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広島東洋カープのバティスタ選手(4)Batista

2018-07-17 22:16:55 | 名前
 
 広島東洋カープのバティスタ選手(Xavier Alexander Batista)の姓(たぶん父の父姓)の Batista は現代史でなじみのある名前である。カストロをリーダーとしたキューバ革命で倒されたのがバチスタ(Batista)政権である。
 
 【ウィキペディア「フルヘンシオ・バティスタ」より】
 “Historia Apellidos”によると、スペインでのランキングは第643位。珍しい姓ではない。世界的にみると、絶対数1位はブラジルで、人口比1位はパナマである。絶対数2位はバティスタ選手の出身国のドミニカ共和国、3位はキューバである(“Forebears”参照)。
 ところで、Batista の意味は何だろうか。語末の -ista は「~する人、~主義者、~家」または「~に関する、~の特性を持つ」の意の名詞、形容詞語尾である(小学館『西中中辞典』参照)。英語の -ist に相当する。
 スペイン語には普通名詞の batista という語があるが、意味は「キャンブリック、バチスト布:上質で薄手の布」となっていて、「~する人」とは関係なさそうである。てっきり、「batir (打つ)する人」の意味かと思っていたのだが。
 「バチスト布」をコトバンク「バチスト」で調べてみると、「《最初の製造者の名から》細い糸で平織りにした薄手で上等の白麻や木綿地。ハンカチ・肌着・ブラウス・ワンピースなどに使われる」と書かれていた。最初の製造者は13世紀のフランス人で、 Baptiste de Cambrai というそうである。
 スペイン語の batista はバチスト布の最初の製造者 Baptiste に由来することがわかったが、この名前は p が発音されないので、「バチスト」のように聞こえるのである。Baptiste はスペイン語では Baptista となるが、p が発音されなくなって、Batista になり、さらに普通名詞化して、batista になったのであろう。
 ところで、大修館『スタンダード佛和辭典』には Baptiste という項目があり、「①ばかの役をする役者の名、②《俗》ばか〈小文字でも用いる〉」と記されている。
 baptiste と小文字で始まる語も掲載されている。意味は「【宗史】再洗派」となっている。面白いことに、「バチスト布」(西 batista) の意味は見当たらない。
 ばかの役をする役者の Baptiste は「もともとは18世紀の縁日芝居などに登場する愚鈍な道化役の名前だった」とのこと(“ピトレスクなフランス語bot”より)。
 バチスト布の製造者の Baptiste さんは13世紀の人間なので、当時は「ばか」という意味はなかった。18世紀になって現れた道化役のおかげで、とんでもない意味を持たされたものである。
 さて、本題のバティスタ(Batista)選手が将来、カナダのトロントを本拠地とするブルージェイズでプレーして、ボーンヘッドでもやらかそうものなら、フランス語で“Baptiste”と野次られるかもしれない。
 

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