エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

日産のアメリカにおける電気自動車及び電気自動車用バッテリー生産

2010-09-30 00:07:53 | Weblog
日産はテネシー州スマーナにおける電気自動車及び電気自動車用バッテリー工場を落成させました(こちらをご覧ください)。12年より、年間15万台の電気自動車「リーフ」と及び20万個の電気自動車用バッテリーを生産する計画です。

アメリカではスマートグリッドの「消費者インターフェイス」に関する議論が進む

2010-09-27 06:59:02 | Weblog
ホワイトハウスのOSTP(科学技術政策局)とNISTは、スマートグリッドに関する「消費者インターフェイス」についての意見を募集しました。また、意見募集とともに、パブリックフォーラムを3週間かけて実施しました。このときに議題となった論点としては、①消費者の電力利用データを取得する主要なゲートウェイはスマートメーターであるべきか、②消費者はスマートメーターのデータを所有する権利を持つ、少なくともアクセス権を持つべきか、③電力会社がエネルギー管理サービスを提供すべきか、④データ保護やプライバシー保護に関して、どのような要件が必要か、⑤スマート家電の通信プロトコールやアダプターカードのインターフェイスは政府が定めるべきか、⑥家庭内のスマートグリッド関連機器に関する費用は誰が負担すべきか、です。これに対して、Google、GE、Intel、 Whirlpoolなどがコメントをしています。
また、GoogleはAT&T、HP、Intel、Verizonなどと連名で、オバマ大統領に対して、アメリカ国内の家庭や企業におけるエネルギー消費に関する情報アクセス改善を求める文書を発出しました。スマートグリッドに関する消費者の理解を促進するため、Smart Grid Consumer Collaborativeが結成されています。

ドイツの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制の最新動向

2010-09-26 00:09:57 | Weblog
 ドイツの再生可能エネルギー法は、2008年6月に大きく改正され、09年1月より施行されることになりました。改正にあたっては、20年までに電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を20%から30%に引き上げ、その後も継続的に上昇させるとしましたが、固定価格買取り制については、それが社会に定着し、再生可能エネルギーの割合が急速に上昇してきている実態を踏まえ、制度改善がなされました。
 すなわち、固定価格買取り制の下での太陽光発電の取り扱いについて、電力料金の上昇という国民負担の増大にも配慮し、買取り価格を引き下げるとともに、太陽光発電について買取期間中の買取り価格の低減率を他の再生可能エネルギーよりも高めたり、導入量によってて低減率を変化させるとしています。
 さらに、再生可能電力発電事業者が、希望すれば固定価格制を離脱することができ(暦月ベースで離脱し、暦月ベースで復帰できる)、直接電力を販売することができることを規定し、再生可能電力発電事業者の自立化にも配慮しています。

NISTによるIPプロトコールと無線利用のガイドラインはほどなく発行予定

2010-09-25 09:01:52 | Weblog
NISTによるスマートグリッド標準化に関する優先行動計画の対象の一つにIPプロトコールの利用ガイドラインがあります。スマートグリッド向けのネットワークアーキテクチャやセキュリティ要件の検討などが含まれています。プロジェクトには、NISTのほかIETF、IEEEなどが参加しており、本年中頃には最初のガイドラインが発行される予定です。
また、同じく優先行動計画の対象の一つに無線通信の利用ガイドラインがありますが、プロジェクトには、NISTのほかIETF、IEEE、WiFi Alliance 、Zigbee Alliance 、WiMAX Forumなどが参加しており、これも本年中頃には最初のガイドラインが発行される予定です。

APECエネルギー大臣宣言のうちスマートグリッド等に関連するもの

2010-09-24 00:09:39 | Weblog
1 APECエネルギー大臣会合による「エネルギー安全保障に向けた低炭素化対策に関する福井宣言」(こちらをご覧ください)のうち、スマートグリッド等に関連するものは、次のとおり。

① 建築物と産業における再生可能エネルギーとエネルギー管理の統合を支援するスマートグリッドの可能性を評価するための「APECスマートグリッドイニシアティブ」(ASGI)を開始。

②「APEC低炭素モデル都市プロジェクト」の実施。低炭素コミュニティを形成するためのFS調査を実施し、ベストプラクティスを共有。

③30年までにエネルギー消費のGDP原単位を25%向上。

④省エネピアレビュー、持続可能性のためのエネルギー効率化デザイン協力の実施。

⑤各国においてゼロ・エミッション・エネルギーを導入するための個別目標と行動計画の策定。

⑥原子力発電によるCO2排出削減可能性に関する原子力発電削減可能性研究(NUPERPS)の実施。原子力安全に関し、ANSN等との協力可能性について検討。

2 ②に関して、直嶋経済産業大臣は、福井宣言採択後の共同記者会見で今後3年間で最大20カ所の低炭素都市についてFS調査調実施するとの考えを明らかにするとともに、「資金として日本は10億円を拠出したい」と話しました。最初に中国の天津市をモデル都市に選定する方針です。

地域主権戦略大綱のうち「緑の分権改革」のポイント

2010-09-23 09:28:05 | Weblog
 閣議決定された「地域主権戦略大綱」(こちらをご覧ください)の中に「緑の分権改革の推進」が触れられていますが、そのポイントは次のとおりです。

1 地域のクリーンエネルギーの活用に取り組み地方公共団体
① クリーンエネルギー、食料、歴史文化資産の活用、地域ブランドの育成、資金の循環による地域経済の活性化
② 改革のモデルとなる取り組みの構築
-「地域主権戦略の工程表」(原口プラン)の中では、10年度クリーンエネルギー調査・先行実証調査、11年度先行的・総合的に取り組む市町村による調査ほか改革推進のための研究等となっている。
-原口ビジョンⅡ(こちらをご覧ください)の中では、取り組みの経済効果について、「緑の分権改革推進会議」で定量化を検討するとしている。
③ 改革に取り組み団体数の増加
-原口ビジョンⅡの中では、160団体(現在)→320団体(14年)→550団体(20年)

2 定住圏構想の推進
117団体(現在)→480団体(14年)→600団体(20年)

3 全体で
原口ビジョンⅡの中では、251団体(現在)→800団体(14年)→1400団体(20年)

4 自治体クラウドの推進

グリーンイノベーションのための規制・制度改革

2010-09-22 00:00:05 | Weblog
政府の「規制・制度改革」のうち、グリーンイノベーションに関するものは、次のとおり。ほぼすべての事項にわたり、10年度中に措置することとされています。

1 再生可能エネルギーの導入促進

①小規模水力発電の導入円滑化に向けた河川法の見直し

②大規模な太陽光発電設備に係る建築確認申請の不要化等による設置促進

③自然公園・温泉地域等における風力・地熱発電の設置許可の早期化・柔軟化に向けて、ゾーニング、ガイドラインの策定等

④小規模分散型発電設備に係る保安関連規制の見直しによる負担軽減(保安規程の作成義務、電気主任技術者の設置義務の緩和等)

2 スマートメーターの普及促進

①電力線(PLC)通信の屋外利用規制の緩和

②電気使用量等の需要家データ利用に係るルール、計測機能とエネルギーマネージメント機能間のインターフェイス標準化などの環境整備

3 国産木材の利用促進

①「集成材の日本農林規格」に係る性能規程の併用導入

②木材の耐火性等の研究成果を踏まえ、学校などの大規模木造建築物に関する面積・階数基準等を見直す

4 住宅・建築物に係る新たな省エネ基準の策定<11年度中>

5 レアメタル等のリサイクル推進に向けた新たな制度構築等

目からうろこが落ちる「マグネシウム文明論」

2010-09-21 06:14:34 | Weblog
東京工業大学の矢部孝教授が出版した『マグネシウム文明論―石油に代わる新エネルギー資源』は「目からうろこが落ちる」本です。矢部教授の考えるマグネシウム循環社会の仕組みは、①太陽熱を利用した淡水化装置で、海水から塩化マグネシウムを取り出す、②熱を加えて、塩化マグネシウムを酸化マグネシウムにする、③太陽光励起レーザーで、酸化マグネシウムを金属マグネシウムに製錬する、④金属マグネシウムを水と反応させて、燃料となる水素を取り出したり、マグネシウム空気電池として電気自動車用の電池とする、⑤燃料として利用した後は、酸化マグネシウムが残る、⑥その後は③へ戻り、酸化マグネシウムを再び太陽光励起レーザーで金属マグネシウムに製錬する、というエネルギーサイクルを構築するものです。

 ①から開始するので、ビジネスモデルとしても構築が容易です。海水1キログラム中に含まれる元素は、塩素19.35g、ナトリウム10.77g、マグネシウム1.29g、硫黄0.904g、カルシウム0.412g、カリウム0.391g……となっていて、マグネシウムが多く含まれています。含有量の多いナトリウムも燃料になり得ますが、常温の空気中ですぐに発火するなど安定性に欠けます。また、すでにリチウムイオン電池として使われているリチウムは、海水1キログラム中たった0.00017gとマグネシウムの1万分の1しか含まれていないため、地下埋蔵量1100万トンだけでは主要なエネルギー源として使用するのは不可能です。
これに対して、全海水中に含まれるマグネシウムは1800兆トンと桁違いに多いため、現在の全エネルギーをマグネシウムで賄うとしても10万年分の量があることになるとのことです。
矢部教授の発想は、太陽光をそのままレーザーに変換する太陽光励起レーザーにより、酸化マグネシウム(MgO)をマグネシウム金属(Mg)へと精錬し、このマグネシウム金属が水と反応するときに発生する熱と水素をエネルギー源として使おうというものです。エネルギー取り出し後にはマグネシウム金属は再び酸化マグネシウムへと変化しているので、これを再度レーザーで処理すればマグネシウム金属へと戻せ、マグネシウムの資源循環が可能になります。マグネシウムは水と反応させて水素を取り出すことで直接燃料として利用もできるし、マグネシウム空気電池として利用すると効率のよい電気自動車用の電池とすることもできます。
従来から、水素をエネルギーとして利用する「水素社会」の実現を目指そうという意見がありますが、水素は気体であるため高圧タンクやボンベに貯蔵しなければなりません。ボンベは大変重く、しかも、水素ガスは漏れると爆発の危険があることから、簡単に取り扱えるものではありません。マグネシウムは粉や薄片にすると反応しやすくなりますが、塊の状態だと摂氏650度まで発火しません。保管のための特別な装置は不要で、倉庫の中に積んで貯蔵できます。しかも、ボンベに詰めた状態の水素と比較すると、同じ体積当たりで生み出すエネルギーの量はマグネシウムのほうが大きいのです。そのため、水素をガスのまま貯蔵したり運搬したりするのではなく、マグネシウムを使って、必要な時、必要な場所で水と反応させて水素と熱を取り出せばよいと矢部教授は指摘しています。
ただし、太陽光を集光した時に得られる熱で6千℃を達成するのがやっとであり、これを太陽光励起レーザーに変換して2万℃の熱を得るところがポイントです。6千℃の熱ではMgO→Mgが進みません。太陽光励起レーザーとは、クロム-ネオジムYAGレーザー媒質によって、太陽光を光源にして発生させるレーザーのことで、実験室では42%、自然光では20%の変換比率で太陽光からエネルギーを取り出すことができます。現在のレーザー発生装置の出力は80ワットですが、間もなく400ワットの装置が完成するとのことです。
マグネシウム空気電池とは、マグネシウムを直径2ミリほどの粒状にして、それが酸化することで発電する装置のことであり、マグネシウムをカートリッジ式の電極として使用します。カートリッジは安全なのでコンビニなどどこでも販売・回収できるため、ガソリンスタンドのような施設は不要になります。この電池を利用した電気自動車はトヨタ自動車もひそかに開発中と記載されています。
まるで夢のような話しですが、すでに矢部教授は企業化して実用実験を始めています。「マグネシウム文明論」という大袈裟なタイトルを使いたくなるほど、インパクトのある内容です。