エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(進化;「スマートグリッドの進化モデル」)

2011-02-28 00:05:23 | Weblog
情報通信ネットワークにおいては、インターネットでの動画共有サービスを提供している「You Tube」に象徴されるように、「あなたが作るテレビ」という段階にまで発展して「個人が番組を作り、配信して楽しむ」というパラダイムが出現しています。新しいネットワークであるスマートグリッドにおいても、この方向、言ってみれば「You Energy」に向けた進化が起こることが予想されます。

図表は、情報通信に限らずエネルギーを含めた公益事業ネットワークへの進化のパターンを示したものですが、縦軸は、消費者主導権が低いか高いか、ネットワークを供給側だけで管理するのか、供給側だけでなく需要側を含めて需給両面で管理するのか、横軸は、ネットワークの構造が集中型のものか、分散型のものなのかを表しています。これが、「スマートグリッドの進化モデル」です。この図において、現在の電力ネットワークはA象限にありますが、スマートグリッドの登場はこれがB象限(主としてアメリカの動き)またはC象限(主として欧州の動き)に移行しようという動きであると理解できます。

A象限は、従来型の公益事業市場構造が優勢であり、消費者は伝統的な供給者と消費者の関係を好んで選択しているかもしくは受け入れている領域です。これに対して、B象限は、消費者がさらなる主導権の確保に向けて着実に前進しているものの、規制または技術的な制約によりその影響力は一定の範囲に限られている領域、C象限は、進展する送配電グリッドおよびネットワーク技術の組合せがエネルギー利用に関する責任の共有化を可能にしているものの、消費者はそれほど主導権を発揮できず、利点の多くは公益事業者側に有利に働いている領域です。

この図表が端的に示すように、B象限またはC象限の行きつく先がD象限です。D象限は、多種多様な送配電グリッドおよびネットワーク技術によって責任の共有化が次第に可能になり、特定のエネルギー利用に関する目標に対する消費者の関心が新しい市場と新しい製品需要を生み出し、利点が消費者と公益事業者間でうまくバランスされている領域です。D象限へ移行しようという動きの典型は、後述する京都大学の松山隆司教授が提唱する「オンデマンド電力ネットワーク」構想と東京大学の阿部力也特任教授が提唱する「デジタルグリッド」構想です。ここでは、分散構造がネットワーク化されていることがポイントです。IT革命時の「誰もが情報発信できる」に相当する「You Energy !誰もがエネルギーを作れる」=「新しいビジネスを創造できる」という「You Energy」へのパラダイムシフトがD象限では起こります。

このD象限への移行が現実に起こりうることに関しては、IBMの07年6カ国調査(日本、ドイツ、オーストラリア、アメリカ、イギリス オランダ)でうかがい知ることができます。「IBM Institute for Business Value 2007」によると、6カ国の企業経営のトップにある人々にアンケート調査したところ、日本とドイツにおいて、D象限を選択した企業経営者の数がA象限を選択した企業経営者の数を上回っています。この調査結果は、一般の想定とは異なったものと言えますが、それだけ新しいビジネスモデルに対する期待が日本とドイツにおいて高いことの反映と言えるのではないかと思います。

「スマートグリッド革命」(政策;需要応答の効果がポイント)

2011-02-27 06:40:27 | Weblog
スマートメーターは、日本においても大量に導入されつつありますが、アメリカは、スマートメーターによる需要応答に関して国家的取組みを進めています。07年EISA法は、3段階で需要応答を推進することを政府に求めています。第1段階は、州ごとに需要応答の可能性をアセスメントすることで、この段階は09年6月に終了しました。第2段階は1年以内に推進計画を策定することで、すでに同年10月にドラフトが公表されています。第3段階は、これを受けて連邦エネルギー規制委員会(FERC)とエネルギー省(DOE)が議会に対して、具体的な実施提案を提出することになっています。

スマートメーターを積極的に導入しているカリフォルニアSCE社の試算では、スマートメーターの導入効果(26年の効果を現在価値に換算)として電力業務の効率化効果と省エネ効果だけを見込んだ場合には費用の方が効果を上回るが、洗練された需要応答効果を見込むことでその効果が現行の運営費用を上回り、総じて、効果の方が費用を上回るとされています。

需要応答効果を洗練した形態でうまく発揮することが、スマートメーター導入の成否を左右するといっても過言ではありません。日本でのスマートメーターの導入は、電力業務の効率化効果と省エネ効果に着目して進んでいますが、本来は洗練された需要応答効果をいかに生み出すかというユーザの視点から取り組まれる必要があります。 

「スマートグリッド革命」(動向;アメリカのBEMSは学校と病院から)

2011-02-24 07:13:54 | Weblog
BEMSについて、先行しているのはアメリカです。アメリカでのBEMSの端緒となったのが、学校と病院のエネルギーマネージメントです。このうち学校のBEMSに関しては、08年に学校のスマ-トエネルギー化、グリーンスクール実現を支援する法律(Green Performing Public School Act)が制定され、5年間で2兆円規模の資金を投資して学校の省エネを推進しています。環境教育の推進とともに、モデルとして、1学校あたり年間1000万円の節約、これにより教師の増員、新しいPCの導入、図書の購入を促進するというものです。また、08年7月米エネルギー省(DOE)は、病院のエネルギーマネージメントを進めるというイニシアティブを発表しています。これは、病院のエネルギーコストが50億ドル、商用オフィスビルに比べて単位あたりのCO2排出量が2.5倍であることにかんがみ、既設の病院については20%、新設の病院に対しては現行基準より30%省エネを促進しようというものです。

さらにアメリカでは、最終エネルギー消費量のZEB(Net Zero Site Energy)を目指すZEB(Net-Zero Energy Buildings)への投資が政府を中心に行われています。08年8月米エネルギー省(DOE)は、「07年エネルギー自給・安全保障法」(Energy Independence and Security Act of 2007:以下「EISA法」という)に基づき「Net-Zero Energy Commercial Buildings Initiative」を発表し、ZEBを目指したBEMSへの取組みを開始しました。その内容は、30年までに新築されるすべての業務ビルをZEB化する、2040年までに既存の業務ビルの50%をZEB化する、50年までにすべての業務ビルをZEBとするための技術・慣行・政策を開発・普及するというものです。また、アメリカ政府はARRA法に基づき、例えば45億ドルの連邦政府ビルの省エネ改修を予算に盛り込みました。

 またアメリカでは、アメリカグリーンビルディング協議会(USGBC)が自主評価システムであるLEED(Leadership in Energy and EnvironmentalDesign)の「Green Building Rating System」を運営管理しています。LEED評価システムでは、用地設計、室内環境の品質、エネルギー・建材・水の有効利用という大きく5つのカテゴリーについて、グリーン建築の指定基準を満たしているかどうかにより点数化されます。LEED評価が高いということは、優れたグリーンビルディング設計である証しで、州政府機関や地方自治体、さらには民間団体からさまざまな財政面、規制面の優遇措置を受ける資格が得られるようになっています。


「スマートグリッド革命」(動向;日本におけるBEMS)

2011-02-22 07:05:06 | Weblog
HEMSに続いて、ビルのエネルギーマネージメント、BEMSへの動きが活発化しています。日本では建築物のZEB(Net-Zero Energy Buildings)化について、20年までに新築公共建築物等でZEB化を実現するとともに、30年までに新築建築物の平均でZEBを実現することが目標となっていますが、その基になったのは、09年11月経済産業省の報告書です。報告書では、「30年までに新築建築物全体での実現」というビジョンと既築の省エネ改修の効率が大幅に高まる場合、30年の業務部門の一次エネルギー消費量は概ね半減すると見込んでいます。また、これに伴い、追加的に必要となる投資額は概ね年間8000億円程度と見積もっています。
 ビジョンを実現するための方策としては、省エネ法における建築物の現行基準を早急に引き上げるとともに、将来的には、基準達成を義務化の検討などの規制の強化のほか、固定資産税の軽減等税制上のインセンティブを与えること等の支援策・誘導策の強化、ビルの省エネ性能を評価するラベリング制度の整備等を提言していますが、注目されるのは、09年7月にビルオーナー、設備・機器メーカー、ビル管理システムのベンダー、ESCO事業者より構成される「省エネビル推進標準化コンソーシアム」の活動推進やアメリカとの連携強化の必要性を謳い、BEMSをスマートグリッド実現のための必要不可欠な環境整備と位置付けていることです。

これを受けて東京ガスは、横浜市港北ニュータウンにある自社ビルを段階的に改修して、30年までにZEB化する計画です。9月までに太陽光発電、ガスのコジェネレーションアドを組合せたシステムをスタートさせ、将来は近隣施設にもエネルギーを供給しようとしています。また三菱地所は、東京の丸の内、大手町などの5地区で段階的に地域冷暖房システムを改修し、10年後をめどに5地区におけるエネルギー効率を25%向上させ、地域冷暖房のエネルギー損失をゼロにする計画です。鹿島は、ビル設備の省エネ運転システム、太陽光システムと地中熱のエネルギーを組合せて使う冷暖房システムなどの技術開発を進めています。


「スマートグリッド革命」(政策;草の根からの「ヴァーチャル発電所」

2011-02-21 00:07:17 | Weblog
スマートグリッドでは、センサやインテリジェント・エージェント(仮想代理人となるソフト)がシステムの各所に埋め込まれており、電力の状態に関する情報をリアルタイムで提供してくれるため、必要なときに電流が流れしかも価格は最低限で済みます。
冷蔵庫やエアコン、洗濯機、警報装置などの家電製品、太陽光発電装置や電動装置すべてにセンサが内蔵され、温度や明るさなどの室内環境、CO2排出量などはもとより、太陽光発電による発電量や電気料金に関する情報がリアルタイムで得られる時代はすぐそこまで来ています。
ここで実現するのは、いくつもの小型発電施設をネットワーク化して、ひとつの大型発電所のように見立てる「ヴァーチャル発電所」です。これは、太陽光発電や風力発電など発電量の変動が大きい発電施設に、気象条件などに左右されないバイオマス発電やコジェネレーション・システムなどを組合せ、これらの施設をインターネットなどの情報通信技術を使ってネットワーク化して管理し、それによってひとつの発電所を建設したかのように動かすという考え方です。
 すでにドイツでは、小規模な実証を行いながらその規模を拡大させています。たとえばウナ市(ノルトライン・ヴェストファーレン州)の場合では、5つのコジェネレーション・システム2つのウィンドパーク、1つの太陽光発電施設、1つの小型水力発電施設を組合せて、これらの施設のある地域に電力と熱を供給するヴァーチャル発電所が運転されています。このヴァーチャル発電所は、ウナ市の年電力公社と電力コンサルティング・エンジニアリング会社であるEUS社によって運営されており、その中核となるシステムはEUS社によって開発されました。同システムは、需要予測システム、中央管理システム、自動化システムで構成されていますが、特に重要となる需要予測システムForecastは、過去10年間の電力需要実績から24時間後の電力需要を予測できます。
また、ゴスラール市などを中心としたハルツ地方西部(ニーダーザクセン州)では、ヴァーチャル発電所を電力需要のピーク時に利用する調整電力用エネルギープールとして、大手電力会社Eonから購入する電力量を抑えるために利用しています。地元の配電会社であるハルツエネルギ社は、独自の発電施設を持っておらず、大手電力会社から電力を購入して地域一体に電力を供給していますが、電力需要の変動に効率的に対応するため、地域の個人住宅に設置された小型のコジェネレーション・システム(約200基)と小型水力発電施設、非常電源施設をネットワーク化してヴァーチャル発電所としています。
日本では、北九州市において、インターネット上で自分の世帯のエネルギー使用量をリアルタイムで表示し、省エネ量の「見える化」を図る市民参加型の「ヴァーチャル発電所」である「北九州地域節電所」の構築に着手する計画です。この「北九州地域節電所」においては、省エネ量をエコポイントとして流通させるシステムを構築されます。
このような草の根からの「ヴァーチャル発電所」を各地域で構築し、「ヴァーチャル発電所」同士をネットワークでつないでいけば、前述した「エネルギー&インフォメーションウェブ」が自ずから形成されます。京都大学の松山教授の「オンデマンド電力ネットワーク」の発展形です。そのような時代が到来すれば、私たち一人ひとりが、どのような生活シーンにおいても各自の電力需要をお互いの需要、ニーズやネットワーク上の電力量に照らして、自動的に、かつ、継続的に調整することにより、部分最適と全体最適を同時に実現することができるようになります。これを日本全体で展開しようということで私が提唱しているのが「スマート国民総発電所構想」です。

日本経団連と連合のトップ会談において「低炭素社会実現に関する労使対話」の設置が合意

2011-02-19 07:05:44 | Weblog
1月19日に日本経団連と連合のトップ会談が開かれ、その場で、「低炭素社会実現に関する労使対話」の設置が合意されました。
この点に関して、席上、連合の古賀会長は・・・・・成長戦略をどう実行するか、社会保障と税制の抜本改革とセットで議論していく必要がある。その前提として、公正な配分とディーセント・ワークの視点を加えたい。本日、『低炭素社会実現に関する労使対話』の設置について報告があったが、これにとどまらず、可能なテーマから実務レベルでの意見交換の場を持たせていただきたい」と述べました。それに対して、日本経団連の米倉会長は・・・・・経団連は国民生活の向上を一義的目的としている。企業の成長と従業員の豊かさが両立できるよう、今後も重要な問題について話し合いを進めていきたい。『低炭素社会実現に関する労使対話』については、温暖化問題への対応を誤れば産業競争力や雇用に大きな影響を及ぼす、労使でしっかり取り組んでいきたい」と発言しましました。
今後「低炭素社会実現に関する労使対話」については、「作業部会」を含めて、民生部門を中心に低炭素社会実現に向けた具体的な取り組み、低炭素社会に向けた雇用の創出・産業競争力の維持・向上などについて検討することになっています。
一般社団法人スマートプロジェクトとしては、エコポイント、スマートグリッド、スマートコミュニティの推進等に関してこの労使対話、新たな国民運動の展開等をサポートするとともに、内閣府、経産省、総務省、国交省、環境省などの中央官庁や関係自治体などとも連携し、関連する具体的なプロジェクを推進して行くこととしております。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;スマートグリッドビジネス総合戦略を展開する米GE)

2011-02-18 00:11:17 | Weblog
GEは、スマートグリッドに積極的なアメリカにおいても、もっとも早くからこのテーマに取り組んだ事業者の一つです。発電・送変電設備からエンドユーザ向け製品に至るまで、電力に関わるすべての領域においてフロントランナーである強みを生かした包括的なサービスの提供を推進しています。
 GEのスマートグリッド・サービスは、スマートメーター、制御・管理用ソフトウェア/ソリューション、モニタリング/センシング・システムの3つで構成されています。その中核であるスマートメーターは、様々な通信方式に対応したAMIソリューションとして、電力利用量、利用時間、電力消費サイクル・パターンなど、電力の利用状況をユーザが客観的に把握する数々のデータを提供するだけでなく、電力品質を監視するデータも取得することが出来ます。アメリカをはじめ、カナダ、中南米、オーストラリア、メキシコ、スウェーデン、イギリスなど、世界各国ですでに販売されており、着実に実績を上げています。
 09年7月GEは、10年に発売を予定しているスマートメーターと通信して電気をより安い料金で活用できる家電製品を発表しました。GEはまた「Home Energy Manager」も発表しました。このデバイスによって、消費者は電力消費量をより詳細に把握し、家電製品の設定をプログラムすることができます。例えば、電力会社がスマートメーターを介してピーク時価格適用中の信号を送ると、衣類乾燥機が「節約」モードに切り替わるといった設定が可能となります。GEは、こうした同社の需要応答家電製品のコストは10ドル程度高くなると予想していますが、市場性は十分あると見ています。
 09年8月GEは、「Net Zero Home Project」としてスマートグリッド対応製品を発表しました。これまでも展示会などでネットワークに接続されたアプライアンスが出展される例は日本を含め多々ありましたが、実際にスマートグリッドのサービスの提供が開始されただけに現実感があります。今後11年頃まで、少数の牽引者となるメーカーから少数機種のスマートグリッド対応製品が発表され、試行錯誤を経ながら機能が進化していくものと思われます。
 GEのスタートアップ企業に対する投資・提携戦略としては、GEは09年10月に、GEEnergy Servicesを通してGridnet に追加投資しました。Gridnetは、Wimax4Gを活用する次世代スマートメーターGE Wimax Smart Meter(IntelのWimax半導体チップセットを使用)に対してネットワークマネージメントのためのソフトウェアなどを提供している企業です。GE Energy Financial Servicesのほか、Intel Capital も出資しています。
08年以降Gridnetは、その技術をGE Energyにライセンスしています。Gridnetの活動はステルスモードですが、4つの電力会社との間でWimax4Gを活用するAMIの構築について協議を進めています。AMIのリード企業であるSilver SpringやTrilliantが使用している免許の必要のない900MHz帯の無線「メッシュ・ネットワーク」とは異なり、Wimaxは免許を取得した帯域で使用されるため、セキュリティ、信頼性に優れていると主張されています。また、他の無線方式に比して、消費電力が低いところが特徴です。
 GEは、この分野のスタートアップ企業であり、TREE(Tendrill Residential Energy Ecosystem;Zigbeeを活用したエネルギーマネージメントソフトを電力会社と消費者に提供するもの)で急速に市場に浸透しているTendrill Networksが行うエネルギー負荷制御やエネルギーマネージメントのアルゴリズム開発に関しても戦略提携を行っています。Tendril Networksは、スマートサーモスタット、スマートプラグなどのスマート機器を販売し、ウェブベースでiPhoneでも利用可能なHEMS表示サービスなどをも提供している会社です。GEのGridnetやTendrill Networksに対する投資・提携戦略は、多様なAMI通信方式が登場し、標準化、インターオペラビリティの確保が難しくなっている状況の下で、選択肢の多様化を図るものです。
GEは、クリーンエネルギー政策のロビー活動とスマートグリッド向けソフトウェアの開発でグーグルと協力関係にあります。GEとグーグルの技術連携のテーマのひとつは、地熱発電の中でも先端技術として注目されるEGS(Enhanced Geothermal Systems)関連技術の開発です。EGSは、地下にある高温の岩体を水圧で粉砕し、そこに水を送り込んで蒸気を得るというもので、熱水が乏しい場所でも発電が可能となるため、地熱発電の場所的制約を取り除く技術として期待されています。
技術面における連携の2つ目は、家庭のコンセントで充電可能なプラグイン電気自動車の実用化を促進することです。プラグイン自動車を電力ネットワークに統合する制御機器やソフトウェア、サービスの開発を目指しています。プラグイン自動車をソフトウェアによって管理し、オフピーク時を選んで充電するような賢い仕組みを作れば、電力供給の安定を保ったまま利用を拡大することができます。
発電・送変電の分野では、GEは,Hawaiian Electric Company(HECO)、Maui Electric Company(MECO)、Hawaii Natural Energy Institute(HNEI)、アメリカエネルギー省(DOE)と協力し,ハワイのマウイ島におけるスマートグリッドプロジェクトを手掛けています。現在、マウイ島のピーク電力需要は約200メガワット(MW)ですが、その内30メガワット(MW)をすでに風力発電で補うことに成功しています。同社は、このプロジェクトをさらに推し進め、再生可能エネルギーの効率的な活用技術の確立を目指していく予定です。
GEは海外でもスマートグリッド構築を推進しています。対象地域はインド、ノルウェー、アラブ首長国連邦と韓国などですが、このうちインドに関しては、GEはインドの電力会社North Delhi Power Limited(NDPL) に協力して、スマートグリッド構築に乗り出しています。またノルウェーでは、風力発電会社を買収し、洋上発電を戦力的に展開しようとしています。韓国では、大手通信事業者のNURitelecom Corp.と共同開発を行っています。

「スマートグリッド革命」(政策;情報主権の革命とスマートグリッド)

2011-02-17 00:56:05 | Weblog
Green by ICTについては、いま一段高次元の視点で考える必要があります。今後予想されるエネルギー費用の増加と現在進行している気候変動に関する議論を考慮に入れると、「グリーンIT」は社会のさまざまなステーク・ホルダーとのとの関係が深く、IT業界だけで取り組める課題ではありません。企業担当者や政府立案者が、エネルギー消費を考慮したITの新しい可能性を積極的に追求していくことが必要不可欠となっています。
09年12月原口一博総務大臣の「原口ビジョン」が公表されましたが、地球環境の観点から注目されるものとしては、①20年時点でCO2排出量25%削減という政府目標のうち、10%以上をICTパワーで実現(ICTグリーンプロジェクト)、②規制制度の集中的見直しを完了(10年中、「ICT利活用促進一括化法」の制定)などがあります。
10年6月政府のIT戦略本部は、日本の新たな情報通信技術戦略を発表しました。この中でもっとも特徴的なのは、「情報通信技術革命の本質は、情報主権の革命である」として「情報の民主化」を宣言したことです。これは「You Tube」のパラダイムにほかなりません。その上で、すべての世帯でのブロードバンドサービスの利用の実現を目標として、重点テーマの3本柱として、①国民本位の電子行政の実現、②ICT利活用による地域の絆の再生、③新市場の創出と国際展開を掲げています。
具体的には、週7日24時間いつでも行政サービスが利用できる環境整備、遠隔医療、在宅介護サービス、教育が受けられる環境づくりのほか、スマートグリッド、情報通信技術を活用した住宅・オフィスの省エネ化、人やモノの移動のグリーン化などを推進するとしています。今後は、4月に「情報通信技術基本戦略」を決定し、5月に同戦略を実施するための工程表(スケジュール)を策定する予定ですが、目標とされている環境には、テレビ会議、遠隔医療や遠隔教育などエネルギー消費やCO2排出量低減につながるものがかなり含まれています。このほか、ウェブベースの電子商取引の推進もそのような効果があります。
 したがって、今後「情報通信技術基本戦略」やそのための工程表策定に当たっては、より高次元のGreen by ICTをも推進する視点から、スマートグリッド推進とのリンケージを構築した包括的な政策パッケージを推進し、「You Energy」のパラダイムをIT革命の負の側面を克服するものへと発展させていかなければなりません。

「スマートグリッド革命」(政策;ICTと環境の両立)

2011-02-15 07:01:47 | Weblog
ICTと環境の両立に関する包括的な政策パッケージを立案する上で参考になるものとしては、まず、08年8月に「The Climate Group(気候グループ)」(政府と産業界の連携により地球温暖化問題の改善を推進する国際NGOで04年に設立)と「GeSI:Global e-Sustainability Initiative (e-持続可能性・国際イニシアティブ)」(欧州のICT・テレコム企業が中心となって設立された国際NGO)が公表した報告書「SMART2020」があります。この報告書は、情報通信技術が地球温暖化防止に果たす役割を示す世界最初の包括的な研究報告書です。
「SMART2020」は、20年までに世界のCO2を15%削減することができ、エネルギー効率の改善により5000億ユーロを節約できると指摘しています。「SMART2020」で示されたマッキンゼー社の分析によると、世界全体のCO2排出量は、02年の40Gtに比して、20年には51.9Gtに増加します(放置ケース)。しかし、SMART構想を実現することにより30.0Gtにまで抑えることができるとしています(対応ケース)。  
放置ケースと対応ケースの差21・9Gtの内訳は、ICTによる直接削減分が7.8Gt(これだけでも、アメリカもしくは中国の年間排出量に相当)、新エネ、植林等分が14.1Gtです。「SMART2020」は、情報通信技術によるCO2排出削減分を前者に限定していますが(前記の15%や5000億ユーロもこれに対応しています)、後者のうち新エネに関しては、ICTの活用によるスマートグリッド等の進展により実現するものがかなりあります。また、ICTによる直接削減分が7.8Gtの内訳としては、①スマートモータシステム(2020年世界全体で9億7000万トン、680億ユーロの削減)、②スマート物流(2020年世界全体で15億2000万トン、2800億ユーロの削減)、③スマート建物(2020年世界全体で16億6000万トン、2160億ユーロの削減)、④スマートグリッド(2020年世界全体で20億3000万トン、790億ユーロの削減)となっています。
「SMART2020」が単なる分析ペーパーと異なるのは、低炭素経済社会への移行は、ICTパワーにより市民や企業が技術の利用方法を変えることが、根本的な解決策だと指摘していることです。ICTによるエネルギー消費に関する標準化(S:standerdization)、監視(M:monntoring)、会計・収支計算(A:accounting)を通じて、われわれがエネルギー効率の最適化の方法や低炭素経済社会における生活様式について再考・再検討(R:rethik)を行うことで、多分野において低炭素経済社会に向けたビジネスモデルの開発が進み、低炭素経済社会への転換・変革(T:transformation)が実現されると、「SMART2020」は主張しています。
また、10年3月にアメリカ情報労連を含む4団体が公表したスマートグリッドに関する報告書「Networking the Green Economy How Broadband and Related Technologies Can Build a Green Economic Future 」は、狭義のスマートグリッドだけではなく、スマートテクノロジーによる家庭・オフィスのエネルギーマネージメント、さらにブロードバンドを活用した遠隔医療、遠隔教育などにより、エネルギーやCO2を削減するという視点が重要なことを強調しています。原口ビジョンの「25%減のうち10%以上をICTで実現する」ためには、ICTと環境の両立という視点が必要でしょう。

「TPPの動向」(TPP参加の是非に関する「第3の本質的視点」)

2011-02-14 06:33:05 | Weblog
TPP(環太平洋経済連携協定)への参加の是非について賛否両論が戦わされていますが、ここでは、誰も指摘していない本質的な問題を論じてみたいと思います。結論から先に言うと、「TPPは日本経済回生の必要条件ではあるが、十分条件ではない」ということです。10年11月6日の読売新聞朝刊「論点」のコーナーで、早稲田大学の浦田教授が「TPP不参加 大きな損失」という論陣を展開していますが、TPPに参加しなければ日本経済や日本企業の競争力がかなり低下し、輸出市場を失って大きな損失が出るとなることは理解できます。FTAやEPAにおいて韓国などに比して完全に出遅れた日本として、危機感を持っていることも理解できます。そのような観点からはTPPの参加は必要ですが、TPPへの参加それ自体では日本経済の活性化にはつながらず、参加と同時に日本経済の回生につながる十分条件を整備しなければなりません。
この結論は、次のように考えると納得していただけると思います。
TPPに参加してアジアや環太平洋諸国の成長力の活用、それらの諸国への輸出の拡大を行うことは、確かに輸出による売り上げ増にはなります。しかし、95年以来生産年齢人口の減少、就業少数の減少、消費の構造的な減退という問題を抱えている日本経済の問題は、輸出による売り上げにより外貨を稼ぐこと自体ではなく、稼いだ外貨を国内で回すようにすることです。その「回路」が壊れたままでの戦略の展開は、04年から07年の好況が結果として日本経済を活性化しなかったことの二の舞となります。
特に、この10年から15年までの5年間で「団塊の世代」600万人が65歳を超えるという状況の下では、5年以内に国内貯蓄率の低下、現在2%台の国内貯蓄率のゼロ化が起こる危険性があります。ISバランス論からすると、現在の日本の経常収支の黒字は、家計部門の黒字と企業部門の黒字が政府部門の赤字を補って余りあるからこそ実現されているものですが、家計の貯蓄率がゼロになるということは、企業部門の黒字が政府部門の赤字を補えない限り、日本の経常収支は赤字になることを意味します。この経常収支の赤字はどのようにファイナンスするのでしょうか。
また、家計の貯蓄率がゼロになるということは、家計の貯蓄を預かっている国内金融機関が国債を買えなくなることを意味します。そうすると起こるのは国債市場の暴落です。国債市場が暴落すれば、株式市場や為替市場も暴落することは必至です。回避する手段としては、世界最大の資金余剰国である中国に日本の国債を買ってもらうか、日銀が直接あるいは何らかの形で間接に国債を大量に購入して買い支えることですが、前者に関しては中国に日本経済の決定権をゆだねるという危険性があり、後者については円に対する国民の信任がなくなり、ハイパーインフレーションを引き起こすという危険があります。「団塊の世代」600万人が65歳を超えることは、こうした大きなインパクトを日本経済に与えるもので、この問題の解決に手をこまねいていては、TPPに参加してより多くの外貨を獲得しても、日本経済は死を迎えることになります。
04年から07年の好況では、日本経済は、世界経済のかつてない拡大と円安の進行という“幸運”に恵まれました。しかし、外需主導、輸出による売り上げ増を国内の成長に結び付けることはできませんでした。日本企業は「コスト削減の罠」にはまり、株主圧力の増大、新興国の台頭、資源・食料価格の急騰の下で、人件費の削減によりコストアップを吸収しようとひたすら努力しました。これは、90年代末から03年までのデフレ期に起こった供給過剰体質が残っていたため、各企業は販売価格の引き上げが売り上げの減少につながることを恐れたためです。
このときの日本経済においては、大企業において非正規雇用の増大とともに、成果主義の導入を広範に進めました。しかし、日本の大企業が進めたのは、本当の成果主義ではなく、成果主義の名の下に一部の人を早く昇進させる一方、多くの人材の昇進を遅らせることで全体の人件費抑制を図るというものでした。その結果、人件費抑制のため若年層での非正規雇用が増大し、若年層から中高年層への所得移転が起こるとともに、将来を担う世代の能力育成にマイナスに作用しました。また、賃金が抑制のため家計の低価格志向が強まり、ますます販売価格の引き上げが困難となりました。
この時期の象徴的な出来事は、「春闘の終焉」です。春闘は90年代末以降形骸化が進みましたが 特に01年以降は、ベア統一要求が断念され春闘が持っていた賃金底上げ機能が名実ともに崩壊しました。こうして賃金の下方硬直性の仕組みが次々と解体される一方、逆に、賃金の上方硬直性ともいうべき状況が生まれ、労働分配率が低下しました。低すぎる労働分配率は、需要サイドでは、消費の低迷を招くことになりました。さらに、企業は資本をゼロ・コストで調達していることになることから、過剰投資につながりやすくなるという体質がさらに助長されました。また、供給サイドでは、人材投資の不足や労働者のモチベーションの低下が起こったのです。
今の日本には、日本企業の優れた技術力のおかげで国債となっている分を除いても400~500兆円の個人金融資産が蓄積されています。また、毎年十数兆円の金利配当も流入している状況です。この状況の下で必要なのは、外需や輸出だけに目を向けるのではなく、バランスの取れた行動、つまり生産年齢人口の減少が引き起こす消費の減退という問題を直視し、民生部門において需要を喚起するとともに、消費を直接増加させるための対応です。
10月に日銀が発表した量的緩和策は、円高デフレに対するカンフル剤としての効果はありますが、日本経済が再びデフレに落ち込んだ原因である需給ギャップの拡大という実体経済上の問題に対応した解決策ではないため、マクロ経済政策としての効果はほとんどないものと考えられます。むしろ、企業にとっては資金調達コストが極めて低くなり、事業の収益向上へのインセンティブが働かなくなるという”副作用”により、日本経済を蝕む悪性の腫瘍を増殖させることになりかねません。
この対応の間で、同時並行的に前述した「回路」を回復する対応が必要となります。そのため、最低賃金の引き上げや正規・非正規の処遇均衡を誘導すること(就業形態に関わらず、就いている職務に応じて賃金が決まる仕組み)により所得増を実現することが必要です。また、医療、介護、保育、教育、雇用サービスを充実させることで国民の将来不安を払しょくして消費意欲を回復させ、上記で実現した所得増を需要増につなげることも必要となります。また、私が提唱している「家庭オフィスCDMとエコポイント」(http://www.smartproject.jp/cdm_money)という仕組みを活用した消費の直接的な喚起策と民生部門の低炭素化の推進も必要です。むしろ、日本経済の回生の即効性という観点では、エコポイントの活用にアドバンテージがあります。
政府、エコノミストなどの覚醒を促したいと思います。