いよいよ横尾忠則さんの『寒山百得展』が始まった。完全新作百二点とは驚くべきことである。また関連開催として、寒山拾得図の名品が公開される。図版では殆ど見たものだろうが、特に告知にも使われている道釈人物画の名手、顔輝作の寒山拾得は最重要作である。 展覧会の解説には、寒山拾得の〝世俗を超越した奇行ぶりは「風狂」ととらえられました。中国禅宗では、悟りの境地として「風狂」が重要視されまりしたが、寒山拾得の脱俗の境地は、仏教に通じるものとして、中国や日本で伝統的な画題として数多く描かれて〜。 一昨日11日のブログで私の〝鍵っ子”時代に触れたが、私の考える通り、人間も草木同様自然物、あらかじめ肝心なものは備わっている、としたら〝脱俗”どころか俗に汚されておらず、浮かんだイメージはどこへ消えてしまうのか、と一人悩んだ鍵っ子の空想世界。自我の目覚めの原点といって良いが、ひょっとして、あそこに寒山が住う天台山が存在し、その記憶を求めて、ここに至ったような気がフトよぎった。