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キリシタン用語(7)「オラショ、オラッショ」(御等志与、於辣諸)

2017-09-07 15:10:15 | キリシタン用語
 ダンテの『神曲』からだいぶ脱線してしまったが、また映画『沈黙 -Silence-』に戻る。
  今回のキリシタン用語は「オラショ(オラッショ)」である。映画にこの言葉が出てきたような気もするが、記憶は曖昧である。元々はラテン語の祈祷文のことを指した。
 
 キリシタン用語はポルトガル語由来のものが大半だが、「オラショ」はちょっと違う。語形の上で「オラショ」に対応するスペイン語は oración(オラシオン)である。手元の辞書には「ラテン語 oratio、同源のポルトガル語 oração(オラサン)と合流して「祈祷」を指すキリシタン用語『オラショ、オラッショ』(御等志与、於辣諸)となる」と説明されている。
 英語の oration も同語源であるが、英語の場合は「宗教的な祈り」ではなく、「(正式な)演説、式辞」の意味で使われる。
 スペイン語 oración の元になる動詞は orar で「(誰かのために)祈る」が原義だが、第二義として「演説する」という意味もある。orar の関連語には oral や oratorio がある。いずれも英西同形である。
 これらの言葉に共通するのは「口」である。「オラショ」は心の中で祈るのではなく、口に出して祈りの言葉を唱えるのである。
 「キリシタン用語集」によると、「オラショ」とは「カクレキリシタンに伝わるキリスト教の教義や聖歌、祈祷文をに由来する文章の集まり」。となっている。詳細な説明はそちらをご覧いただきたい。
 映画『沈黙 -Silence-』の中でキリシタンたちが何か祈っているようなシーンがあったかと思うが、それがいわゆる「オラッショ」だったのかと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
 ウィキペディア「オラショ」に当たってみると、次のような説明があった。

 オラショは、パライソやインフェルノの教えが、隠れキリシタン(カクレキリシタン)により300年間あまり口伝えによって伝承されたものである。カクレキリシタンにとって、オラショは一種の呪文のようなものであり、意味内容を理解した上で唱えられているものとは言えず、「基本的には一つの行として、暗記して唱えること自体が重要なことであって、意味そのものを理解することにはほとんど関心がない」という。
 1970年代以降、皆川達夫らにより原曲の比定などの研究と共に録音のリリースが行われた。現在ではオラショを題材とした曲が作曲されている。
 
 早い話がオラショとはキリスト教版のお経のようなものである。お経も素人には意味不明だが、オラショも意味不明でいいらしい。
 You Tube にも『4/4生月かくれキリシタン「おらしょ★聖歌」Ikitsuki hiding kirishitan'Oratio&Hymn'』が紹介されている。横溝正史の小説を映画化したような雰囲気であるが、興味のある方はご覧いただきたい。
 映画『沈黙 -Silence-』は17世紀初頭を舞台にしているが、キリシタンたちが祈る場面があったと思う。しかし、それは You Tube で紹介されているような「オラショ」ではなかった。
 

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