エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

スマートグリッドに電力会社を参加させる「ディカプリング政策」

2011-04-28 00:14:07 | Weblog
「スマートグリッドに電力会社は本当に参加してくるのか?」。スマートグリッドの推進は電力会社の売り上げを減少させるため、この問題はアメリカでも真剣に議論されています。解決策は、政府による「ディカプリング政策」です。
これは、スマートグリッドを推進するため、政府が電力会社の売り上げと利益をディカプリングするための規制上のインセンティブ、設備投資に対する減価償却の特例などの措置を講ずるというものです。この場合、キロワットアワー当たりだけではなく、キロワット当たりでインセンティブを付与する方式をとると、需要応答(Demand Response)や関連するスマートグリッドの活動を促進することができます。

需要応答は電力事業者・ユーザー・社会の「三方善し」を実現

2011-04-27 03:36:17 | Weblog
現状では、アメリカの電力会社の多くは固定料金制のみをユーザに提供しており、使用時間帯別の料金設定にはなっていません。しかし、米DOE(Department of Energy)が実施した調査では、スマートメーターの導入によりユーザが需要応答(Demand Response)できるようになると、電力使用量が10%程度削減されるというデータがあります。電力使用状況が「見える化」されれば、料金の安い夜間に洗濯をするといった具体的な行動も起こせるというわけです。加えて、エアコンの設定温度を電力網側から操作して適正に保つなど、ユーザが意識しなくても省エネが行えるといった「自動化」(DMS:Demand Side Management)の仕組みも可能とされています。
 また、各家庭の暮らし方に即した電力利用が実現されれば、時間帯ごとに料金設定を変えたカスタマイズ型の料金体系を設定するという「ダイナミック・プライシング」(Dynamic Pricing)も可能になります。また、利用の仕方を変えるだけでなく、たとえば太陽光発電を設置した家庭では、より買い取り価格の高い時間帯に余剰電力を増やすといった、電力を売るためのインセンティブも働くようになります。電力事業者側にも、よりスマートな電気の使い方を提案する新しいビジネス・チャンスが生まれることになります。
 これらの結果として、省エネルギーやCO2削減を意識したライフスタイルが定着すれば、ピーク電力のカット、環境負荷の低減という社会としての課題解決にもつながります。また、DMSに対応した家電製品への需要が高まれば、新しい市場の開拓が進み、産業面から見ても大きな需要創出効果が望めるでしょう。このように、スマートメーター等とそれによる需要応答(Demand Response)は、電力事業者、ユーザ、社会というすべてのステーク・ホルダーに対してメリットを提供する「三方善し」の仕組みなのです。

スマートメーター等の導入は電力の自由化につながるか

2011-04-26 07:20:49 | Weblog
スマートメーター等が各家庭に入り、電力使用量などの様々な情報がデータセンターへ蓄積され、さらに顧客情報の分析サービスが開始されるようになると、顧客情報は誰のものかという議論が出てきます。また、顧客情報は個人情報そのものですので、プライバシー保護の問題を解決するための明確なルール作りが必要となります。
また、電力の全面自由化への要請が強まることも考えられます。そもそも、日本において電力自由化が低圧・小容量の家庭を対象にしてこなかったのは、メーターコストが高く、社会全体で経済的なメリットがないことが理由の一つでしたが(東大横山教授)、そのような障害がなくなります。

激動の自動車業界は、戦略の機動的展開が生死を決める

2011-04-25 00:36:26 | Weblog
電気自動車という”破壊的イノベーション”に直面した自動車各社の戦略を整理してみたいと思います。
電気自動車に積極的な日産自動車やGMは、先行者利益を確保すべく、自社に有利なような電気自動車に関する標準化の推進、業界先駆者としてのポジションも確立などを目指していると考えられます。他方、中堅メーカーである三菱自動車や富士重工業は、自社の限られた経営資源を電気自動車集中投下することで生き残りを図ろうとしているのでしょう。2次電池メーカーの中国の比亜迪(BYD)は、必ずしもその主戦場を電気自動車という車両の世界だけに限定せず、PC業界におけるインテルのような基幹部品プレイヤーとして、業界の覇権を狙っていると見ることができます。
トヨタ自動車やホンダは、当面はプリウス、インサイトなどのハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー(pHEV)に集中し、電気自動車市場開拓には慎重な姿勢を見せていますが、こうした姿勢は、自社にとって現在の競争優位性を確保しながら、新しいビジネスモデルの構想・構築を慎重に見極めていると見ることができるのではないでしょうか。スズキもフォルクス・ワーゲンと資本提携し、環境技術の分野での協力を進めています。
激動の自動車業界においては、戦略の方向性をどのように見定めるか、状況の変化や進展に応じて、如何に機動的に戦略を転換するかが、生き残りのため必要不可欠となっています。

電気自動車での「Linux型」経営と「オープン・イノベーション」

2011-04-21 01:26:05 | Weblog
日本の電気自動車の世界では、「Linux型」経営と「オープン・イノベーション」のビジネスモデルが登場してきています。それは、電気自動車の普及を目指し、電気自動車の駆動システム、プラットフォームの技術開発・提供を行なうシムドライブです。09年に設立され、10年から活動を本格化させています。
シムドライブが目指すのは、慶應義塾大学の清水浩教授が開発した電気自動車技術に基づいた「SIM-Drive」(Shimizu In wheel Motor-Drive、シムドライブ)を搭載した電気自動車の普及です。清水教授はインホイールモーター型の電気自動車『エリーカ』などをすでに開発しています。
インホイールモーター型の電気自動車とは、通常の電気自動車がエンジンの代わりにモーターを1つ用いて自動車を動かすのに対して、車輪それぞれにモーターを持つ自動車です。通常の電気自動車と異なりモーターが車輪の部分にそれぞれついているため、エネルギー効率がおよそ2倍よく、同じ電池を使用するのであれば、2倍の性能となり、同じ電池、同じ動力性能であれば、2倍の航続距離になります。航続距離は300km、車両価格は、電池を除く車体価格を現行自動車並にすることが目標です。そして電池価格と10年間の電気料金の合計が10年間のガソリン代と同等になることを目指しています。
シムドライブのビジネスモデルは、「Linux型」経営と「オープン・イノベーション」「Linux型」です。シムドライブは、自らが電気自動車の製造や販売を行なうのではなく、電気自動車や電気自動車の部品を製造する企業と広く提携し、シムドライブの先進技術をオープンソースとして、そして世界標準として早急に普及させというものです。また、提供先企業からは製品価格の1%程度をパテント料として徴収し、年限を区切って無料にする予定です。このようなビジネスモデルが、他の日本企業に水平展開されることが期待されます。

ビジネスモデル;オープン・プラットフォームの必要性

2011-04-20 00:01:25 | Weblog
日本におけるスマートグリッドのプラットフォームをオープンな構造にして、新産業の創造力を高めることが必要であることです。スマートグリッドにおいては「エネルギーサービスプロバイダー」と「情報サービスプロバイダー」の2種類が登場し、この2つのサービスプロバイダーとスマート顧客(需要)、スマート電力(供給)よりなる四極の構造が形成されてくることになるでしょう。「エネルギーサービスプロバイダー」と「情報サービスプロバイダー」の両者を兼ねる事業者である「スマート・サービスプロバイダー」も出現し、統合されたサービスを提供するでしょう。
「情報サービスプロバイダー」はインターネットのインターネット・サービスプロバイダー(ISP)と同様のものですが、「エネルギーサービスプロバイダー」には、需要家への電力供給機能を果たすタイプ(ロードカーブ特性の異なる複数の需要家をグループ化し、電力供給事業者や電力取引市場から安価な電力を調達し供給するアグリゲーションと呼ばれる電力購買代行業)、需要家からの電力供給機能を果たすタイプ(自家発電設備を保有する複数の顧客から余剰電力を集約し、電力供給事業者や電力取引市場に有利な条件で電力を卸売りする電力販売代行業)およびエネルギーマネージメント等の関連サービス業としての機能を果たすタイプ(見える化、ESCO、設備導入、運転維持管理、支払い代行等の多様な形態がありうる)の3つが想定されます。
スマートグリッドの展開を左右する上で非常に重要になるのは、「エネルギーサービスプロバイダー」と「情報サービスプロバイダー」により提供されるスマートグリッドのプラットフォームの構造をオープンにするか、閉鎖的にするかということです。情報通信ネットワークのプラットフォームがOSからウェブに移り、そのプラットフォームがオープンなのかクローズドなのかが問われると同様の問題設定がスマートグリッドにも登場します。このプラットフォームの構造により、今後のスマートグリッド関連産業の発展の方向、規模が左右されるといっても過言ではありません。
この点に関して、情報通信ネットワークの各種プラットフォームの構造を参考にして「エネルギーサービスプロバイダー」と「情報サービスプロバイダー」のプラットフォームの構造を考えると、Linux 型、 Windows型、Macintosh型、iPone型の4通りのパターンがあることがわかります。判断要素は、需要サイドのユーザ(最終ユーザ),供給サイトのユーザ(アプリケーション開発者),プラットフォーム提供者, プラットフォーム支援者(知的所有権保持者)のそれぞれに対して、プラットフォームがオープンかクローズドかになります。
ここで言えることは、私たちは「エネルギーサービスプロバイダー」と「情報サービスプロバイダー」のプラットフォームの構造を構築するにあたり、ネットワークの「自己組織化」能力を高めてイノベーションを創造するため、Linux 型のできる限りオープンな構造を目指すべきだということです。そうすれば、スマートグリッド産業をIT産業に代わる基幹産業として成長させることができます。最終的な姿は、「You Energy」パララダイムを実現する「エネルギー&インフォメーションウェブ」です。

「スマートコミュニティ革命」(シリーズ;中国BYDのエコカー戦略の動向)

2011-04-19 07:14:17 | Weblog
比亜迪汽車(BYD)は10年3月29日、これまで官公需向けに販売してきたプラグインハイブリッド車「F3DM」の改良型を一般向けに発売しました。BYDはリン酸鉄リチウム電池(鉄電池)を搭載したプラグインハイブリッド車「F3DM」を2008年に発売しましたが、公共機関向けに100台だけを販売したにすぎません。今回の「F3DM低タン版」はその後継車種で、屋根に太陽光発電パネルを装備したのが変更点ですが、「F3DM低タン版」の購入時には通常のガソリン車と同様、重量税、ナンバー取得料、保険料など諸費用が2万元以上かかります。保証期間も2年あるいは4万キロと通常のガソリン車と変わりません。このため、消費者にとって経済的なメリットは大きいとはいえず、BYDの販売目標も1,000台と控えめです。
BYDは95年、現総裁の王伝福氏が従業員20人でニッケル・カドミウム電池の生産を始めた民営企業。同社は充電式電池、携帯電話、自動車の製造販売を主な事業内容としており、リチウムイオン電池生産では世界第2位、中でも携帯電話機用の電池は世界最大の生産量を誇ります。03年に自動車業界に参入し、09年の販売台数は前年比2.6倍の48万8,000台と急成長しています。国内自動車メーカーの中では販売台数で奇瑞汽車、長安汽車に次ぐ第3位の大手となっています。
今回のBYDの「F3DM」は量産モデルではありません。また、現在試作段階のスポーツ用多目的車(SUV)型の純電気自動車「e6」も、10年に深セン市政府に100台納入予定があるだけで、今のところ市販は予定していません。このため、今後直ちにBYDがエコカー市場を席巻するとは考えにくい状況ですが、電気自動車開発のカギを握るバッテリー技術では世界トップレベルにあり、電気自動車の開発と量産では優位に立っています。今後、エコカー市場は拡大していくとみられ、BYDの動向が引き続き注目されます。

イギリスのスマートメーター導入と国内排出量取引制度

2011-04-18 00:01:10 | Weblog
「民生部門のCO2排出削減を加速化させるため、国内クレジット制度を拡充する」(産業構造審議会)として日本としては、イギリス政府の関連した政策展開が非常に参考になります。
 まず、イギリス政府は、2010年から2020年までの10年間で、100億ポンドを投じ、4,700万のすべての家庭、オフィス、工場を対象に電気・ガス対応のスマートメーターを導入しています。
 また、2010年4月より、国際条約やEU-ETSでカバーされない大規模事業所(年間6,000MWh以上の電力を消費)であって、スマートメーターを設置しているものを対象に、炭素削減義務を課しキャップトレードの排出量取引制度をオークション方式で導入しています。
 CRCと呼ばれるこの制度では、各主体の排出枠は入札で決まります。3年間を試行期間として、その後本格的に導入されます。
 クレジット価格は、3年間の試行期間中は、トンCO2当たり12ポンド(約1,800円)と固定され、その後は入札で決められます。入札益は、年間で5,500万ポンド(約1,100億円)になると見込まれています。
 EU-ETSとの関係は、EU-ETSのクレジットをCRCクレジットと交換することはできますが、その逆はできません。

三菱自動車は「グリーン投資スキーム」に基づきエストニアに『i-MiEV』を供給

2011-04-15 01:59:22 | Weblog
三菱自動車は、三菱商事が「グリーン投資スキーム」(GIS)*に基づきエストニア政府に供給する電気自動車として、『i-MiEV(アイ・ミーブ)』を供給します。供給台数は2011年度末までに507台で、「グリーン投資スキーム」の下での電気自動車の供給は初めてとなります。
今回の供給は、三菱商事とエストニア政府の間で締結された1,000万トンの排出権購入契約に基づくものであり、同国は京都議定書の下でのGISを活用した電気自動車普及政策の一環として、公的施設(社会福祉関連)で『i-MiEV』を使用します。走行中のCO2排出がゼロである『i-MiEV』は同国でのCO2削減に寄与することが期待されており、CO2削減量の測定に関して、三菱自動車は技術面で協力します。
「グリーン投資スキーム」という国際的なスキームと日本のグリーン製品輸出とが結び付いたケースとして注目されます。

*グリーン投資スキーム(GIS)
京都議定書第17条に基づく排出権取引のうち、AAU(Assigned Amount Unit:京都議定書第3条に基づき、削減目標を持つ先進国[同議定書付属書B国]に割り当てられる排出枠のこと)の移転に伴う資金を、温室効果ガスの排出削減その他環境対策を目的に使用するという条件の下で行う、国際的な排出権取引のこと。

住宅エコポイントと住宅産業の転換期

2011-04-14 06:51:19 | Weblog
住宅版エコポイントを契機としてビジネス開拓をしようという動きが盛んになっています。住宅版エコポイント制度では、省エネ性能の高い住宅の新築には一律30万ポイント、窓や断熱材のリフォームでは最大30万ポイント、標準的な戸建て住宅(10窓)では15万ポイントがもらえ、そのポイントは商品券や地域の特産品のほか、風呂や台所、壁のリフォームにも使えます。
 これを断熱窓などのビジネスチャンスにしようとしているのがサッシ業界です。断熱窓には、既存の窓枠に内窓を後付けする方法、古いサッシを丸ごと交換する方法、ガラスを二重ガラスにする方法の3つがあります。
 このうち、トステムが特に力を入れる内窓は、標準的なもので設置費用7万円程度で、1時間程度で設置できるという手軽さが強みです。トステムの試算では、内窓を取り付けると、年間冷暖房費が1万円強、節約できるといいます。結露を減らし、遮音効果もあります。同社では内窓の売上高を、2009年の10億円から2年後には30億円とすることを目指しています。
 サッシ業界2位のYKK APも積極的な提携を進めています。TOTOはYKK APの内窓を自社のショールームに展示、自社の販路で売る計画です。またビックカメラが都内の店舗でYKK APの内窓販売を始めたように、家電量販店やホームセンターなどへの販路拡大が進んでいます。
 09年の新規住宅着工件数は80万戸を切り、市場は4分の3に縮小しています。それだけに住宅建材メーカーはこぞって既存住宅のリフォームに活路を見出そうとしています。住宅各社はリフォームビジネスへの転換を図っています。積水ハウスは、同社が建てた中古住宅を買い取り、修繕した上で販売する事業を2008年から始めています。再販する再生住宅は、建物の価格が新築の70%、10年間の保証がつくとあって、徐々に販売が拡大しています。「新築そっくりさん」を手がける住友不動産、ミサワホームなどもこの分野を強化しています。
 しかし、リフォームビジネスへの転換は容易なことではありません。リフォームは新築と比べると一軒あたりの工事単価が小さく、物件の個別性も強く、部材の大量購入などによる規模のメリットも働きにくいことから、ビジネスモデルの変更が必要です。しかも、従業員に求められるスキルが異なります。
 リフォームの場合、営業や見積もり、現場の段取り、現場管理、アフターサービスなどあらゆることを一人の営業マンがこなさなければなりません。施主や職人とのコミュニケーションスキルも必要な上に、中古の場合は壊してみなければわからないことも多く、その場で対応し、判断する能力も求められます。だが、新築一辺倒の時代が長く続いたため、住宅業界にはそうした人材が不足しているのです。
 今後日本の住宅産業は、「箱の産業」から「場の産業」に転換することが必要です。これまでの住宅メーカーやディベロッパーは、建築物という箱を提供していましたが、これからは、豊かな生活を送るため絵の場の提供という切り口でビジネスモデルを再構築すべき時を迎えています。