デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

サムシング・クール

2006-08-13 07:40:30 | Weblog
 江戸川柳に、「夏やせと答へ姑の名も立てず」とある。姑に減食を強いられたとは言わず、暑さのせいにする奥床しさは、きょう日あまり見られない。全国的に猛暑のなか、当地も30度を越える日が続く。生まれも、育ちも北海道の小生は、マイナス30度が続いても体験上耐えられるが、暑さが続くと句の嫁ではないが、食もすすまず痩せる。

 涼をとる定番といえばジューン・クリスティの「サムシング・クール」で、ジャケットといい、内容といい、扇風機やクーラーとは無縁の世界だ。スタン・ケントン楽団出身で、アニタ・オデイ、クリス・コナーと並びケントン・ガールズと呼ばれているが、三人の中では一番知的で、清楚な印象だ。恵まれない幼年時代を過ごした翳はなく、ビッグバンド専属歌手らしい華やかさに溢れている。写真は54年に発売された10インチLP盤で、両面併せて7曲と曲数はすくない。今のCD感覚からすると物足りないが、この7曲だけで充分涼しくなれる。

 SPでは3分、12インチLP盤でもせいぜい片面25分という収録時間制限があったが、CD時代になり大幅に収録時間が延び、未発表テープや別テイクを加えて再発されるケースが多い。中には貴重なものもあるが、殆どはボツ内容で、収録する必要のないテイクが目立つ。レコード会社のセールス手段のようだが、そのようなボツテープをファンは望んでいるとは思えないし、レコードという単位で量られていた芸術性さえ損なわれている。ジャズとて音楽、本来の音を楽しむという観点からすると、曲数が多い方が楽しめるし、レコードの内容に価値があるのであって、レコード自体には価値がない、という論理で反論されれば否定はできないが、少なくとも「三分間芸術」、「レコード芸術」と呼ばれても、「CD芸術」という言葉は存在しない。

 ジャケットのイラストは、レモン・スカッシュだと勝手に決めているが、小生はこれにジンを足してトム・コリンズというカクテルにしている。さぁ、クリスティと乾杯だ。先ほどまでの暑さはどこへやら、思わずクリスティのような笑みがこぼれる。
コメント (11)
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