エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「エコポイント2.0」(シリーズ;消費にも着目した成長戦略ツール)

2010-11-30 06:58:00 | Weblog
今、政府挙げて取り組んでいる「新成長戦略」には大きな盲点があります。それは、投資だけに着目して成長を目指している点であり、消費にも着目した成長戦略でないと意味がないということです。エコポイント2.0はそのための有力なツールなのですが、そのことを最先端の経済学の成果を踏まえて解説してみたいと思います。
日本経済の最大の課題は、「流動性の罠」がもたらす投資機会の不足と消費機会の不足です。このため、慢性的に資金の供給過剰状況が出現し「自然利子率」(スウェーデンの経済学者であるヴィクセルが提唱した概念。望ましい資源配分を実現するための実質利子率の水準で、潜在成長率にほぼ等しい。今や中央銀行関係者からも支持されている考え方)がマイナスとなっています。その定義からも明らかなように、自然利子率を金融政策や財政政策で上昇させることはできません。自然利子率を上昇させるためにはイノベーションを起こすことが必要ですが、ここでイノベーションと利子率の関係について検討することが必要となります。ちなみに、ここでいう「イノベーション」とはシュンペーターが提唱したものであり、プロダクト、プロセス、マーケット、サプライチェーン、ビジネスモデルの5つのタイプがあります。このうち最も需要なのは、新しいビジネスモデルの構築です。
イノベーションと利子率については、2つの考え方があります。利子率は貯蓄と投資を一致させるように決まるとする考え方(新古典派)と利子率はマネーを保有することにより失われる期待収益だとする考え方(ケインズ派)です。市場には消費財と投資財の2種類がありますので、両者を総合したモデルにより成長戦略を構築する必要があります。このうち、新古典派的な利子率の決定に関する考え方は、消費財にあてはまる考え方です。一定の所得を消費に回すか貯蓄に回すかという消費貯蓄選択においては、新古典派的な時間選好が働きます。次に、人々は一定の所得を消費に回して残りを貯蓄に回す際、貯蓄された資産の構成を決めます。これが投資です。この際の投資財に関する資産選択行動に関しては、ケインズ的な流動性選好が反映されます。もし貨幣保有を増やせば流動性プレミアムを得ることになり、収益資産を増やせば利子が手に入ることになります。
ここで、マネーには、どれだけ持っていても、普通の消費財と異なって限界効用が逓減することはないという性質があることに着目しなければなりません。今われわれが陥っている「流動性の罠」の状態では、マネーは購買力を限りなく吸い込み、「需要の飽和」が起こって消費も投資も同時に低迷しています。この「需要の飽和」から脱出するためには、投資財に関する資産選択における「長期の期待」、「アニマルスピリット」(ケインズ)の上昇による投資に拡大だけではなく、消費財に関する消費貯蓄選択をも考慮した消費の拡大の両面から対処することが必要です。「新成長戦略」が想定している「需要と供給の好循環」は前者の投資財に関するもので、後者の消費財を含めた「需要と供給の好循環」の構築という視点が欠落しています。投資財のみならず消費財の観点からも「需要の飽和」を突破するもの、それこそが「真のイノベーション」です。

 私は1998年にエコポイントを提唱しましたが、05年愛・地球博におけるEXPOエコマネーを経て、今や家電エコポイント&住宅エコポイントとして政府の事業にまで発展しています。このエコポイントをさらに発展させて、エコポイント2.0により、消費にも着目した成長戦略を推進すべきだというのが私の提言です。

「スマートグリッド革命」(シリーズ:欧州のスマートグリッド戦略はICTの役割を強調)

2010-11-29 00:15:36 | Weblog
欧州のスマートグリッド政策は、ICTを積極的、戦略的に活用していこうとしていることが特徴です。09年7月に発表された欧州ICTハイレベルアドバイザリーグループ(High-Level Advisory Group on ICT for Smart Electricity Distribution Networks)の報告書”ICT for a Low Carbon Economy;Smart Electricity Distribution Networks”は、スマートグリッドを「3つの20%」目標を実現するために必要不可欠なインフラとして位置づけ、その上で、スマートグリッドの展開は「スマートプロセス」(需要応答の実施など)と「スマートテクノロジー」(スマートメーターの100%普及など)を結合すれば、ピークロードを50%も低下させ、エネルギーの最終消費を20%節減することができるとしています。そこで報告書が期待しているのがICTの積極的な役割です。ICT分野はEU全体のCO2排出の2%を占めますが、残りの98%を排出している分野におけるCO2排出削減に大きな役割を果たすとしています。

エコポイント2.0(シリーズ;ケータイ、ICカードの変貌がカギ)

2010-11-28 00:14:51 | Weblog
エコポイント2・0の道具立てとして有力なものは、携帯電話が進化したケータイ(現在の携帯電話の60%はおサイフ・ケータイの機能がついています。ケータイはエコポイント2・0の読み取り機としても使います)やICカードでしょう。
ここで問題となるのは、日本のソニーが開発した非接触型ICカード技術であるFeLiCa(フェリカ)の動向です。というのは、FeLiCa(フェリカ)は日本ではデファクトスタンダード技術であっても、世界から見ればマイナーな規格であるからです。現在世界標準となっているのはフィリップス社が開発したMIFARE(マイフェア)です(たとえば、世界の交通系非接触型ICカードの利用実態は、FeLiCa(フェリカ)2億枚に対してMIFARE(マイフェア)12億枚)。
このままではFeLiCa(フェリカ)は“ガラパゴス諸島”と呼ばれる日本の携帯電話の独自進化、孤立化の方向に進んで行くのでしょうか。私はそうではないと思います。2007年以降次世代の近距離無線通信規格として、非接触型ICカード技術を発展させてソニーとフィリップスが共同開発したNFC(Near Field Communication)が注目されており、FeLiCa(フェリカ)とNFCとの技術的融合(NFCは無線通信部分であるエア・プロトコールを標準化したもので、ICチップの動作やOS、暗号部分はFeLiCa(フェリカ)、MIFARE(マイフェア)のそれぞれの規格に依存します)は必然的方向です。
そうなれば“ガラパゴス諸島”と揶揄される(あるいは自虐的に言われる)日本の携帯電話や通信方式の優れた技術、ノウハウヤ経験を世界に向けて移転し、新しい世界的な進化を演出することができるでしょう。
またケータイに関しては、今後携帯電話産業はかつてPC産業がそうであったように、垂直型から水平型の構造に大きく転換すると予想されています。この過程で「ウェブ3・0」への動きとケータイの進化が連動してエコポイント2・0の新しいビジネスモデルが登場することとなるでしょう。

アプリケーション   ゲーム、SNS、ビデオ、GPSなど
OS   i-phoneOS、アンドロイド、ブラックベリーなど
プラットフォーム(ハンドセット)   ノキア、ITTCなど
プロセッサー   ARM、クアルコムなど


「スマートグリッド革命」(シリーズ;太陽光発電ビジネスには世界レベルの構想力が必要)

2010-11-27 01:46:35 | Weblog
太陽光発電の潜在需要は地球規模にあり、日本の1億人市場ではなく、世界の市場を見据えた構想力が問われています。太陽光発電を切実に必要としているのは、CO2排出量削減の手段に使おうとする日本などよりむしろ、インドやアフリカなどの新興国です。発電所や送電線網の整備が追いつかず、不便な暮らしを強いられてきた人々にとって、自宅や集落に設置すれば電力の恩恵を受けられる太陽光発電は魅力的です。家庭の電源、集落の灌漑(かんがい)用水を引くポンプの電源などとして急速に普及する可能性があります。逆に、この構想力の実現に成功すれば、太陽光発電の発電コストの大幅な低下が見込まれます。
例えば、グラミン銀行は、バングラデシュの貧困層向けの低金利小額融資(マイクロファイナンス)で注目を集めていますが、そのグループ企業のグラミン・シャクティはグラミン銀行と同様、営利を追求しない「社会的企業」で、再生可能エネルギーによる農村部の電化を推進しています。主力商品はソーラー・ホーム・システムと呼ばれる小規模の家庭用太陽光発電システムです。バングラデシュの農村部において、テレビに加えて携帯電話が急速に普及していることに伴い、それらに対する電力を供給するためシステムとして販売が拡大しています。
こうした観点から日本企業の戦略を見ると、日本メーカーは主に先進国、新興国をターゲットにしている企業が大半ですが、異色なのは、新興国市場の開拓を宣言している昭和シェル石油です。同社は、株主であるサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと組んで、12年から中東やアフリカなどで1000〜2000キロワット級の太陽光の小規模分散型電源を設置し、大規模電源のない地方都市や集落で電力を販売する事業に乗り出す計画です。
 昭和シェル石油・サウジアラムコ連合による太陽光発電事業は、「BOP」(ベース・オブ・ピラミッド=ピラミッドの底辺)ビジネスへ発展する可能性も秘めています。仮にアフリカの低所得国でも事業が軌道にのれば、インドや東南アジアなど世界全域で通用する道が開けます。60億人の世界人口のうち1日2ドル以下で生活するBOPは40億人以上(うち、アジアが30億人以上)ですが、これまで市場経済から取り残されていた40億人が、実は市場として十分成立するという認識が最近高まっています(最近は、「ネクスト・ボリュームゾーン」、「ポスト新興市場」ということで論調が展開されています)。USAID(アメリカ国際開発庁)やUNEP(国連開発計画)などによる支援プログラムを活用して、インドで1日分のシャンプーや食品を低価格で販売するビジネスで急成長する英ユニリーバ系のヒンダスタン・リーバ、バングラデシュで低価格栄養食品販売に乗り出した仏ダノン、農村向けに煙のでない低価格キッチンストーブの生産・販売を始めたオランダ・フィリップスなどが注目される動きです。日本勢では、オリセットネット(蚊帳)によるマラリア防止に取り組む住友化学などがあります。
もちろん、BOPビジネスの成功のためには、それに適したビジネスモデルの開発が必要不可欠です。太陽光パネルの相当のコストダウンが必要ですし、メンテナンスを含めた販売・サービス機能を充実も必要です。さらに、ODA(政府開発援助)を推進する政府、国際機関、NPO・NGO、社会的企業等との連携を図ることで円滑なビジネス展開を行うことも必要です。しかし、太陽光発電の世界市場の状況をみると、北米市場が縮小気味の中、中国などの新興国では現地メーカーの猛烈な追い上げを受けて日本企業の世界戦略を取り巻く環境は不透明な状況です。世界の市場を獲得するハ-ドルは高いことは事実ですが、いったん太陽光発電でBOPビジネスのビジネスモデルの構築に成功した企業が膨大な需要をつかみ、”破壊的イノベーション”の担い手となって世界市場におけるドミナント企業に成長する勝機は十分あります。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;グリーンバレーへと変貌するシリコンバレー)

2010-11-26 07:07:51 | Weblog
「スマートグリッド革命」は,アメリカの中でもシリコンバレーを基点に始まっています。米西海岸サンフランシスコの南、スタンフォード大学やサンホゼの周辺に集積する産業群よりなるシリコンバレーは、図表に示すように、半導体、PC・コンピュータシステム・周辺機器、ソフトウェア、通信・インターネット、バイオテクノロジー・ライフサイエンス、グリーンテックと幾度となく脱皮の過程を繰り返してきました。その都度、イノベーションの主役は代わってきましたが、折り重なるようにしてその活力を向上させ、その都度存在価値を高めています。そして今、グリーンテック、スマートグリッドが新しい主役として登場してきているのです。
スマートメーターのスタートアップ企業の成長株として近年において俄然注目されているシルバー・スプリング・ネットワークの最高財務責任者ワーレン・ジェンソンは、「02年に創業したときは、スマートグリッドについて語る人はいなかった。私たちはいち早くグリッドの可能性に注目し今日の地位を築いた」と語っています。この言葉が示すように、まずシリコンバレーでは、創業から数年を経過したスマートグリッド関係企業が先行者利益を享受するようになり、市場の拡大とともに大企業や様々な他の分野のスタートアップ企業が続々と参入しています。
これらの企業のなかには、太陽電池の薄膜、薄膜成形に必要な真空機器や材料、省エネ型照明や省エネデバイス、商業ビルの省エネモニタリングの機器やサービス、燃料電池、クリーンコール(石炭の効率的利用技術)、ナノテク材、小規模水力発電タービン、センシングデバイス、電気自動車関連など数多くの新興企業が含まれています。
電気自動車の充電スタンドを手がけるベタープレイスや、太陽光パネルを開発するサンパワー(Sun Power)、薄膜材料を手がけるスパッタリングマテリアルズ(Sputtering Materials)などを筆頭に、シリコンバレーの環境エネルギーベンチャーはいまや数百社ともいわれています。電気自動車開発のテスラ・モーターズも、一時的に苦境に立ち従業員のレイオフに追い込まれましたが、今では勢いを盛り返しています。「シリコンバレー・モデル」は進化し続けているのです。

「エコポイント2.0」(電子ポイント・電子マネーの「新世界」を開く)

2010-11-25 05:49:28 | Weblog
エコポイント2・0は最先端のIT技術を活用しますが(媒体としてはケータイ、ICカードなど)、電子ポイント(家電量販店のポイント、クレジットカードのポイント、携帯のポイント、マイレージ、大手スーパーのポイント、商店街のポイントなど)、電子マネー(Suica,eddy,PASMO,nanaco,WAON,PiPaTaなど)の市場は急速に拡大すると予想されています(2008年3月野村総研)。

電子ポイント  電子マネー
2006年度6,654億円  1,754億円
2007年度6,875億円 8,444億円
2008年度7,092億円 13,783億円
2009年度7,288億円 20,563億円
2010年度7,483億円 26,330億円
2011年度7,678億円 30,789億円
2012年度7,874億円 32,695億円


エコポイント2・0の構想力は、電子ポイント、電子マネーのそれをはるかに超えています。現在の電子マネーは、言ってみれば、すでに90%電子化されているマネーの“ラストワンマイル”を電子化しようというもので、新鮮味はありません。小額決済やギフト市場での決済が中心で、依然として端末の共通化などの問題もあります。
現状では、今の構想以上に拡大しようとすると、電源も装置も要らない紙幣やコインよりも利便性が向上するのか、ICカード基盤などのコストや流通性で本当に有利なのかなど貨幣を電子化する利点がそもそも不明確だという根本的問題があります。
今のところ電子ポイント、電子マネーのシステムには、是非使いたくなるような魅力が欠けています。電子ポイント、電子マネーでしか代えない、あるいは現金で買うのはいやだが電子ポイント、電子マネーでなら魅力的だという“ヒット商品”がひとつ登場するだけで状況が一変する可能性があるのですが、そのための構想力が欠けています。
 この点エコポイント2・0は、より大きな社会経済的な目的のために今の電子ポイント、電子マネーと同様の技術及びその発展を活用しようとするものであり、対象は、小額決済やギフト市場での決済に限られるわけではなくすべての取引に及びます。この点で、エコポイント2.0は電子ポイント、電子マネー市場をさらに拡大する可能性を秘めています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;実証された需要応答の効果)

2010-11-24 07:14:45 | Weblog
アメリカでスマートメーターによる需要応答の効果を実証したものとして、米DOEの国立研究所であるPacific Northwest National Laboratoryにより08年に行われたGridwise Olympic Peninsula Demonstration Projectがあります。これは、Pacific Northwest Gridwise Testbedというテストベットを活用して行われたもので、5分間隔のダイナミック・プライシングによる効果をブロドバンド環境で実証したものです。実証の結果、これによりピーク電力を15~17%減少させるとともに、平均的な家庭で15%電気料金を安くすることができるということが明らかになりました。
こうしてアメリカでは、ダイナミック・プライシング(リアルタイム・プライシング、ピークカットに協力した際の時のリベート、ピーク時の電力使用の節減に同意した家庭に対する電力料金の値下げの3つを内容としています)の有効性が実証され、それが広範に普及される素地ができました。
需要応答の効果については、09年6月に発表された連邦エネルギー規制委員会(FERC)のスタッフ報告書は、19年に実現できる負荷平準として4つのケースを提示しています。それによると、①現状レベルの需要応答が継続された場合は38ギガワット(GW)(4%)、②現状レベルの需要応答がすべての州に拡大した場合は82ギガワット(GW)(9%)、③全世帯にスマートメーターが導入され、ダイナミック・プライシングが初期設定された場合は138ギガワット(GW)(14%)、④全世帯にスマートメーターが導入され、ダイナミック・プライシングを含めすべてのプログラムが実行された場合は188ギガワット(GW)(20%)の負荷平準が需要応答により実現することができると報告されています。
 また、同スタッフ報告は、需要応答を実現するための課題として、①法的課題(卸売価格と小売価格の直接的な連結の欠如、計測と検証への取組み、リアルタイムでの情報共有の欠如、実効性の少ない需要応答プログラムの設計、需要応答のコスト分析に関する合意の欠如)、②技術的課題(AMIの基盤の欠如、コスト高、互換性やオープンな標準の欠如)、③その他の課題(顧客の認識と顧客への教育の欠如、環境への影響に対する関心)をあげ、これらの課題を早急に解決するとともに、ダイナミック・プライシングの価格体系の導入を全米レベルで行うことを求めています。
ここで興味深い調査結果をご紹介したいと思います。カリフォルニア州の電力会社PG&Eが、3年かけて2500人の顧客を対象に2000万ドル規模のパイロット事業を実施したところ、ピーク時の需要削減率は、使用時間による料金情報の場合で8%、ダイナミック・プライシング設定のシグナルの場合で13%、スマートサーモスタットの場合で27%なのに比し、ゲートウェイシステムを用いた場合は43%にもなることが判明しました。Open ADRとユーザによる負荷制御が可能な機器の普及が重要になります。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;クラウドコンピューティングに与える計り知れないインパクト

2010-11-23 10:26:07 | Weblog
スマートグリットには、家庭やオフィスなどの様々な機器がネットワークに接続されます。もちろんハイエンドの機種もあればローエンド、単機能のデバイスもあります。ただし,いずれにも共通しているのは,ネットワークからみると,いずれも「センサ」になりうるということです。いわば,巨大なセンサネットワークが出現することになります。この巨大なセンサネットワークをクラウドコンピューティングがサポートします。
最近クラウドコンピューティングという言葉がよく聞かれるようになりましたが、クラウドコンピューティングと言っても、従来、それによりどのような変革が起こるのかいまひとつピンと来ない人々が多かったと思います。しかし、今後は、スマートグリッドによる巨大センサネットワークの誕生が引き起こす仮想と現実の融合が需要応答などの基礎となり、クラウドコンピューティングのインパクトについて、電気料金の実質的引き下げなど人々に非常にわかりやすい形で提示することになるでしょう。
スマートグリットに関係する分野こそ「外圧」(地球温暖化防止に関する中期目標等におけるCO2排出規制)と「内圧」(ITとエネルギー技術が統合化した環境エネルギー革命のイノベーション)により社会的フレームワークが変わろうとしている分野であり、ブロードバンドの利活用、クラウドコンピューティングの利用が一挙に進みやすい分野です。ソフトウェアの機能のうちユーザが必要とするものだけをサービスとして利用できるようにするSaaS型サービスとしても、よく言われる防災、医療分野等ではなく、むしろ環境エネルギー分野、特にスマートグリット分野における展開を考える必要があります。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;革命はHEMSから始まった)

2010-11-21 07:41:40 | Weblog
日本では、家屋のZEH(Net-Zero Energy Buildings)化について、20年までにZEHを標準的な新築住宅とするとともに、30年までに新築建築物の平均でZEHを実現することが目標となっています。これにより、「スマートグリッド革命」の中核として、HAN(Home Area Network)の領域でのHEMS革命が進展しています。
HEMSが、華麗にして壮大なる「スマートグリッド革命」の第1幕です。今までは、ネットワーク化されているのはAV機器だけでしたが、今回ネットワーク化されているのはエアコンや冷蔵庫など、これまで家庭のネットワーク化の波から取り残されてきた白物家電が中心です。
この点に関して、日本ではこれまで家電メーカーが中心となって開発してきたため、自社の家電しかネットワークにつながらない方式になりがちで普及しませんでした。しかし現在では、家電メーカーが開発してきた技術を基に、住宅メーカーや大手建設業者などが中心となって、住宅やビル単位の電力管理システムの構築し、HEMSが開始されています。たとえば、大和ハウスは、通信規格に「エコーネット」を使い、家電などで通信しながら消費電力を見える化する家を開発しています。
 さらに、太陽電池や蓄電池など複数の電源を制御する技術も実用段階になっています。この関連では、清水建設は、太陽電池とニッケル水素電池、電気2重層キャパシタ、ガス・エンジン2基の複数の電源を使って自社ビル内の電力制御システムを構築しています。09年からは、経済産業省が「スマートハウス・プロジェクト」を推進し、送配電網との双方向通信を視野に入れたシステム開発を支援しており、スマートグリッドへの急展開を見せています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;電気経済の出現)

2010-11-20 08:50:51 | Weblog
スマートグリッドが必要とされる底流には、エネルギー効率の向上やCO2排出削減のためには、経済を支えるエネルギーの形態をできる限り電気に収れんさせることが合理的になったという事情があります。
そもそも電気は、利用するときは非常にクリーンであるという性格を持っています。しかも制御性に優れているので、非常に効率のよい使い方ができるエネルギーです。さらに、多様なエネルギー源から電気を生産することが可能ですから、エネルギー源の組み合わせ化石燃料から非化石燃料へとシフトすることにより、エネルギー全体を低炭素化することが容易にできます。また、自動車部門でも今後プラグインハイブリッド車や電気自動車の利用が拡大していくことから、石油から電気への転換が行われ、経済全体の低炭素化を進めやすいエネルギーであるということができます。
従来電気は、一般の財と異なり貯蔵が出来ず、生産されると同時に消費される瞬間消費性を有しているため、電力ネットワーク全体で、瞬時、瞬時に需給が一致していること(=同時同量)が必要不可欠な財であるとされてきました。しかし、プラグインハイブリッド車や電気自動車に搭載されている蓄電池などを使うことにより、電気を貯蔵できるようになりました。太陽光発電とエコキュートという家庭用ヒートポンプを組み合わせれば、電気を熱で蓄えることもできます。これは大きな変化です。
ただ、「同時同量の原則」を満たすため、時々刻々、需給バランスをとらなければならないことには変わりはないので、再生可能エネルギーなどの不安定な電源が入ってくると、従来のシステムでは対応ができなくなり、双方向性のある自律分散的なユニットごとに制御するスマートグリッドで対応することに合理性が生じます。
こうして「電気経済」(Electricity Economy)が出現しているのですが、「電気経済」には、今までのエネルギー経済とは全く異なる特性があります。それは、中央集権型ではなくネットワーク型であること、受動的ではなく自律的であること、標準に依拠したものであること、垂直統合ではなく水平統合であること、常に新しいイノベーションが起こって流動的であることです。「電気経済」は本来的に「ネットワーク型経済」であると言うことができます。