エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う』 への反響:効エネルギー日記より

2011-06-30 07:04:25 | Weblog
「効エネルギー」日記(http://d.hatena.ne.jp/YSER/)6月28日の記述より: 節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う

これは友人が最近出版した本の題名である。彼の名前は加藤敏春。1990年代インターネットが米国で導入され始めた頃、駐サンフランシスコ総領事館で掲載担当領事をしていて、シリコンバレーでどのようにインターネットが開発され社会を変えていったかを、通産官僚としてつぶさに調べ、その動きを日本にも持ち込もうと努力していた。その頃、同様な発想で動いている民間グループが日本にあった。シリコンバレーで極めて大きな成果を出したNPO、スマートバレー・インクにちなんで、スマートバレー・ジャパンと称したNPOだ。その趣旨に賛同して自分も参加していたことから、彼と知り合いになったのだ。

福島原発の事故後に起きた電力不足。それへの対応策として日本へのスマートグリッドの導入が大きな関心を集めるようになった。彼は事故のずっと以前から、スマートグリッドは、インターネットに勝るとも劣らぬ変革を社会に与えるはずだと考え、自らスマートプロジェクトという組織の代表として、啓蒙だけでなく関連企業を引っ張り込んで具体的な社会変革活動をしてきたのだ。昔通産省(現在の経産省)のお役人だっただけあって人脈が広く、その理論は説得力があり行動力もある。エコポイントを提唱して実施させたのも彼だ。

そして、単なるスマートグリッドの概論ではなく、いま日本が直面している電力不足へ短期的に対応する方策、中長期的に目指すべき施策をきめ細かく述べた本書を今月出版した。スマートパワーがこの苦境を脱する鍵だとし、具体的な方策を多面的に紹介しているが、日頃自分が力説している効エネルギーも語っている。やみくもにエネルギー消費を減らそうとするのではなく、エネルギー消費の効率を上げることで、自然に日本全体のエネルギー消費量が下がるように社会全体が知恵を働かせなければいけないと主張している。

新書版だが簡単に読み飛ばせる本ではない。急に出現したエネルギー不足への対応には、スマートグリッドの導入が不可欠だが、それ以上に重要なものは、日本人の英知と創意工夫、熱意だとする彼の主張に同感し、ここで紹介する次第。角川書店から出ていて724円。この2倍の値が付いていてもおかしくない濃さがある。

V2Gでも様々な関連ビジネスが登場

2011-06-29 07:10:12 | Weblog
V2Gに関しては、家庭のコンセントに接続して充電するという機能だけでなく,様々な情報のやりとりをクルマと家庭を接続して行おうという発想の下にさまざまなビジネスが展開され、ベンチャー企業も登場しています。また、このV2Gの世界でも、最近ではグーグルとマイクロソフトが参入してつばぜり合いを繰り広げています。09年9月15日、マイクロソフトは電気自動車向け電池の交換サービスを手がけるベタープレイスやインテルとともに、充電システムの開発を明らかにしました。その後、グーグルも対抗するように、同様のソフトウェアを開発中と公表しました。両者のつばぜり合いは、今後も激しさを増すことでしょう。
HEMS・BEMSとV2Gの両者が結合した分野には、今後続々と新しいビジネスモデルが登場するでしょう。たとえば、プラグインハイブリッド車や電気自動車への充電のため、充電スタンドがこれまでのガソリンスタンドよりも数多く必要となります。そのために、電気スタンドの場所をナビゲーションする機能が求められたり、車の走行経路のログを取得しお勧めの経路や店等を推薦するようにウェブとの連携が強化されていくことが予想されます。また、近い将来、プラグインハイブリッド車や電気自動車から手軽にインターネットに接続し、音楽やゲーム、映画などを取り込み、車中でパソコンよりも大きな画面で楽しむという「スマートフォンの車版」といった使い方も登場するでしょう。

需要応答の効果がポイント

2011-06-28 00:04:16 | Weblog
スマートメーターは、日本においても大量に導入されつつありますが、アメリカは、スマートメーターによる需要応答に関して国家的取組みを進めています。07年EISA法は、3段階で需要応答を推進することを政府に求めています。第1段階は、州ごとに需要応答の可能性をアセスメントすることで、この段階は09年6月に終了しました。第2段階は1年以内に推進計画を策定することで、すでに同年10月にドラフトが公表されています。第3段階は、これを受けて連邦エネルギー規制委員会(FERC)とエネルギー省(DOE)が議会に対して、具体的な実施提案を提出することになっています。
スマートメーターを積極的に導入しているカリフォルニアSCE社の試算では、スマートメーターの導入効果(26年の効果を現在価値に換算)として電力業務の効率化効果と省エネ効果だけを見込んだ場合には費用の方が効果を上回るが、洗練された需要応答効果を見込むことでその効果が現行の運営費用を上回り、総じて、効果の方が費用を上回るとされています。
需要応答効果を洗練した形態でうまく発揮することが、スマートメーター導入の成否を左右するといっても過言ではありません。日本でのスマートメーターの導入は、電力業務の効率化効果と省エネ効果に着目して進んでいますが、本来は洗練された需要応答効果をいかに生み出すかというユーザの視点から取り組まれる必要があります。 

イマイチ一般からは注目されてこなかったスマートグリッドやチェルノブイリ原発を解説した好著

2011-06-27 06:51:21 | Weblog
拙著『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』に対するアマゾンのカスタマーレビューから。

これまでイマイチ一般からは注目されてこなかったスマートグリッド。というより普通に暮らしていると目にも耳にも入る機会は少なかったと思う。しかし 3.11以降、普通に暮らせなくなった今、計画停電、放射性物質拡散という我々生活者に及ぼす直接的被害、恐怖の反動として一般にも徐々に関心が広がってきているようだ。多くは、自然エネルギーへシフトする解として、有識者、反原発のオピニオンリーダーたちが「スマートグリッド」というワードを発信し始めたおかげではないだろうか。
しかし、いざ関心をもってスマートグリッド関連の本を手に取ってみると中身は難解。そのような状況下で、発刊された本書。スマートグリッドについての基礎情報、スマートメーターの情報は誰のもの?という素朴な疑問から、各国各地、最新の企業の取り組みなど、手軽に“今”の動向を横断的に知ることができる。ざっと 200ページ少々なので、すぐ読める。
本文中に突如、筆者のチェルノブイリ視察の章が挟み込まれ、本書としてのスパイスになっているのだが、日本の現状を重ねると、次世代に引き継がれる被害に背筋が凍る思いがする。高度成長からはじまった豊かさを享受してきた我々は、いまこの機に最大のイマジネーションを働かせ、新しい未来に向けた舵を切っていかねばならない。私たち一人ひとりが電力供給者となり得る「You Energy」もその解答のひとつだと思う。

市民の視点からの『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』に対するカスタマー・レビュー

2011-06-24 06:13:58 | Weblog
市民の視点から、拙著『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』に対するアマゾンのカスタマー・レビューも掲載されました。

 2009年の米国オバマ政権の「グリーン・ニューディル政策」以来、世界的に機運が高まったスマートグリッドでしたが、日本では、一般的に「ノリ」がいま一つであったように思います。その原因のひとつは、電力や通信などのサプライヤーサイドの事として、一般市民には、あまり興味関心を引けなかったのではないでしょうか。
 でも2011年3月11日に発生した東日本大震災によって状況は一変しました。我々をいま「電力不安」とも言うべきものが覆っています。 この3.11以降の長期化する電力使用抑制社会に対し、私たちは不安におののき、暗く沈み込むばかりではなく、現実的な解決戦略を必要としています。加藤敏春著「節電社会のつくり方」は、電力供給側だけではなく、家庭や会社など電力ユーザーの積極的な参加を可能にする、エネルギーシステムとしてのスマートグリッドが、いま問題解決のための有効な武器であることを、わかりやすく明らかにしてくれます。
 そしてまた、緊急対策の「節電」を超えて、前著「スマートグリッド革命」の中で、すでに著者が展開いていた<スマート国民総発電所構想>が、ポスト3.11のいまこそリアリティをもって浮かび上がってきます。『復興』を単に元に戻すことではなく、新しい社会創造と捉えたとき、<スマート国民総発電所構想>は、市民参加の可能性として希望を与えてくれます。エネルギーに関わる人はもちろんのこと、特にフツーの人に、読んで、考えていただきたい一冊。


拙著『節電社会のつくり方ースマートパワーが日本を救う!』に対する反響:その3

2011-06-23 06:34:36 | Weblog
再び、少し面映ゆいのですが、6月10日に刊行した拙著『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』に対するレビューがまたアップされました。

電力自由化の予感

この本は、未曾有の大震災を体験して100日目を迎え、いまだ福島第一原発事故の恐怖に怯える私たちに立ち上がる勇気を与え、歩き出すために肩を貸してくれる、そんな本だ。
著者加藤敏春氏は15年にわたり、地域(コミュニティー)と経済(エコノミー)と環境(エコロジー)の課題は同源(つまるところ人)で繋がっていて、その解決策としてエコマネー、エコポイントを提唱、自ら日本中で実践してきた人物だ。 ”エコミュニティー”(エコロジー、エコノミー、コミュニティーをかけた加藤氏の造語)活性化の実現のために、彼はこれまでの人に加えて、スマートグリッドによるエネルギーの視える化、オンデマンド化、そして双方向化が起爆剤になるという。それは電話からインターネットの道を歩んだ通信の世界と同じだが、末端につながる端末の数で言えば、インターネットの数百倍のスケールで、経済的なインパクトも極めて大きいという。そしてそこで流通する省エネ創エネの価値単位としての省エネ・エコポイントが節電社会を作ると同時に地域経済の活性化をもたらしてくれるという。
とても平易に書かれたエネルギー革命のための入門書。ストーリーの明快さもあってあっという間に読了した。立ち上がり歩き始める勇気をいただいた。

“ウィン・ウィン”を産み出す政府によるディカプリング

2011-06-21 07:47:08 | Weblog
思えば、供給が一方的に需要に合わせるという従来の電力ネットワークの考え方は、需給双方に負担を強いるものとも言えます。地域独占を保証された供給側は、供給責任を果たすためにピーク需要に合わせて発電設備を保有しなければならず、必然的に設備の稼働率は下がり、コストは上昇せざるをえません。そうなると、需要側も低稼働率ゆえのコストアップを反映した高い電気料金を受け入れざるを得ないなります。これに比して、供給側のみならず需要側からの要請も入れた電力ネットワークであるスマートグリッドは、供給側と需要側の“ウィン・ウィン”の状況を産み出す可能性を切り開くものです。
このようなスマートグリッドによる“ウィン・ウィン”の状況は、電力会社が通信キャリアモデルで“蛙とび”(リープ・フロッグギング)をすれば可能となります。09年6月の米連邦エネルギー規制委員会(FERC)スタッフ報告書によると、19年に最大188ギガワット(GW)、20%の負荷平準が需要応答 により実現することができると報告されていますが、通信キャリアの世界では、通信時間、通信距離、通信計画に基づいた通信レートにより料金体系を設定しており、分単位で料金設定を変えた料金体系を設定するという「リアルタイム・プライシング」(Real Time Pricing)は当たり前のことです。 
この考え方をスマートグリッドの需要応答 により実現すれば、電力会社は収益を向上させることができます。このことは、すでに通信キャリアが実践して証明して見せたところであり、電力会社は儲かるビジネスモデルへと容易に“蛙とび”できるのです。この効果については、アメリカの場合では、ユーザが払う電気料金の低廉化のみならず電力会社のインフラコストがキロワットアワー当たり25~45セント節約されると試算されています。
現状では、アメリカの電力会社の多くは固定料金制のみをユーザに提供しており、使用時間帯別の料金設定にはなっていません。しかし、アメリカでスマートメーターによる需要応答の効果を実証したものとして、米DOEの国立研究所であるPacific Northwest National Laboratoryが08年に行ったGridwise Olympic Peninsula Demonstration Projectがあります。これは、5分間隔のリアルタイム・プライシングによる効果をブロードバンド環境で実証したものです。実証の結果、ピーク電力を15~17%減少させ、平均的な家庭で15%電気料金が安くすることができるとことが明らかになりました。
このようになれば、電力会社側にもよりスマートな電気の使い方を提案する新しいビジネスチャンスが生まれることになります。これらの結果として、省エネルギーやCO2削減を意識したライフスタイルが定着すれば、環境負荷の低減という社会としての課題解決にもつながります。また、それに対応した家電製品への需要が高まれば、新しい市場の開拓が進み、産業面から見ても大きな需要創出効果が望めることになるでしょう。このように、需要応答 はユーザ、電力会社、経済、社会というすべてのステーク・ホルダーに対してメリットを提供しうる“ウィン・ウィン”の仕組みを提供するものなのです。
ただし、スマートグリッドの進展は、短期的には電力会社の売り上げを減少させることも事実です。このため政府としては、電力会社の売り上げと利益を「ディカプリング」するための規制上のインセンティブ、設備投資に対する減価償却の特例などの措置を講ずる必要があります。この場合、キロワットアワー当たりだけではなく、キロワット当たりでインセンティブを付与する方式をとると促進効果が高まります。

拙著『節電社会のつくり方ースマートパワーが日本を救う!』に対する反響:その2

2011-06-20 06:48:42 | Weblog
少し面映ゆいのですが、6月10日に刊行した拙著『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』に対するレビューがまたアップされました。

ネット関係者こそ読むべき

「スマートグリッド革命」(NTT出版)で、エネルギー・ネットワークのパラダイムシフトの本質を描き切ったエコポイント提唱者の最新作。東日本大震災からの復興の道筋をスマートグリッド革命で示したビジョンを元に具体的に語る。夏を迎えるにあたり、マスコミに頻繁にも登場するキーワード「節電」。その効果を「ネガワット(省エネ)」ととらえ、太陽光パネルなどによる発電「ポジワット(創エネ)」と同等の価値と位置づけ、ネガ・ポジ両面で誰もがエネルギー・ネットワークに参加できる自律分散型の「スマート国民総発電所」実現が復興の鍵と説く。
孫正義氏の自然エネルギー財団設立に象徴されるように、震災後、ネット関係者のエネルギー・ネットワーク、スマートグリッドへの関心は急速に高まり、自分事になりつつある。こうした方々にぜひ本書を手に取っていただき、さらに「スマートグリッド革命」を併読いただきたい。エネルギー・ウェブ時代の主役はあなたかもしれないのだから。

『節電社会のつくり方ースマートパワーが日本を救う!』に対するレビュー第1号

2011-06-19 07:09:34 | Weblog
6月18日アマゾンのカスタマーレビューに、10日に刊行された拙著『節電社会のつくり方―スマートパワーが日本を救う!』に対するレビュー第1号がアップされました。

By Vic (名古屋市)
2011年3月11日に発生した東日本大震災により節電が非常に重要になっていました。本書は、節電社会の何をすべきか、今後節電に向けてスマートグリッドがキーワードになることを説明しています。震災以前からスマートグリッドは、次世代のインフラになると注目されていました。筆者もスマートグリッド推進の第一人者として本を執筆されています。そのため、スマートグリッドがいかに重要なインフラであるのか理解するには有用な本だと感じました。インフラ整備関係に従事する公務員や建設コンサルはもちろん、エネルギー問題に関心がある方にはオススメです。

HEMSやBEMSの加速化基盤が必要

2011-06-17 06:25:54 | Weblog
HEMSやBEMSを推進するためには、エネルギーナビ、タップセンサなどの機器により家庭・オフィスでのエネルギー使用状況を計測し、そのデータを知識として構造化・体系化して、「省エネコンシェルジュ制度」(資格を取得した民間人材が消費者の節電・省エネをきめ細かく、無償でアドバイスする制度)が活用するという社会システムを構築することが必要です。
エコポイントのインセンティブとしての活用と組合せれば、HEMSやBEMSの加速化し、スマートグリッドによるグリーンイノベーションを推進するために必要な需要を創造し、「需要と供給の好循環」を構築することができます。
そのためには、家庭・オフィスの改装、省エネ・省エネ機器などの短期間での大量の導入が必要になりますが、現下の日本の財政事情、欧米の先進的な制度などを考慮して、ハード取得費を地方自治体または指定金融機関が政府保証付きの債券を発行することにより調達し、固定資産税の上乗せ分あるいは電気料金の節約分から回収するスキームを構築する必要があります。前者はアメリカ(PACE)で、後者はイギリス(PAY AS YOU SAVE)で採用されている方式です。
また、導入される各機器のネットワーク化、世帯・オフィス間の電気の融通を円滑化させるため、通信のインターオペラビリティを確保するスキームを構築することも必要です。