徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナウイルスと家庭内感染

2021年01月18日 06時46分59秒 | 小児科診療
2回目の緊急事態宣言は発効され、自宅で過ごす時間がまた多くなりました。
しかし一方で、家族に患者が発生すると、家庭内感染のリスクが増えるという面もあります。

家庭内ではどんな経路・タイミングで感染するのでしょうか。

COVID-19の家庭内感染のリスク因子~54研究のメタ解析
ケアネット:2021/01/18)より一部抜粋
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の家庭(同居世帯)内の感染リスクは、他のコロナウイルス(SARS-CoV、MERS-CoV)より2~4倍高く「初発患者が症状あり」「接触者が18歳以上」「初発患者の配偶者」「家庭内の接触人数が1人」がリスク因子であることが、米国・フロリダ大学のZachary J. Madewell氏らのメタ解析で示された。JAMA Network Open誌2020年12月14日号に掲載。
 著者らは、PubMedにおいて2020年10月19日までの論文を検索し、系統的レビューおよびメタ解析を行った。主要評価項目は、SARS-CoV-2および他のコロナウイルスにおける、共変量(接触者が家庭もしくは別居家族を含めた家族、初発患者の症状の有無、初発患者が18歳以上もしくは18歳未満、接触者の性別、初発患者との関係、初発患者が成人もしくは子供、初発患者の性別、家庭内の接触人数)で分類し推定した2次発症率。

・家庭内2次発症者7万7,758例を報告した54研究を特定した。
・SARS-CoV-2の推定家庭内2次発症率(95%信頼区間)は16.6%(14.0~19.3)で、SARS-CoVの7.5%(4.8~10.7)およびMERS-CoVの4.7%(0.9~10.7)より高かった。
・家庭内2次発症率(95%信頼区間)に差がみられた共変量は以下のとおり。
 - 初発患者の症状:あり 18.0%(14.2~22.1)、なし 0.7%(0~4.9)
 - 接触者の年齢:18歳以上 28.3%(20.2~37.1)、18歳未満 16.8%(12.3~21.7)
 - 初発患者との関係:配偶者 37.8%(25.8~50.5)、他の家族 17.8%(11.7~24.8)
 - 家庭内の接触人数:1人 41.5%(31.7~51.7)、3人以上 22.8%(13.6〜33.5)

この報告は「メタ解析」といってたくさんの関連論文から客観性のあるものを選んでそれをまとめたものであり、信頼性が高いと評価されます。
以下のように、予想通りという結果ですね。

① 症状がない人よりある人のほうが感染力が強い。
② 子どもは大人より感染力が弱い。

また、意外なリスク因子も確認されました。

③ 夫婦間ではリスクが高い

これは、接触が濃厚なのか、夫婦だから一蓮托生という開き直りがあるのか、不明ですが・・・。
あ、外国では夫婦は同じベッドで寝ることが基本(NHKの「Cool Japan」でやってました)ですから、睡眠中(たぶんマスクなし)はハイリスク状態ということですね。

④ 家庭内の接触者が一人の場合は多人数よりリスクが高い

これはどういうことなのか、ちょっとわかりません。③と④を一緒に考えると、老夫婦の世帯はハイリスクとなるのでしょう。

■ COVID-19、家庭・職場で感染リスクが高い行動は?
 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染リスクを減らすには何に注意すればよいのだろうか。シンガポール・National Centre for Infectious DiseasesのOon Tek Ng氏らが、COVID-19患者の濃厚接触者におけるSARS-CoV-2感染に関連する因子を調べた結果、家族内では「寝室の共有」「COVID-19患者から30分以上話されること」が、家族以外では「2人以上のCOVID-19患者への曝露」「COVID-19患者から30分以上話されること」「同じ車への乗車」が関連していた。一方、「間接的な接触」「一緒に食事すること」「同じトイレの使用」については独立した関連がみられなかった。Lancet Infectious Disease誌オンライン版2020年11月2日号に掲載。

この報告では、

・寝室の共有(つまり夫婦)
・患者から会話に伴う飛沫を30分以上浴びること

がハイリスクであり、一方で、

・間接的な接触
・同じトイレの使用

はリスクにならなかった、とされています。
単純に考えると、接触より飛沫のほうが感染力が強く、感染機会も多いということになりますね。
「トイレは要注意」とテレビで再三報道されていますが、接触感染対策(手洗いをしっかり)すれば、リスクは高くないのかもしれません。
なぜって便中にPCRで検出されるウイルスにはすでに感染力がないことがほとんどですから。
ただ「一緒に食事すること」がリスク因子になっていないのが不思議ですが。

これらの情報をもとに、では実際には家庭内の感染対策はどうすべきか、を考えましょう。
港区のHPにわかりやすい記載がありましたので、一部引用させていただきます;

□ 家の中での感染予防(5つの工夫)
(1)他の人の食べ残しを食べないようにしましょう。
(2)みんなで一緒に使うものは、使用後によく洗いましょう。
(3)直接口をつけるものの共有は避けましょう。
(4)家に帰ったら手を洗いましょう。
(5)換気をしましょう。
□ 体調が悪くなった場合に行うこと
(1)適切な距離をとりましょう。
(2)互いにマスクを着用しましょう
(3)来客はお断りしましょう。
(4)ティッシュ等のごみを捨てる時はごみ袋をしばりましょう。
(5)シャワーやお風呂は体調が悪い人が最後に入りましょう。

リーフレットはこちら
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