「どうしても出て行くのか?」
透の背後から、黒田の押し殺したような声が聞こえた。
透は振り返らずに、真っ直ぐ自分を救い出しに来てくれた修を見つめながら頷いた。
「僕を育ててくれたのはあの人ですから…。」
それは皮肉ではなかった。透がここを出て行く理由のすべてと言っても過言ではなかった。
突然、体の心を貫かれるような衝撃が透を襲った。と、同時に彼の体の中で何かが渦巻き、耐え難い共鳴を繰り返した。
『トオ…ル…』
黒田の心…だと透は感じた。無表情な彼の心の奥底に封じ込められた未だ癒えることのない地獄の苦しみ。透の中に流れる黒田の血が、否応なしにそれを呼び込み、透の心までも呪縛する。
透は今やその地獄へと引きずりこまれそうになっていた。
「透!」
黒田ではない若い声が響き、細身だが力強い腕が透の体を混沌の渦の中から思いっきり引っ張り上げた。
「透、大丈夫か?」
懐かしい声が透を包んだ。
その様子をじっと見ていた黒田は、やがて二人に背を向けた。
「必ず、紫峰の家を潰してやる。」
黒田はそう言い残して屋敷の方へと戻って行った。
透はその背中を目で追う修の表情に、何か不可解なものを感じたが、修の心を読み取ることはできなかった。
次回へ
透の背後から、黒田の押し殺したような声が聞こえた。
透は振り返らずに、真っ直ぐ自分を救い出しに来てくれた修を見つめながら頷いた。
「僕を育ててくれたのはあの人ですから…。」
それは皮肉ではなかった。透がここを出て行く理由のすべてと言っても過言ではなかった。
突然、体の心を貫かれるような衝撃が透を襲った。と、同時に彼の体の中で何かが渦巻き、耐え難い共鳴を繰り返した。
『トオ…ル…』
黒田の心…だと透は感じた。無表情な彼の心の奥底に封じ込められた未だ癒えることのない地獄の苦しみ。透の中に流れる黒田の血が、否応なしにそれを呼び込み、透の心までも呪縛する。
透は今やその地獄へと引きずりこまれそうになっていた。
「透!」
黒田ではない若い声が響き、細身だが力強い腕が透の体を混沌の渦の中から思いっきり引っ張り上げた。
「透、大丈夫か?」
懐かしい声が透を包んだ。
その様子をじっと見ていた黒田は、やがて二人に背を向けた。
「必ず、紫峰の家を潰してやる。」
黒田はそう言い残して屋敷の方へと戻って行った。
透はその背中を目で追う修の表情に、何か不可解なものを感じたが、修の心を読み取ることはできなかった。
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