エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「電力システム改革専門委員会」の画期的な提言をどう生かすか

2013-03-04 06:45:16 | Weblog
「日本を変えるスマート革命」:その19~「電力システム改革専門委員会」の画期的な提言をどう生かすか~

スマートプロジェクト代表&エコポイント提唱者
加 藤 敏 春

 
●日本の電力システム始まって以来の大改革が始まる!
2013年2月8日、総合エネルギー調査会「電力システム改革専門委員会」(委員長、東京大学大学院の伊藤元重教授)は、2015年の広域系統運用機関の設立と新規制組織への移行、16年の電力小売りの完全自由化、18年から20年にかけての発送電の分離などを盛り込んだ電力システム改革に関する提言を取りまとめました。
茂木経済産業大臣は「改革案は大胆に、スケジュールは現実的に」と改革に臨む基本姿勢を明らかにしていますが、これは、戦後の9電力体制の発足時を超える日本の電力システム始まって以来の大改革であり、13年3月に国会に提出される電気事業法改正案の中で工程表のアウトラインも明示される予定です。
いち早く12年5月には、東京電力の総合特別事業計画が政府により承認され、東京電力への資本注入により事実上の国有化が行われるとともに、その下で、13年4月から燃料火力、送配電、小売り部門におけるカンパニー制の導入などが行われることになっています。これまでの発送電の一体運営を一部見直す形となり、日本の電力システム大改革の先駆けとも言えるものです。
まさに「電力大改革時代」の幕が開いたと言えますが、電力システムの大改革は電力産業だけにとどまらず、ガス、石油などのエネルギー関連産業はもとより、情報通信産業、自動車産業、家電産業などにも大きなインパクトを及ぼすものです。主要電力11社(10電力+J・POWER)の売上高の合計だけで17兆2000億円(2011年3月末期)、ガス、石油などのエネルギー産業、情報通信、自動車、家電などの関連産業の市場を含めると、数十兆円に達するという市場規模を考えただけでも、日本経済に多大なインパクトを与えるものであることがわかります。

●「電力大改革時代」に必要なのは「プランA」ではなく「プランB」
スマートグリッド(賢い、洗練された電力網)の「プランB」とは、こうした「電力大改革時代」のあるべき電力網を実現するアプローチのことで、従来の「プランA」とはまったく異なった方法でスマートグリッドを推進し、3・11(東日本大震災と福島第一原発事故)後の新たな電力需給状況に対して根本的な解決を図るものです。
スマートグリッドは、ICT(情報通信技術)に支えられた賢い、洗練された電力のことですが、これまでのスマートグリッドの推進は、スマートグリッドの技術面だけにフォーカスし、5年間の技術実証、その成果の6年目以降の実用化というアプローチでした。しかも、その対象地域は、横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市それぞれの都市のうちの一区画を中心としたものに過ぎず、「点」だけをおさえるアプローチでした。私は、これをスマートグリッドの「プランA」と称していますが、これでは「電力大改革時代」の課題に対応することは到底できません。
環境活動家として世界的に有名なレスター・ブラウンは、地球温暖化対策に関して従来のアプローチ=「プランA」では根本的な解決は図れないとして「プランB」という考え方を提案しましたが、それと同様、私たちが目指すべきは、日本全体を「面」として捉え、新たな電力需給状況に対して根本的な解決を図る「プランB」なのです。

●「プランA」ではなく「プランB」が必要とされる背景事情
 3・11以後東日本大震災と福島第一原発事故後の電力需給のひっ迫化は、深刻度を増しています。13年2月末現在、国内にある原発は大飯3号機と4号機を除いて稼動を停止し、昨年大いに警鐘を鳴らされたイランをはじめとする石油情勢の緊迫化も近いという風に言われています。
 深刻化する原発危機と石油危機を乗り切る対策は、短期的には、エネルギー需要の3分の2を占める家庭やオフィスの省エネ・節電貢献度に応じてインセンティブ(奨励金)を付与する「エコポイント」を活用して、家庭やオフィスをも巻き込んだ省エネ・節電行動を社会全体に拡げていくことです。そして、中長期的には、省エネ・節電社会を構築し、エネルギーの需給構造を造り変えていかなければなりません。そのためには、「プランB」によるICT(情報通信技術)を取り入れた新しい電力網、スマートグリッドの整備と全国展開がカギを握ります。
エコポイントは、総合資源エネルギー調査会基本問題委員会の論点整理(11年12月20日)の中で、「需要家に電源の『選択肢』や省エネ・節電等の適切なインセンティブを与えることを通じて需要構造自体を変え、デマンドサイドから供給構造をも改革する方向を目指すべきである」と指摘されたことのうち、『省エネ・節電等の適切なインセンティブ』に当たります。
 3・11以前のスマートグリッドは、太陽光、風力などの再生可能エネルギー、蓄電池などを取り入れて、電力系統を安定させる技術的な手段の一つとして議論されているに過ぎませんでした。つまり、スマートグリッドはあくまでも供給側の課題解決に向けたもので、ユーザにはあまり関係のない話だったのです。
 しかし、3・11以後電力不足という緊急の課題が社会に降りかかり、全国レベルで電力需給の均衡が求められるようになりました。ここへきてスマートグリッドが、単なる供給側の課題やそれを解決する技術実証の話ではなく、家庭や企業などの需要側にも関係するものとして、さらに、いまの電力不足問題に根本から解決を与える「電力大改革時代」に対応したものとして、大きな注目を集めるようになりました。これが「プランA」ではなく「プランB」が必要とされる背景事情です。

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