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デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ヤードバード組曲をハービー・マンを聴いてみよう

2016-08-14 09:24:37 | Weblog
 惜しくも第88回アカデミー賞でオスカーを逃したものの作品賞、主演女優賞、脚色賞にノミネートされた作品がある。「ブルックリン」だ。アイルランドからアメリカに移住した少女の揺れ動く心をある時は大胆に、またある時は繊細に描いている。田舎に育った若者なら一度は憧れる都会暮らしの自由と不安、開放と孤独、何の変哲もないごくありふれた物語だが、ラストまで飽きさせない。

 ブルックリンといえばM-BASE派だが、これを話題にするとただでさえアクセス数が少ないブログに閑古鳥が鳴くので今週はブルックリン出身のハービー・マンが登場だ。え!?ジャズロックだのボサノヴァだのフュージョンだのと時流に合わせたスタイルで金儲けしたマンはジャズミュージシャンの風上に置けぬ、という批判があるではないか。確かにそれを指摘されると返す言葉はないが、70年代に大ヒットした「Memphis Underground」からジャズに入った方もいるし、チック・コリアをはじめラリー・コリエル、チャック・レイニーを育てた功績は大きい。

 1962年の「Comin’ Home Baby」のヒット以降、リアル・ジャズ・ファンから白い目で見られているが、50年代はバップ・フルート奏者として素晴らしい作品を残しているのだ。サム・モストと組んだベツレヘム盤や、ボビー・ジャスパーを迎えたプレスティッジ盤、そしてこのサヴォイ盤「Yardbird Suite」はモダン名盤に数えられる。涼しげなフルートの音色とフィル・ウッズの温かみのあるアルト、エディ・コスタの天に抜ける透明なヴァイブ音、ジョー・ピューマの琴線を揺らす爪弾き、録音された1957年はホットな時代だが、クールの趣きもあり楽器の特性を生かした好アルバムだ。

 映画「ブルックリン」では主人公が田舎か都会かを選択する場面があり、ここが見どころになっている。私ならこちらを走る、いや僕ならあちらに行く。つい自分を主人公に重ねてみたくなる作品だ。西か東か、上か下か、前か後ろか、人生は勿論だが日常の些細な事も常に選ばなければ先に進まない。時に選んだ道につまずくことがあっても自分が決断したことは正しい。