犬鳴豚牧場日誌

大阪泉州地域唯一のブランド豚、犬鳴(いぬなき)ポークの農場日誌です。(有)関紀産業の二代目がお送りする養豚農家ブログ!

養豚安定対策事業が引き起こす日本養豚の負のスパイラル

2012年05月16日 22時54分42秒 | 本日の独り言

先日お話した養豚経営安定対策事業について、この制度の根本に大きな欠陥があるんじゃないかということを一言付け加えておきたい。



その欠陥というのはズバリ、
「大規模農場は恩恵にあずかれるが、家族農場はこの制度が存在するせいで余計に苦しくなる」
場合があるということだ。



補填金を受け取ることに苦しい理由などあるはずないとお考えのみなさん。
物事は側面だけで判断してはいけない。



まず特筆すべきことは、日本養豚の企業規模格差である。
大阪の米農家と東北地方の米農家の栽培面積が全然違うことがあたりまえのように、養豚にも企業規模格差が存在する。
犬鳴豚牧場が常時1000頭飼育なのに対し、大規模養豚になると常時10万頭以上飼育しているというような農場も少なからず存在するのだ。



わかりやすく数字で表すと、上位2割の農場さんが全体の7割の豚を生産している。
下位8割がいかに小規模かがよく分かる数字だ。



さて、本題はここから。
養豚経営安定対策事業の仕組みは補償基準価格と呼ばれるいわゆる生産コストに対して、実際の相場がいくら下回ったかで補てん金が決定するという仕組み。
現在は生産コストが枝肉1kg当たり460円と設定されている。
ところが、大規模農場ほど餌の大量購入が可能となるので、460円もかからないはずなのだ。
つまり、大規模農場は相場などまったく関係なしに、ただたんに “数” を出荷できさえすれば基金が入ってくるだけ儲かるのだ。



では小規模農家はどうか。
国の事業とはいえ医療保険金を払うように出荷頭数に対する掛け金が必要で、 小規模農家ほど飼料費負担割合が大きく、この掛け金を払うのが苦しい。
これに加え、半分は税金をもらう制度なので書類作成は簡易とはいえず、これもまた小規模農家ほど苦しい。
掛け金を払うのもしんどいし書類作成もめんどくさいから加入しないという事態になる。
その結果、ほんとうに必要な時に基金を受け取れない・・・



この状態が続くと恐ろしいのが、
「大規模農場は儲かるのでさらに規模拡大をし、小規模農場は現状維持か最悪の場合廃業。これでは日本全体の出荷頭数は減ることがないので、相場は上向くことなく低飛行を続ける。基金を受け取れる大規模農場はさらに大規模化を進める。」

という負のスパイラルに陥ることだ。 



私は農業の基本は家族農業だと考えている。
もちろんコストを決定的に削減できる大規模集約化も必要だろうが、これですべての消費者ニーズに応えられるはずがない。
また、犬鳴豚牧場が実践しているエコフィード(リサイクル飼料)養豚を考えた場合、小回りのきく小規模農場ほど食品リサイクルに向いているということもある。
家族農業の存在価値は、皆が思っている以上に貴重なのだ! 



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