エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;欧州は再生可能エネルギー政策により経済成長と雇用増加を狙う)

2011-01-31 06:57:10 | Weblog
欧州の再生可能エネルギー政策は、経済成長と雇用増加を高める政策としての意義も有しています。09年6月EU委員会はそれに関する報告書を公表しました。再生可能エネルギー政策が欧州連合(EU)の経済成長と雇用に及ぼす影響についてEU委員会が行った調査(Employ-RES)によると、20年までにエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合を20%に引き上げるという目標が達成されれば、再生可能エネルギー部門において約280万人の雇用創出と、全体でGDPの約1.1%に相当する付加価値の増加が期待できるとしています。
 報告書によれば、05年の再生可能エネルギー部門は140万人の雇用を抱え、粗付加価値額は580億ユーロでした。同部門の貢献度は、加盟国によって相当な開きがありますが、雇用の面で最も重要なのは、バイオマス、風力、水力発電となっています。今後は、特に04年と07年にEUに加わった新規加盟国において、再生可能エネルギー部門での雇用が大幅に増えることが期待されています。
 報告書は、再生可能エネルギーに関する技術開発の必要性を強調しています。光起電力、洋上風力発電、太陽熱発電、第二世代バイオ燃料といった革新的な技術は、短期的に見て、より多くの資金的支援を必要としますが、20年に向けたEUの目標を達成するためのカギとなるのはまさにこうした技術であるとしています。報告書は「それが、中期的には、世界市場におけるEUの現在の競争力維持と、雇用とGDPの増大につながるのである」と結論付けています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;日本のスマートグリッド論の貧困)

2011-01-29 10:37:41 | Weblog
コロラド州ボールダーのスマートグリッドシティが暗礁に乗り上げているということを以前書きましたが、読売新聞の社説は、スマートグリッドの光と影について、論じています。ただ結論としては、光を強調しているだけで、影の克服については、何も触れていません。これは、現段階での日本のスマートグリッド論の貧困を表しています。
 読売新聞社説は、日本の実証事業4地域の総事業費が1266億円と見積もられていることを紹介していますが(これとて、コロラド州ボールダーのスマートグリッドシティと同様いずれ上昇する可能性もあります)、この事業費は「ユーザ」サイドからの見積もりではありません。しかも、この費用のねん出には、税金を起源とする国や自治体のお金、民間の投資資金が必要です。このお金は、「ユーザ」にとって負担ゼロのお金ではありません。むしろ、税金あるいは料金という形で「ユーザ」に跳ね返ってくるお金なのです。
 したがって、そこに必要となるのは、「ユーザ」の負担をできる限りなく少なくするため、「ムーアの法則」(半導体の性能対価格比が18カ月ごとに半減するという現象が長期にわたって継続するという経験則)と「メトカ―フの法則」(ネットワークの価値は参加するユーザの数の2乗に比例して相乗効果で高まっていくという経験則)が作用する環境を創造することによる「真の革命」の演出、その下での「ユーザ」の負担を上回る便益の提供であり、それを可能にするための事業者の「ビジネスモデル」なのです。今、日本のスマートグリッド論には、「ユーザ」の姿がまったく登場しません。また、アメリカのIT系企業、電気自動車系企業等とは異なり、残念ながら、本気で「ビジネスモデル」を構築しようとしている事業者も、ほとんどいない状況です。
もちろん、化石燃料依存からの脱出、再生可能エネルギーの導入、原子力とのベストミックス、地球温暖化防止などの、公益的な目的の達成は必要です。しかし、「ユーザ」や「ビジネスモデル」不在では、こうした公益目的の達成は不可能であり、ましてや日本で「スマートグリッド革命」を起こすことはできません。
「スマートグリッド革命」は、IT(情報通信技術)とET(エネルギー技術・環境技術)が融合したST(スマートテクノロジー)による「ST革命」です。では、「ST革命」を推進する上で最も必要なことは何でしょうか?私が代表を務める一般社団法人スマートプロジェクトは、ユーザ指向のボトムアップのイノベーションの創生、テクニカルエンジニアリングよりも重要なソーシャルエンジニアリングの実行等であると考えます。IT革命が「革命」と言える現象になったのは、この条件が初期段階で整備され、「ユーザ」と「サービスプロバイダー」との相互作用やそれに伴う「ビジネスモデル」が構築され、「ユーザ」と「サービスプロバイダー」のウィン・ウィンの状況、各種の「サービスプロバイダー」間の競争と協調のダイナミズムが生まれたからです。そして、膨大な数のユーザがネットワークに容易に参加できる状況が生まれたことにより、「ムーアの法則」と「ムーアの法則」と「メトカ―フの法則」が作用する環境が産み出されたのがIT革命の実相です。
IT革命勃興時においては、シリコンバレーにおいて誕生した「スマートバレー公社」(ジョン・ヤング会長(元ヒューレット・パッカードCEO)、ビル・ミラー副会長(スタンフォード大学教授)、ハリー・サール社長(起業家))がインターネットの民生利用のパイロット&ファシリテーターとして機能し、条件を整えました。「スマートバレー公社」は非営利の民間会社として認められた簡素で柔軟な組織体であり、数名の事務局で構成されていました。実際の活動は、「コマースネット」(インターネットを活用した商取引)、「スマートスクール」(インターネットを活用した教育)、「テレコミューティング」(インターネットによるテレコミューティングの促進)などのプロジェクトをコンソーシアム方式で推進することで遂行されました。
いま時代は、IT革命からそれを包摂する「ST革命」への移行という大変革期にあります。一般社団法人スマートプロジェクトは、「ST革命」のパイロット&ファシリテーターとして、IT革命時の「スマートバレー公社」に相当する機能を果たすことを使命としています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;太陽光発電ビジネスには世界レベルの構想力が必要)

2011-01-28 06:49:14 | Weblog
太陽光発電の潜在需要は地球規模にあり、日本の1億人市場ではなく、世界の市場を見据えた構想力が問われています。太陽光発電を切実に必要としているのは、CO2排出量削減の手段に使おうとする日本などよりむしろ、インドやアフリカなどの新興国です。発電所や送電線網の整備が追いつかず、不便な暮らしを強いられてきた人々にとって、自宅や集落に設置すれば電力の恩恵を受けられる太陽光発電は魅力的です。家庭の電源、集落の灌漑(かんがい)用水を引くポンプの電源などとして急速に普及する可能性があります。逆に、この構想力の実現に成功すれば、太陽光発電の発電コストの大幅な低下が見込まれます。
例えば、グラミン銀行は、バングラデシュの貧困層向けの低金利小額融資(マイクロファイナンス)で注目を集めていますが、そのグループ企業のグラミン・シャクティはグラミン銀行と同様、営利を追求しない「社会的企業」で、再生可能エネルギーによる農村部の電化を推進しています。主力商品はソーラー・ホーム・システムと呼ばれる小規模の家庭用太陽光発電システムです。バングラデシュの農村部において、テレビに加えて携帯電話が急速に普及していることに伴い、それらに対する電力を供給するためシステムとして販売が拡大しています。
こうした観点から日本企業の戦略を見ると、日本メーカーは主に先進国、新興国をターゲットにしている企業が大半ですが、異色なのは、新興国市場の開拓を宣言している昭和シェル石油です。同社は、株主であるサウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコと組んで、12年から中東やアフリカなどで1000〜2000キロワット級の太陽光の小規模分散型電源を設置し、大規模電源のない地方都市や集落で電力を販売する事業に乗り出す計画です。
 昭和シェル石油・サウジアラムコ連合による太陽光発電事業は、「BOP」(ベース・オブ・ピラミッド=ピラミッドの底辺)ビジネスへ発展する可能性も秘めています。仮にアフリカの低所得国でも事業が軌道にのれば、インドや東南アジアなど世界全域で通用する道が開けます。60億人の世界人口のうち1日2ドル以下で生活するBOPは40億人以上(うち、アジアが30億人以上)ですが、これまで市場経済から取り残されていた40億人が、実は市場として十分成立するという認識が最近高まっています(最近は、「ネクスト・ボリュームゾーン」、「ポスト新興市場」ということで論調が展開されています)。USAID(アメリカ国際開発庁)やUNEP(国連開発計画)などによる支援プログラムを活用して、インドで1日分のシャンプーや食品を低価格で販売するビジネスで急成長する英ユニリーバ系のヒンダスタン・リーバ、バングラデシュで低価格栄養食品販売に乗り出した仏ダノン、農村向けに煙のでない低価格キッチンストーブの生産・販売を始めたオランダ・フィリップスなどが注目される動きです。日本勢では、オリセットネット(蚊帳)によるマラリア防止に取り組む住友化学などがあります。
もちろん、BOPビジネスの成功のためには、それに適したビジネスモデルの開発が必要不可欠です。太陽光パネルの相当のコストダウンが必要ですし、メンテナンスを含めた販売・サービス機能を充実も必要です。さらに、ODA(政府開発援助)を推進する政府、国際機関、NPO・NGO、社会的企業等との連携を図ることで円滑なビジネス展開を行うことも必要です。しかし、太陽光発電の世界市場の状況をみると、北米市場が縮小気味の中、中国などの新興国では現地メーカーの猛烈な追い上げを受けて日本企業の世界戦略を取り巻く環境は不透明な状況です。世界の市場を獲得するハ-ドルは高いことは事実ですが、いったん太陽光発電でBOPビジネスのビジネスモデルの構築に成功した企業が膨大な需要をつかみ、”破壊的イノベーション”の担い手となって世界市場におけるドミナント企業に成長する勝機は十分あります。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;「ドット・オルグ」により再生可能エネルギー等を支援)

2011-01-25 00:24:10 | Weblog
シリコンバレーでは、IT企業が「ドット・オルグ」という非営利組織を設立して、従来のフィランソロピー活動への支援ではなく、地球環境、再生可能エネルギー、医療などの分野における社会起業家に対する投資を行うという動きが顕著になっています。この典型は、グーグル財団のグーグル・ドット・オルグとイーベイのオミディア・ネットワークです。
このうちグーグル財団は、2005年にグーグルが設立したNPOで、9000万ドルの資金でスタートしました。設立当初は発明コンテスト(Innovate or Die)、大学の研究所に対する寄付などを行っていましたが、すぐさま方向転換して、営利組織に投資を行うグーグル・ドット・オルグをスタートさせました。グーグル・ドット・オルグは、非営利組織ながら、新興企業へ投資を行い、そこで得られたリターンはまたグーグル・ドット・オルグへ還元されるという仕組みです。グーグルがこのグーグル・ドット・オルグにつぎ込んでいる資金は、グーグル株300万株。一株684ドルとして換算すると20億5200万ドルです。これに加えて、グーグル自体の年間利益の1%もチャリティに回されています。
グーグル・ドット・オルグの投資先は、再生可能エネルギー、地球環境、医療、開発・貧困問題などの分野における社会起業家です。2003年以来元副大統領のアル・ゴアがアドバイザーに就任していますが、最近は特に地球環境問題に力を入れており、再生可能エネルギー分野に投資することを発表しています。すでに再生可能エネルギー関連の新興企業数社に投資を行っていますが、さらに風力、太陽光、地熱などによる発電に注力し、数年後にはそうした再生可能エネルギーが石炭な石油などによる電力よりも安く供給されることになることを目指しています。
このグーグルの活動を同様の試みを行っているのがインターネット・オークションのイーベイです。創業者であるピーエール・オミディアの個人資産によって財団であるオミディア・ネットワークを設立して、オープン・イノベーションを促進するという理念の下に社会起業家に対して投資を行っています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;韓国スマートグリッド法の制定と210億円のESCO融資基金)

2011-01-24 00:00:43 | Weblog
韓国政府が9月に発表した「サービス部門の外国投資活性化策」は、知識サービス、観光・レジャー、物流・インフラ・流通、金融・教育・医療の4分野への投資として、2015年までに600億ドルを目指しています。このうち、知識サービスでは、スマートグリッド済州(チェジュ)実証団地事業などに、技術のあるグローバル企業の誘致と参入拡大を目指し、現金支援などのインセンティブを強化します。
特に、遠隔検針インフラ、電力網管制システム、電力網測定システムなどの投資を重点誘致します。また、スマートグリッド分野の投資環境改善などを目的に「知能型電力網構築および支援特別法」を制定することとしています。
また、省エネ専門事業(ESCO:Energy Service Company)に対しては、設備投資の融資予算を10年の1,350億ウォン(1ウォン=0.07円)から、11年は3,000億ウォンまで増やし、3,000億ウォン規模のESCO融資基金を新設します。また、企業当たり500億ウォン、事業当たり150億ウォンまでの融資支援限度を廃止し、貸出資金の償還期間も現行の10年から15年に延長します。
韓国政府は、600億ドルの投資は15万人の雇用創出効果があると試算しています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ; 韓国政府の野心的な電気自動車普及促進策)

2011-01-23 07:10:49 | Weblog
韓国政府は、2020年までに、乗用車市場に占める電気自動車のシェアを20%に拡大して電気自動車保有台数を100万台にし、減税や充電器普及なども盛り込んだ電気自動車普及促進策を推進しています。その概要は次のとおりです。

(1)電気自動車の販売シェアを15年に国内小型乗用車市場の10%、20年に国内乗用車市場全体の20%に拡大し、20年までに保有台数100万台の電気自動車、220万台の充電器を普及させる。そのために次の施策を行う。
○12年までに公共機関の電気自動車購入を促進するために、同クラスのガソリン車との価格差の50%程度の購入補助金(限度額は1台当たり2,000万ウォン、1ウォン=約0.07円)を支給する。
○自動車取得税・登録税などについて税制上の恩典を付与することを検討し、温室効果ガス排出量を基準にボーナスを授与する。
○公共機関の環境車購入義務対象に電気自動車を含め、環境車の購入義務比率を徐々に高めていく。また、自動車メーカーの環境車販売義務比率も高めることを検討する。

(2)充電インフラ構築のため、電気自動車と充電器の性能を評価する官民共同の実証推進体系を構築する。その上で次の施策を行う。
○11年上半期までに充電インフラ構築ロードマップを策定し、20年までに充電器220万台設置のための支援を行う。
○12年までは国・地方自治体が設置する充電施設の予算を支援し、13年以降は民間が設置する充電施設に多様な支援を行う。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;注目されるヒートポンプとLEDの動き)

2011-01-22 00:22:40 | Weblog
HEMS・BEMSに関しては、エコキュート(空気熱ヒートポンプ給湯器)が急速に普及していることにも注目することが必要です。エコキュートは、ヒートポンプ技術で消費電力以上の熱エネルギーが利用できるもので、オール電化住宅向けなどで出荷量を伸ばしてきています。09年10月末、家庭用の給湯システムであるエコキュートの累計出荷台数が202万7千台となり、01年の発売開始以来8年間で200万台を突破しました。価格が1台当たり数十万円で済むということも大きな要因です。
200万台超によるCO2削減効果は、ガス瞬間式、石油瞬間式、電気温水器など従来型の給湯器を使用する場合に比べて、年間約140万トンになると試算されています。また、スマートグリッドでは、需給調整を需要側にある機器によっても行いますが、その機器の候補としては、プラグインハイブリッド車や電気自動車のほか、エコキュートがあります。エコキュートの利点は、電気を熱(お湯)の形態で貯蔵できることですが、現在は、深夜電力でお湯を沸かすために使われているにすぎません。
今後は、太陽光パネルで発電した電気が余った昼間にエコキュートを動かして熱(お湯)で貯めれば、別の時間帯には電気を使わずに済みます。電気事業連合会は、20年に1000万台のエコキュートを導入することを目標としていますので、エコキュート1台当たりの調整能力が1キロワットだとすると、1000万キロワット分の調整が可能になります。
ただし、エネルギーとはいえヒートポンプですから、発電はできないため冷暖房と給湯に限ります。今後は、ビル、工場、商店、病院などの冷暖房・給湯にもヒートポンプ技術を活用した高効率熱供給システムの商品開発を行っていく方向です。東京ガスと日立アプライアンスは、都市ガスを使った吸収ヒートポンプシステムの採用によって、冷房時に捨てていた廃熱を暖房に有効利用するシステムを開発しています。冷房と暖房を同時に実施するデータセンターや商業施設向けに販売します。冷房と暖房を同時にするデータセンターや商業施設では、これまでは冷房廃熱を冷却塔で捨てていましたが、吸収ヒートポンプによって廃熱を回収し、暖房用の温水をつくるのに活用することとしたものです。通年使用でCO2排出量削減率は34%、冷暖房同時実施時は66%との効果を発揮します。
次に注目される動きはLED(発光ダイオード)です。1879年にトーマス・エジソンが発明した白熱電球は、130年間にわたって人類の照明を支えてきましたが、この照明という分野においても、白色LEDという新たな半導体によって革新が起ころうとしています。LEDは自ら光る半導体であり、赤色、緑色はかなり早い時期に実用化され、今は南カリフォルニア大学の中村修二教授が青色LEDを開発したことにより原色がそろい、はじめて白色LEDの量産が可能となりました。LEDは電球に比べて15倍以上の価格ですが、寿命は白熱電球の40倍です。したがって、10年以上は取り換えなくてもよく、消費電力は2分の1から3分の1に減ります。LED照明のメリットとしては、蛍光灯に含まれる水銀を含まないということもあります。
 海外メーカーではフィリップスが積極的なビジネス戦略を展開していますが、国内では、シャープがLED照明事業に本格参入しており、同社は、LEDを液晶、太陽電池に次ぐ第3の主力事業に育成する方針です。三菱化学、日立電線、同和鉱業などのほか、国内半導体大手の東芝やNEC、日本の照明最大手のパナソニック電工なども参入しています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;韓国スマートグリッドの全体的動向)

2011-01-19 06:27:31 | Weblog
韓国知識経済部は2030年までにスマートグリッド構築を推進する計画を立て、その具体化のための活動を推進しています。その活動は、韓国電力によるポータルサイトの運営と済州島における実証の2つよりなっています。
前者は、韓国電力が09年9月に運営を開始したもので、オンラインで15分ごとの電気使用量や電気料金などをリアルタイムで確認できるようになっています。高圧電力を利用する約14万世帯が対象。10年1月から低圧電力利用世帯のうち、遠隔検針が可能な5万8000世帯に拡大しています。20年までにすべての加入者が対象になる予定です。
後者の済州島における実証については、知識経済部が済州特別自治道でスマートグリッド実証団地6000世帯を09年9月に着工し、13年末完成予定です。韓国政府が事業費の50%である580億ウォン(約50億円)を支援しています。実証事業としては、スマートメーターを使用した需要応答、電気自動車と急速充電器・家庭の充電器とのV2G、団地の風力発電・太陽光発電と系統との安定性の確保や余剰電力の融通を行う「スマートリニューアブルシステム」などです。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;IT革命の負の側面)

2011-01-18 06:43:19 | Weblog
「スマートグリッド革命」の駆動力には、IT革命に対する反省も含まれています。現在、インターネットの利用が拡大したために、エネルギー消費量やCO2の排出量が増加したり、電力系統にかかる負荷が増大しています。サイバースペースへの移行が進むと、CO2排出量の増加や電力消費が増加するという現象が起こっているのです。
たとえば、データセンターから排出されるCO2は、全世界のCO2排出量の2%を占め、世界中の航空業界からの排出量に相当しています。よく引き合いに出される比喩に「Googleの検索エンジンを2回クリックすることにより、コーヒー一杯分のお湯を沸かすだけのエネルギーが消費される」というものがあります。データセンターにおける消費エネルギーの費用は、ハードウェア機器にかかる費用の8倍に上ります。また、インターネット利用に伴うエネルギー消費は、アメリカでは07年に7%と推計されていますが、20年には20%~25%に拡大すると試算されています。日本でも、経済産業省は50年には50%にもなると試算しています。
このように、今までのIT革命は人間の知的活動を発展させるものではあっても、地球環境に優しいものではありません。人間のすべての活動は知的活動のみならず一般の生活活動によっても構成されています。今のままでのインターネットの利用は、確かに革命的変化をもたらしたかもしれませんが、エネルギー消費やCO2排出量の増大という無視し得ない負の側面を有しています。
 現在「グリーンIT」の推進が政策的スローガンとして謳われていますが、ITを活用することで、プロセスのモニタリング(経過の観察)過程を改善し、より効率的な管理に役立てることのみならず(Green of ICT)、さらに大きな枠組みにおいて、全く新しい省エネルギービジネスモデルの構築とそのプロセスの設定にITを活用することを考える必要があります(Green by ICT)。 「グリーンIT」は、IT自体の省エネルギーを意味するだけでなく、ITを活用して経済社会の省エネルギー化を構造的に進めることだと捉えるべきです。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;生き残れる自動車メーカーはどこか)

2011-01-17 00:20:15 | Weblog
「スマートグリッド革命」はクリステンセンの「イノベーションのディレンマ」(Innovator's Dilenmma)を引き起こします。その中で、生き残れる自動車メーカーはどこになるのでしょうか。09年10月放映されたNHK番組『自動車革命』においては、あのトヨタでさえ、「21世紀において自分たちは時代が必要とする企業なのか」(豊田章夫社長)と自問自答し、苦悩する姿を映し出されました。
09年11月トヨタは、ガソリン車の自動車レースの最高峰であるフォーミュラ・ワン(F1)からの撤退を表明しました。直接的な撤退理由は企業収益上からの経費節減ですが、時代の変化を感じさせる出来事でした。さらに10年における全世界で1000万台にも及ぶプリウスのブレーキなどのリコール騒動は、急成長した組織のあり方や複雑化しすぎたガソリン自動車設計のあり方を浮き彫りにしました。
その中でトヨタと違った形で生き残り戦略を展開しているのが日産自動車です。日産自動車は10年12月に電気自動車「リーフ」を5万台発売し、12年には20万台に拡大する計画です。11年には中国市場にも投入します。日産自動車は、米エネルギー省(DOE)から支援を受けて、テネシー州の工場を改修してリーフとリチウムイオン電池の生産を行うほか、GridpointやIdaho National Laboratoryなどとともに、アリゾナ、カリフォルニア、オレゴン、テネシー、ワシントンの5州で電気自動車や充電インフラを構築しつつあります。これはアメリカ最大の電気自動車普及プロジェクトです。
日産自動車は電気自動車を情報インフラにすることも構想しています。電気自動車は2次電池の状態を常にモニターする必要があり、自動車とデータセンターの間で24時間通信する仕組みを構築することになるためです。常時通信するようになれば、例えば車載カメラの映像をデータセンターに収集し,他のユーザに提供することで,カーナビなどの利便性を高めるという応用例が考えられています。日産自動車はこうしたデータを世界的に集めて集約化する「グローバル・データセンター」をも構築しつつあります。今や電気自動車は、未来の移動手段としてだけでなく、低炭素経済社会や新エネルギー社会システムの実現手段として、スマートグリッド社会の一翼を担うことになります。
 また、日産自動車は、電気自動車の普及には自治体や国との連携が欠かせないとして,横浜市と「ヨコハマモビリティ “プロジェクトZERO"」(民間事業者が実施する急速充電器設置への補助、EV購入補助、公用車のEV導入など)を推進しています。また、「EVイニシアティブかながわ」に基づき14年度までに県内3000台EVと100基の急速充電器の普及を目標としている神奈川県とも提携しています。日産自動車は、こうした電気自動車の普及に向けた提携関係を30以上の国や都市と締結しています。