わくわく CINEMA PARADISE 映画評論家・高澤瑛一のシネマ・エッセイ

半世紀余りの映画体験をふまえて、映画の新作や名作について硬派のエッセイをお届けいたします。

メキシコを代表する映画人が結集!「ルドandクルシ」

2010-02-22 17:45:19 | 映画の最新情報(新作紹介 他)

Rudo_cursi_1_1b メキシコ映画界を代表する監督たち-アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ(「21グラム」「バベル」)、アルフォンソ・キュアロン(「天国の口、終りの楽園。」「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」)、ギレルモ・デル・トロ(「パンズ・ラビリンス」)が集結したプロダクション、チャ・チャ・チャ・プロジェクトの第一弾製作作品となったのが「ルドandクルシ」(2月20日公開)です。主演は、「天国の口、終りの楽園。」の名コンビ、ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ルナ。アルフォンソ・キュアロンの弟で、「天国の口、終りの楽園。」で脚本を手がけたカルロス・キュアロンの監督デビュー作だ。
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 作品の題材は、いかにもメキシコらしく“サッカー”。主人公は、田舎のバナナ園で働く粗野な異父兄弟ベト(ディエゴ・ルナ)とタト(ガエル・ガルシア・ベルナル)。地元で乱暴なゴールキーパーとして知られる兄ベトはルド(タフな乱暴者)と呼ばれ、優秀なストライカーで歌手を夢見る弟タトは大げさで古くさいプレーによって、のちにクルシ(軟弱な自惚れ屋)というあだ名をつけられる。兄弟はスカウトに見出され、メキシコシティでプロのスター選手になる。だが、セレブライフを手に入れたのも束の間、タトはセクシー美女に翻弄され、ベトはギャンブルと麻薬にはまり、転落への道をころげ落ちていく…。
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 一攫千金を夢見て、サッカーのスター選手をめざし都会に出て来る地方の貧しい青年たち。彼らの成功につきまとうギャンブルと麻薬と裏社会。脚本も兼ねたカルロス・キュアロンは、「メキシコ社会を忠実に描くことを試みた」という。ギャンブルの借金でマフィアに脅されたベトが、いかさま試合を強要され、ドジを踏んで傷つけられ、弟ともども野に下るラストがリアル。また、兄弟の妹が地元の麻薬王と結婚、兄たちが果たせなかった目的-母親に豪邸を買ってあげるくだりも皮肉。でも、ドラマ全体を貫くのは鋭いユーモアの精神。貧困や差別、サッカーの影響力、セレブ崇拝、暗黒街とのつながりといった要素が、ルドとクルシの見境のない欲望の強さや自滅とからみ合って、軽いノリの黒い笑いを生み出す。いってみれば、サッカーと貧困を主軸に据えた異色の社会風刺ドラマなのです。


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