エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

貨幣経済のみならず非貨幣経済をも包摂した経済へ

2011-07-29 06:43:25 | Weblog
「You Energy」へのパラダイムシフトの下では、消費者はピーク時に商用電力系統から自家用発電に切り替えて料金を軽減できます。また、電力会社に売電したり、相互に融通したりできます。インターネットでのデジタル信号(松山教授の「オンデマンド電力ネットワーク構想」)や電気自体に埋め込まれたデジタル信号(阿部教授の「デジタルグリッド構想」)を通して、分散型電源システムが価格をリアルタイムでモニターできるようになるでしょう。
今後早急に取り組むべき課題は、ドイツの再生可能エネルギー法のように統一的な接続基準を制定して、あらゆる分散型電源の所有者に電力系統への平等なアクセスを保証することです。そうすれば、エンドユーザが生む出す電力を「エネルギー&インフォメーションウェブ」を介して集めた「ヴァーチャル発電所」の電力が、電力会社が集中型の大規模発電所で発電する量を超えようになるでしょう。そうなれば、インターネットにより出現したデジタル経済のように、電力の生産と流通に革命が起こります。
インターネットにより出現したデジタル経済は、「フリー・ビジネスモデル」という新たなビジネスモデルを産み出しています。「フリー・ビジネスモデル」とは、顧客に無料で商品・サービスを提供する一方、そのことで得られる信用力などを有効に活用して、別ルートで大きな収益を得るビジネスの仕組みのことを言います。クリス・アンダーソンが09年に出版した『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』(“Free:The Future of a Radical Price”)で提示した考え方で、現在大きな反響を呼んでいます。
その典型は、グーグルのビジネスモデルが、Gメールなど50以上の製品を無料で提供してユーザから圧倒的な支持を勝ち取り、無料で提供されるサービスに付随する「Googleアドワーズ」(検索連動型広告)や「Googleアドセンス」(コンテンツ連動型広告)などで会社全体の収益の97%を稼ぐというものです。その底流に流れているのは、デジタル化によって価格がゼロにまで引き下げられて新たに潤沢になったものを浪費して、大量の顧客、巨大な市場にリーチするとともに、他方、希少になったものを押さえて収益率を高めるという発想の転換です。「You Tube」は、「フリー・ビジネスモデル」の前者の側面を象徴しています。
クリス・アンダーソンは、「非貨幣経済で得た信用をどうすれば貨幣に交換できるか、それが21世紀の主戦場だ」と言っています。「You Tubeのエネルギー版」と言える「You Energy」のパラダイムは、さらに、貨幣経済のみならず非貨幣経済をも包摂した経済を出現させるものです。そこでは、既存のビジネスモデルは苦戦を強いられ、ラディカルなビジネスモデルが創造され、エコポイントやエコマネーが取引の媒体となることは間違いないと考えられます。

拙著『スマートグリッド革命』に対する八重洲ブックセンターの一押しと日経産業新聞の書評

2011-07-28 07:03:23 | Weblog
7月21日日経産業新聞は、「書店・出版取次ぎ会社の担当者が震災後のこの夏、薦める本」のコーナーで、八重洲ブックセンターの柏さんが、拙著『スマートグリッド革命』(NTT出版、6月14日に重版が発刊)をお薦め4冊のいの一番に推薦していることを紹介した後(ちなみに2番目はD・カーネギー著『道は開ける』、3番目は竹中平蔵著『日本経済 こうすれば復興する!』、4番目はマッキンゼー著『日本の未来について話そう』)、以下の書評を掲載しています。

「震災後」読み解く夏に お薦めのビジネス書を聞く

「・・・・・原発への依存度を下げる場合のエネルギーインフラの青写真に関心のある人には、『スマートグリッド革命』(NTT出版)という本もある。IT(情報技術)システムを使って制御するスマートグリッド(次世代電力網)で、住宅用太陽光発電や電気自動車、ヒートポンプなど家庭にある新エネルギー関連機器を生かすモデルを示す。
 誰もがエネルギー作りと節電に参加できる分散型電源の時代を、動画投稿サイトの名前にちなみ、「ユーエネルギー」という言葉で表すなど、視点もユニークだ。」


エコポイントからエコマネーへとエンパワー力が倍加

2011-07-27 06:37:29 | Weblog
エコポイントの発展形として、再生可能エネルギーの全量固定価格買取り制度を活用した「エコマネー」が考えられます。太陽光発電などの売電対価や各種ポイントを現金化したお金が専用の「減CO2(ゲンコツ)銀行に開設される「エコマネー口座」に入金され、エコ商品・サービスの購入や電気自動車に充電する場合の支払い手段としてエコマネーが利用されます。また、「エコマネー口座」を利用して決済する場合にエコ消費用のポイントが付与されます。
エコポイントは入り口(エコマネー獲得時)だけがエコですが、エコマネーは入り口のみならず出口(エコマネーの使用時)もエコという性格を有します。エコマネーの名目利子率もマネーのそれとは異なってゼロなので、エコポイントと同様貨幣の退蔵は起こりません。しかも、エコポイントと異なって取引金額全体をカバーするので、消費の活性化、それによる経済の成長を促進する効果ははるかに大きくなります。09年12月総務省の「原口ビジョン」のうち「緑の分権改革」においては、20年までに売電収入(ポイント)をエコ商品の購入、電気自動車への充電対価等にあてる「グリーン・コミュニティマネー」の全国展開を完了するとありました。最近その提案は下火になったようですが、「原口ビジョン」における「グリーン・コミュニティマネー」は地域内で循環するタイプのエコマネーです。再生可能エネルギーの地産地消のスキーム構築とあわせて、この原口構想の復活を要望したいものです。
日本の電子マネーの状況を見ると、電子マネーの決済額は09年に初めて1兆円を超えました。決済金額のトップはイオンの「ワオン」、決済件数のトップはセブン&アイの「ナナコ」です。エコポイントやエコマネーの取引に関しては、これら電子マネーと連携したビジネスモデルを構築することとし、日本が誇る非接触ICカード技術であるFeLiCa(フェリカ)とNFC(Near Field Communication)が結合した媒介(ケータイまたはICカード。スマートフォンにも搭載)を活用します。この方式はアジア・ネットワークに拡大し、日本経済の成長をさらに高めることが可能です。

エコポイントによるエンパワー:CO2の持続的削減ツールへと発展

2011-07-26 02:17:41 | Weblog
このように浸透してきたエコポイントを発展、統合させ、家庭やオフィスに対するCO2の持続的削減ツールとして使うことが必要でする。HEMSやBEMSを基礎とした「日本型スマートグリッド」の構築と合わせて、「家庭・オフィスCDM(Clean Development Machanism)」と呼ばれるスキームを構築することが必要です。
この「家庭・オフィスCDM」は、11年度から導入される予定の国内排出量取引制度を活用します。家庭やオフィスにおけるCO2削減分(省エネ・創エネ分)について、①一般社団法人スマートプロジェクトに設置される「減CO2(ゲンコツ)銀行」(民間金融機関とも連携)が仲介して、大企業が排出クレジットとして取得し(大企業のクレジット購入費は税法上損金参入可能とし、温暖化対策防止法上の報告制度上のインセンティブも付与する)、②大企業から「減CO2(ゲンコツ)銀行」に渡ったマネーは「減CO2(ゲンコツ)銀行」においてエコポイントに変換なされてCO2削減主体にわたす、③CO2削減主体は、受け取ったエコポイントを電子マネー、商品券等に交換して公共交通機関の利用、地域商店街でのお買い物等に消費する、ことにより景気浮揚効果、経済活性化効果も期待できるように制度を工夫します。
このスキームの下では、エコポイントの原資は国ではなく排出クレジットを取得する大企業となるので国に財政負担が生ずることはありません。また、大企業が国内排出量取引制度を活用して排出クレジットを取得することは、京都CDMの活用スキームの発展形と言えますが、これにより、海外への資金流出を抑制することもできます。

エコポイントの歴史

2011-07-25 00:07:09 | Weblog
私は、1998年に「エコポイント」・「エコマネー」という仕組みを提案しました。提唱当初は「地域通貨」の運動として全国500以上の地域で活動が展開されましたが、日本で開かれた21世紀初の万博である05年「愛地球博」でのEXPOエコマネーがその後のエコポイント発展の礎となりました。これは、博覧会の会場内外のお店でお買い物の際レジ袋を辞退するとエコポイントがもらえ、一定程度たまるとエコグッズへの交換や植林への寄付に使えるという仕組みでした。6か月の会期中に18万人もの人々が参加し、8000トンのCO2が削減されました。見える化、エコポイントの管理などをすべて情報通信技術で制御するシステムを導入したことも特徴です。
エコポイントが日本全国津々浦々まで浸透するようになったのは、09年度に政府の第1次補正予算事業として省エネ家電買い替え促進のエコポイントが開始され、エコポイント(1ポイント=1円)がエアコン、冷蔵庫、テレビなど省エネ家電買い替えによる市場刺激策、かつ、CO2削減対策として活用されるようになったことです。09年度2次補正予算事業では、エコポイントの対象が省エネ住宅の新築や改修にまで拡大される住宅エコポイントが創設されるとともに、エコポイント事業に実施期限が10年末まで延長されることになりました。
環境省が08年度より実施している制度で、環境配慮型サービスの利用者にポイントを付与する「エコアクション・ポイント(EAP)」もエコポイントの一種です。JCBは環境省のEAP制度を委託事業として運営しており、約15万人の会員を獲得しています。
その他、京都エコポイント(京都府など)、金沢エコポイント(金沢市)、大丸有エコポイント(東京都)など地域独自のエコポイントやアトム通貨などの商店街活性化に資する地域通貨型のものもあります。また、経済産業省は09年11月から10年2月まで、使用済み携帯電話を最高5万円の商品券がもらえる応募券と交換する「たんすケータイあつめタイ\(^o^)/」を実施しましたが、この応募券は実質上のエコポイントです。
農林水産版のエコポイトも登場する方向で検討がなされています。農林水産省は国産の食料品を買った額に応じて企業がポイントを付与し、商品や景品などと交換できる制度を11年度から全国で導入する方向です。すでに、09年、10年と実証実験が首都圏の食品スーパーマーケット、GMSなど等で行われて検証結果も出ています。また、フード・マイレージ の取組みもある。日本では、国内有機農業、食料の地産地消を振興してきた環境NGO大地を守る会が「フードマイレージ・キャンペーン」を展開しています

明日23日8時から日テレ「ウェークアップ!ぷらす」で番組に生出演

2011-07-22 07:08:25 | Weblog
明日23日(土)8時から、日本テレビ系列番組「ウェークアップ!ぷらす」で、節電社会とエコポイントのコーナー12分くらいが企画され、私が「エコポイント提唱者」かつ「スマートグリッド第一人者」として、番組に生出演をしてコメントすることになりました。司会は辛坊次郎さん、ゲストは有村かおりさん、江上剛さん、橋本五郎さん、岩田公雄解説委員の4人です。お時間があれば、ご覧ください。

『節電社会のつくり方』に関するレビュー:「一人ひとりの行動が生み出すパワー」

2011-07-21 04:03:21 | Weblog
アマゾンのカスタマーレビューに、以下のレビューが掲載されました(以下、転記)。

 「節電」は市民一人ひとりが行動を起こすことで、初めて成り立つこと。この本は、その個人が単なる電力消費を抑えるだけでなく、個人がエネルギーそのものを作り出し、社会全体でシェア出来ることを訴えている。これまではスマートグリッドというが、まだ先のことと思っていた。そして、個人的にはチェルノブイリとかスリーマイルなどは、海外での出来事だとも思っていた。
 しかし、現実に、東日本で起きてしまった震災による原発事故。これはもう他人事では済まされない。電力そしてエネルギーへの不安だけが日常的に身に迫っている。しかし、この著者は、その解決方法を世に示唆し、我々個人がどう対応出来るのかを説いている。

エコポイントを活用した成長戦略

2011-07-20 07:03:46 | Weblog
日本経済の成長のため自然利子率を高めるためには、「真のイノベーション」を起こすべく、「アニマルスピリット」を高めてリスク・テイクを増やす環境を整えるとともに、マネーによる購買力の退蔵を回避して消費を喚起する手段を登場させることが必要です。
前者で重要になるのは、期待収益率を高めるための政府による明確なコミットメントとスマートレギュレーション(賢明な規制)ですが、後者に関してはエコポイントを発展させることが処方箋となります。エコポイントは、巷間考えられているようなイメージとは異なり、「真のグリーンイノベーション」を実現する手段です。
エコポイントには、利子がつかないすなわち名目利子率ゼロであり、ポイントの有効期限が設定されているというマネーとは異なる性質があります。「流動性の罠」の下ではマネーは家計等に退蔵されてしまい消費が喚起されません。現に、前麻生政権下で実施された2兆円の定額給付金によって増えた消費支出はわずか6300億円で、名目GDPに占める割合は0.13%にすぎません。これに対してエコポイントは、利子を生まないので長期保有のメリットがなく、逆に有効期限が来ると価値を喪失しまうので、次に使われることを想定した価値媒体であると言えます。したがって、「流動性の罠」の下でも貨幣の流通速度を上昇させることにより、消費財に関する消費貯蓄選択を刺激して消費需要を増大させることができます。そうなれば、投資需要も喚起されます。

読売新聞「本 よみうり堂」のコーナーでの『節電社会のつくり方』の紹介

2011-07-19 06:11:18 | Weblog
7月11日読売新聞夕刊「本 よみうり堂」のコーナーで、「『節電本』で夏を乗り切る 生活の知恵や発想転換」と題して拙著『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』の紹介がなされました。
 
「・・・節電には個人の努力だけでなく、社会全体で効率的に電力を使う仕組みを作っていくことも大切だ。エコポイント提唱者の加藤敏春著『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』(角川Oneテーマ21)は、情報通信や蓄電技術を活用して、電力を必要なときに、必要なだけ、必要な場所に配電する『スマートグリッド』というシステムをはじめ電力の未来について教えてくれる。
 暑すぎて本を読む気もしない、なんて人はこれを機にエアコンのきいた書店や図書館に足を運んでみるのもいいかも。節電できるだけでなく、頭も体も涼しくなること請け合いです。」

読売新聞(九州・山口版)「節電促す賢い電力網」の特集コーナーでの私のコメント

2011-07-18 07:41:07 | Weblog
7月13日読売新聞(九州・山口版)「節電促す賢い電力網 電力会社は慎重・実用化に壁」の特集コーナーで、北九州市、福岡市の取り組み、九州電力のコメントが紹介されたのち、最後に、以下の私のコメントが紹介されました。

「スマートグリッドの早期実現を提唱する一般社団法人スマートプロジェクトの加藤敏春代表は、『震災後の節電社会に早く対応するには、日本全体で整備を急ぐ必要がある。普及には、今の電力供給体制の転換と、電気を賢く使うという住民の意識改革が必要。自治体はそれらを後押ししていくべきだ』と指摘する。」