エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

TPP交渉参加と日本経済再生「ミッシングリンクに対して政府は覚醒を!」

2013-02-26 06:48:11 | Weblog
 2月23日に行われた日米首脳会談で、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉への日本の参加に向けて条件が整備されました。報道によると、政府は、TPP参加の場合の輸出拡大等によるプラスの効果と輸入拡大等によるマイナスの効果に関する統一した見解を発表すべく準備を進めており、近日中に、ネットでプラス3兆円、実質GDP0.6%上昇の効果があるとの試算を提示するとともに、3月上旬にも交渉参加表明を行うとされています(2月24日読売新聞など)。
 そこで、TPPへの参加について、日本経済の再生との関係から、政府、エコノミストを含む誰も指摘していない本質的な問題を論じてみたいと思います。結論から先に言うと、「TPP参加は日本経済再生の必要条件ではあるが、十分条件ではない」ということです。参加と同時に、一時的な効果しか見込まれない「アベノミクス」における金融政策と財政政策以外の、日本経済の再生につながる十分条件を整備しなければなりません。

 政府は、上記の十分条件に相当するものとして、6月に成長戦略を提示するとしていますが、成長戦略の力点を政府は「投資」においています。しかし、日本のような資本蓄積の進んだ経済においては、力点は投資ではなく「消費」におかれるべきであり(その理論的な説明に関しては、後述を参照)、その点に配慮していないという欠陥があります。また、デフレ脱却を至上命題とする政府の経済再生策の検討対象として意識されているのは「デフレ」への対処だけで、「流動性の罠」(その裏返しとしての「需要の飽和」。この点に関しては、クルーグマン理論の欠陥を鋭く指摘した、東京大学の吉川洋教授の最新著『デフレーション』が素晴らしい論考です)に対する対処という発想が欠けていることも欠陥です。

 この点に関しては、「エコポイント」(家電エコポイントや住宅エコポイントの発展系。http://www.smartproject.jp/ecopointを参照)やエコポイントをプレミアムとした共通商品券という有効期限付きの価値媒体の流通によってはじめて、「流動性の罠」の下でも貨幣の流通速度を上昇させ、経済を活性化して成長の基盤を形成することができます。

 政府、エコノミストなどの覚醒を促したいと思います。

 なお、以下の主張に関する詳細や裏付けとなる理論にご関心のある方は、私の論考である「スマートグリッドの経済学(その1)-金融政策、財政政策に代わる第3の経済政策を」(http://toyokeizai.net/articles/-/8732/)および「スマートグリッドの経済学(その2)-スマートグリッドの推進により経常収支赤字化を回避せよ」(http://toyokeizai.net/articles/-/9023/)を参照してください。

死線を超えて
エコポイント提唱者 加藤敏春

<TPP参加は日本経済再生の必要条件ではあるが、十分条件ではない>
1 前述のように、「TPP参加は日本経済再生の必要条件ではあるが、十分条件ではない」ということです。参加と同時に、一時的な効果しか見込まれない「アベノミクス」における金融政策と財政政策以外の、日本経済の再生につながる十分条件を整備しなければなりません。この結論は、次のように考えると納得していただけると思います。

<稼いだ外貨を国内で回すようにすることなくしては、過去の失敗の二の舞になる>
2 TPPに参加してアジアや環太平洋諸国の成長力の活用、それらの諸国への輸出の拡大を行うことは、確かに輸出による売り上げ増にはなります。しかし、1990年代後半以来デフレ、特に消費の構造的な減退という問題を抱えている日本経済の問題は、輸出による売り上げにより外貨を稼ぐこと自体ではなく、稼いだ外貨を国内で回すようにすることです。その「回路」が壊れたままでの戦略の展開は、2004年から07年の好況が結果として日本経済を活性化しなかったことの二の舞となります。


<経常収支赤字の場合のファイナンスをどうするか>
3 特に、2015年までに「団塊の世代」600万人が65歳を超えるという状況の下では、国内貯蓄率の低下、国内貯蓄率のゼロ化が起こる危険性があります。ISバランス論からすると、現在の日本の経常収支の黒字は、家計部門の黒字と企業部門の黒字が政府部門の赤字を補って余りあるからこそ実現されているものですが、家計の貯蓄率がゼロになるということは、企業部門の黒字が政府部門の赤字を補えない限り、日本の経常収支は赤字になることを意味します。この経常収支の赤字はどのようにファイナンスするのでしょうか。

そもそも企業部門の黒字が継続するということは、企業が資金を投資に回さないで国債に回している現状が続くことを意味しているのですが、このことは日本経済の成長、それが切り開く未来はないことを意味しています。


<国債市場の暴落も想定しうる>
4 また、家計の貯蓄率がゼロになるということは、家計の貯蓄を預かっている国内金融機関がいずれ国債を買えなくなることを意味します。そうすると起こるのは国債市場の暴落です。国債市場が暴落すれば、株式市場や為替市場も暴落することは必至です。回避する手段としては、世界最大の資金余剰国である中国に日本の国債を買ってもらうか、日銀が直接あるいは何らかの形で間接に国債を大量に購入して買い支えることですが、前者に関しては中国に日本経済の決定権をゆだねるという危険性があり、後者については円に対する国民の信任がなくなり、ハイパーインフレーションを引き起こすという危険があります。「団塊の世代」600万人が65歳を超えることは、こうした大きなインパクトを日本経済に与えるもので、この問題の解決に手をこまねいていては、TPPに参加してより多くの外貨を獲得しても、日本経済は死を迎えることになります。

<2004年から07年の好況期では、企業のコスト削減が「合成の誤謬」により日本経済全体に対してはマイナスの効果を与えた>
5 2004年から07年の好況では、日本経済は、世界経済のかつてない拡大と円安の進行という“幸運”に恵まれました。しかし、外需主導、輸出による売り上げ増を国内の成長に結び付けることはできませんでした。日本企業は「コスト削減の罠」にはまり、株主圧力の増大、新興国の台頭、資源・食料価格の急騰の下で、人件費の削減によりコストアップを吸収しようとひたすら努力しました。これは、1990年代末から2003年までのデフレ期に起こった供給過剰体質が残っていたため、各企業は販売価格の引き上げが売り上げの減少につながることを恐れたためです。

このときの日本経済においては、大企業において非正規雇用の増大とともに、成果主義の導入を広範に進めました。しかし、日本の大企業が進めたのは、本当の成果主義ではなく、成果主義の名の下に一部の人を早く昇進させる一方、多くの人材の昇進を遅らせることで全体の人件費抑制を図るというものでした。その結果、人件費抑制のため若年層での非正規雇用が増大し、若年層から中高年層への所得移転が起こるとともに、将来を担う世代の能力育成にマイナスに作用しました。また、賃金が抑制のため家計の低価格志向が強まり、ますます販売価格の引き上げが困難となりました。


<労働分配率の低下が招いた消費の低迷および企業体質の悪化>
6 この時期の象徴的な出来事は、「春闘の終焉」です。春闘は1990年代末以降形骸化が進みましたが 特に2001年以降は、ベア統一要求が断念され春闘が持っていた賃金底上げ機能が名実ともに崩壊しました。こうして賃金の下方硬直性の仕組みが次々と解体される一方、逆に、賃金の上方硬直性ともいうべき状況が生まれ、労働分配率が低下しました。低すぎる労働分配率は、需要サイドでは、消費の低迷を招くことになりました。

さらに、企業は資本をゼロ・コストで調達していることになることから、過剰投資につながりやすくなるという体質がさらに助長されました。また、供給サイドでは、人材投資の不足や労働者のモチベーションの低下が起こったのです。


<日本における成長戦略の力点は、投資ではなく消費におかれるべき>
7 今の日本には、日本企業の優れた技術力のおかげで国債となっている分を除いても400~500兆円の個人金融資産が蓄積されています。また、毎年十数兆円の金利配当も流入している状況です。この状況の下で必要なのは、外需や輸出だけに目を向けるのではなく、バランスの取れた行動、つまりデフレ、特に消費の減退という問題を直視し、民生部門において需要を喚起するとともに、消費を直接増加させるための対応です。

ちなみに、6月に策定される政府の成長戦略の力点は投資におかれていますが、日本のように資本蓄積が進んだ経済においては、最終需要である消費の拡大なくして投資の伸びに多くを期待することはできず、成長戦略の力点は投資ではなく消費におかれるべきものです。


<アベノミクスにおける金融の大幅緩和の効果は一時的であるばかりか、マイナスの効果もありうる>
8 アベノミクスにおける金融の大幅緩和は、円高デフレに対するカンフル剤としての効果はありますが、日本経済が深刻なデフレに落ち込んだ原因である需給ギャップの拡大という実体経済上の問題に対応した解決策ではないため、マクロ経済政策としての効果は一時的なものにとどまるものと考えられます。

むしろ、企業にとっては資金調達コストが極めて低くなり、事業の収益向上へのインセンティブが働かなくなるという”副作用”により、ゾンビ企業の増大など日本経済を蝕む悪性の腫瘍を増殖させることになりかねません。


<有効期限付きのエコポイントやエコポイントとプレミアム付き商品券の組み合わせが有効>
8 この対応の間で、同時並行的に前述した「回路」を回復する対応が必要となります。そのため、現在政府が行っているように、経済界に売上・利益の増大分を賃金引き上げに回すように要請するだけではなく、正規・非正規の労働者の処遇均衡を誘導すること(就業形態に関わらず、就いている職務に応じて賃金が決まる仕組み)により所得増を実現することが必要です。また、医療、介護、保育、教育、雇用サービスを充実させることで国民の将来不安を払しょくして消費意欲を回復させ、上記で実現した所得増を需要増につなげることも必要となります。
 また、私が提唱している、HEMSやBEMSの推進のための「エコポイント」(http://www.smartproject.jp/hems_bems_ecopoint)という仕組みを活用した消費の直接的な喚起策と民生部門の節電・低炭素化をも必要です。むしろ、日本経済の回生の即効性という観点では、エコポイントの活用にアドバンテージがあります。

政府が直接、間接に元本を保証している預貯金と国債に対して、物価下落率を実効税率とする貯蓄税を課して「流動性の罠」の下でも貨幣が消費に向かうようにすることが提案されています。しかし、被災地である東北にも貯蓄税を適用することは実際上困難であり、東北を除外した制度を構築することは不可能です。また、預貯金と国債に対してだけ貯蓄税を課することは、他の資産やマネーへのフライトを促すことだけになってしまうでしょう。
むしろ、東北の被災地を含む全国各地域で1年程度の有効期限の付いた「プレミアム付き東北・日本再生商品券」(有効期限を付ける代わりに1~2割のプレミアムを付加する。2009年の発行額は1,194億円)を流通させて、消費の拡大と地域経済の活性化を図ることを提案したいと思います。東北の自治体のプレミアム分の負担は、家電エコポイントや住宅エコポイントの時のように、政府が原資を負担してエコポイントにより支援すれば、各地域でその11~12倍の券面額、数兆円~数十兆円規模の「プレミアム付き東北・日本再生商品券」が流通することになります。

<有効期限付きの価値媒体の流通によってはじめて、「流動性の罠」の下でも貨幣の流通速度を上昇させることができる>
9 マクロ経済的には、有効期限付きのプレミアム付き東北・日本再生商品券」が、各家計に退蔵されることなくなく確実に流通することにより構造的な「流動性の罠」の下でも貨幣の流通速度を上昇させることができます。1~2割のプレミアムがついているので、前述の他の資産やマネーへのフライトは起こらないでしょう。そうなれば消費貯蓄選択が刺激されて消費が活性化し、さらに、企業が直面する実質利子率も上昇することにより投資需要を喚起することもできます。

 政府、エコノミストなどの覚醒を促したいと思います。
 なお、以上の主張に関する詳細や裏付けとなる理論にご関心のある方は、私の論考である「スマートグリッドの経済学(その1)-金融政策、財政政策に代わる第3の経済政策を」(http://toyokeizai.net/articles/-/8732/)および「スマートグリッドの経済学(その2)-スマートグリッドの推進により経常収支赤字化を回避せよ」(http://toyokeizai.net/articles/-/9023/)を参照してください。

【スマート連載】日本にスマート産業クラスターを形成せよ

2013-02-21 06:42:16 | Weblog
 毎週「環境ビジネスオンライン」にウェブ連載している「見えてきたスマートグリッドの現実」に、「日本にスマート産業クラスターを形成せよ」を掲載しました。

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 スマートグリッド、スマートコミュニティに関する新産業の創生やイノベーション(=スマートイノベーション)について解説していますが、今回は、その3回目として「日本にスマート産業クラスターを形成せよ」について解説します。項目としては、1. 「ビジネス・エコシステム」に基づく「スマート産業クラスター」、2.スタンフォード大学と数多くの起業家の存在、3. ベンチャーキャピタルやエンジェルによるリスクマネーなどの供給、4.ナスダックなどの新興株式市場における資金調達メカニズム、5.サポート人材の存在と人材供給メカニズム、です。

●「ビジネス・エコシステム」に基づく「スマート産業クラスター」

 前回の連載「シリコンバレー・モデルのダイナミズムを取り入れよ」(http://www.kankyo-business.jp/column/004145.php)で「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムについて解説ましたが、シリコンバレーがここまで育つに至った背景には、以下に述べる6つのインフラ要素が考えられます。

 これらの要素が一定範囲の地域に集積したベンチャー企業群である「産業クラスター」を支える構造を形成し、生態系のような「ビジネス・エコシステム」(Business Ecosystem)となっていることが特徴です。「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムを日本に取り入れるためには、このような「ビジネス・エコシステム」に基づく「スマート産業クラスター」を形成することが必要です。

●スタンフォード大学と数多くの起業家の存在

第1は、優秀な大学や、研究機関の存在していることです。シリコンバレーではスタンフォード大学、カリフォルニア大学バークレー校、サンノゼ州立大学、サンタクララ大学などシリコンバレーの成立には欠かせない大学があります。さらに数多くのコミュニティカレッジが高度なスキルを身につけた人々を送り出してきています。シリコンバレーの創始者ともいうべきヒューレット・パッカードを初め、近年ではヤフーを創立したジェリー・ヤング、グーグルを創立したセルゲイ・ブリン、ラリー・ページらはともにスタンフォード大学出身です。

また、SRIインターナショナル、PARC(2002年まではXEROX PARC)、EPRIといった優れた研究機関も同様にシリコンバレーの発展に大きく寄与しています。

第2に、多くの起業家が活動し、それを支える健全な起業家精神が根付いていることがあげられます。シリコンバレーの大学、研究機関から生まれたベンチャー企業がこれらの大学・研究機関から多くの起業家予備軍を雇い、さらに多くの起業家が生まれるためのトレーニング・グランドを提供しています。また、多くのベンチャー起業家は、自らの成功体験、あるいは失敗経験をもとに研究会、勉強会、セミナーなどを開催し、さらに次のベンチャーを立ち上げるべく活動しています。



(以下、略) *全文は以下にアクセスするとご覧になれます。
→http://www.kankyo-business.jp/column/004204.php

通信・放送の大変革とスマートグリッド

2013-02-18 09:20:00 | Weblog
毎月分散型エネルギー新聞に連載している「日本を変えるスマート革命」に、新テーマとして「通信・放送の大変革とスマートグリッド」を掲載しました。
項目としては、1.世界最大の家電ショー「CES」でも脚光、2.「エネルギー・ハーベスティング」も展開、3.「プローブカー」はV2Gなどとネットワーク化へ、4.「通信・放送融合時代」におけるインターネットとスマートグリッド、5.個人が主導した新しいビジネスモデルも登場、6.電波の割り当て進展と「スマートハウス」や「スマートオフィス」です。
全文は、以下の通り。ご関心があれば、お読みください。

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「日本を変えるスマート革命」:その18~通信・放送の大変革とスマートグリッド~

スマートプロジェクト代表&エコポイント提唱者
加 藤 敏 春

 今回の連載においては、通信・放送の大変革という視点から、スマートグリッドにおける新たな展開を解説してみたいと思います。「モノのインターネット」と「通信・放送融合時代」の2つがキーワードになります。

●世界最大の家電ショーCESでも脚光
 「モノのインターネット」は従来の「ユビキタスネット」とも通じるところがありますが、ターゲットはより明確で、RFID技術などを使ってあらゆるものをインターネットに接続しようというものです。M2M(Machine-to-Machine)とも呼ばれます。欧州が言い始めた「モノのインターネット」については、中国も注目しており、国際標準化を目指す動きも活発になっています。
 2013年1月に開催された世界最大の家電ショーであるCES(アメリカのアリゾナ州ラスベガスで開催。Consumer Electronics Show)でも、エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの家電やモバイル端末などの小型機器に「モノのインターネット」(IoT: Internet of Things)の無線通信機能を組み込み、それらを相互に接続することで、より便利な「スマートライフ」を実現しようとするコンセプトのデモンストレーションが随所で見られました。

●「エネルギー・ハーベスティング」も展開
 「モノのインターネット」を実現するために必要な技術が「エネルギー・ハーベスティング」です。膨大な数のモノをインターネットに接続する場合に、その電源を、交換が必要な電池に頼るわけにはいきません。長期間、燃料補給や交換をせずに電力を供給し続ける技術として、周りの環境から集めたエネルギーを電力に変換するのがエネルギー・ハーベスティングですが、ここで「モノのインターネット」はエネルギーと結びつきます。

●「プローブカー」はV2Gなどとネットワーク化へ
 最近「モノのインターネット」として注目されている分野に「プローブカー」があります。通信モジュールを使って、GPSの位置情報とともに車の速度、ワイパーのスイッチ、ABS、エアバッグなどの各システムの作動状況をセンターに送信し、センター側ではその収集データを加えることで様々な情報として再利用するものです。
 ゆくゆくは、「スマートハウス」、「スマートオフィス」やそれらと電気自動車・プラグインハイブリッドカーを接続するV2G(Vehicle-to-Grid)、さらには「プローブカー」などがネットワーク化されていくものと考えられます。

●「通信・放送融合時代」におけるインターネットとスマートグリッド
 日本においては、改正放送法、改正電波法が2011年7月より施行され、世界に先駆けて「通信・放送融合時代」を迎えています。その内容は、一つの免許で通信と放送の両方に使える融合電波制度の導入、電波免許会社と番組会社を分けることができるハード・ソフト分離の実現、通信と放送のサービス層とコンテンツ層の一般化などという画期的なものです。
 これにより、「端末はマルチデバイス」、「伝送路は融合ネットワーク」、「サービスはソーシャルサービス」という3点で構造変化が加速化されており、それをIPV6やクラウドコンピューティングがサポートするようになってきています。このうちソーシャルサービスに関しては、ツイッター、フェイスブックなど広告を収入源とするもののほか、GREE、モバゲーなどのソーシャルゲームが登場し、射幸心をあおるアイテム課金というビジネスモデルも出現しています。今後、スマートフォンの普及に伴い様々なビジネスモデルが登場することでしょう。

●個人が主導した新しいビジネスモデルも登場
さらに驚くべきは、個人が主導して新しいビジネスモデルを誘発するという現象も起こっていることです。2011年3月11日東日本大震災が発生した20分後から、ある中学生がスマートフォンにより撮影したNHKの震災情報をUストリームで配信を開始し、これが事後的にNHK、TBS、フジテレビなどを動かし、Uストリームを利用した番組の再配信が実現するようになりました。中学生のとっさのひらめきが大放送局を動かしたという画期的な事件です。
これらは、スマートグリッドの世界においても「スマートハウス」や「スマートオフィス」の実現という点を中心として、大きなインパクトを及ぼすものです。

●電波の割り当ての進展と「スマートハウス」や「スマートオフィス」
2011年7月より地デジへの移行が完了し、これまでアナログで使っていた周波数帯域が新しい通信・放送融合メディアのために使えるようになりました。また、福島県南相馬市の「南相馬チャンネル」に対しては、「ホワイトスペース」(白地)を活用して免許の交付がなされました。
さらに、スマートフォンの普及でパンク状態にある携帯の電波に関しては、12年3月、プラチナバンドと呼ばれる900メガヘルツ帯がソフトバンクに割り当てられ、続いて壮年8月には、700メガヘルツ帯の電波、オークション的な手法により3.9世代のLTEなどに割り当てられました。さらに第4世代の携帯に対しては、オークションにより周波数の割り当てが行われる計画です。
 こうした「通信・放送融合時代」におけるインターネットが「スマートハウス」や「スマートオフィス」を中心としたスマートグリッドの進展に対して、大きなインパクトをもたらすことは間違いありません。

国際スマートグリッドEXPOにおいて講演します。

2013-02-13 10:00:28 | Weblog
2月27日から3月1日に「国際スマートグリッドEXPO」(スマートグリッド関係では日本最大。http://www.smartgridexpo.jp/)が開催されますが、2月28日の「需要応答」(デマンドレスポンス)に関するセミナー(15:30~18:00)において、「日本における需要応答の動向」について講演します(日米同時通訳付き)。講演者は私のほか、EnerNOCの共同創設者であるブリュースターさん、日本IBMの梅田さんです。
詳細や申し込み手続きは、こちら(http://www.smartgridexpo.jp/の「セミナー」の欄)。


[講演内容]

日本においては、2012年夏よりデマンドレスポンスがスタートし、電力会社向けにサービスを提供するアグリゲーターが登場するとともに、新電力によるユーザへのサービス提供も開始された。民間のビジネスモデルの形成、家庭部門への対象拡大、スマートメータ導入前の課題の解決など問題も多くあり、13年夏以降の展開がポイントとなる。日本におけるデマンドレスポンスの今後の展開を解説する。

スマート国民総発電所のモデルである足利市が節電エコポイントを開始

2013-02-06 06:41:51 | Weblog
スマートプロジェクトが推進している「スマート国民総発電所構想」(http://www.smartproject.jp/conception)のモデルである足利市が、「足利市民総発電所構想」(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/souhatsuden.html)の一環として「節電エコポイント」事業を開始しました。

 2013年1月から3月までの期間中に市民がHEMS等により節電した電気使用量に応じて「節電エコポイント」(http://www.smartproject.jp/hems_bems_ecopoint)を付与し、足利市の共通商品券である“輝きチケット”と交換できるもので、市民によるネガワットを発展させるとともに地域経済活性化にもつなげるものです。

 この足利市の節電エコポイントの原資は、総務省の支援を得て推進されている「スマートグリッド通信インターフェイス導入促進事業」(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/sumakettei.html)による公共施設の電気代削減分などより賄われ、同市の負担なく持続可能な形で推進されるものです。

→足利市の節電エコポイント事業の詳細に関しては、こちら(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/page/setsudenaction.html)。


→大豆生田(おおまみゅうだ)市長のコメント「最大10倍還元する節電エコポイント始めます」に関しては、こちら(http://www.city.ashikaga.tochigi.jp/site/sityo/ichigoichie201301.html)。

連載「シリコンバレー・モデル&のダイナミズムを日本に取り入れよ」を掲載

2013-02-05 06:56:59 | Weblog
毎週「環境ビジネスオンライン」にウェブ連載している「見えてきたスマートグリッドの現実」に、「シリコンバレー・モデルのダイナミズムを日本に取り入れよ」を掲載しました。その書き出し部分は、以下の通りです。

                ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

スマートグリッド、スマートコミュニティに関する新産業の創生やイノベーション(=スマートイノベーション)について解説していますが、今回は、その2回目として「シリコンバレー・モデルと自動車関連ベンチャー」について解説します。項目としては、1.「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムを日本に、2.伸長する自動車関連ベンチャーと「シリコンバレー・モデル」、3.「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムの源泉、です。


●「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムを日本に
前回の連載「スマートバレーへと変貌したシリコンバレー」(http://www.kankyo-business.jp/column/004085.php)で指摘したように、安倍政権における最大の政策課題である日本経済の再生のために、スマートグリッドによるイノベーション創出が必要不可欠になっています。そこで私が提案したいのは、電気自動車などに関する新しい需要を創出しながらイノベーションを持続させる「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムを日本に取り入れることです。
そのためには、「シリコンバレー・モデル」のダイナミズムの本質を解剖してみることが必要です。イノベーションが持続するために「需要創出」が重要であることは論をまたないのですが、それをビジネスモデルの革新に結び付け、ダイナミックな展開につなげるのが「シリコンバレー・モデル」の“モデル”たるゆえんです。

●伸長する自動車関連ベンチャーと「シリコンバレー・モデル」

写真は、シリコンバレーにおけるベンチャー企業の典型といえる電気自動車メーカー、テスラ・モーターズの主力製品Model Sですが、「シリコンバレー・モデル」がこうした自動車関連ベンチャーなどの隆盛を支えています。

(注)テスラ・モーターズの主力製品Model Sの写真


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BA

では、その「シリコンバレー・モデル」が情報通信技術やエレクトロニクスとは一見係わりの無い自動車関連ベンチャーなどの分野で現在なぜここまで脚光を浴びるようになったのでしょうか?
それは、これまで長い年月を経てシリコンバレーで培われたエレクトロニクス、情報通信技術、材料技術、ナノテクノロジーなどの技術の多くが、実は太陽電池、蓄電池、燃料電池、バイオ燃料、先端的電池、電力制御技術など、グリーンテックの多くのアプリケーションの要素技術でもあるからです。
  


(以下、略) *全文は以下にアクセスするとご覧になれます。
→http://www.kankyo-business.jp/column/004145.php

国際スマートグリッドEXPOにおいて講演します

2013-02-04 07:00:52 | Weblog
2月27日から3月1日に国際スマートグリッドEXPO(http://www.smartgridexpo.jp/)が開催されますが、2月28日の「需要応答」(デマンドレスポンス)に関するセミナー(15:30~18:00)において、「日本における需要応答の動向」について講演します(日米同時通訳付き)。講演者は私のほか、EnerNOCの共同創設者であるブリュースターさん、日本IBMの梅田さんです。

詳細や申し込み手続きは、こちら(https://www.r-exhibit.jp/exhibit3/SeminarNavi/seminar_detail.aspx?htVal={"m":"SG","ses":"SG-4","k":"2","l":"0"})。