エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

イギリス新政府の環境エネルギー政策

2010-06-29 06:34:00 | Weblog
イギリスでは、保守党のキャメロン党首が5月11日新首相に就任し、13日には新内閣が発足しました。政権交代は13年ぶりですが、保守党と自民党の政策合意のうち環境エネルギー関係は、次の通りです。特に、①と②が注目点です。
①.電力固定買取制度(FIT)、スマートメーター、スマートグリッド、海洋エネルギー、バイオマス発電などの普及・促進
②.家庭でのエネルギー使用効率化の推進
③.高速鉄道敷設
④.ヒースロー第3滑走路をはじめロンドン近郊空港の滑走路新設を取りやめ
⑤.適格な二酸化炭素回収・貯留(CCS)設備のない石炭火力発電所の設置を防ぐための新たな排出基準の策定
⑥.原子力発電所の新設を事実上容認(保守党が原子力政策に関する国家計画ステートメントを議会に提出する際には、自民党はそれに対して反対声明を出すことができることに加え、採決の際には自民党所属議員は棄権するということで両党は合意)

国際航業のメガソーラーなど「グリーンコミュニティ」事業が本格化

2010-06-28 06:07:44 | Weblog
国際航業ホールディングスはドイツの太陽光発電会社ゲオソルを買収し、欧州のみならず日本およびアジアでメガソーラーなど「グリーンコミュニティ」事業を展開しようとしています。
このため、まず09年4月宮崎県および都農町との間でパートナーシップ協定を締結し、同年6月「宮崎ソーラーウェイ」を設立しました。旧リニア宮崎実験線ガイドウェイに太陽光パネルを配置して1メガワットの発電所の設置準備を進めており、11年度の本格稼動を目指しています(こちらをご覧ください)。
さらに国際航業は、メガソーラーに風力発電、グリーン・データセンター、森林整備、グリーン電力証書取引などを統合した「グリーンコミュニティ」作りのため、仙台市、兵庫県および香川県を支援しています(5月21日日経BP社主催「グリーン・テクノロジー&マネージメントシンポジウム2010」におけるサンドラ・ウー社長の発言)。

トヨタとテスラモーターズの電気自動車に関する電撃的提携

2010-06-28 06:07:22 | Weblog
5月21日大きなニュースが流れました。トヨタ自動車とシリコンバレーの電気自動車ベンチャーのテスラモーターズは、電気自動車を共同で開発・生産するために資本・業務提携することになりました。トヨタ自動車はテスラに5000万ドルを出資。電気自動車を共同開発した上で、トヨタとGMの旧合弁会社ヌーミー工場で生産します(こちらをご覧ください)。

一般社団法人スマートプロジェクトのホームページを開設しました

2010-06-27 00:06:50 | Weblog
6月24日に拙著『スマートグリッド革命:エネルギー・ウェブの時代』(村井純教授推薦、NTT出版)が刊行されたことを契機として、2月に法人化した一般社団法人スマートプロジェクトのホームページを開設しました<こちらをご覧ください>。具体的には、スマートグリッド革命を推進するための以下のフラッグシップ・プロジェクト(当面4つ)を実行し、「ST革命」のパイロット&ファシリテーターとして、スマートグリッド革命による「エネルギー・ウェブ」の創生を実践していく方針です。詳しくは、ホームページをご覧ください。

1 エコポイント・エコマネーの推進プロジェクト
現在政府では、10年6月閣議決定された政府の「新成長戦略」の中でもうたわれているように、現在の省エネ家電エコポイントや住宅エコポイントを発展させることに関して様々な検討がなされています。また、環境省のエコアクション・ポイントは11年度以降完全に民間事業へと移行する予定です。さらに農林水産省では、国産食料品の購入にポイントを付与するシステムを構築し、11年度以降運用する計画です。
スマートプロジェクトは、商標権の無償許諾のみならず国のエコポイント事業の円滑な推進に各種の政策提言をしてきたところですが、今後11年度におけるエコポイント事業のさらなる発展のため、「家庭・オフィスCDMとエコポイント」の構築を含めた様々な構想の具体化を図っていきます。また、再生可能エネルギーの全量固定価格買取り制度を活用したエコマネーの具体化に関しても、推進していきます。

2 連合とのHEMS推進プロジェクト
連合は、日本の労働組合ナショナルセンター(労働組合中央組織)で、全国約680万人の組合員が加盟する日本最大、世界第2位の労働組合です。製造業・小売業・運輸業・サービス業・公務員などあらゆる業種・職種の組合員が加盟しており、日本全47都道府県に地方連合会を設置している組織です。
連合は、エコポイントを活用したポスト京都の「新しい国民運動」を展開しようとしており、まず10年度の「エコライフ国民運動」の一環として、100世帯の「エコライフファミリー」による日常的なエコの取り組みを「見える化」する事業を展開します。スマートプロジェクトは、連合とのパートナーシップの下、この事業をサポートします。ウェブサイトを通じた誰もが閲覧可能な「見える化」における、日本初の試みとなります。エコライフファミリーとして名乗りを上げた各世帯に消費電力測定用メーターを設置し、環境にやさしい生活の実践を通じて消費電力がどれだけ削減されるか、取り組みの前後で測定値を比較します。また、各世帯の取り組みの様子はブログ形式の「環境日誌」に記録し、消費電力のグラフデータとともに「連合エコライフ21」のウェブサイトで一般公開します。この事業は10年10月に終了する予定であり、その成果を踏まえさらに発展させていく予定です。

3 KICSとの地域エコ推進プロジェクト

京都にある合同会社KICSは、36商店街組合、8同業種組合、1商工会、1連盟、1デパート約1,300店舗を擁する日本最大の地域情報化推進団体であり、参加各店の情報化を支援する活動を行なっています。加盟店舗をサポートするクレジットカードの決済システムを運営するとともに、日本発のデビットカードシステムの導入、宅配便経費の情報化による低減化、インターネット通販サイトの自主運営など多岐にわたり地域の情報化事業の推進を図ってきていますが、06年度より鉄道会社の協力を得て「電車エコ」(自動車の代わりの電車を利用したときに鉄道運賃相当分を買い物代金から割り引く仕組み)を開始するとともに、08年度より京都府の「京都エコポイント事業」にも参画しています。
スマートプロジェクトは、長らくKICSのこうした地域エコ活動を支援してきましたが、今後ともフラッグシップ・プロジェクトの一つとして、地域エコ活動のメニューの多様化を推進していきます。

4 スマートダイアローグ(ユーザ指向のスマートグリッド市場の構築に向けた企業等への場の提供)
10年6月16日~18日に開催された「スマートグリッド展2010」(日刊工業新聞社主催)は、スマートグリッドに関する国内初の展示会でしたが、3日間で4万人弱もの来場者がありました。17日行われた「スマートグリッドサミット」には、1000人のメイン会場では収まらない多くの人が聴衆として参加しました(さらに数百人の人がスクリーンで)。地方からわざわざ上京した人々も多く、スマートグリッドへの関心の高さを物語っています。ただ、こうした関心の高さをユーザ指向のスマートグリッド市場の構築に向けて誘導していくことが必要であり、①スマートグリッドの信頼性の確保(セキュリティ、プライバシー)、②スマートグリッドに参加する消費者へのメリットの還元などによる消費者エンゲージメント、③スマートグリッドによる地域活性化などについて、スマートプロジェクトとして関係機関と連携しながら、企業等の戦略形成に資する場を提供していきます。また、「リナックス型経営」と「オープン・イノベーション」の具体的なあり方に関しても提示していきます。

ダイムラー、カーシェアリング事業に本格参入

2010-06-26 17:17:32 | Weblog
メルセデス・ベンツの名前で知られているダイムラー社がカーシェアリングの事業に本格参入しています。ドイツ南部、ダイムラー本社があるシュトゥットガルト市近郊のウルム市(人口12万人)では、200台の「smart」が市内各地に配車されています。
 これは、正確には「シティカー」と呼ばれる車の共有利用の形態で、会員登録をしていれば、誰でも、道端や駐車場に停めてあるこの「Car2Go」と呼ばれる「smart」を利用することができす。特徴的なのは、ウルム市の市街地であれば、どこでも乗り捨てが可能であるというです。
 利用方法は次の通りです。
1.会員登録。各種の手続きを経ると免許証に車を開閉することができるICタグシールを貼り付けてもらえる。これを車のフロントガラスにかざすことで、車のドアが開き、利用することが可能となる。入会金・基本料金などはすべて無料。
2.市内の駐車禁止でない道端や、シティカー用に借り上げている駐車場(駅や中心部に点在するカースポットと呼ばれる場所)で「Car2Go」を見つけ、それを利用したければ、免許証で車に乗り込み、車に搭載されたナビゲーションに個人の暗証番号を入力。これで、車の鍵を取り出すことができ、車を自由に利用することができる。
3.すべての車にはGPSによる位置の認識装置が搭載されており、インターネット上で、好みの場所に停められ、かつ他者による利用中でない「Car2Go」を予約しておくことも可能。
4.料金は1分19セント(≒25円)、1時間9.9ユーロ(≒1,300円)、1日49ユーロ(≒6,400円)。これには保険料から燃料費まで、すべて込み。
5.好きな時間だけ利用した後は、事前に境界線で定められた市街地であれば、どこでも返却が可能(駐車禁止場所を除く)。返却可能な地区は全市に広がっている。
6.鍵を所定の位置に戻し、免許証でドアを閉めれば、それで利用の終了。請求は、月ごとにまとめられて、銀行引き落とし。
 特徴的なのは、最新のボードコンピュータにより、車の位置や燃料の残量、および社内清掃の状況などがすべて管理されている点です。問題の車が出てくれば、すぐにサービスマンが現地に駆けつけます。
 ダイムラー社は、このCar2Goプロジェクトによって、車を携帯電話のような手軽さで、利用できるサービスを実現しました。10年秋からはアメリカ、テキサス州オースティンでのプロジェクトを予定しており(こちらをご覧ください)、カーシェアリング事業の爆発的な成長を続けるアメリカ市場への本格参入の足がかりを模索しています。

参院選に関するマニフェストのうち環境エネルギーに関するもの

2010-06-25 05:45:38 | Weblog
参院選に関する民主党と自民党のマニフェストのうち、環境エネルギーに関するものは次の通りです。

民主党
・再生可能エネルギー全量買い取り制度の導入とスマートグリッドの開発・普及
・エコカー、エコ家電、エコ住宅などの普及を支援
・地球温暖化対策税を活用した企業の省エネ対策などを支援
・住宅のバリアフリーなどで成長産業の潜在需要の掘り起こし
・再生可能エネルギーの普及拡大に向けた規制改革
自民党
・温暖化ガスは20年までに05年比で15%削減
・再生可能エネルギーの比率を20%に引き上げ
・原子力政策の推進
・補助金制度によりエコカーの買い替えを促進
・燃料電池など10分野への戦略的な投資

スマートプロジェクトはST革命のスマートバレー公社

2010-06-24 00:01:28 | Weblog
6月24日に拙著『スマートグリッド革命:エネルギー・ウェブの時代』(村井純教授推薦、NTT出版)が刊行されることを契機として、2月に法人化した一般社団法人スマートプロジェクトの活動を見える化いたします。
具体的には、スマートグリッド革命を推進するためのフラッグシップ・プロジェクト(当面4つ)を実行し、「ST革命」のパイロット&ファシリテーターとして、スマートグリッド革命による「エネルギー・ウェブ」の創生を実践していく方針です。フラッグシップ・プロジェクトのうちには、680万人の組合員(=市民)を要する連合とのHEMS+エコポイントに関するパートナーシップ事業が含まれています。
その連合は、6月17日の中央環境審議会ロードマップ小委員会で組織としての地球温暖化対策に関する考え方を表明しました<こちらをご覧ください>。連合としてこれほどまとまったものを公表するは初めてだと思います。
この資料のうち、特に最後の2枚に注目いただけると幸いです。そこに、一般社団法人スマートプロジェクトとのパートナーシップ事業に関する記述が含まれています。
 以下は、25日に開設する一般社団法人スマートプロジェクトのホームページの基本的な記述です。お読みいただければ、幸いです。

1 ヘッドライン

スマートグリッド革命による「エネルギー・ウェブ」の創生(大きな活字、以下は小さな活字) 

スマートグリッドは「グリーンイノベーション」のキーコンセプト 
スマートグリッド推進に当たり最も重要なのは、経済・社会・環境の「三方よし」を実現するユーザ指向の市場の構築
そのため、官民共同のスマートコミュニティ・アライアンスとも連携しながら、「スマート国民総発電所構想」を推進
 その過程でスマートグリッドとエコポイント・エコマネーの「進化」を演出
企業に対して「リナックス型経営」と「オープン・イノベーション」を提示

2 基本メッセージ

スマートプロジェクトは、「ST革命」のパイロット&ファシリテーター(大きな活字、以下は小さな活字)

スマートグリッド革命は、IT(情報通信技術)とET(エネルギー技術・環境技術)が融合したST(スマートテクノロジー)による「ST革命」です。では、「ST革命」を推進する上で最も必要なことは何でしょうか?
スマートプロジェクトは、①ユーザ指向のボトムアップのイノベーションの創生、②テクニカルエンジニアリングよりも重要なソーシャルエンジニアリングの実行、③プロシューマ(生産消費者)を主体とする自律分散協調系の構築の3つであると考えます。
IT革命が「革命」と言える現象になったのは、この3条件が初期段階で整備され、膨大な数のユーザがネットワークに容易に参加できる状況が生まれたことにより、「ムーアの法則」(半導体の性能対価格比が18カ月ごとに半減するという現象が長期にわたって継続するという経験則)と「メトカ―フの法則」(ネットワークの価値は参加するユーザの数の2乗に比例して相乗効果で高まっていくという経験則)が作用したからです。
そのIT革命勃興時においては、シリコンバレーにおいて誕生した「スマートバレー公社」(ジョン・ヤング会長(元ヒューレット・パッカードCEO)、ビル・ミラー副会長(スタンフォード大学教授)、ハリー・サール社長(起業家))がインターネットの民生利用のパイロット&ファシリテーターとして機能し、この3条件を整えました。「スマートバレー公社」は非営利の民間会社として認められた簡素で柔軟な組織体であり、数名の事務局で構成されていました。実際の活動は、「コマースネット」(インターネットを活用した商取引)、「スマートスクール」(インターネットを活用した教育)、「テレコミューティング」(インターネットによるテレコミューティングの促進)などのプロジェクトをコンソーシアム方式で推進することで遂行されました。
いま時代は、IT革命からそれを包摂する「ST革命」への移行という大変革期にあります。「ST革命」のパイロット&ファシリテーターとしてのスマートプロジェクトは、スマートグリッドの進化モデルに基づき、「スマート国民総発電所構想」を実現するためのフラッグシップ・プロジェクトと政府への提言活動等を推進し、IT革命時の「スマートバレー公社」に相当する機能を果たすことを使命としています。

APEC貿易担当大臣会合におけるAPEC成長戦略への言及

2010-06-23 06:58:12 | Weblog
6月5日、6日に開催されたAPEC貿易担当大臣会合は、6日に議長声明を発表しましたが(こちらをご覧ください)、その中で、エネルギーなどを基軸とする成長戦略の策定に関して、「・・・複数年に及ぶ行動計画から成るべきであるということを改めて確認した。我々は,高級実務者に対し,横浜において同戦略を完成するよう奨励した。8月に別府で行われるAPEC成長戦略ハイレベル会合は,産学官の参加者間の議論に基づき,同戦略の方向性について共通理解を形成することを目的としている。エネルギー,人材養成,中小企業,電気通信・情報産業,財務その他の関連する分野別大臣会合は,成長戦略の策定に貴重な貢献を行い得る」とうたっています。

ドイツの脱原子力発電政策の見直しはとん挫か?

2010-06-23 00:08:48 | Weblog
ドイツでは、5月9日にノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州で州議会選挙が行われましたが、キリスト教民主同盟(中道右派、CDU)と自由民主党(リベラル、FDP)の中道右派州連立政権が敗北しました。これにより脱原子力政策の見直しがとん挫し、ドイツのエネルギー政策は、ふたたび脱原子力発電の方向へ回帰することになることが予想されます。
各州議選の結果により連邦参議院(上院)の州代表議員が決定され、これが連邦の国会運営に直接影響を及ぼします。人口によって配分されているNRW州の議席は6議席。これまでCDUとFDPの連立政権は連邦参議院の総議席の69のうちの37議席を獲得していたが、重要な法律を変更するために必要な過半数より2議席多いにすぎませんでした。
今回のNRW州でのCDUとFDPの敗北で、連邦政府与党は連邦参議院で過半数を維持できなくなりました。これにより、中道右派連立内閣は困難な政局運営を強いられることになります。例えば、連立政権発足以来、稼働延長を求める声が高まっていた原子力発電所問題や、財政が厳しい中FDPが公約に挙げた12年までの160億ユーロの所得税減税などの政策の実行は連邦参議院で反対にあい、困難になると想定されています。