エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

本来『革命』として「スマートグリッド」を捉えることが必要

2012-01-11 06:49:13 | Weblog
 日本で「スマートグリッド」が語られ始めたのは2009年から10年にかけてですが、一時はブームになりかけていた「スマートグリッド」に対する期待感が3・11直前にはしぼみかけていました。私は、10年7月に拙著『スマートグリッド革命ーエネルギー・ウェブの時代』(NTT出版)を刊行し、「スマートグリッド革命」の本質を訴えましたが、残念ながら社会の潮流にはなりませんでした。
 それが3・11以後に一挙に様相が逆転し、「スマートグリッド革命」を唱える私の主張に賛同していただける人が増え、私自身も「スマートグリッドの第一人者」として取り上げられたり(たとえば、藤末参議院総務委員長の公式ウェブ、新聞やテレビでインタビュー(たとえば、2011年8月4日付産経新聞に掲載された私へのインタビュー「エコポイント提唱者加藤敏春さんに聞く 『国民総発電所』実現を」が掲載されるようになりました。

本来「スマートグリッド」は、IT革命を超える革命をわれわれにもたらすポテンシャルを有しています。それは、ネットワークとしての「スマートグリッド」の規模とマグニチュードを想起すると明らかです。「スマートグリッド」の基礎となる電力網には全世界で現在40億人の人々がつながれていますが、これは全世界でインターネットにつながっている10億人の人々の4倍に当たります。
また、インターネットの場合は、一人ひとりがインターネットに接続しているのはパソコンなど特定の機器に限られます。これに対して「スマートグリッド」の場合は、サーモスタット、家庭の中のテレビ、冷蔵庫、エアコンなどの家電製品、照明などの個々の家電製品はもとより、電力メーター、ガスメーターなどの機器、プラグインハイブリッド車や電気自動車も接続され、オフィスの中では、さらに、さまざまな空調機器、サーバ、オートメーション機器などがつながることになります。世界中に張り巡らされている送電網、配電網につながっている個々の電力制御機器、ガス制御機器も「スマートグリッド」のネットワークで接続されることになります。電力を利用するすべての機器がネットワークのノードになるのがスマートグリッドの世界です。この巨大なネットワークの誕生と言うものが、インターネットを凌駕するほどのイノベーションが創造されるという根拠です。これは一種のパラダイム転換と言えるでしょう。

3・11以前と以後の「スマートグリッド」は根本的に異なる

2012-01-10 06:54:25 | Weblog
 3・11以後東日本大震災と福島第一原発事故後の電力需給の逼迫化は、日に日に深刻度を増しています。12年春には国内にあるすべての原子力発電所の稼動が停止する可能性も現実化し、まさに「国難」ともいうべき事態に直面しています。
 深刻化する電力不足を乗り切る対策は、短期的には、家庭の節電貢献度に応じてインセンティブ(奨励金)を付与する「省エネ・エコポイント」を活用して、家庭をも巻き込んだ節電行動を社会全体に拡げていくことです。そして、中長期的には2011年の冬、それ以降に向けて節電社会を構築し、エネルギーの需給体制を造り変えていかなければなりません。そのためには、ICT(情報通信技術)を取り入れた新しい電力網、「スマートグリッド(賢い、洗練された電力網)」の整備と全国展開がカギを握ります。
 3・11以前の「スマートグリッド」は、太陽光などの再生可能エネルギー、蓄電池などを取り入れて、電力系統を安定させる技術的な手段の一つとして議論されているに過ぎませんでした。つまり、スマートグリッドはあくまでも供給側の課題解決に向けたもので、毎日の供給量を気にすることなく、使いたいだけ電力を使っていた利用者には、あまり関係のない話だったのです。
 しかし、3・11以後、電力不足という緊急の課題が社会に降りかかり、東京電力、東北電力管内だけではなく、全国レベルで電力需給の均衡が求められるようになりました。ここへきてスマートグリッドが、単なる供給側の課題やそれを解決する技術実証の話ではなく、家庭や企業などの需要側にも関係するものとして、さらに、いまの電力不足問題に根本から解決を与えるものとして、大きな注目を集めるようになりました。


NHKのETV特集 民族学者 梅棹忠夫の未完の著『人類の未来』を見て

2012-01-06 07:15:27 | Weblog
梅棹忠夫の未完の著『人類の未来』の最後の言葉は、「暗黒ののちの光明」。
逆説的だが、節電による「闇」こそが、「光明」なのかもしれない、と思った。

文明は科学技術により産み出される制度と装置。
一旦できれば、そのほころびを文明自体が治せない。原子力発電も同様だ。

文明とは、知的生命体である人間の業としての科学が産み出す人類の社会活動の総体。
その「文明に未来はあるのか?」。
40年以上にわたる歴史の考察の最後で梅棹が問いかけたと同じ命題に、我々は直面している。

ヒントになるのは「プロシューマー」。
情報のみならずエネルギーについて、消費するのみならず生産もする「プロシューマー」。生産活動は最も創造的な活動だ。
国民一人一人が発電所になる「スマート国民総発電所」は、「プロシューマー」が創り上げる社会。
バーチャルな「スマート国民総発電所」は、何十ギガワット=原発何十基分にも相当するエネルギーを草の根で産む。

ずっと私は、情報革命、エネルギー革命に続く思想革命の到来について考えてきた。
「プロシューマー」は、情報革命、エネルギー革命に続く思想革命の担い手ではないか。それを「美へのイノベーション」と呼んだ。

梅棹は、「アマチュア思想家宣言」という小文も発表している。そして、「思想」をもっと気軽に使おうと呼びかけている。
「思想」は、アマチュアのためにある。
アマチュアこそが「光明」である、「アマチュアこそが文明」を変えることができる。梅棹はそう主張したかったのではないか。

梅棹のアマチュアを私なりに問題設定し直すと、「プロシューマー」。
文明の舵を切るのは今しかない。
歴史は、私たち自身が作るもの。「私たち自身が歴史」と梅棹は言っている。

節電こそが「光明」の始まりなのではなのか?
「プロシューマー」による思想革命に期待したい。


HEMS・BEMSとV2Gが結合して革命が加速化する

2012-01-05 06:17:38 | Weblog
スマートグリッドについて、さらに期待されている市場としては,プラグインハイブリッド車や電気自動車と家庭を接続する「Vehicle-To-Grid 」(V2G)があります。V2Gとは、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの二次電池を積んだ次世代自動車をスマートグリッドに接続し、自動車で発電した電気の余剰分を配電網に送り家庭用電気として有効活用したり、売電をするというものです。
V2Gが「スマートグリッド革命」の第二幕で、今はHEMS・BEMSという第一幕に引き続いて、それらと結合したV2Gという第二幕があいたところです。普通、電気は電力供給網から電気自動車に流れますが、電気自動車は電池のかたまりなので、そこで貯めた電気を逆にも流し、双方向の電気の流れを実現するというものです。電力会社からすれば、太陽光など再生可能エネルギーが大量に導入されると、そうした不安定電源に対する周波数調整などの点でメリットがあります。また、家庭にとっては、夜間のように電力料金が安いときに電気を買って、高いときに売れば差額で儲けることができます。
米のオバマ大統領は,15年までにアメリカ製のプラグインハイブリッド車を100万台走らせると言っています。そうすると,V2Gの市場規模もかなりのものになります。たとえばフォードは、13年~15年までにプラグインハイブリッド車と家庭に設置するスマートメーターを接続する計画を進めています。
日本でも、11年までにプラグインハイブリッド車が一般に販売されるほか、電気自動車についても自治体などの官公需だけではなく、民間にも導入されるようになってきました。例えば、日本郵政グループの郵便事業会社の年間のガソリン代は100億円に上っていますが、同社は集配に使っている軽貨物自動車約2万3千台を電気自動車に切り替える計画です。08年度から順次電気自動車の導入を開始しており、8年後をめどに全ての車両を電気自動車にする方針です。
経済産業省は、20年における年間販売数をプラグインハイブリッド車120万台、電気自動車80万台とし、ガソリンスタンドなどの急速充電器を5000台、家庭用充電器を200万台設置することを目標としようとしていますが、環境省はもっと高い目標値の設定を求めています。このような動きを見越して、日本の自動車メーカーもV2Gに対して積極的に取り組むようになっています。日産自動車は、急速充電器をV2Gへの布石と位置づけており、昭和シェル石油と共同開発しています。急速充電器に自動車向けリチウムイオン電池と太陽電池を組合せ、V2Gにより送配電網への負荷を減らそうという構想です。