デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ノックアウト

2006-08-06 07:30:16 | Weblog
 先週、 ライトフライ級王座決定戦をテレビ観戦した。期待したKOはなく、微妙な判定で王者にはなったが、どうにも後味が悪く、釈然としなかった。1ラウンドからダウンを喫しった亀田興毅選手の日頃の言動と重ねてこれでは「地元判定」と嗤われても仕方がない。11ラウンドでは足も覚束ない新王者に残された課題は多い。修羅場、土壇場を潜り抜けてきた王者の正念場はこれからだ。

 亀田選手が受けたようなパンチのジャケットは、ソニー・スティットの「ザ・ハード・スウィング」というアルバムで59年の作品。スティットはレコードを作るのが趣味のような人で、リーダー作だけでも100枚以上ある。全部聴いているわけではないが、出来不出来のない人で、何れも安定したプレイが聴ける。10枚に1枚の割で熱の篭った作品を残すようで、これもその1枚。ワンホーンでバリバリ気持ち良さそうに吹くまくる。聴いているこちらも気持ちが良い。

 スティットはチャーリー・パーカーに似ていると言われ、怒ってアルトからテナーに持ち替えたそうだが、テナーでもやはりパーカーに似ている。「パーカーがテナーを吹いている」と言ってもいい。衣装を変えても意匠は変わらないものだ。パーカーに似ているという表現は、貶した言い方でもあるが、小生はむしろ褒め言葉だと思っている。テクニックとアイデアがなければ、パーカーを真似しようもない。一時、渡辺貞夫さんも似ていると言われていたが、真似ができるだけの力があったからこそ世界のナベサダの名がある。

 亀田選手は K-1 に押されて青息吐息のボクシング界に新風を送ったのは確かだ。スティットがアルトでもテナーでも馴染んだマウスピースで、快音を響かせたように、亀田選手も身体の一部のようなマウスピースにハード・パンチを受けずに、ノックアウト勝利のゴングの快音を響かせてほしものだ。
コメント (20)
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