徒然なるままに…なんてね。

思いつくまま、気の向くままの備忘録。
ほとんど…小説…だったりも…します。

親父と歩いた日々…其の一「ルリビタキ」

2006-11-18 11:44:00 | 親父
 家の裏手に広がる丘陵地帯の森の中を親父がゆっくり歩いて行く…。
ゴム長の靴を履いて…。
その後を黙ってついて行く自分が居る…。 

 思い返してみれば…親父と自分は…取り立てて仲の良い親子ではなかった。
ぶつかることもしばしば…意見の合うことなど滅多にない。

 それでもよく連れ立って森を歩いた…。
並んで歩くわけではなく…話をするわけでもない…。
ただ…森の中を…黙々と歩く…。  

 親父がそこで何を想い…何を見ていたのかは分からないが…背中を見れば…頗る上機嫌なのが手に取るように分かる…。

 森の細い道を行く…上ったり…下ったり…時には藪を掻き分けて…。
何処へ行こうという目的があるわけでもなく…何を見ようというわけでもなく…。
腰に下げた手ぬぐいがぶらぶらと揺れる…。 

鳥の声…樹木と土の湿った香り…見失いそうな細流の音…。

背中が見えるほどの距離…それが親父と自分の距離…。

不意に小さな鳥が舞い降りた…。
親父の背中と自分との間の…ちょうど中くらいのところに…。 

瑠璃色の鳥…見たことのない羽の色…。
青い…などと…ひと言では表現できないその…鮮やかな色…。

何度もここへは来ているけれど…初めて…森の宝石を見た…。 

親父に声をかけようとした時…鳥は…ぱさっと飛び立った。
あっという間に藪の向こうへと消えていった…。

何故か急いで…親父の後を追い…今見た鳥の話をした。
瑠璃色の鳥が居たよ…とひと言だけ…。 

親父は嬉しそうな顔をして辺りを見回しながら…俺も前に見たよ…と答えた…。

 それ以上…話すこともなく…また…黙々と歩いた…。
背中の見える距離を保ちながら…。

 親父と自分にとって…これが快適な距離なのだろう…。
瑠璃色の鳥を見たというような…ほんの一瞬の体験を…時に共有しながらも…。

 オオルリ…コルリ…のように黒いところがなかったから…あれはルリビタキだったのだろうと…今になって思う…。
遠い記憶の中のことだから…それも…当てにはできないなぁ…。

 いつも間にか…森も林もなくなって…ただ人が居るだけだ…。
気軽に自然の中を散策することもなくなってしまった…。

 今は…自分の住む町の川沿いを…水鳥を眺めながら…ひとり歩く…。
あの背中を見ることは…もう二度とは…ないのだけれど…。 



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4 コメント

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へエー ルリビタキ! (おつお)
2006-11-18 17:53:02
ヘエー ルリビタキかー!
おつおは山育ちだから、きっと見てるんだろうけど、
山鳥や野草に興味を持ったのが、おとなになってから
だから、ほんと「もったいなかった」と思う。
「おじろ」とか「セキレイ」ぐらいしか、区別がつかなかったなあ~
おつおの親父は、全く自然に興味のないひとで、
都会的だった。
だから、おつおの自然派思考は母親の影響なのだ。
いま、あの時代に戻れたら、全てが興味津々だとおもうね!
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そういえば… (ぴーすけ)
2006-11-18 19:50:15
鳥サン好きの「toumotoさん」のブログに
ルリビタキさんの話題がありました。。
ちょっとかわいそうな結果になってしまったんですけど…。

ぴーすけの実家でコザクラインコを飼っているので
このブログに時々お邪魔しているんですが
とってもこのtoumotoさんの優しさがにじみ出ていてあったかいブログなんですよ♪
http://blogs.yahoo.co.jp/toumoto/43122547.html

よかったらdove-2さんもどうぞ
あ…鳥さん嫌いだったらゴメンナサイ・・

ぴーすけはなんだか調子が悪く今日もイマイチブログの更新に挑めず…
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ぴーすけさんへ (dove-2)
2006-11-18 21:08:01
有難う…。
鳥好きです…。特にコザクラ大好きです…。
毎晩子供たちとgooの鳥ブログ見てます。
其処にもぴーすけという名前の人のブログがありますよ…。
でも…鳥飼ってないなら違いますよね。

あのブログのルリビタキは可哀想でしたね。
自然界で生き残るのは大変だ…。
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Unknown (ぴーすけ)
2006-11-18 23:40:46
ルリビタキってぴーすけは知らなかったんです。
でもあのブログでまんまるい小鳥さんの姿がとても可愛かった…ほんと残念です。
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