いつの頃からか、映画に出ている犬の姿を見ただけで涙ぐむようになってしまった。
「さよならクロ」なんて予告を見て、涙が止まらなかったし、「子きつねヘレン(こりゃ犬じゃないが)」の予告でも「クイール」の予告でも、ハンカチを必要とするくらい泣いた。
うちにも犬がいる。
14年前、保険所で処分されそうなのを、妹が引き取ってきたのだ。
最近は右足の付け根に腫瘍が出来て歩行が困難になってきた。それに加え、心臓がかなり肥大していて、いつ死んでもおかしくない状態だと医者は言う。
「この犬が死んだら自分はどうなるのだろう」と最近よく考える。
10年以上前、避妊手術をするため、2日ほど病院に入院させていた時、小屋にいるべき犬がいないのがとっても奇異な感じがした。
2日後、手術を終えて帰ってきた犬は、よろよろしながらワタシのそばにきて弱々しくしっぽを振った。
人間の勝手で手術をさせたのに、恨むことなく飼い主を慕う健気な犬。
その姿に涙がとまらなくなり、私はただ「ごめんね、ごめんね」と言いながら、泣くしかなかったのだ。
その時、自分にとって犬がどれほど大切な存在か思い知らされたのだ。
さてこの映画の主人公はどうだろう?
アルゼンチン、2004年作品
アルゼンチン、南のパタゴニア。
この映画の主人公であるフアン・ビジェガスは、20年勤めたガソリンスタンドを解雇されてしまった、ついていない男だ。
新しい勤め先も見つからず途方にくれるフアンだったが、ひょんなことから白く大きな犬「ボンボン」を飼うはめになる。
娘夫婦の家に居候していたフアンは、娘に犬を飼うことを反対され、やむなくボンボンを連れてあてのない旅に出るのだが、行く先々で犬好きな人々の注目を集め、ボンボンは素晴らしい犬だと賞賛される。
紹介されたトレーナーによりトレーニングを受けたボンボンは、初めてのショーで3位入賞を果たし、種付けの依頼もくるようになり、次第にフアンの運命は好転し始めたかのように見えた。
だが種付けに失敗し、医者からも「生殖本能がない犬だ」と言われ、途方にくれるフアン。
トレーナーに「オレが犬を預かるから、しばらくしたら出直して来い」といわれ、フアンはボンボンを預けるのだが、一人になって初めてボンボンが自分にとってどんなに大切な存在か気づくのであった。
初めは儲けるための手段であったボンボンが、いつの間にか孤独な初老の男の心に明かりを灯す存在になっていた・・・という心温まる話だ。
ラストでは思わず泣き笑いというか笑い泣きしてしまって、身体の力が抜けてしまった(笑)。
お世辞にも可愛い顔とは言えないボンボンと、いかにも人のよさそうなフアンが「ここで心を通わしたんだな」と思えるようなシーンはない。
だが二人(といっていいのか)が並んで車に揺られている後ろ姿を見ると、明らかにそこに何かが存在しているのがわかる。
自分を愛してくれる主人がいない犬と、仕事を失い家族からは厄介者としか見られていない男。その二人の間には何か通ずるものがあったに違いない。
主人公を演じたフアン・ビジェガスは、実生活では20年駐車場に勤務していたという(この映画の撮影が終わった後、また駐車場勤務に戻ったらしい)。
その朴訥で人のよさそうなフアン・ビジェガスを監督自らスカウトしたのだが、これが大正解のキャスティングだったと思う。
「このおじさんには幸せになって欲しいなあ。でもこんなにいい人なんだからきっと幸せになるよね」と、見る人に思わせてしまうおじさんなのだ。
このおじさんと、ちょっとやる気のなさ気なボンボン、そしてどこまでも続く埃っぽい長い道と青い空。じめじめした気分を吹き飛ばす、乾いたような空気を感じさせる映像。
それらを見ていたら心がほっこり温かくなり、ちょっと力を抜いて生きてみようかという気持ちになったのであった。
「さよならクロ」なんて予告を見て、涙が止まらなかったし、「子きつねヘレン(こりゃ犬じゃないが)」の予告でも「クイール」の予告でも、ハンカチを必要とするくらい泣いた。
うちにも犬がいる。
14年前、保険所で処分されそうなのを、妹が引き取ってきたのだ。
最近は右足の付け根に腫瘍が出来て歩行が困難になってきた。それに加え、心臓がかなり肥大していて、いつ死んでもおかしくない状態だと医者は言う。
「この犬が死んだら自分はどうなるのだろう」と最近よく考える。
10年以上前、避妊手術をするため、2日ほど病院に入院させていた時、小屋にいるべき犬がいないのがとっても奇異な感じがした。
2日後、手術を終えて帰ってきた犬は、よろよろしながらワタシのそばにきて弱々しくしっぽを振った。
人間の勝手で手術をさせたのに、恨むことなく飼い主を慕う健気な犬。
その姿に涙がとまらなくなり、私はただ「ごめんね、ごめんね」と言いながら、泣くしかなかったのだ。
その時、自分にとって犬がどれほど大切な存在か思い知らされたのだ。
さてこの映画の主人公はどうだろう?
アルゼンチン、2004年作品
アルゼンチン、南のパタゴニア。
この映画の主人公であるフアン・ビジェガスは、20年勤めたガソリンスタンドを解雇されてしまった、ついていない男だ。
新しい勤め先も見つからず途方にくれるフアンだったが、ひょんなことから白く大きな犬「ボンボン」を飼うはめになる。
娘夫婦の家に居候していたフアンは、娘に犬を飼うことを反対され、やむなくボンボンを連れてあてのない旅に出るのだが、行く先々で犬好きな人々の注目を集め、ボンボンは素晴らしい犬だと賞賛される。
紹介されたトレーナーによりトレーニングを受けたボンボンは、初めてのショーで3位入賞を果たし、種付けの依頼もくるようになり、次第にフアンの運命は好転し始めたかのように見えた。
だが種付けに失敗し、医者からも「生殖本能がない犬だ」と言われ、途方にくれるフアン。
トレーナーに「オレが犬を預かるから、しばらくしたら出直して来い」といわれ、フアンはボンボンを預けるのだが、一人になって初めてボンボンが自分にとってどんなに大切な存在か気づくのであった。
初めは儲けるための手段であったボンボンが、いつの間にか孤独な初老の男の心に明かりを灯す存在になっていた・・・という心温まる話だ。
ラストでは思わず泣き笑いというか笑い泣きしてしまって、身体の力が抜けてしまった(笑)。
お世辞にも可愛い顔とは言えないボンボンと、いかにも人のよさそうなフアンが「ここで心を通わしたんだな」と思えるようなシーンはない。
だが二人(といっていいのか)が並んで車に揺られている後ろ姿を見ると、明らかにそこに何かが存在しているのがわかる。
自分を愛してくれる主人がいない犬と、仕事を失い家族からは厄介者としか見られていない男。その二人の間には何か通ずるものがあったに違いない。
主人公を演じたフアン・ビジェガスは、実生活では20年駐車場に勤務していたという(この映画の撮影が終わった後、また駐車場勤務に戻ったらしい)。
その朴訥で人のよさそうなフアン・ビジェガスを監督自らスカウトしたのだが、これが大正解のキャスティングだったと思う。
「このおじさんには幸せになって欲しいなあ。でもこんなにいい人なんだからきっと幸せになるよね」と、見る人に思わせてしまうおじさんなのだ。
このおじさんと、ちょっとやる気のなさ気なボンボン、そしてどこまでも続く埃っぽい長い道と青い空。じめじめした気分を吹き飛ばす、乾いたような空気を感じさせる映像。
それらを見ていたら心がほっこり温かくなり、ちょっと力を抜いて生きてみようかという気持ちになったのであった。