エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

【スマート連載】スマートイノベーション第8回;「スマートパワー研究所を設立せよ!」

2013-03-27 06:39:44 | Weblog
 毎週「環境ビジネスオンライン」にウェブ連載している「見えてきたスマートグリッドの現実」に、「スマート会社を設立せよ!」を掲載しました(http://www.kankyo-business.jp/column/004409.php)。項目としては、1. 「スマートエネルギー産業クラスター」の核となる「スマートパワー研究所」、2.ノーベル化学賞受賞者の野依良治さんの提言を生かす、3.「スマートパワー研究所」とシリコンバレーとの「頭脳循環」の構築、です。
 全文は以下の通りです。ご関心があれば、お読みください。

●「スマートエネルギー産業クラスター」の核となる「スマートパワー研究所」

 2月18日の連載「日本にスマート産業クラスターを形成せよ」(http://www.kankyo-business.jp/column/004204.php)において、「ビジネス・エコシステム」に基づく「スマート産業クラスター」の形成がスマートグリッドのイノベーションを持続的に形成し、発展させるために必要であることを指摘しましたが、そのためのモデルを東北地方に作り、東北の復興、東北における新産業と雇用の創出に結び付けることが必要なのではないでしょうか。それを日本経済全体の再生につなげるという考えです。
 このため私が提案したいのは、国などの公的主体が中心になって、東北大学、福島大学、岩手県立大学などの教育研究機関と連携しつつ、エネルギー、情報通信、リスクマネージメントなどに関する大規模な研究センターとして「スマートパワー研究所」を東北地方に設立し、これを核としつつ、周辺の各種電子部品・自動車部品などのハイテク産業との前方・後方連携を伴った「スマート産業クラスター」を構築することです。
 国は、2011年度第3次補正予算を活用して、福島県、宮城県、岩手県における各地域(会津若松市、気仙沼市、石巻市、大衡村、山元町、宮古市、釜石市、北上市に加えて、南相馬市、いわき市)でのスマートコミュニティ構築を推進していますが(http://www.meti.go.jp/press/2012/04/20120417001/20120417001.pdf)、これとも連携します。

●ノーベル化学賞受賞者の野依良治さんの提言を生かす
 2001年ノーベル化学賞受賞者の野依良治さん(理化学研究所理事長)は、2011年5月15日付の読売新聞コラム『地球を読む』に「震災を超えて 東北に世界級の研究機関」と題する小論を寄稿し、次のように提言しています。
「東北地方に『人類社会の存続』を指向する世界第一級の専門機関を、既存の大学とは別に設立してはどうか。・・・・世界が原子力発電の縮減に向かえば、最終的に太陽エネルギーを中心として再生可能エネルギーに頼らざるを得ない。次世代技術開発に与えられた猶予は20~30年しかない。・・・・島国である日本は隣国からも電気を輸入できない。食料や水の供給にも莫大なエネルギーを利用しており、我が国はいかにして生命線を確保するのか。もはや問題の先送りが許される状況にはなく、迅速な決断が求められる。」
 野依さんの提言は、私の「スマートパワー研究所」と符合するものと思います。国は、福島県郡山市に再生可能エネルギーに関する世界的な研究拠点として、産業技術総合研究所の研究所を2014年4月にオープンすることとしていますが、その研究内容にスマートグリッドや関連する情報通信に関するものを加え、さらに、東北大学、福島大学、岩手県立大学などの教育研究機関との研究ネットワークの構築や産学官連携の促進などを行うことが必要です。
 今後のスマートグリッドの重要な構成要素は、ハードでは燃料電池やリチウムイオン蓄電池、ソフトでは需要応答や次世代エネルギーマネージメントシステム、クラウドやビッグデータの活用です。東北復興と日本経済再生に当たり、それらが住宅やオフィス、工場などやプラグインハイブリッド車や電気自動車などに導入されれば、膨大な需要創造を行うことができ、イノベーション・技術とコストの両面において日本が世界をリードすることができます。

●「スマートパワー研究所」とシリコンバレーとの「頭脳循環」の構築
 スマートグリッドにおいて新しいビジネスネットワークが掲載されつつある今、日本がとりうる唯一の選択肢は、ネットワークに積極的に参加し、燃料電池、蓄電池などスマートグリッドにある固有の要素技術の強み、優位な分野を活かしつつ、国境を越えた産業のネットワークを楕円のような二極構造にしていくことです。シリコンバレーとともに日本の各地域が楕円の極となることが求められています。
  日本経済は、シリコンバレーというよりも、今なお、アナリー・サクセニアン著『現代の二都物語』で指摘された1980年代のボストン128号線地域に似た構造を持っています。1995年以降の第3次ベンチャーブームにより日本の産業構造を分散型産業システムに変革しようという試みがなされたことがありましたが、十分な成果を挙げないまま、ITバブルの崩壊、「失われた20年」という言葉が象徴する長い経済の停滞、デフレの継続などにより変革のモーメンタムを失ってきました。
 3月4日の連載「日本のハンディキャップは競争力を決める『頭脳循環』」(http://www.kankyo-business.jp/column/004322.php)で指摘したように、産業競争力の決定 要因として最も重要なものは、アナリー・サクセニアン著『最新・経済系地理学』が指摘しているシリコンバレーとの「頭脳循環」です。私たちは、「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムを早急に日本に移植するため、官民あげて上記の「スマートパワー研究所」とシリコンバレーとの間で積極的な「頭脳循環」のサイクルを形成することが必要です。
 国としては、6月に策定する新しい成長戦略の中に、上記の「頭脳循環」の構築を進めることを盛り込むべきでしょう。

スマート連載「電力システム改革に伴い、政府のスマグリ戦略は根本から見直しを!」

2013-03-26 07:03:26 | Weblog
 毎月分散型エネルギー新聞に連載している「日本を変えるスマート革命」に、新テーマとして「電力システム改革に伴い、政府のスマグリ戦略は根本から見直しを!」を掲載しました。
 項目としては、1.政府の「規制改革会議」は、電力システム改革を最優先事項に!、2.「点」だけを対象にした従来のスマートグリッド推進戦略が不適当なのは明らか、3.「プランA」には方法論上の誤りもあり、4.スマグリにおいても「技術で勝って、ビジネスで負ける」、5.「死の谷」を乗り切るためのしたたかな戦略が欠如、6.むしろ有効なのは「死の谷」をなくす戦略、7.私はスマートグリッド「プランB」を提唱です。
 全文は以下の通りですなお、過去の連載については、こちらからご覧になれます(http://www.onsitehatsuden.jp/pdf/110830smartkakumei.pdf)。ご関心があれば、お読みください。


「日本を変えるスマート革命」:その20~電力システム改革に伴い、政府のスマグリ戦略は根本から見直しを!~

スマートプロジェクト代表&エコポイント提唱者
加 藤 敏 春

●政府の「規制改革会議」は、電力システム改革を最優先事項に!

前回の連載で指摘したように、2013年2月8日、総合エネルギー調査会「電力システム改革専門委員会」(委員長、東京大学大学院の伊藤元重教授)が報告書を取りまとめ、2015年の広域系統運用機関の設立と新規制組織への移行、16年の電力小売りの完全自由化、18年から20年にかけての発送電の分離などを提言しました。

安部政権としては、2月28日に「規制改革会議」が自民党・日本再生本部に対して行った活動報告に見られるように、電力小売りの全面自由化、発送電分離等の電力システム改革を規制改革の最優先事項として取り組むことを明らかにしています。現在開催されている通常国会に電気事業法改正案を提出し、その附則などで前記の「電力システム改革専門委員会」の報告で謳われた改革の工程表のアウトラインも明示する方針です。まさに「電力大改革時代」の到来です。

●「点」だけを対象にした従来のスマートグリッド推進戦略が不適当なのは明らか

このように今後電力システム改革が日本全国を対象に「面」として推進される状況の下では、政府のスマートグリッド推進戦略は根本から見直しされることが必要です。前回の連載で指摘したように、政府のスマートグリッド推進戦略は、スマートグリッドの技術面だけにフォーカスし、特定の地「点」において技術実証を5年間行い(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市などの特定の街区)、その成果を6年目以降の実用化するというアプローチです。

私はこれをスマートグリッドの「プランA」と称していますが、「プランA」では「電力大改革時代」の「面」の課題に対応することは到底できないことは明らかです。

●「プランA」には方法論上の誤りもあり

さらに、「プランA」には方法論として次のような誤りがあります。産学連携推進機構理事長(前東京大学特任教授)の妹尾堅一郎さんの『技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか』を参考にして考察したものです。
 まず第1に、「プランA」はイノベーション(革新)とインベンション(発明)を混同していることです。インベンション(発明)にさえ成功すれば産業、経済、社会を変革する価値システムを創造できるというナイーブな思い込みがあります。

英語の“Innovation”は「技術革新」と和訳されますが、これは誤訳(迷訳)です。いかに優れたインベンションであっても、産業、経済、社会に普及して価値を創造しないものはイノベーションではありません。このことはスマートグリッドでも同じです。

「イノベーションの経済学」を提唱したシュンペーターがイノベーションとして掲げた5類型のうち、技術起点のプロダクトイノベーションは一類型(新しい財貨の導入)にしかすぎません。

●スマグリにおいても「技術で勝って、ビジネスで負ける」

第2に、技術実証の結果得られる技術で優位に立てば、事業でも優位に立てると思い込んでいることです。このことは日本企業のビジネス戦略の誤りと似ています。

日本企業は長らく技術で優れていれば市場でも勝てると信じ、行動してきました。その結果、マイクロソフト、アップル、グーグル、フェイスブックなどのアメリカ企業のみならず、加工組み立て分野ではサムソンなど韓国勢や中国製、台湾勢に市場を奪われ、パナソニック、ソニー、シャープなど2012年3月期に巨額の赤字を計上し、13年3月期においても苦境を脱することのできない企業が数多くあります。

技術実証のみの「プランA」では、すべに「プランB」に路線転換した欧米先進国のみならず、韓国、中国などで推進されているスマートグリッドに対して、事業の段階で敗退することになるでしょう。スマグリにおいても「技術で勝って、ビジネスで負ける」ことになりかねないのです。

第3に、第2と同様に、「プランA」はスマートコミュニティでも国際標準をとれば競争に勝てると思い込んでいますが、これも誤りです。国際標準よりも競争優位を獲得する上で重要なのは、ビジネスモデルです。



●「死の谷」を乗り切るためのしたたかな戦略が欠如

第4に、「死の谷」(valley of death)を乗り切るためのしたたかな戦略が欠如していることです。「死の谷」とは、技術開発がその後の事業化・製品化につながらないことを言い、両者のギャップをいかに埋めるかが事業で優位に立てるカギになっています。ギャップを埋める伝統的な手法は国による技術開発費の支援です。

「プランA」は、この伝統的な手法をスマートグリッドにも適用し、毎年数百億円もの技術実証費の支援を前述の「点」に対して行っています。こうした伝統的な手法にはある程度の有効性はありますが、この場合においては、「点」における技術実証の成果を他に拡大・普及させるため、「外的妥当性」(external
validity)の確保を最初からスキームに組み込んでおくことが必要です。そうでないと技術実証の成果は日本だけしか使えない「ガラパゴス現象」を生むことになります。
 しかし、スピードを増している競争環境の下では、こうした伝統的な手法の有効性は次第に減殺しています。それを象徴しているのが2012年2月半導体メモリーDRAMを日本国内で生産する半導体製造企業であるエルピーダメモリーが会社更生法の適用を申請したことです。エルピーダメモリーは改正産業活力再生法に基づき公的資金による支援を受けて先端的なDRAMの研究開発を行ってきましたが、サムソン電子のスピード戦略には太刀打ちできませんでした。

●むしろ有効なのは、「死の谷」をなくす戦略
 むしろ、近年有効になっているのは、そもそも「死の谷」をなくす、あるいは極力狭くするという問題解消型のアプローチです。このためにはビジネスモデルを変えて、製品の普及の過程において分業を行うことが必要になります。 

企業のレベルで採用されたこうしたアプローチの典型は、インテルがMPUのイノベーションを創造する際に台湾メーカーを使った手法です。インテルは自ら開発したMPUを組み込んだマザーボードを規格化して、それを格安で生産してくれる台湾メーカーに持ち込み、台湾メーカーがマザーボードという中間製品を格安で生産し、インテルが販売する。そうすると最終製品であるPCも格安で生産し販売できるようになり、瞬く間にPCに多くの企業が参入する。結果、格安な最終製品であるPCが市場に出回るようになり、「死の谷」はあっという間に越えられるようになりました。

●私はスマートグリッドの「プランB」を提唱
 スマートグリッとの世界においてこれと同様のアプローチをするのが、市場、技術、制度のインターアクションで推進する「プランB」です。詳細については、拙著『スマートグリッド「プランB」―電力大改革へのメッセージ』(2012年、NTT出版)を参照いただければ、幸いです。

経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム協議会」においても「プランA」を修正してプロジェクトマネージメントの強化などを行う動きが出ているところであり、国としても早急に「プランB」への路線変更がなされることを期待したいと思います。

スマートイノベーション第7回:「スマート会社を設立せよ!」

2013-03-22 06:46:08 | Weblog
 スマートグリッド、スマートコミュニティに関する新産業の創生やイノベーション(=スマートイノベーション)の7回目として、1. 「スマート会社」は「スマート持ち株会社」と「スマート事業会社」に分化、2.「スマートファンド」を組成し、「スマート事業会社」に出資、3.参照モデルとしての戦前の理研産業団 、4.3層構造の下での「スマートプラットフォーム」として機能するスマートプロジェクト、について解説します。

 全文は以下の通りです。ご関心があれば、お読みください。


●「スマート会社」は「スマート持ち株会社」と「スマート事業会社」に分化

 私は、ITとエネルギーが融合した“スマートバレー”へと変貌したシリコンバレーのダイナミズムを日本においても蘇生するため、「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でスマートグリッドの具体的なプロジェクトを推進することを提案しています。このうち「スマートプラットフォーム」は、前回の連載「スマートプラットフォームを構築せよ」(http://www.kankyo-business.jp/column/004382.php)でご紹介したように、IT革命勃興時の「スマートバレー公社」に相当するものです。日本には、技術者と市場をつなぐプロデューサのような存在が少ないことから、大学やベンチャーに眠っている技術を商業化まで引き上げることのできるプロデューサ人材の育成も行います。
 また「スマート会社」については、当初は事業会社からスタートしますが、ゆくゆくは各分野でイノベーション開発を担当する事業会社の持株会社として機能するようにして、「スマートプラットフォーム」、「スマート持ち株会社」および「スマート事業会社」の3層構造によりプロジェクトを推進します。これにより、HEMS、BEMSをはじめとするスマートグリッド分野で「需要創出」を図りながら、新産業の創出、雇用の増大等を図ります。

●「スマートファンド」を組成し、「スマート事業会社」に出資
 日本にもすばらしい環境エネルギー関連ベンチャーの芽があります。例えば、電気自動車ベーチャーであるシムドライブ、イーブイ愛知やナノオプトニクス・エナジー、一般家庭への太陽光発電の普及を目指して新しいビジネスモデルを展開しているサステナジー、省エネ・省コストコンサルティング・サービスを提供しているイーエムシー、燃料電池のベンチャーであるMFCテクノロジー、360度各方向からの光を変換できる球状太陽電池スフェラーなどを開発している京セミ、風切音を低減した炭素繊維ブレードなどの小型風量発電機エアドルフィンを開発したゼェーファー、3枚の羽根の周りにリング状の輪を取り付けた風力発電機を開発したウィンドレンズ、根元が細く先が広い羽根5枚からなるベルシオン型風力発電機を開発したグローバル・エナジー、電床、音力発電、振動力発電のパイオニアである音力発電、製材所から出る木屑をプラスチックと混ぜて新資材を作る技術を開発したウッドプラスチック・テクノロジー、リチウムオンキャパシタを開発しているアドバンスト・キャパシタ・テクノロジーズなどです。
 このほか多数ある芽を発掘し、ビジネスモデルとして発展させるためのメカニズムとして「スマート持ち株会社」が機能する必要があります。「スマート持ち株会社」は、シリコンバレー等との連携を図りながら、国際的な視野の下で蓄電池、太陽電池、燃料電池等の分野における日本企業の強みを生かし、発展させる方向で事業を推進します。また、国が出資している産業革新機構や独立行政法人の中小企業基盤整備機構などと連携しながら「スマートファンド」を組成し、「スマートファンド」が「スマート事業会社」に出資します。「スマートファンド」には、世界で活躍するトップクラスのファンドマネージャーをスカウトするなどして、この分野において投資の目利きができる本物の投資家を配置します。

●参照モデルとしての戦前の理研産業団
 以上の構想の参照例、モデルとなっているのが、戦前「科学工業主義」を標榜して変革のプラットフォームとなった理研産業団です。理研産業団は、1917年渋沢栄一らの協力の下、高峰譲吉が非営利法人として理化学研究所設立しました。財源は、寄付、皇室下賜金、国からの補助です。理研産業団が新たな展開を見せたのが、1921年に大河内正敏が所長に就任し、主任研究員制度(研究者の自由度保証)を導入し、“スーパー研究者集団”としての地位が認められるようになってからです。
 理研産業団は、第1次世界大戦後の戦後不況で寄付金が集まりにくくなったことを契機として、「科学主義工業」(科学の命ずるところに向かって驀進する。科学を活用して生産性の向上を図り、良品を廉価で製造する)を標榜して発明の事業化に取り掛かり、22年その第1号として東洋瓦斯試験所設立しました。そして、1927年、昭和    金融恐慌のさなかに理化学興業設立し、以後「1事業1社」という考えの下に次々と企業を興して63社(121工場)にもおよぶ理研産業団が形成されました。
 理研産業団のプラットフォームは、財団理研、理化学興業(持ち株会社、TLOの機能も果たす)、事業会社の3層構造です。この構造により、鈴木梅太郎(ビタミンB1の発見)、寺田寅彦、長岡半太郎(原子モデルの提唱)、本多光太郎(磁性鉄鋼の開発)、湯川秀樹(中間子論)、朝永振一郎(くりこみ理論)などの研究者が活躍し、「(科学者たちの自由な楽園)(朝永振一郎)と呼ばれるようになりました。1930年の金解禁、翌31年の禁止。その後世界恐慌の影響が日本にも及び、満州事変などを契機として戦時統制色を強める経済の下でも、理研産業団はビタミンA、人工合成酒、感光紙、アルマイト、コランダムなどを次々と事業化したのです。

●3層構造の下での「スマートプラットフォーム」として機能するスマートプロジェクト
 上記の「スマートプラットフォーム」、「スマート持ち株会社」および「スマート事業会社」の3層構造は、財団理研、理化学興業、事業会社の3層構造に対応するものであり、「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムを日本に移植するために必要なものと言えます。私が代表を務める一般社団法人スマートプロジェクト(http://www.smartproject.jp/)は、こうした3層構造の下での「スマートプラットフォーム」として機能することを目指しています。

オバマ大統領は、天然ガス重視派のモニッツ博士をエネルギー省長官に任命

2013-03-21 06:44:24 | Weblog
 オバマ大統領は3月4日、エネルギー省(DOE)長官に物理学者でマサチューセッツ工科大学(MIT)教授のアーネスト・モニツ博士を任命しました。モニツ博士は1973年から同大学で教鞭を執る傍ら、クリントン政権でDOE次官、オバマ政権1期目で大統領府科学技術政策室アドバイザーを務めました。同氏は原子物理学とエネルギー工学を専門とし、再生可能エネルギー(RE)、燃料効率、炭素処理など800近い研究プロジェクトに携ってきたエネルギーのエキスパートです。
 米国のエネルギー政策に大きな影響を与えているシェールガスの採掘に関しては、水圧破砕法(フラッキング)による地下水汚染や地震誘発の可能性が指摘されていますが、モニツ博士は天然ガスの接触的な活用を提言してきた人物です。このことから、エンバイロンメント・アメリカをはじめとする環境保護団体から政権の人選に対して批判の声が上がっています。
 いずれにしても、オバマ大統領が天然ガス重視派のモニッツ博士をエネルギー省長官に任命したことは、今後の米国のエネルギー政策が「シェールガス革命」を活用した天然ガス重視に移行することを象徴しています。

スマートイノベーション第6回;「スマートプラットフォームを構築せよ!」

2013-03-15 06:33:48 | Weblog
 スマートグリッド、スマートコミュニティに関する新産業の創生やイノベーション(=スマートイノベーション)の6回目として、1.シリコンバレーの秘訣は、新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラ 、2.「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でのプロジェクト推進を提案、3.従来のスマートグリッドの推進における“難点”とスマートプロジェクト 、について解説します。

 全文は以下の通りです。ご関心があれば、お読みください。


●シリコンバレーの秘訣は、新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラ

 今やICTとエネルギーの統合した“スマートバレー”へと変貌しているシリコンバレーは、そのネットワークの中心に位置し続け、競争力を低下させるどころか、向上させてきました。なぜ、シリコンバレーがネットワークの中心であり続けられるのか。今までの連載でその理由についてご紹介してきましたが、一言でいうと、シリコンバレーの秘訣は新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラが整っていることにあります。
 かつて商業化された技術は、必ずしもシリコンバレーで発明されたものではありません。トランジスタはベル研究所、インターネットの原型はアメリカの国防省が発明しました。これらの技術がシリコンバレーで花開いたのは、商業化のスピードとインフラの故です。商業化のスピードが速いのは、シリコンバレーが技術の革新に即応できる柔軟性を備えているからにほかなりません。2008年9月のリーマンショック、それ以降の金融危機で深刻な打撃を受けたアメリカ経済が再生しつつある起点はシリコンバレーですが、それはシリコンバレーがそのような柔軟性を保有し、10年以降の世界的なスマートグリッドの進展に応じて、いち早く “スマートバレー”へと変貌しているのです。

●「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でのプロジェクト推進を提案
 こうしたシリコンバレーのダイナミズムを日本においても形成するため、新たな技術を商業化するスピードとそのためのインフラとして「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でスマートグリッド関連のプロジェクトを推進することを提案したいと思います。
 このうち「スマートプラットフォーム」は、1990年代後半のIT革命勃興時の「スマートバレー公社」に相当するものです。IT革命勃興時においては、シリコンバレーにおいて誕生した「スマートバレー公社」(ジョン・ヤング会長(元ヒューレット・パッカードCEO)、ビル・ミラー副会長(スタンフォード大学教授)、ハリー・サール社長(起業家))がインターネットの民生利用のパイロット&ファシリテーターとして機能しました。「スマートバレー公社」は非営利の民間会社として認められた簡素で柔軟な組織体であり、数名の事務局で構成されていました。
 実際の活動は、当時の「現在利用可能な最善の技術」(BAT;Best Available Technology)であるダイアルアップ技術を活用した「コマースネット」(インターネットを活用した商取引)、「スマートスクール」(インターネットを活用した教育)、「テレコミューティング」(インターネットによるテレワークの促進)などのプロジェクトをコンソーシアム方式で推進することで遂行されました。たとえて言えば、インターネットのネットワーク環境として光ファイバーや無線ブロードバンドが整備されたから革命が起こったわけではありません。ダイアルアップの下でもメール送受信、ホームページ閲覧、電子商取引、テレコミューティング、遠隔教育などができることを実証して膨大な数のユーザに使用させ、それにより膨大な需要を創出して需要と供給との好循環のサイクルを作り上げ、その上で速度が遅いので何とか早くしてほしいとのユーザの切実なウォンツに基づいて、ADSL、光ファイバーや無線ブロードバンドへとネットワーク環境をグレードアップしてきたから、インターネットという変革が「革命」になったのです。
 「ダイアルアップ→ADSL→光ファイバーや無線ブロードバンド」という発展パターンであって、その逆ではありません。詳細は「スマートプロジェクトはST革命のパイロット&ファシリテーター」および「スマートプロジェクトはソーシャルエンジニアリングを重視します」(http://www.smartproject.jp/about)を参照してください。

●従来のスマートグリッドの推進における“難点”とスマートプロジェクト
 従来のスマートグリッドの推進は、いきなり光ファイバーや無線ブロードバンドに相当する段階に行こうとして、国が指定する4つの地域において、技術開発やそのための実証事業だけをリニアに推進しているところに問題がありました。
 スマートグリッドにおいても、インターネットによる「サイバーワールド」での変革力と相まって、ユーザそれぞれが主体となり、それをサポートするアプリケーションが提供されて、HEMSやBEMSなどにより構築されるスマートネットワークそのものが相乗効果によって付加価値を付けていって需要が指数関数的に拡大する構図を構築することが必要です。
 また、日本には技術者と市場をつなぐプロデューサのような存在が少ないことから、大学やベンチャーに眠っている技術を商業化まで引き上げることのできるプロデューサ人材の育成も行うことも必要です。
 私が代表を務める一般社団法人スマートプロジェクトは、こうした“難点”を克服するため、「スマートプラットフォーム」と「スマート会社」の構造でのプロジェクト推進を提案するとともに、栃木県足利市における「足利市民総発電所構想」(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/souhatsuden.html)へのサポートなどの具体的な事業を展開して、その実践に努めています。
 次回は、「スマート会社」の在り方について解説してみたいと思います。

スマートイノベーション;日本のハンディキャップは「頭脳循環」

2013-03-11 00:16:50 | Weblog
 スマートグリッド、スマートコミュニティに関する新産業の創生やイノベーション(=スマートイノベーション)の5回目として、1.最新の経済地理学が教える産業競争力の決定要因 、2.「頭脳循環」によるシリコンバレーと強力な連携がポイント、3.ハンディキャップ”を抱える日本はどう対処すべきか 、です。
 全文は以下の通りです。ご関心があれば、お読みください。


●最新の経済地理学が教える産業競争力の決定要因

 アナリー・サクセニアン著『現代の二都物語』は、IT産業でのシリコンバレーの興隆とボストン128号線地域の(相対的)没落を分析し「ソーシャルキャピタル」の重要性を指摘しましたが、その後著した『最新・経済系地理学』においては、IT分野で、中国、インド、台湾、イスラエルがせいぜい10年の間になぜ驚異的な成長を遂げたのかを綿密な調査によって明らかにしています。
 原題は「The New Argonauts」。これらの地域の起業家を、金羊毛を求めて冒険の旅に船出したギリシャ神話の「アルゴ号遠征隊員」(The Argonauts)になぞらえています。その分析は、中国、インド、台湾、イスラエルと異なってなぜ日本における起業が低迷しているのか、従来の国際経済学の学説が説くところとは異なった最新の産業競争力の決定要因を知る大きな手掛かりになります。


●「頭脳循環」によるシリコンバレーと強力な連携がポイント
 『最新・経済系地理学』においても、サクセニアンが指摘している結論は単純明快です。いま、中国、インド、台湾、イスラエルなどの経済がダイナミックに発展していますが、それはかつてシリコンバレー流出していった人材が、2000年以降母国に戻って活躍しはじめたからこそ実現されたというのがその結論です。「頭脳流出」から「頭脳循環」の時代に入って新しいパラダイムが生まれたというのがサクセニアンの分析です。
 シリコンバレーからの帰国組みは、母国に戻ってもシリコンバレーとのパイプを断ち切りませんでした。彼らは帰郷してのち母国で起業しましたが、1980年代の日本企業のようにアメリカ企業と真っ向から勝負しようとはしませんでした。特定の分野に専門特化して、シリコンバレーで発展した水平分業の一翼を担うことを選んだのです。例えば、台湾に戻った技術者立ち上げた企業は、アメリカ企業が設計した最先端の電子機器を素早く製造することに特化しました。
 このように専門特化によって、シリコンバレーの企業との補完的な関係を築いている点は、中国、インド、イスラエルに戻った技術者たちの起業も同じです。彼らは、シリコンバレー流のオープンな産業システムを母国で広げたのです。見方を変えれば、シリコンバレーで発展したネットワーク型の水平分業体制が、アメリカの国境を越えて広がったと言えます。
 中国を例に取れば、と小平以降の改革路線が今日の経済発展への道を開いたことはよく知られていますが、これだけが成長の要因であったわけではありません。背後には、香港を中継基地とした台湾からの投資があり、さらにその背後には、シリコンバレーの経済や技術とのつながりがありました。すなわち、シリコンバレーと強力な連携こそが、上海や北京のハイテク産業拠点を発展させた最大の駆動力なのです。
現在中国やインドなどの新興国に移りつつあるのは数多くの技術者を必要とする応用技術の領域ですが、GEがインドで開発した心電図検査セットのように、新興国で製品開発をして先進国市場へと投入する「リバース・イノベーション」と呼ばれるものも増えています。


●“ハンディキャップ”を抱える日本はどう対処すべきか
 バンガロール(インド)、北京・上海(中国)、台北(台湾)、テルアビブ(イスラエル)などと産業・ビジネスネットワークを構築し、ネットワークのシナジー効果により、それぞれの地域の競争力を上昇させてきたのです。従来の国際経済学の学説では、産業の競争力は貿易の増加や多国籍企業の活動範囲の拡大によって向上すると説かれていますが、サクセニアンの『最新・経済地理学』は、このような「頭脳循環」に支えられた産業・ビジネスネットワークの存在が産業の競争力を決める決定要因であるという新しい理論を提示しています。
 日本には、このような「頭脳循環」によるシリコンバレーと強力な連携は存在しません。IT分野から環境エネルギー分野にもまたがったスマート分野において、日本のダイナミズムをいかに形成し、発展していくのかが問われています。次回の連載以降では、“ハンディキャップ”を抱えた日本はどう対処すべきかついてさらに深く考察することとしたいと思います。

スマートプロジェクトと世界最大の需要応答企業EnerNOCとのビジネス連携について

2013-03-06 06:39:23 | Weblog
 先週、東京にて開催された世界最大級のスマートグリッド展「国際スマートグリッドEXPO」出席のために来日したEnerNOC(http://www.enernoc.com/)のMr.Brewster(President&Co-founder)等とスマートプロジェクト代表・加藤は、セミナー・セッション「デマンドレスポンス最前線」において日本IBMとともに講演するとともに、セミナー前後に両組織の連携の在り方について協議しました。
 EnerNOCは日本への進出を図るとともに、ビジネスモデルを「需要応答」(EnerNOCの需要応答のビジネスモデルに関しては、参考を参照)から「エネルギー・マネージメント」、「蓄電や再生可能エネルギーとの統合」さらには「スマートコミュニティ」へと拡大して展開しようとしており、今後連携を具体化させていくことになりました。

 
(参考) 世界最大の需要応答企業であるEnerNOCのビジネスモデル <各種情報に基づき、加藤が取りまとめたもの>

<エナーノックは1万3,500事業者を対象>
 アメリカでは、「アグリゲーター」(需要応答プロバイダー)と呼ばれる事業者が急成長していますが、エナーノック(EnerNOC)は、業務用・産業用電力顧客を対象とするプロバイダーで、アメリカのみならず、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどでもサービスを提供しており、対象とする事業者は合計1万,3500事業者に上っています。需要応答容量は、8.6ギガワット(GW)<出力1GW原発の8.6基分に相当>にも上ります(2013年2月時点)。
 世界最大の需要応答企業と言えますが、アメリカでは、業務用・産業用電力顧客4,500社、8,000施設、6.65ギガワット(GW)<出力1GW原発の6.65基分に相当>の需要応答容量を管理し、取引市場等を通じて電力会社と取引しています(2011年6月時点)。

<「ネットワーク運用センター」で24時間電力需給を監視>
 エナーノックは、契約した電力需要家のスマートメーターに同社の制御ボックスをつないで、1~5分間隔で需要家の電力消費情報を収集しており、ボストンやサンフランシスコなどにある「ネットワーク運用センター」(NOC;Network Operation Center)で電力の需給動向を24時間監視しています。
 そして、発電会社が電力市場における必要電力供給量を調達できないおそれが生じた場合、エナーノックは発電会社から発注を受け、同社と契約している電力需要家(オフィスビルと工場)に必要な電力抑制量を割り振り、電力消費抑制を要請します。
 例えば、発電会社から翌日の午後1時から午後4時のピーク時の間、何メガワットの需要を抑制してほしいという依頼が来た場合、エナーノックは契約している電力需要家に対して、自動制御または電話、ファックス、Eメールなどの手動により節電要請を出します。前者は、契約先との事前の合意により制御可能な機器により行うものです。
 発電会社は、一定期間の需要抑制に対してエナーノックにサービス対価を支払い、エナーノックはその対価から自社の利益を差し引いて、その残りを電力需要家に分配します。

<節電枠を達成できる需要家ポートフォリオの構築がノウハウ>
 要請された何メガワットの節電枠を達成できる需要家のポートフォリオをいかに構築するか(ポートフォリオ・マネージメント)がエナーノックにとっての貴重なノウハウです。
 そのため、需要家との契約締結前に試験的に電力消費抑制の要請を行い、実際のところ各需要家がどの程度節電できるかを正確に見極めるなど対応を行っています。
この場合、需要家ごとにきめ細かく電力消費抑制量を積み上げることとしており、例えば、製造工場やエネルギー供給事業者などで操業を急に止められない事業者であっても、工場の空調温度を下げるといった形で電力消費抑制量を確保しています。

「電力システム改革専門委員会」の画期的な提言をどう生かすか

2013-03-04 06:45:16 | Weblog
「日本を変えるスマート革命」:その19~「電力システム改革専門委員会」の画期的な提言をどう生かすか~

スマートプロジェクト代表&エコポイント提唱者
加 藤 敏 春

 
●日本の電力システム始まって以来の大改革が始まる!
2013年2月8日、総合エネルギー調査会「電力システム改革専門委員会」(委員長、東京大学大学院の伊藤元重教授)は、2015年の広域系統運用機関の設立と新規制組織への移行、16年の電力小売りの完全自由化、18年から20年にかけての発送電の分離などを盛り込んだ電力システム改革に関する提言を取りまとめました。
茂木経済産業大臣は「改革案は大胆に、スケジュールは現実的に」と改革に臨む基本姿勢を明らかにしていますが、これは、戦後の9電力体制の発足時を超える日本の電力システム始まって以来の大改革であり、13年3月に国会に提出される電気事業法改正案の中で工程表のアウトラインも明示される予定です。
いち早く12年5月には、東京電力の総合特別事業計画が政府により承認され、東京電力への資本注入により事実上の国有化が行われるとともに、その下で、13年4月から燃料火力、送配電、小売り部門におけるカンパニー制の導入などが行われることになっています。これまでの発送電の一体運営を一部見直す形となり、日本の電力システム大改革の先駆けとも言えるものです。
まさに「電力大改革時代」の幕が開いたと言えますが、電力システムの大改革は電力産業だけにとどまらず、ガス、石油などのエネルギー関連産業はもとより、情報通信産業、自動車産業、家電産業などにも大きなインパクトを及ぼすものです。主要電力11社(10電力+J・POWER)の売上高の合計だけで17兆2000億円(2011年3月末期)、ガス、石油などのエネルギー産業、情報通信、自動車、家電などの関連産業の市場を含めると、数十兆円に達するという市場規模を考えただけでも、日本経済に多大なインパクトを与えるものであることがわかります。

●「電力大改革時代」に必要なのは「プランA」ではなく「プランB」
スマートグリッド(賢い、洗練された電力網)の「プランB」とは、こうした「電力大改革時代」のあるべき電力網を実現するアプローチのことで、従来の「プランA」とはまったく異なった方法でスマートグリッドを推進し、3・11(東日本大震災と福島第一原発事故)後の新たな電力需給状況に対して根本的な解決を図るものです。
スマートグリッドは、ICT(情報通信技術)に支えられた賢い、洗練された電力のことですが、これまでのスマートグリッドの推進は、スマートグリッドの技術面だけにフォーカスし、5年間の技術実証、その成果の6年目以降の実用化というアプローチでした。しかも、その対象地域は、横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市それぞれの都市のうちの一区画を中心としたものに過ぎず、「点」だけをおさえるアプローチでした。私は、これをスマートグリッドの「プランA」と称していますが、これでは「電力大改革時代」の課題に対応することは到底できません。
環境活動家として世界的に有名なレスター・ブラウンは、地球温暖化対策に関して従来のアプローチ=「プランA」では根本的な解決は図れないとして「プランB」という考え方を提案しましたが、それと同様、私たちが目指すべきは、日本全体を「面」として捉え、新たな電力需給状況に対して根本的な解決を図る「プランB」なのです。

●「プランA」ではなく「プランB」が必要とされる背景事情
 3・11以後東日本大震災と福島第一原発事故後の電力需給のひっ迫化は、深刻度を増しています。13年2月末現在、国内にある原発は大飯3号機と4号機を除いて稼動を停止し、昨年大いに警鐘を鳴らされたイランをはじめとする石油情勢の緊迫化も近いという風に言われています。
 深刻化する原発危機と石油危機を乗り切る対策は、短期的には、エネルギー需要の3分の2を占める家庭やオフィスの省エネ・節電貢献度に応じてインセンティブ(奨励金)を付与する「エコポイント」を活用して、家庭やオフィスをも巻き込んだ省エネ・節電行動を社会全体に拡げていくことです。そして、中長期的には、省エネ・節電社会を構築し、エネルギーの需給構造を造り変えていかなければなりません。そのためには、「プランB」によるICT(情報通信技術)を取り入れた新しい電力網、スマートグリッドの整備と全国展開がカギを握ります。
エコポイントは、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の論点整理(11年12月20日)の中で、「需要家に電源の『選択肢』や省エネ・節電等の適切なインセンティブを与えることを通じて需要構造自体を変え、デマンドサイドから供給構造をも改革する方向を目指すべきである」と指摘されたことのうち、『省エネ・節電等の適切なインセンティブ』に当たります。
 3・11以前のスマートグリッドは、太陽光、風力などの再生可能エネルギー、蓄電池などを取り入れて、電力系統を安定させる技術的な手段の一つとして議論されているに過ぎませんでした。つまり、スマートグリッドはあくまでも供給側の課題解決に向けたもので、ユーザにはあまり関係のない話だったのです。
 しかし、3・11以後電力不足という緊急の課題が社会に降りかかり、全国レベルで電力需給の均衡が求められるようになりました。ここへきてスマートグリッドが、単なる供給側の課題やそれを解決する技術実証の話ではなく、家庭や企業などの需要側にも関係するものとして、さらに、いまの電力不足問題に根本から解決を与える「電力大改革時代」に対応したものとして、大きな注目を集めるようになりました。これが「プランA」ではなく「プランB」が必要とされる背景事情です。

心に残るメッセージ

2013-03-02 23:42:42 | Weblog
私の行動の真実をお知らせしましょう。
それは、この世には不幸も幸福もあり、ただあるのは、一つの状態と他の状態との比較にすぎないということです。
極めて大きな不幸を経験した者のみ、極めて大きな幸福を感じることができるのです。
生きることのいかに楽しいかを知るためには、一度死を思ってみることが必要です。
そして、人間の叡智はすべて、次の文章に尽きることを忘れないでください。

「待て、そして希望せよ!」(Attendrre et esperer)

<アンディ・デュマ著『モンテ・クリスト伯』より>

果報は寝て待て=果報は「練って」待て!