの一種・MRTKを患った少女。こんな素材をもとに製作されたのが「君が踊る、夏」(9月11日公開)です。プロカメラマンを夢見て上京した新平(溝端淳平)は、久しぶりに故郷・高知に戻ったとき、元恋人・香織(木南晴夏)の妹・さくら(大森絢音)が難病を患っていることを知る。さくらを支えていたのは、新平と5年前に交わした「一緒に踊る」という約束。やがて、新平と香織は親友・司(五十嵐隼士)らを巻き込んで、解散していたよさこいチーム“いちむじん”再結成を決意する…。
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 難病の少女・さくらのエピソードは、事実に基づいた話だそうだ。「よさこい祭りで踊りたい」と強く願う少女の奇跡が、取材を通じて組み込まれたという。発症してから5年以上生存できた例がないという病におかされた、さくらのモデルになった少女は、いまも闘病生活を続けながら“よさこい”を踊り続けているとか。でも映画の焦点は、イケメン俳優が演じる新平、香織、司の友情と恋、彼らの三角関係に合わされる。とりわけ、東京でカメラマンをめざす新平が、プロのカメラマン・高木(藤原竜也)のもとで走り使いをし、「才能がない」と言われて悩む描写がリアルだ。そんな新平が、カメラマンの登竜門とされる賞を受賞し、東京の授賞式に駆けつけるか、同時期に開催される祭りで少女との約束を果たすか、という二者択一の選択に迫られるくだりが見どころになっています。
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 でも映画全体の出来は、総花的なメロドラマのタッチ。実話がモデルになっているにしては、さくらのキャラが可愛いだけで、ひたむきさが余り感じられない。故郷を捨てたはずの新平と、高知で頑張る香織・司の三角関係の描写もゆるい。映像は、高知めぐりの観光絵ハガキのようだ。監督は、「不法滞在」(96年)でデビュー、その後「yoriko~寄子~」(07年)の原作を手がけた香月秀之。クライマックスは、さくらの希望をかなえるべく実現された“いちむじん”による、よさこい踊りのシーン。高知市で再現されたよさこい踊りの群舞は、華麗。だが、それにしては、主人公たちのすべての感情が爆発するのか、と期待していた迫力が伴わない。それは、実際の祭りの情景が取り込まれていないせいだろうか。纏(まとい)を振って、群舞の先頭に立つ溝端淳平と五十嵐隼士はカッコいいけれども…。


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