エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

ロシアの地球温暖化防止策

2010-05-24 00:03:45 | Weblog
 ロシアの実質GDPは07年になって90年の水準を初めて超えました。一方、07年のGHG排出量は、90年を100とすると、07年は66となっています。07年のGDP当たりのエネルギー消費量と電気消費量は、00年の水準に比べて約3割低下しています。98年以降、GDPが急激に伸びたのにGHG排出量が低い値にとどまっているのは、a.燃料消費の中でガスと非化石燃料のシェアが上昇した、b.サービス産業が発展した、c.ガス・電気の使用価格が上がった、ためです。言い換えれば、これらの変化は技術革新によるものではありません。
 ロシア政府は、エネルギー強度(GDP当たりの一次エネルギー総消費量)を07年比で20年までに40%下げることを決定しています。メドベージェフ大統領は昨年12月のCOP15を前にして、GHGの排出量を90年比で20年までに25%削減する用意があると宣言しました。
 これを実現するためには経済構造の改革だけでなく、エネルギー消費の効率化を実現する政策を打ち出していく必要があります。このため連邦と地方の両レベルで法制化を進める方針です。09年秋には省エネを実現するための連邦法が施行されました。大統領が設立した技術革新委員会の下で、省エネのパイロット事業が開始されています。
 また、09年12月にデンマークとの共同実施(JI)協力に関する協定案が承認されたほか、スペイン、ドイツ、イタリアとも同様の協定を締結する予定です。グリーン投資スキーム(GIS)の実現も目指しており、その削減量を二酸化炭素(CO2)換算で8,000万~1億2,000万トンと見込んでいます。
 09年11月採択の連邦法では、12年までにすべての建物にエネルギー使用量を計測する機器を設置することにしています。それによって、最終消費者から実際の消費量に即した料金を徴収できるようになります。エネルギー効率が高い事業に対しては、税制面での優遇や資金面での支援を行います。
 このほか、11年から100ワット超の白熱電球の生産・輸入・販売を禁止しまする。また12年から生産者と輸入者に対して電化製品などにエネルギー消費量を示すラベルの添付を義務付けるなど、10年には省エネに関する50余りの規則が制定される予定です。

なぜスマートグリッドの本質が語られていないのか

2010-05-23 21:09:55 | Weblog
スマートグリッドは、インターネット、コンピューティング、通信(テレコミ)、電力の各種技術を融合させて電力の双方向でのやり取りを可能にするシステムで、日本では20年代半ばまでに国内全域で構築されようとしていますが、このスマートグリッドがもたらす革命の本質がほとんど語られていません。
そのため一般の人々の関心は低く、アメリカでも79%の人々がスマートグリッドには関心がないと答えています。日本でも、スマートグリッドという言葉を聞いたことのある人々は過半を超えると思いますが、自分の生活やビジネスとは関係ないと思っている人々が90%以上であると推測されます。
このことは、15年前のIT革命勃興期にゴア副大統領の「情報スーパーハイウェイ」が一部の人々だけで熱く語られていたことを彷彿とさせます。この「土管の発想」がIT革命の本質ではなく、インターネットがもたらすビジネス革命のみならず生活革命が産み出す膨大なる需要の創造、「ムーアの法則」(半導体の価格性能比が18カ月ごとに半減していくという経験則)に代表されるイノベーション、「メトカ―フの法則」(ネットワークによる価値創造は参加者の2重に比例して増加するという経験則)に代表される自己組織化のネットワーク増殖力が革命の本質であると人々が気づくまでには、少し時間がかかりました。
スマートグリッドの世界でいま起こっていることの本質は、こうした方向、言ってみれば、IT革命がもたらした「You Tube」=誰もが番組をつくり、配信して楽しむパラダイムへの進化に相当する誰もがエネルギー作りに参加できる「You Energy」に向けた進化が起こっていることです。それが「スマートグリッド革命」です。
「You Energy」のパラダイムでは、誰もが発電所となって太陽光発電など再生可能エネルギーを提供し、電力会社に売電したり、電気自動車に搭載されている蓄電池を介して相互に融通したりして、「個人がエネルギーを作り、配電して楽しむ」ということを可能にします。そこでは、供給サイドから需要サイドへのパワーシフトが起こり、誰もがエネルギーを作り消費する主体、すなわちアルビン・トフラーの言った「プロシューマー」となります。そうなれば、インターネット上での双方向メディア、ピア・ツー・ピア(Peer-to-Peer)のファイル共有・情報の自主管理の発展が思い描いたシナリオよりもはるかに大きな変革をもたらすことは間違いありません。
広がりつつある分散型電源は、複雑なソフトウェアや高度なデジタル技術、インターネットによって相互に接続し、「エネルギー&インフォメーションウェブ」を形作っていきます。次世代高機能ケータイであるスマートフォンがその端末となるでしょう。さらに、「エネルギー&インフォメーションウェブ」を活用すれば、省エネによる発電(ネガワット)と太陽光発電による創エネ(ポジワット)を、トータルとして個人・法人による発電ととらえることができます。この多様な主体による発電をエネルギーマネージメントでつなげ、日本全体でヴァーチャル発電所として「スマート国民総発電所」を構築すれば、原子力発電所の数基分~十数基に相当する発電エネルギーを得ることができます。
さらに、再生可能エネルギーは地球環境にやさしいエコの価値を持っていますので、その売電収入やCO2削減分に対応したエコの価値エコの価値をエコポイントやエコマネーという媒介を使って取引するようにすれば、「You Energy ! 誰もがエネルギーを作れる」から「誰もが新ビジネスを創造できる」というパラダイムが生まれ、おびただしいイノベーションの創造が「経済成長&雇用創出」につながるというパラダイムへと発展します。それは、人々が課題解決に向けて新しいライフスタイルを自ら創り、その結果産業と雇用が生み出され、経済成長につながるという、いままでとは逆向きのイノベーション・プロセスです。
そこで強みを発揮するのは一人ひとりのゼロからの創造力です。その主体は市民で、その場は地域です。今日本の課題となっている「地域主権」社会の構築や「新しい公共」の創造にもつながります。このパラダイムの出現が「スマートグリッド革命」が革命たるゆえんです。

オフィスのIT資産の消費電力を削減する“エコ管理機能”

2010-05-23 06:42:28 | Weblog
 NTTデータ先端技術株式会社は、IT資産管理/検疫LANパッケージ「NOSiDE Inventory Sub System/資産管理」に、オフィスのIT資産の消費電力を削減する“エコ管理機能”を標準搭載し、2010年1月より出荷しています。
 「NOSiDE Inventory Sub System/資産管理」は、資産管理(ハードウェア管理/ソフトウェアライセンス管理/契約情報管理)や、セキュリティ管理(社内セキュリティポリシーへの適合状況検査、OSパッチ配布など)、検疫LAN(ポリシー検査結果に基づくPCの社内ネットワークへのアクセス制御)といった各種機能を提供する製品です。今回、“エコ管理機能”の標準搭載により、IT資産の消費電力を集計/管理するための機能をシームレスに付加することで、オフィスのIT資産の統合的な一元管理を強化しました。
 オフィスで利用される個々のコンピュータから収集する基礎データに基づきPCごとの電力消費量を算出する機能では、モデルデータに基づく簡易計算と、PCの動作情報に基づく詳細計算の2方式に対応します。また、PCの電力消費量を組織単位に集計し、時系列での電力消費量推移をグラフ化する機能により、組織単位での省電力対策の検討/実施を支援します。
 PC電力消費量集計機能で算出した電力消費量の集計値に基づき、省エネ対策を定義し、対策を実施した場合の電力消費量削減効果を推計するシミュレーション機能も備えているほか、電源プラン管理機能では、Windowsクライアントの電源プラン(省電力ポリシー)の収集/割当を行なうことができます。

鳩山首相:滋賀県で環境エネルギー視察

2010-05-22 07:51:39 | Weblog
 鳩山首相は4月3日、環境エネルギー事業の現場を視察する等のため滋賀県を訪問しました。京セラの太陽光発電パネル製造工場(東近江市)の訪問、市民団体などと意見交換などを行いました。
 これに対して嘉田知事は、2030年に90年比で温室効果ガス排出量を半減する道のりを示した工程表素案など県の地球温暖化対策を説明しましたが、終了後、嘉田知事は「ロードマップ(工程表)の話ができて有意義だった」と語りました。

住生活グループのリフォーム需要取込み戦略

2010-05-21 07:07:38 | Weblog
 トステムとINAXが経営統合して発足した住生活グループは、2010年夏から業務用建材販売店の「建デポ・プロ」を全国展開し、3年間で300店舗出店する予定です。メーカーからの直接仕入などで、5~15%割安にします。
 また、一般消費者も利用できる「建デポ」も月数店舗のペースで展開します。住宅の新規着工が低迷するのか、住宅エコポイントの開始もあって伸びが見込まれるリーフォーム需要を取り込もうという戦略です。

交通ICカードを利用したパーク&ライドとエコポイント

2010-05-20 06:44:57 | Weblog
 「Suica(スイカ)」や「PASMO(パスモ)」など、公共交通機関で利用できる交通ICカードで割引を受けられる駐車場が徐々に増えています。この割引は、エコポイトに相当します。
 このサービスの普及を進めるのはコインパーキング「タイムズ」を展開する国内最大手のパーク24ですが、「交通ICパーク&ライド」として、2008年4月の東武鉄道幸手駅(埼玉県幸手市)を皮切りに、JR東日本など全国の鉄道会社と提携し、各地に導入しています。
 JR東日本の中央線を例に挙げると、立川や吉祥寺といった繁華街の手前にある三鷹や国分寺などのタイムズでクルマを駐車して1駅電車を利用し、精算時に精算機に交通ICカードをかざせば、利用日と最終下車駅の情報を確かめ、サービスに対応する駅で降りていれば、利用金額にかかわらず200~300円程度の割引を受けられというものです。
 郊外では丸1日利用しても600円といった駐車場もあり、そうした場所で200円が割り引かれれば、値引き率は3割を超えます。現在、利用件数は12万件を超え、導入した駐車場では増収効果が見られるということです。
パーク24では「割引が適用されない」といった苦情に対応する24時間対応の窓口を設置して提携先の鉄道の拡大に努めており、東武鉄道をはじめ北海道から九州までの9鉄道会社の50駅で利用できます。2,3年で300駐車場にまで拡大したいとしています。

米クリーンエネルギー気候政策は190万人の雇用、720億ドルのGDP拡大

2010-05-19 06:52:56 | Weblog
 「クリーンエネルギー気候政策は果たして経済成長と雇用増大をもたらすか?」
 これは、エコノミストの間でいろいろ議論されているテーマですが、カリフォルニア大学UCバークレー校は、EAGLEという予測モデルを使用して、6月に連邦下院を通過したWaxman-Markey法案に盛り込まれた政策が実行に移されたときにには、次のような雇用増大、経済成長が見込まれるとの予測をまとめています(こちらをご覧ください)。
①2010年から20年の間で、91万8,000人から190万人の雇用増大が見込まれる。
②2020年までに、1家庭当たりの平均所得は、年間487ドルから1,175ドル増加する。
③この結果、アメリカの2020年のGDPは390億ドルから1,110億ドル増加する。これはGDPの0・2%から0.7%の押し上げ効果を有する。

米国と欧州における炭素価格の違い

2010-05-18 05:41:08 | Weblog
 米国の唯一の排出権取引市場シカゴ気候取引所(CCX)におけるカーボン価格(CFI:Carbon Financial Instruments、1トン当たり平均単価)は、03年のCCX創設から08年までの6年間1~5ドルで取引されてきています。08年の平均価格は、4.43ドルでした。
 他方、欧州の同様の市場(EU-ETS)では、同量の二酸化炭素(CO2)が米国の約10倍の価格で取引されています。この価格差の原因は、制度に基づく規制の有無です。
 米国では気候変動対策法案はまだ審議中で、キャップ・アンド・トレードやカーボンクレジット取引、温室効果ガス(GHG)排出削減努力は企業の自主性に任されています。これに対して欧州では、排出権の上限が定められているため、企業は排出権取引などを利用して、規制を順守する必要があります。すなわち、欧州では、コンプライアンス(法令順守)の必要性からカーボンクレジットの需要が高く、必然的にカーボン価格も上昇し、米国よりも高額な価格となります。
 今後米国の気候変動対策法案が議会を通過してキャップ・アンド・トレードが実地されるようになると、米国内でもカーボンの価格が上昇し、EU-ETSなどの国際市場との裁定が起こってくるものと思われます。
 今後国内CDM市場を整備していく日本としても、参考になる動きです。

中期目標達成に関する「小沢試案」モデル計算への疑問

2010-05-17 00:00:51 | Weblog
1990年比25%を削減でき、しかも経済や雇用にはプラスとなるとしている「小沢試案」(こちらをご覧ください)の根拠となっているのは、大阪大学の伴金美教授のモデルですが、このモデルに対しては、次のような疑問が指摘されています。
私は、結論としては同じ考え方ですが、このようなモデル計算のずさんさは、「小沢試案」そのものの説得力を喪失させるものです。
① 対象が温室効果ガス全体ではなく、CO2の排出だけに限定されていること
② CO2削減も25%削減ではなく21%削減となっていること
③ 再生可能エネルギーの買取り制度に伴う電気料金の引き上げ幅については、わずか10%となっており、その根拠が薄弱であること
④ 企業の海外移転による経済や雇用に対するマイナスの影響や財政負担の拡大に伴う金利の上昇が考慮されていないこと
⑤ 炭素1トンを排出する際にかかるコストが欧米の10倍以上になるのに、技術開発が促進されるためGDPと雇用が増大するとしているが、その根拠が薄弱であること
⑥ エネルギー1単位当たりどれだけ炭素の排出割合を減らすことができるかを示す脱炭素化率を毎年2~4%(フランスで原子力が6倍になった時と同じ率)としているが、その根拠が薄弱であること

EU気候変動対策の動向

2010-05-16 00:39:47 | Weblog
3月25~26日に開かれたEU首脳会議は、新成長戦略「欧州2020」の主要目標で合意し、6月の首脳会議に向け、各国別の目標も議論していくことになりました。また、今後の気候変動対策についても方針を確認しました。
EUは気候変動・エネルギー対策として、a.20年までに温暖化ガスを90年比で20%削減する、b.最終エネルギー消費のうち、再生可能エネルギーの比率を20年までに20%に引き上げる、c.エネルギー消費を20年までに20%削減する、の「3つの20%」を目標に掲げていますが、今回は、この「3つの20%」の目標を達成することを再確認しました。また、温室効果ガスの削減は、ほかの先進国が相応の削減を約束し、途上国がそれぞれの責任と能力に応じて適切に貢献することを条件として、30%にまで引き上げることを約束するとしました。
気候変動に関する国際交渉については、第1ステップとしてボンでの会議で、コペンハーゲン合意の政治的ガイドラインを交渉テキストに落とし、第2に、カンクンで開かれる国連気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)で、少なくともコペンハーゲン合意を引き続き交渉につなぎとめ、残る争点を確認する具体的な決定を採択する考えです。さらに、既に合意している年間24億ユーロ(1ユーロ=約125円)の途上国支援など、気候変動に取り組む途上国支援についても再度言及しました。