エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

エコポイントの延長と個人の省エネ・創エネ等によるCO2削減量の国内クレジット化

2010-08-31 00:37:55 | Weblog
30日政府により決定された「経済対策の基本方針」においては、本年12月までの家電エコポイントと住宅エコポイントの延長等が決まりましたが(詳細未定)、別途、経済産業省の平成23年度予算要求では、「民生・運輸部門の低炭素化の推進」として、現行の個人向け省エネ・新エネ機器導入補助金を見直し、個人の省エネ推進・新エネ利用等によるCO2排出削減量の国内クレジット化を図ること等を要求することが明らかとなりました。
これは、従来、私あるいは一般社団法人スマートプロジェクトとして政府に要望してきた線に即したものであり、今後はその具体化を期待するとともに、エコポイントの活用を含めた対応等を進めていきたいと考えています。

① 個人向け省エネ・新エネ機器導入支援と国内クレジット制度との連携 action 22

国内の排出削減効果を国内で活用するため、現行の個人向け省エネ・新エネ機器 導入補助金を見直し、個人の省エネ推進・新エネ利用等によるCO2排出削減量の国内クレジット化を図る。これにより、国内の大企業等によるクレジット活用を促進する。
○ 国内クレジットとリンケージされた個人向け省エネ・新エネ機器導入支援
・住宅用太陽光発電導入支援 429億円(401億円)
・(☆)クリーンエネルギー自動車等導入支援304億円(137億円)
・民生用燃料電池導入支援 90.7億円(67.7億円)
・住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入支援(先導的システム支援)
75.0億円(49.9億円)
・国内排出削減量認証・取引制度基盤整備事業10.2億円(新規)
○ 省エネ家電製品買換えによるCO2排出削減計測・認証事業
1.5億円(新規)

② 事業者の環境行動の「見える化」 action 23
消費者・事業者双方の意識・行動の変化を促すため、カーボンフットプリントを始めライフサイクル・サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量の算定・表示などを通じた「見える化」を促進する。また、国内試行事業を踏まえて国際的な仕組み作りに対して積極的に貢献する。
◆ 国際標準化に係る動向を踏まえつつカーボンフットプリント制度等による「見える化」を推進

③ 住宅・建築物における省エネの取組を強化 action 24
 将来的なZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の達成に向け、国土交通省と連携し、省エネ基準の見直しと適合義務化の検討を進める。
本年は、適合義務化の対象・時期・支援策等について検討を進める。また、建築物については、新たな省エネ基準を来年度中に策定し(2012年度施行予定)、これまで、設備ごとに評価してきた建築物におけるエネルギー消費量を、すべての設備の合計値で評価する。
◇ 住宅・建築物に関する省エネ基準適合の義務化に係る法制的な検討を推進

韓国スマートグリッドはポータルによる需要応答と済州島における100億円の実証事業

2010-08-30 06:23:08 | Weblog
韓国知識経済部は2030年までにスマートグリッド構築を推進する計画を立て、その具体化のための活動を推進しています。その活動は、韓国電力によるポータルサイトの運営と済州島における実証の2つよりなっています。
前者は、韓国電力が09年9月に運営を開始したもので、オンラインで15分ごとの電気使用量や電気料金などをリアルタイムで確認できるようになっています。高圧電力を利用する約14万世帯が対象。10年1月から低圧電力利用世帯のうち、遠隔検針が可能な5万8000世帯に拡大しています。20年までにすべての加入者が対象になる予定です。
後者の済州島における実証については、知識経済部が済州特別自治道でスマートグリッド実証団地6000世帯を09年9月に着工し、13年末完成予定です。韓国政府が事業費の50%である580億ウォン(約50億円)を支援しています。実証事業としては、スマートメーターを使用した需要応答、電気自動車と急速充電器・家庭の充電器とのV2G、団地の風力発電・太陽光発電と系統との安定性の確保や余剰電力の融通を行う「スマートリニューアブルシステム」などです。

ミシガン州などでもスマートグリッドは「メルトダウン」が続出

2010-08-29 07:41:47 | Weblog
コロラド州スマートグリッドシティの「メルトダウン」という報道について、以前このブログでご紹介しましたが、アメリカでの類似のケースとしてミシガン州などの例を紹介したいと思います。ミシガン州の公益事業委員会は、電力会社であるコンスーマーズエネジーに対して、スマートグリッドの事業規模を5年間で9億ドルから4億ドルにするよう命じました。これにより、Wimaxを使用したGE製のスマートメーターの配備等が縮小されるのではないかとの危惧が広がっています。
このようにアメリカの州ごとの公益事業委員会の動きとして、スマートメーター、スマートグリッドのプロジェクトに対して、電気料金への転嫁を認めないという姿勢が目立ってきています。メリーランド州の公益事業委員会は、ボルティモア電力ガス会社に対して、電気料金を上げることなく9億ドルのスマートメーター配備を進めるように命じました。また、ハワイ州の公益事業委員会は、ハワイ電力のスマートグリッドのプロジェクトに関して、電気料金の値上げを却下しました。こうした中、電力会社を始めとする関係の企業は、「ビジネスモデル」の再構築に迫られています。
こうした公益事業委員会の動きとともに、スマートメーター、スマートグリッドに関する電力会社をめぐる厳しい環境として、スマートメーターに関する訴訟の提起があります。カリフォルニアの電力会社であるPG&Eとテキサス州の電力会社であるオンコーは、スマートメーターの計測による電気料金徴収が過大であるとして住民から訴訟を提起されています。
このように、「ユーザ」や「ビジネスモデル」が不在なまま連邦政府による34億ドルの支援を当て込んで進めてきたアメリカのスマートメーター、スマートグリッドのプロジェクトの一部に関して、問題が顕在化しているというのが実情です(こちらをご覧ください)。これから、スマートコミュニティ実証事業を進める日本としては、「他山の石」として多くの教訓を学ばなければなりません。

成長支援政策に踏み切った日本銀行の措置の歴史的意味

2010-08-28 12:36:05 | Weblog
「流動性の罠」に陥っている日本経済がその苦境から脱出するためには、従来このブログで指摘しているように、「自然利子率」を上昇させることが必要です。日本銀行では、政策委員会・金融政策決定会合において、日本経済の成長基盤強化の観点から、成長基盤強化を支援するための資金供給を推進しています(こちらをご覧ください)。それによると、金融機関に対して貸出期間が原則1年の資金を政策金利で供給をすることとし、貸し出しに当たっては、金融機関に成長基盤強化につながる取り組み方針の提出を義務付けるとしています。
 中央銀行がこうした成長支援政策に踏み切るのは、伝統的な中央銀行の役割論を超えるものですが、これは、自然利子率そのものを上昇させる効果を有するものではありません。そのための環境条件を整備するためのものです。

5分で済む超高速充電システムが10年度中に販売

2010-08-27 06:31:57 | Weblog
 JFEエンジニアリングは、10年度中に電気自動車(EV)用の超高速充電システムを発売します。電池容量の50%を充電するのにかかる時間は3分と現行の約5分の1で、ガソリンの給油時間並みに短くできます。ガソリンスタンドなどへの設置費用も4割安い600万円に抑える予定です。
 新システムは、料金が昼間の3分の1程度の夜間電力をいったん大容量の蓄電池に蓄え、特殊なリチウムイオン電池を経由して電気自動車に電力を補充するというものです。
 現在主流の急速充電器は充電時間を短縮するために、通常オフィスや店舗で使う設備より容量の大きな受電設備が必要です。このため、ガソリンスタンドなどで照明や空調といった設備も同時に動かすのに受電容量設備の増強が必要となり、1000万円程度の設置費用がかかります。
 これに対して、今回のJFEエンジニアリングの製品は一般的な店舗で使う受電容量で動くため、電力の基本料金を変える必要がありません。ガソリンスタンドなどは電気代を年90万円程度節約できるといいます。
 ただ超高速充電するには、EV側の制御ソフトなどを変更する必要があるため、JFEエンジニアリングは新システムの普及に向け、国内外の自動車メーカーなどに連携を働きかける考えです。

情報処理学会会誌に私(元東京大学大学院客員教授)の論文が掲載されました

2010-08-26 00:10:35 | Weblog
情報処理学会会誌の10年8月号「特集 エネルギーの情報化」に、私の論文「『エネルギーの情報化』を実現するソーシャルエンジニアリングンに関する一考察」(一般社団法人スマートプロジェクト、元東京大学大学院)が掲載されました(こちらをご覧ください)。「オンライン電力ネットワーク」を提唱し、けいはんなで実証している京都大学の松山教授がとりまとめの論文を書いておられます。
お読みいただければ、幸いです。

スマートグリッドの光と影: コロラド州スマートグリッドシティの「メルトダウン」から我々は何を学ぶか

2010-08-24 05:06:56 | Weblog
 コロラド州ボールダーのスマートグリッドシティが暗礁に乗り上げているということを書きましたが、8月21日の読売新聞の社説は、スマートグリッドの光と影について、論じています。ただ結論としては、光を強調しているだけで、影の克服については、何も触れていません。これは、現段階での日本のスマートグリッド論の貧困を表しています。
 読売新聞社説は、日本の実証事業4地域の総事業費が1266億円と見積もられていることを紹介していますが(これとて、コロラド州ボールダーのスマートグリッドシティと同様いずれ上昇する可能性もあります)、この事業費は「ユーザ」サイドからの見積もりではありません。しかも、この費用のねん出には、税金を起源とする国や自治体のお金、民間の投資資金が必要です。このお金は、「ユーザ」にとって負担ゼロのお金ではありません。むしろ、税金あるいは料金という形で「ユーザ」に跳ね返ってくるお金なのです。
 したがって、そこに必要となるのは、「ユーザ」の負担をできる限りなく少なくするため、「ムーアの法則」(半導体の性能対価格比が18カ月ごとに半減するという現象が長期にわたって継続するという経験則)と「メトカ―フの法則」(ネットワークの価値は参加するユーザの数の2乗に比例して相乗効果で高まっていくという経験則)が作用する環境を創造することによる「真の革命」の演出、その下での「ユーザ」の負担を上回る便益の提供であり、それを可能にするための事業者の「ビジネスモデル」なのです。今、日本のスマートグリッド論には、「ユーザ」の姿がまったく登場しません。また、アメリカのIT系企業、電気自動車系企業等とは異なり、残念ながら、本気で「ビジネスモデル」を構築しようとしている事業者も、ほとんどいない状況です。
 もちろん、化石燃料依存からの脱出、再生可能エネルギーの導入、原子力とのベストミックス、地球温暖化防止などの、公益的な目的の達成は必要です。しかし、「ユーザ」や「ビジネスモデル」不在では、こうした公益目的の達成は不可能であり、ましてや日本で「スマートグリッド革命」を起こすことはできません。
「スマートグリッド革命」は、IT(情報通信技術)とET(エネルギー技術・環境技術)が融合したST(スマートテクノロジー)による「ST革命」です。では、「ST革命」を推進する上で最も必要なことは何でしょうか?私が代表を務める一般社団法人スマートプロジェクト(http://www.smartproject.jp/)は、ユーザ指向のボトムアップのイノベーションの創生、テクニカルエンジニアリングよりも重要なソーシャルエンジニアリングの実行等であると考えます。IT革命が「革命」と言える現象になったのは、この条件が初期段階で整備され、「ユーザ」と「サービスプロバイダー」との相互作用やそれに伴う「ビジネスモデル」が構築され、「ユーザ」と「サービスプロバイダー」のウィン・ウィンの状況、各種の「サービスプロバイダー」間の競争と協調のダイナミズムが生まれたからです。そして、膨大な数のユーザがネットワークに容易に参加できる状況が生まれたことにより、「ムーアの法則」と「ムーアの法則」と「メトカ―フの法則」が作用する環境が産み出されたのがIT革命の実相です。
 IT革命勃興時においては、シリコンバレーにおいて誕生した「スマートバレー公社」(ジョン・ヤング会長(元ヒューレット・パッカードCEO)、ビル・ミラー副会長(スタンフォード大学教授)、ハリー・サール社長(起業家))がインターネットの民生利用のパイロット&ファシリテーターとして機能し、条件を整えました。「スマートバレー公社」は非営利の民間会社として認められた簡素で柔軟な組織体であり、数名の事務局で構成されていました。実際の活動は、「コマースネット」(インターネットを活用した商取引)、「スマートスクール」(インターネットを活用した教育)、「テレコミューティング」(インターネットによるテレコミューティングの促進)などのプロジェクトをコンソーシアム方式で推進することで遂行されました。
 いま時代は、IT革命からそれを包摂する「ST革命」への移行という大変革期にあります。一般社団法人スマートプロジェクトは、「ST革命」のパイロット&ファシリテーターとして、IT革命時の「スマートバレー公社」に相当する機能を果たすことを使命としています。この点の詳細は、こちらをご覧ください。

コロラド州スマートグリッドシティの「メルトダウン」から我々は何を学ぶか

2010-08-23 06:28:27 | Weblog
コロラド州ボールダーで推進されているスマートグリッドシティですが、建設コストが当初の見通しである1530万ドルを大きく上回る4210万ドルとなり、さらに上昇する見通しです。タンニングコストやメンテナンスコツを含めるとさらに多額になると見通されていることから、プロジェクトの行方に暗雲が立ち込める状況になっています。
地元電力会社であるエクセル・エナジーは電気料金の値上げで対応しようとして、09年12月公益事業委員会は一定の電料金値上げを認可しましたが、それ以降においてもコスト上昇が起こるとの試算がなされていることから、「メルトダウン」と形容する報道もあります(こちらをご覧ください)。また、ここから学ぶべき教訓を整理している報道もあります。
日本でも、本年度から横浜市、豊田市、けいはんな、北九州市の4地域でスマートグリッドの実証事業が開始され、別途、総務省からの補正予算に基づく事業も各地域で展開されますが、消費者の理解・関与・アウトリーチのみならず、スマートグリッド実施に伴う費用対効果などを十分に行うべきことを、このボールダーのスマートグリッドシティの事例は示しています。「他山の石」として、われわれはここから教訓を学ぶべきだと思われます。

家庭内個別機器の見えるかを推進するイギリス版スマートタップ

2010-08-22 06:29:57 | Weblog
イギリス版のスマートタップが浸透しているようです。こちらが紹介記事ですが、家庭内の機器ごとのエネルギー使用・CO2排出状況を、クラウド・コンピューティングを活用して「見える化」します。
スタートアップ企業のアラート・ミが提供しているもので、通信方式はジグビー、価格は、最低49ポンド(約7000円)だそうです。