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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ファンキー・ジャンプの季節

2022-02-20 08:12:32 | Weblog

 ジャズ・ミュージシャンを目指す若者が世界を放浪する五木寛之著「青年は荒野をめざす」、白人の少年が黒人ばかりのジャズの現場に飛び込んだ時に感じる疎外感や孤独感を描いたナット・ヘントフ 著「ジャズ・カントリー」、チャーリー・パーカーの熱いアドリブがページを捲るたび聴こえてくるジャック・ケルアック著「地下街の人びと」・・・ 

 ジャズを聴き始めたころ読んだ小説である。なかでも今月1日に亡くなった石原慎太郎の「ファンキー・ジャンプ」は何度も読んだ。ブレイキーやガレスピーも絶賛したという日本人ジャズ・ピアニストという設定は身近に感じたし、麻薬中毒のミュージシャンはこの時代当たり前だっただけにドキュメンタリーを見るようだった。本物のビ・バップを追及する現実とヤクによる幻覚は詩的文体で書かれているのでより鮮明だ。守安祥太郎をモデルにしたという主人公が壮絶な演奏の果てに絶命する様は強烈である。

 小説の構成はホレス・シルバーのエピック盤「Silver's Blue」を下敷きにしたそうだ。JMから独立直後の録音で、フロントにドナルド・バードとハンク・モブレーを配したセッションと、ジョー・ゴードンとケニー・クラークが参加した録音が収められている。これから自らのバンドを引っ張っていくという意気込みが伝わってくるシルバーの力強い音は見逃せない。オリジナル曲はバップ・エッセンスが散りばめれていて楽しいし、「The Night Has A Thousand Eyes」の解釈は、この後何作もリリースするシルバー・バンドのスタイルの原型といえるだろう。

 JMの来日とともに日本でファンキー・ブームが起こり、今はなきスイングジャーナル誌が30万の部数を誇っていたのは60年代初頭である。小説が文芸雑誌「文學界」に掲載されたのは1959年8月のことだった。まだ国内盤も出ていない56年録音の「Silver's Blue」をいち早く聴いていたのは驚きだ。時代の寵児、石原慎太郎。享年89歳。合掌。

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3 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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管理人敬白 (duke)
2022-02-20 08:31:40
久しぶりのアップです。
「ファンキー・ジャンプ」を読んだことがある方はご感想をお寄せください。

音の本棚 石原慎太郎作品集 「ファンキー・ジャンプ」 take3
https://www.youtube.com/watch?v=Rs1J3tg2_fw
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路上の季節 (内間天馬)
2022-02-24 23:55:03
学生時代、ジャック・ケルアックに心酔していた時期がありました。1950年代半ば頃って、日本では「太陽の季節」アメリカでは「路上の季節」と呼びたいですね。ヨットが大好きな僕は、慎太郎氏の海やヨット関連の本はすべて読んでいます。が「ファンキー・ジャンプ」は未読どころか、その存在すら知らなかったので、早速、注文しました。「路上」の影響でしょう、1975年、アメリカ一周の旅に出ましたが、ニューオーリンズで、オンボロVWがお釈迦になり断念。LAに戻り、偶然、ハンプトン・ホーズと出逢ったのは良い想い出です。彼も、1950年代、横浜のモカンボに出入りしていたので、当然、守安祥太郎とは交友があったでしょう。「地下街の人びと」のジェリー・マリガンは格好よかったですね。瀬戸内寂聴さんの時は、エリック・ドルフィー、そして、今回の慎太郎氏の場合は、ホレス・シルバーと、うまくジャズに結びつけるdukeさんの引き出しの多さ、いや、懐の深さには脱帽です。ありがとうございます。
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ビート・ゼネレーション (duke)
2022-02-25 08:55:55
内間天馬さん、コメントありがとうございます。

私もジャック・ケルアックを読みました。当時、日本の小説はレコードをヒントに書いているのに対して、アメリカのそれはライブをダイレクトに伝えるものでした。「地下街の人びと」や「路上」は昭和43年に新潮社から発刊されたもので読みましたが、「ジャック・ケラワック」と表記されていました。ジャズ誌の表記がジョン・マクローリンやシェイラ・ジョーダンの頃です。こちらのカタカナの方が何故かしっくりきます。

ハンプトン・ホーズと出逢ったとは貴重な体験をされていますね。日本のジャズミュージシャンはモカンボでホーズから多くを学んだことでしょう。守安祥太郎といえば昨年、地元のコレクターにロックウェルのEP盤を聴かせていただきました。世界に通用するピアニストです。三島由紀夫が絶賛した「ファンキー・ジャンプ」をお楽しみください。
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