エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

日経産業「スマートグリッドでもガラパゴス?」の記事に思う

2009-09-30 01:01:20 | Weblog
日経産業新聞onlineが「スマートグリッドでもガラパゴス?」という記事を掲載しています(こちらをご覧下さい)。
 このようなガラパゴス論は日本のケータイに対する揶揄から始まりましたが、これを読んで改めて思ってことは、この記事のように電力会社vs.それへの批判という構図では、2020年で90年比25%減という目標到達に向けた建設的な議論、シナリオ形成が発展しないということです。
 今後世界的に進展するスマートグリットの展開および日本のポジションは、「政策」×「戦略」×「技術」で決まります。
 このうち「技術」に関しては、電池三兄弟(太陽電池、蓄電池、燃料電池)に象徴されるように日本の優位性はかなりあると考えてよいと思いますが(ただ、中国等の追い上げのスピード早く、油断は禁物です)、むしろ、今後のポイントは「政策」と「戦略」にあります。
 この「政策」と「戦略」の両面でいかにダイナミックで、かつ、グローバルな対応ができるかによって勝負が決まると、思った次第です。

スマートエネルギースクールの新たな動き:太陽光と二次電池併設型へ

2009-09-29 02:02:54 | Weblog
文科省のスクールニューディール(小中学校の場合)、経産省の地域新エネ補助(高校、大学の場合)等を活用して、「スマートエネルギースクール」構想を推進していますが、その新たな展開として太陽光電池と二次電池を併設型への展開があります。
 日経ビジネスでそれに向けた三洋等のメーカーの動きが紹介されましたが、現状では二次電池のコスト面でブルークスルーをする必要があります。
 当面はモデル都市における展開を考え、学校から地域全体と拡大し、スマートグリッドの動き等と連動して市場を拡大してコストダウンを図ることが現実的かと思っています。
日経ビジネスの記事にご関心のある方は、こちらをご覧下さい。

太陽光発電の変換効率はどこまで高められるのか

2009-09-28 00:04:57 | Weblog
太陽電池には結晶シリコンタイプ、薄膜シリコン、化合物系、色素増感型などいろいろなタイプがありますが、このうち結晶シリコンタイプの変換効率は、理論的に25%といわれています。
 この限界に3層構造よりなる高効率太陽電池と集光レンズの組合せでチャレンジし、61%の変換効率を目指しているのがドイツのフライブルグにあるフラウンホーファー太陽エネルギーシステム研究所(フラウンホーファーISE)です。
 太陽光には、紫外線から可視光、赤外線とさまざまな波長の光が含まれています。各種の太陽電池素材が利用できるのは、この広い波長の一部だけですが、異なった素材を積み重ね「タンデム(多接合)構造」を作り上げることで変換効率を飛躍的に高めることができます。
 フラウンホーファーISEはこの09年1月に、世界初の3層よりなる「タンデム(多接合)構造」太陽電池と集光レンズの組合せでセル変換効率41.4%を達成したと発表しました。3層よりなる「タンデム(多接合)構造」化合物系太陽電池を集光レンズの下に配置する構造になっています。こうすると、変換効率の理論的限界は61%です。
 フラウンホーファーISEは、シリコンおよびIII-IV式太陽電池セルの素材研究と製造技術開発を行っています。ISEの研究成果の商業分野への応用は、業務の中核をなしています。フライブルクにおける製造関連の研究を支援する目的で、2000年10月、ゲルゼンキルヒェンにLaboratory and Service Centreが設立されました。フラウンホーファーISEにおいて光起電力キャリブレーションの研究を担当し、技術サービスについて定評があるISE CalLabは、この分野で世界屈指の研究所として知られています。
 詳しくは、こちらをご覧下さい。

京都エコポイントの新たな展開と国

2009-09-27 00:12:35 | Weblog
 京都府では、08年より家庭(現在2300世帯)での電気代の節減・太陽光発電での促進に対してエコポイントを付与する「京都エコポイント制度」(こちらをご覧下さい)を実施していますが、私は、昨年10月京都府山田知事と意見交換をして以来、関係者といろいろ協議を進めています。
 その京都エコポイントは、09年度から次のような新しい展開を見せています。
 
1 太陽光発電設置に対するエコポイントを5倍に
 従来、京都府は家庭の太陽光発電設置に対して、補助金を原資にエコポイントを付与してきましたが、本年度からポイント付与率を5倍に引き上げました。
 スキームとしては、京都府→京都CO2バンクはマネーで、京都CO2バンク→家庭はエコポイントで交付します。マネーではなくエコポイントとして家庭に交付し、家庭が後述2のルートによりエコポイントを使うことで、地域内消費の喚起、地域商店街の活性化につなげる点がポイントです。
 設置者は、国、市それぞれからの設置補助に加え、京都府からはこの5倍のエコポイントをもらうことができます。
2 エコポイントの交換方法の拡大
 従来はエコポイントの交換方法として、①1200店舗が加盟するKICS(きょうと情報カードシステム。地域商店街の情報システムとしては日本最大)でのクレジットカードによるお買い物時の割引き、②後払い方式の交通ICカードPiTaPaを利用した交通運賃への充当の2種類でしたが、これに平和堂HOPポイントとの交換を追加しました。
 京都エコポイントは、08年度に省エネ家電買い替え促進に活用されたことがあります。また、京都府は大阪府、兵庫県、滋賀県との連携も目指し協議会を設立しています。
 現在のところ、KICSのECサイトでの販売商品が国の省エネ家電買い替えエコポイントの交換商品となっているほかは、京都エコポイントは国のエコポイント制度とは連関はありませんが、将来の動向が注目されるところです。

主要排出国アメリカをいかに巻き込むか

2009-09-26 00:25:20 | Weblog
先ほど12CHのTV「ワールドビジネスサテライト」(23:00~)に直島経済産業大臣が出演し、「2020年、90年比25%減」という目標に関して、もし中国、アメリカなどの主要排出国が参加しなければ日本の目標値は低くなる、むしろ、日本が国際的なルール作りに積極的に参加し、実効ある温暖化対策を構築することが必要だという趣旨の発言をされておられました。
 今回の国連総会でのオバマの演説は、この点で極めて保守的で「very disappointing」でした。このようなアメリカの姿勢は国際的な非難に値するものと思います。金融でキリギリスをやって世界全体を金融危機に追い込んだ当事者であるアメリカが、環境エネルギーの分野でもキリギリスを演ずることは許されません。しかも、これは人類の生存に関係するものです。
 これに関して、以前もご連絡しましたが、EPRI(シリコンバレーにある世界的に著名な電力シンクタンク)は、そのシミュレーションモデル「Prism and Merge」の基づき、アメリカは2030年に05年比41%のCO2排出削減が可能という結果を発表しています。
 それによると、省エネとともにCCS、再生可能エネルギー、原子力(ただし、現行の第3世代プラスの軽水炉まで。コストのかかる高速増殖炉や核燃料サイクルの完結は行わない)などの最新技術をフルに普及促進することにより、41%のCO2排出削減が可能としています。
 このフル展開のシナリオによると、2050年までに1兆ドルのコストがかかり、50年における卸電力料金は80%上昇、一家庭あたりの小売電力料金は16,000ドル上昇するとしていますが、第3世代プラスの軽水炉の導入やCCSを行わない限定的な展開では210%上昇、一家庭あたりの小売電力料金は28,400ドル上昇となり、フル展開のほうが電気料金の上昇がはるかに抑制されるとしています

安井至「電気自動車で日本経済は冷え込む?」について

2009-09-25 02:31:50 | Weblog
安井至さん(東大名誉教授)は、日経エコロミーに掲載された「電気自動車で日本経済は冷え込む?」(こちらをご覧下さい
)において、電気自動車の将来動向に関しても慧眼を披露しています。
 安井さんによると、
 -電気自動車は、蓄電池の価格とその寿命が問題
 -特に蓄電池の寿命が5年程度しか持たないとしたら、蓄電池価格が10分の1
にならない限り、一般的な消費として成立しない
 -となると、実用上の観点からは、短距離、例えば30キロメートル程度以内で
の利用を狙って、搭載する電池を極力減らし、都市内コミューター専用にする
ことが賢い選択である
 -加えて、充電に多少に時間がかかることを考えれば、カーシェアリングやレン
タカーとの組み合わせの合理性が高い
 -ところがこの方式では車の販売数が減少し、自動車メーカーはしばらく経つと
電気自動車の導入躊躇を明確にすることだろう
 -そこに、間隙を縫って海外(特に中国)から安価な電気自動車が輸入される
 -海外での電気自動車の普及は限定的。最大の市場であるアメリカでは、都市内
  の利用でも高速道路対応が必要であり、PHEVはありえてもEVは普及しな
い。欧州も限定的ではないか。
 -日本は自動車産業に代わる輸出産業を見つけ出すことができるのであろうか
 
 皆さんは、どう思われますか?
 ただ、安井さんの指摘は、慧眼ではありつつも、現在の蓄電池の価格とその寿命を前提にした議論であることに注意することが必要です。この前提が代わると電気自動車の未来が変わる可能性があります。
 そこで私が注目しているのが、キャパシタ、特にリチウムイオンキャパシタです。
 このリチウムイオンキャパシタについて、09年1月人工筋肉などの研究開発ベンチャーのイーメックス(大阪府吹田市)は、蓄電部品「リチウムイオンキャパシタ」について蓄電性能は従来の10倍に、エネルギー密度では従来の5倍の性能を実現したと発表しました。
 従来のリチウムイオンキャパシタのエネルギー密度は低く、リチウムイオン電池の約30分の1とされています。しかし、リチウムイオン電池にも技術的な課題があります。蓄電装置内で化学反応を伴うため製品の寿命は約2年と短いうえ、発火する恐れがあるなど安全性を疑問視する声も少なくないのです。
 また、原材料であるリチウムの供給がチリ、アルゼンチンなどの南米に偏在しており、早くも中国などと資源輸入を巡って競合状態が出ています。少なくとも、リチウムの価格は上昇していくでしょう。
 一方、リチウムイオンキャパシタの蓄電は化学反応によるものではないため劣化がほとんどなく、製品寿命は非常に長いのがウリです。さらに「使用する材料費も安いため、生産コストをリチウムイオン電池よりも低く抑えることができる」(瀬和信吾社長)といいます。
 リチウムイオンキャパシタは、電極に炭素を利用するのが一般的ですが、イーメックスは人工筋肉の開発などで培った技術を応用した化学めっきで作られた金属電極を採用しました。これにより、蓄電性能は従来のリチウムイオンキャパシタと比べて10倍と大幅にアップし、エネルギー密度も大幅に向上したということです。
 

館内「電気自動車に充電インフラは必要か」に思う

2009-09-24 00:07:42 | Weblog
日本EVクラブ代表館内端(たてうち・ただし)氏は、技術のみならずソーシャルエンジニアリングの観点から電気自動車の社会的受容を論じる人物で、その著作には共感する部分が多いのですが、日経エコロミーに掲載された同氏の「電気自動車に充電インフラは必要か」(ご関心の方は、こちらをご覧下さい)を読み、私の観察に近いものを感じました。
 館内さんは、現在のように電気代が安価な状況の下で充電器の投資回収をすることは不可能であることを認めたうえで、そもそも「電気自動車に充電インフラは必要か」と問いかけます。
 そこで館内さんが紹介しているのが、横浜市の保土ヶ谷区と旭区で東京電力が行った実証実験の結果です。東京電力の実証実験が示すところは、走行実験の結果、2基の充電器は使用されなかったということであり、館内さんは「充電器は精神安定剤として作用した」と結論付け、「市中の充電設備の使用は、計画していたよりも長く走らなければいけない場合や緊急の場合になる」、そもそも「電気自動車は家庭のコンセントからも、コンビニのコンセントからも充電できる」、「私たちは充電をもっと生活に即した実際的な視点で考えるべきではないでしょうか」としています。
 この館内さんの観察は、大都市内における交通を前提としてたものとして注を付ける必要がありますが、そうなると、ゆくゆくは電気自動車の駆動力は蓄電池ではなく、キャパシタあるいはキャパシタと蓄電池の組合せでもよいということになるのではないでしょうか。

90年比25%減達成のためには発想の大転換が必要

2009-09-23 00:00:22 | Weblog
9月22日鳩山総理は、国連総会において「2020年に温暖化効果ガスを1990年比25%削減する」ことを表明しました。ここで、この目標達成のために何が最も必要か考えてみたいと思います。
 井熊均(日本総合研究所・創発戦略センター所長)「太陽光発電や電気自動車などを生かす社会システム転換を実現するには」(こちらをご覧下さい)は、環境省が2050年までに温室効果ガスを2005年比80%削減できるとの分析結果を発表し、太陽光発電を2005年比120~140倍、発電量ベースで言えば大規模電力会社並みにするなど今までにはない壮大な目標を掲げていることに関連して、「社会システムの転換」という視点でブループリントを書くことの必要性を訴えています。
 同じことは、経済産業省総合エネルギー調査会の需給見通しに関しても言えます。8月下旬、同調査会の最新見通しが示されましたが、見通しはどこまでいっても見通しです。実際、8月下旬の会合では、有識者委員からさまざまな苦言が呈されました。
 これらの政府による「見通し」が今ひとつ迫力をもって迫ってこなかった理由について、私は、従来は必要条件の説明だけで、こうしたソーシャルエンジニアリングの観点からの十分条件の説明を決定的に欠いていたことにあると考えています。例えていえば、ジェット機で月に行こうと言う発想でシナリオを書いていたと言えます。
 今回の鳩山総理によリ表明された目標は、2020年という近未来であること、1990年比25%減という相当高いハードルであることの2点に照らして、従来の発想を根本的に転換しなければ、達成することはできないレベルのものです。必要条件だけの「見通し」では、到底この目標を達成することはできません。
 本当に月(今回それが火星になった感があります)に行くためには、ロケットで如何に到達できるか、そのための必要条件と十分条件を検証する必要があります。
 そのための具体論については、次回以降展開したいと思います。

9月21日オバマ大統領がイノベーション戦略を公表

2009-09-22 08:06:23 | Weblog
 9月21日、オバマ大統領は「アメリカのイノベーション戦略;持続的な成長と質の高い雇用に向けて」と題する政策を発表しました。アメリカ再生法に基づき創設される100億ドルの基金に基づき、イノベーションの創造、労働者への教育、インフラの整備等を行うというもので、1. アメリカのイノベーション基盤への投資(Invest in the Building Blocks of American Innovation)、2. 生産に結びつく起業家精神を喚起するための競争的市場の促進(Promote Competitive Markets that Spur Productive Entrepreneurship)、3. 国家的優先順位の高い分野へのブレイクスルーの誘発(Catalyze Breakthroughs for National Priorities)の3本柱により構成されています
 注目されるのは、3の中で、再生可能エネルギーと次世代自動車(そのほかに健康IT)への重点投資が謳われていることです(詳細は、こちらをご覧下さい)。
 ここにも、オバマ政権がグリーンニューディールやスマートグリッドの革新から次世代の経済を構築しようという戦略が読み取れます

「プラス・エネルギー」都市を目指すフランスのペルピニャン

2009-09-21 07:13:44 | Weblog
「プラス・エネルギー」都市を目指すフランスのペルピニャンについて、ご紹介します。
EUは、1次エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合を、2020年までに8%から20%に引き上げる目標を盛り込んだ行動計画を発表しようとしていますが、フランスでは2007年10月に開かれた環境グルネル会議において、フランス国内の電力消費量のうち、少なくとも20%を再生可能エネルギーで供給する目標が掲げられました。
 これを受けて、フランスでは地方自治体が積極的な動きをしていますが、その中でもっとも野心的な取り組みを行おうとしているのが南仏のペルピニャン市と周辺23市町村です。ペルピニャンの計画では、年間消費電力を上回る再生可能エネルギー発電の拠点の設置を目指しています。環境・持続可能整備開発省は、この取り組みへの支援を決定し、再生可能エネルギー生産の「世界の見本」とすべく、09年1月18日にペルピニャン市ならびに周辺市町村と枠組み合意を交わしました。
 この「グルネル合意2015」は、太陽光、風力、排熱利用など、複数のエネルギー資源を利用しながら、100%再生可能エネルギーによって、地域の消費量を上回るエネルギーを生産することを目的としています。
 ペルピニャンのエネルギーは、風力発電機40基、太陽光発電所3基、市北部のカルス焼却施設の排熱利用、公共建物の屋根にソーラーパネルの設置を進めることで確保します。さらにサン=シャルル市場(地中海沿岸産の野菜や果物を扱うヨーロッパ流通拠点)の屋根に、総工費5,500万ユーロをかけて、7万㎡のソーラーパネルを設置する予定です。
  計画では、地域全世帯の電力消費量43万6,000MWhに対して、再生可能エネルギーによる年間電力生産量は44万MWhになります。ここに産業用電力消費量30万MWhが加わります。ペルピニャン市長は、さらに「100%再生可能エネルギーによる生産量が消費量を上回るプラスエネルギー都市」をめざすと、意欲を示しています。
 ペルピニャン市ならびに周辺市町村と、環境・持続可能整備開発省の間で交わされた枠組み合意には、市町村境界付近の農業開発や、地元産の野菜や果物を地域に流通させる地産地消ルートの整備も盛り込まれています。
 ほかにも枠組み合意には、運輸関連の環境保護目標として、高速列車TGVでペルピニャンとバルセロナ(スペイン)を結ぶ計画や、道路交通管制の最適化なども盛り込まれています。市民の意識改革を促すため、ごみの分別回収を促進する措置も講じられる予定です。