goo blog サービス終了のお知らせ 

どっと屋Mの續・鼓腹撃壌

引き続き⋯フリーCG屋のショーモナイ日常(笑)

リーゼと原子の森

2018年10月26日 22時55分00秒 | 
「月刊コミックゼノン」最新12月号に掲載。

どこか魔法使いの主人公が活躍する物語のようなタイトル。

こうの史代さん久々の短編ですが、26頁と近作にしてはなかなかのボリューム(^_^)

この物語は
化学は人に何を与えるのか─。核分裂を発見しながらも、ノーベル賞は共同開発者のオットー・ハーンにのみ授与された物理学者リーゼ・マイトナー。「人間性を失わなかった」と言われる彼女の半生とは...。


物理学の描写も多いため、文系の私としては作品世界に入り込むのが難しい感じでしたが(^_^;、原子核・陽子・中性子の関係とか質量数の割り出しって、そう考えるモノなのかと。

まぁ科学知識は別として...大戦期のドイツからの亡命により流転の人生を送り、やるせなさとかモヤモヤ感...荒々しい背景の描写のタッチに感じとれました。

女性という立場、そしてユダヤ人という差別による偏見と抑圧された時代背景...もしかしたら「この世界の片隅に」終盤で試みた、すずさんの「歪んだ心」を左手で描いて表現した手法を用いたのかも知れません。

一読した程度ではまだ判然としませんが...これは決して過去の事ではないなとも...東京医科大学で発覚された一連の入試不正も...どこかテーマに織り込まれているような気もします。

やはり何度も読み返したくなる作品ですね。



そして次号では...

セリフの無いサイレント?漫画「ヒジヤマさん」シリーズ最新作も掲載とか!そちらも楽しみです(*^o^*)



日日是好日、原作を...。

2018年10月18日 20時55分00秒 | 
新潮社の文庫版を購入しました。


映画観て、好きになっちゃって、すっかりミーハー状態ですわ(^_^;

まだ冒頭ですが、子供時代にフェリーニの「道」という映画に出会い、年代を経ることに理解が深まる事を比喩のように「茶道」との25年に及ぶ付き合いを軽妙なタッチで語っていく...。

映画はこの自伝的エッセイにかなり忠実に作られている感じがします。
お茶を習い始めて二十五年。就職につまずき、いつも不安で自分の居場所を探し続けた日々。失恋、父の死をいう悲しみのなかで、気がつけば、そばに「お茶」があった。がんじがらめの決まりごとの向こうに、やがて見えてきた自由。「ここにいるだけでよい」という心の安息。雨が匂う、雨の一粒一粒が聴こえる......季節を五感で味わう歓びとともに、「いま、生きている!」その感動を鮮やかに綴る。

映像を先に観てしまったので、読みながら脳内では、武田先生は樹木希林さん、典子さんは黒木華さん、美智子さんは多部未華子さんが活き活きと声を発し動いてくれています(*^o^*)

ボリュームも250頁ほどで抵抗のない厚み...映画作品を気に入ったのなら、原作に触れて損は無い気がします(^_^)



月をさすゆび、全4巻一気読み

2018年09月12日 20時08分00秒 | 
昭和天皇物語」の続刊、なかなか出ないし、作画の能條純一さんの端整な筆致が恋しくてもう...(´д`)

過去作である「月をさすゆび」(1)(2)(3)(4)の全巻まとめ読みしてしまいました(^_^;

結果、大満足!まさに秋の落ち着きある空気の中で読むにふさわしい作品だと想います。

ストーリーのアウトラインは、築地本願寺の敷地内に実在する仏教専門学校(浄土真宗・僧侶の養成所みたいな?)を舞台に、1年に渉る授業を通して、そこに集う老若男女の人間模様を描いていくというもの。

主人公は38歳の中年にさしかかる年代で、フリーの物撮り専門カメラマン(その設定に共感も(^_^;)で、親戚によくいそうなお節介叔母さんに半ば強引に僧侶となり、廃寺の危機にある寺を受け継いでほしいと迫られるところから始まります。

試し読みをして、一気に引き込まれてしまい、まとめ買いして止まることなく最後まで読んでしまいました。

能條さんの絵柄はジャンル的には劇画なんですが、微妙な表情変化と、各人物の仕草・ポージングが好きになるとクセになってしまうタイプなんですよね。

タイトルの「月をさすゆび」は中国の諺「指が月をさす時、愚者は指を見る」からのもので、登場人物の人生、そして主人公の恋愛までも、この言葉が包み込んでいて見事です!

一つの共通の目的で集う仲間たち...この雰囲気、とても懐かしい感じもしましたね...やっぱりアニメーター研修のころかな...。

尖ったのから円やかなヤツまで色々いてね。楽しいんですよね(^_^)

高校の時、仏教系の学校だったこともあって、どこか共通する物事と宗派の差異があったりして、そんなところも面白かったです。

ヒロインの日野灯ちゃんも良かった...学生の頃、バイト先で好きになった娘に似ていました。容姿ではなく、見えにくくツッコミ難い性格というか、醸す空気かな(^_^;

あ〜なんか本当に良い作品だったなぁ!と素直に思えます(^_^)




書物としての存在感

2018年09月09日 18時27分00秒 | 
辞書好きなら一度は突き当たる大きな壁、諸橋轍次による「大漢和辞典」。

学生時代、百科事典みたいに全15巻にもなる辞典の存在を知ったとき、物凄い衝撃を感じましたねぇ...(^_^;

新品で飼おうものなら50万もの大金を積まねばなりませんし、中古で安価に入手したとしても置き場所に困るという...。

...で、今回満を持して、デジタル版の登場と。

いや〜理屈としては解るんだけど、こんなUSBメモリ一個に入っちゃうんですよねぇ...このちょっとした衝撃は広辞苑のデジタル版が出た時にも感じたことですが...。

まぁ...こうなっていくのはご時勢だし仕方ないけど、大きさと重さを失うと...存在感って失われていく。

便利さと引き替えにね。



大工原章さんのこと

2018年09月02日 19時05分00秒 | 
伝説のアニメ職人(クリエーター)たち〈第1巻〉 (アニメーション・インタビュー)」。

その中に大工原章さんへのインタビューが収録されています。この方について語られた文章を初めて見ました。

東映動画創設時から森康二さんと共に活躍され、名だたる多くのアニメーターを輩出に寄与された方です。

出身地やご家族のこと、そして戦前・戦時中の出来事など、このインタビューのお陰で初めて知ることが出来ました。

経営方針を巡る争議を経て、実力あるアニメーターが次々と社を飛び出していく中、実直に黙々と長く在籍し、自らのスタジオ「スタジオ・カーペンター」を起こしたのは60歳を超えた頃となります。

82年、私は同スタジオのアニメーター研修生に応募し、大工原さんに出会いました。

スタジオの向かい側にあった喫茶店が最終面接の場で、アニメに対して拙い夢をアレコレお話しし「君ってフランクな人だよねぇ(笑)」と言われ、呆気にとられたのを昨日のことのように覚えています。

7〜8人の同期と共に採用されましたが、私にとって客観的立場から能力を認めて頂いた人生初の人でもあります。

当時から大工原さんの事は知ってはいましたけど、前時代的な古くさく野暮ったい絵柄が若い自分には魅力的に映らず、同期の仲間とバカにしていたりしてましたっけ...(インタビューに添えられている大工原さんのイラスト、今見ると本当に美しく躍動感も素晴らしい...この魅力、当時の稚拙な私には理解できなかった...)。

20歳前後と余りに世代的隔たりが大きかったこともあり、仕事以外でお話しをすることもありませんでした。

そして...TVアニメの動画を数本やって、わずか数ヶ月で後足で土をかける様な真似をして辞めてしまいました。

若気の至りとは言え、自分の余りに身勝手で馬鹿さ加減に呆れ、一生の後悔を引き摺ったまま今日に至っています。

年齢を重ねる度に想いが募り、いつか機会あれば非礼をお詫びしたいと思っていました。

6年も前にお亡くなりになっていたことを最近になって知り、ある方からお墓の所在を教えて頂き、遅すぎではありますが、先日陳謝を果たすことができました。

取材時の写真は2001年当時のものかと思われますが、お会いした当時のスマートな紳士というイメージそのままです。

お眠りになっていた霊園は、私の所在地から極近いところでした。

何かご縁のようなものも感じ、今後も折に触れご挨拶にうかがいたいと考えております。



作品における「聖地」とは?

2018年04月23日 22時55分00秒 | 
聖地巡礼について考察する専門書「聖地会議」...こんな本があるんですねぇ...。

25ページに渉り、この本を主宰される柿崎俊道さんと、片渕須直さんの対談が納められています。

その対談冒頭で柿崎さんの曾お祖父さんが広島の産業奨励館(現・原爆ドーム)の職員で、原爆投下の日もそこに居られたという事実が明かされます。

柿崎さんにとっての広島は単にアニメ作品における聖地ではない、もっと深く重い対象なのですね...。

広島が「この世界の片隅に」ファンにとって「聖地」であることは間違いなく、私自身もそんな視点で捉えてますし、実際に広島・呉に行った時も原作に描かれている風景や建物を見ては感激を隠すことはできませんでした。

それぞれの場所は「点」であり、それを繋ぐことで「線」となる...これは現地で多生なりとも歩いたり、現地の在来線(市内では広電、呉への往復で呉線)を使うことで、地理的な位置関係と距離感がつかめた気はしています。

それまでは江波や呉がどこにあって、市の中心部からどれだけ離れているかも分からなかったんです。

私は今のところ一度きりしか行ってないのですが、それでも随分と違うものだなと感じています。もっと行き来できれば、「線」は「面」となって行くでしょうし、歴史の積み重ねで「層」を形成できるようになるのかもしれません。

柿崎さんと片渕さんの対談は大凡そのような事を主張されている印象を受けました。

「点」だけで満足してしまったら、何も生まれないし、発展もない。観光ともちょっと違う「聖地巡礼」であれば、それくらいの気持ちで臨む必要があると。

以前にも当ブログで書きましたけど、こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」では、私が子供時代に過ごした東京都中野区周辺が舞台で、まさに慣れ親しんだ場所が「聖地」となっていたのもあって、この作品に一気に引き込まれた経緯があります。

なぜ中野だったのか...特に説明はないのですが、私はその地に立つ野方配水塔(通称・水道タンク)にあるのではないかと思っています。

昭和初期に建造された水道設備ですが、戦時中に機銃掃射の弾痕が残っていて区の平和史跡ともなっているようです。

古めかしくて、ちょっと異様な建築物ですが、ドーム状の屋根から原爆ドームのイメージと重なってみえるように、原作カットでチョイチョイ遠景に登場させているのです。

同作は以前、実写映画化されましたが、この風景は映画に取り入れられませんでした。今夏NHKでTVドラマ化されますが、できれば映し出してほしいなぁと思っています。

原爆ドームと水道タンクに関連性はないけど、こうのさんによってこの両者は時空と場所を超えた「線」で繋がっていると感じています。

「聖地」というキーワード、「点」だけではなく、「線」...そして「面」、さらには重なる「層」として捉える事の重要さを考えさせられました。



消えた町 記憶をたどり

2018年04月17日 21時55分00秒 | 
ヒロシマ・フィールドワーク実行委員会( @hfw_motoo )編集による、在りし日の広島市を描いた画集です。

初版500部はすでに完売されてましたが、希望があれば復刊増刷したいとの情報を得て、すぐに申し込み、晴れて実現!本日無事に到着した次第です(^_^)

アニメ映画「この世界の片隅に」の監督・片渕須直さんもこの画集を参考にしたとのことですが、ちょっとページを捲ってみただけで圧倒されてしまいました。

ビッシリと街の情景・家屋一軒一軒が丁寧に描き込まれた鉛筆画が43点、A4横サイズの大きさをもって目に飛び込み、どの画も知らず知らずのうちに引き込まれてしまいます...。

作者は戦前〜戦後を通じて広島市に在住されていた森冨茂雄さん(終戦時16歳)で、この画集全て記憶だけを頼りに描かれたとのことです。

その全てにおいて地図が付されており、画角の方向まで特定できるほどの精密さに驚かされています。森冨さんの「自分の頭の中に息づく街・家並み・人の全て、絞り出すだけ絞り出し、形として遺してやる!」という気迫が一枚一枚の絵から沸き上がってくる...。

今はただ、この画集に出会えたことに感謝する気持ちでいっぱいで...感想など書ける状態ではありません。

広島市には一昨年、一度訪れただけですが、そのお陰で少しは地理感覚が体感的にあって、ある程度絵を立体的に感じとれることができます。それにしても、あの「平和公園」とされる地にこれだけビッシリとした“多くの人が暮らす”街並みがあったとは...あまりにも失われたものの大きさに愕然とするばかりです。

そして...その上に特典が付くとは思いもしませんでした。

映画の冒頭、幼少期のすずさんが、お使いで中島本町に舟で向かう時に映し出される鳥瞰シーンです。これに半透明シートで重ねて、街の要所要所の名称が記されているというアートカード(浦谷千恵さんによる、可愛いすずさんのイラストも!)。

先日、京都で催された「ここまで調べた『この世界の片隅に』上洛編」会場で、同書が先行販売され、このアートカードが特典で...という話しは知ってましたが、この会場販売のみでの事だろうと思い込んでおりました(^_^;

関係各位の心のこもった気持ちが伝わってきて本当に嬉しいです!

「消えた町 記憶をたどり 絵と証言」、この僥倖に感謝しつつ、ジックリと読ませていただきます。



紙の本で読みたい二作

2018年04月02日 20時38分00秒 | 
昭和天皇物語」と「アルキメデスの大戦」。

「昭和〜」の方は以前第一巻を読んだ折に紹介しましたけど、その第二巻が発売され、さっそく読んだ次第。

いやいや益々面白い内容になってます。少年期から皇太子になり、お后選びのエピソードなんですが、話しには聞いたことあるけど、漫画で表現されると人物が活き活きとして、表現は淡々としているものの、微妙な表情や台詞回しが堪らないんです(^_^)

こういう特殊な家柄に生まれた人は、他者との違いを徐々に理解し、受け入れ、それが成長と見なされる。学問所で学ぶ所謂ご学友とさえ大きな隔たりがあり、時に抗うように「竹山」というハンコを作ったりする。やがて自分の置かれている状況や立場に自分の努力ではどうしようもないものがあると悟り、理解していくプロセス。

まさしくベールに隠された奥にあるもので、どこまでが真実でどこが虚構なのか、区別はつかないけど、一つ一つのエピソードに興味津々です(^_^)

後の皇后となる良子内親王の出自と出会い、そして婚儀をめぐる各派の政治劇とかね。

もう一方の「アルキメデス〜」もまさしく日本人社会の特質をついていて、どこまでも派閥があって対立しあってる様が...あぁ今の政治スキャンダルに直結していて、何も変わらないんだなぁと痛感させられることばかりでね(^_^;

「アルキメデス〜」は主人公が派閥の対立を乗り越えて、新造戦艦の秘密と計略を暴いていく推理劇。

資料もなにも無い無い尽くしからコツコツと細い糸を手繰るように本質へと迫る物語なんだと想います。

絵柄についてはホントにクセが強くて、決して好きなタッチではないのですが、小説のような展開がとても面白くて、グイグイ読ませてくれます(*^o^*)

漫画は巻数が多くて、場所をくうのが悩みなんですが、今の気持ちとしては紙の本で読みたい二作なんですよね。



Perfume、TV Bros.「ちはやふる」特集

2018年03月22日 22時10分00秒 | 
3/20(火)発売の3月24日号は素晴らしい!

巻頭でグラビア4ページ、 Perfume と広瀬すずさん交えてのインタビュー3ページ、監督・脚本の小泉徳宏さん、新田真剣佑さん、野村周平さんら各1ページというなかなかな特集ぶり(*^o^*)

広瀬すずさん、丸顔っぽくて背が小さそうなイメージなんだけど、こうして並んでみると(グラビアには4人揃って立ってるのもあるんです) Perfume で一番背が高いのっちくらいなんだなぁと。

「ちはやふる」三部作は本当に良い「結び」を見せてくれて、青春群像劇としても傑作になったと思います。

小泉さんの Perfume による主題歌へのコメントも嬉しい(^_^)

常に意外性がありますよね。百人一首がモチーフだと古典的なものを当てたくなるところを、あえて真逆のサウンドで攻めて。
<< 中略 >>
ダンスや衣装も今までの流れと違うし、今回も自分たちの解釈する世界観で「ちはやふる」に寄せて作ってくれました。そういうチャレンジ精神に Perfume チーム全体の強さを感じています。


さすが、お解りになっていらっしゃる!(*^o^*)

エンディングだけではなく、もうちょっとバリエーション感じさせる曲の使い方してくれたら文句なしだったんだけど...小泉さんのセンスだけの問題じゃないのかもしれないので、良しといたしましょう\(^o^)/



こうの史代さん、最新作!(*^o^*)

2018年03月09日 19時50分00秒 | 
タイトルは「はるかなる日々」。

20ページの読み切り作品です。

本日発売の「週刊漫画ゴラク」に...相変わらずエロスと暴力満載の濃ゆ〜い雑誌に掲載ですねぇ(^_^;


あぁ...なんだかもう...無条件に喜びを感じます...(*´д`*)

日の鳥」という東日本大震災の被災地域を巡るスケッチ&エッセイ作がありますが、どうやら作品世界が繋がってるストーリーみたいです。

人間の可笑しさ、愚かさ...そして切なさが凝縮されていて、相変わらずうまいなぁ!(^_^)

こうのさん独自の反復とズレ表現、ますますキレがよく冴えています。

ラストはとても旨に沁みました...でもそれだけで終わらせないのが、こうのさんの面白さです!

作画も相変わらずスクリーントーンを使わず、全て手描きで表現...なので他の掲載作をパラパラっとするだけで良い意味での異質感あって、これだとすぐに判るという(^_^;

「この世界の片隅に」でこうのさんという作家を知った人は多いと思いますが、その世界ともどこか繋がってる感じもしますし、ファンなら必読ですね(^_^)

そして...

なんと驚きの新連載だそうです!

その名も「百人一首」で、「キュートな主人公の日常を和歌の上の句5文字+下の句7文字で描いたら...」という...どういう物なのか想像つきませんが、「ギガタウン」的なものなのかな???

オールカラーらしいし、とても楽しみです!(^_^)