徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

新型コロナに罹れば“無敵モード”が歌舞伎町の流儀

2021年01月23日 20時20分48秒 | 小児科診療
・・・という記事を読んで、ビックリすると共になるほどと頷いている自分がいます。
以下に紹介します(下ネタ系で申し訳ありません)。
まあ部数を競う週刊誌の記事ですから、誇張されている部分も無きにしも非ず、話半分で読んでください(^^;)。


「キスもします。仕事だから」コロナ感染の歌舞伎町セクキャバ嬢が告白した“おっぱいクラスター”の現在

「・・・風俗もセクキャバも、欲に負けたお客さんが絶対来るからね。緊急事態宣言が出た今だって賑わってるよ」
 1月7日に出た2度目の緊急事態宣言が、1度目ほどの効果と緊張感を生み出せずにいる。日本最大の歓楽街、新宿・歌舞伎町も人出が戻り、“濃厚接触”が売りの風俗店にも客足が戻ってきているという。

▢ 一度かかったので“無敵モード”に
 昨年秋には、歌舞伎町のセクキャバでもクラスターが発生している。取材班は新型コロナウイルスに感染した経験がある歌舞伎町のセクキャバ嬢・A子さんに話をきいた。
「うちのお店は春から夏の終わりにかけて、ほとんどのキャスト、黒服がコロナに感染しています。皆がコロナ経験者なので『抗体があるからもうかからない』と“無敵モード”で余裕かましてますね。コロナにかかったときの対応もさまざまで、しっかりPCR検査を受けて2週間休む子もいれば、『匂いや味がない』と言いながら、PCR検査も受けず、4~5日休んですぐに復帰する子もいました。私は高熱がでてインフルエンザのように体の節々が痛くて、症状が重かった。体の調子が落ち着いてもかなり長い間嗅覚も味覚も戻らず、自分は何を食べているんだろうという状態でした」
・・・
▢ 「一度かかったこと」が最大の対策?
 そもそも店内での感染対策はどうなっているのか。
「一応、コロナ対策でお客さんにはイソジンでうがいをしてもらっています。私たちも接客前には透明のボトルに入った『次亜塩素酸水』をおしぼりにつけて、胸や口、耳を消毒しています。何度も消毒してるとピリピリして肌が荒れるので、消毒後はおしぼりで拭き取ってる子が多いです。
 対策はそれくらいで、ディープキスもするし、おっぱいも舐められる。それが仕事だからね。まあ一番の対策は、すでに一度コロナにかかってること。2部の営業は女の子だけじゃなくてお客さんもスタッフもほとんどがコロナ経験者だから、誰も気にしてませんよ(笑)」
・・・
▢ 「まだコロナとか言ってるの?」
 生活のために店を開けて何が悪い、という開き直りにも似た“空気”は歌舞伎町で働く多くの人に共通している。


新型コロナに関しては、
若者も合併症や後遺症が話題になるものの、
命に関わることは非常に希なので、
罹って抗体ができれば無敵モード
キャバクラ嬢もスタッフも客も皆感染済みなのでもう気にしない
という雰囲気が歌舞伎町に蔓延している、と読み取れます。

困ったもんだ・・と思いつつ、実は一理あると思います。

感染症は罹っても軽く済めば御の字”とは誰しも思うこと。
新型コロナの場合、若者はそれで済みますが、
高齢者はそれで済むわけでは無く、一定の比率で重症化して命に関わります。

誰しもが軽く済んで治ってほしいと願います。
それをクスリで実現できないだろうか・・・
実はその考え方から生まれたのが、“ワクチン”なのです。

ワクチンの目的は、
弱毒化した病原体をあえて体に入れて感染させ、症状を軽く済ませて抗体を獲得させる
というもの。

典型的なのが「生ワクチン」です。
現在用いられている生ワクチンには以下のものがあります;

(例)
MR(麻疹・風疹)ワクチン
水痘ワクチン
おたふくかぜワクチン
ロタウイルスワクチン
BCG

ただ、欠点があります。
<ワクチンのデメリット>
自然感染と比較してワクチンは症状が出ない分、獲得できる免疫の強さと持ち(持続期間)が悪く、10年くらいで弱くなって罹ってしまうことがあります。
現在は2回あるいは3回接種することになっています(BCGを除く)。

そして大きなメリットもあります。
<ワクチンのメリット>
自然感染とワクチンの大きな違いが“感染力”です。
自然感染では他人から感染症をもらい罹ると“被害者”ですが、
同時に“加害者”になるリスクも発生します。

若い自分は軽く済んでも、
同居している祖父母に移してしまうと命の危険があるのです。

しかしワクチンを接種した場合、軽く症状が出ることはあっても他人に感染させることはありません

問題視されて不活化ワクチンに変更され解決しました。

加害者になり得るかどうかは、流行制御という視点で見ると、大きな大きな違いです。
現在、「若者は新型コロナウイルスの運び屋」と危険視されているからです。

気になるのがワクチンの副反応ですが、こう考えてみてください。

自然に感染すると症状もひどいし合併症も重い、
ワクチンを接種すると症状は出ない、合併症(副反応)もまれ

副反応が問題視され、マスコミが煽るのは、
ワクチンが健康者に接種するものだからです。

ワクチンが有効なら何も起こらない(感染しない)ので、ありがたみを感じにくい。
しかし副反応が発生すると、
「健康人に使用する薬に副作用(副反応)が出るなんて許せない」
という攻撃対象にもってこいなのです。
攻撃対象は国ですから、他人から批判されるリスクも少ないですし。

実は、自然感染の合併症よりワクチンの副反応の頻度・程度はとても少なく済むのですが、
ふだん、なかなか一般の人はそこまで思いを馳せることができません。

もし、「症状も重く出てしまうし、合併症のリスクも高い」ワクチンがあったら、あなたは接種しますか? 
・・・しませんよね。
それが“自然感染”という名のワクチンです。
自然感染は、ワクチンという視点から見ると「最強&最悪」のワクチンなのです。

さて、現在話題になっている新型コロナワクチンの重篤な副反応である“アナフィラキシー”は100万人に数人程度と報告されています。

これを多いと感じますか、それとも少ないと感じますか?
日本人では多い・危険を感じる人が多いかも知れません。
平和な日本では“ゼロリスク”を求めがちですから。

アナフィラキシーとは複数の症状が一度に出るアレルギー反応のことです。
程度によりショックに至り命に関わることがある危険な症状です。

さてここで、匿名の“クスリ”をクイズ的に紹介させていただきましょう。

その“クスリ”は、誰でも飲んだことがある身近なものです。
しかし、小中学生がそれを飲むと、1000人に一人の頻度でアナフィラキシーが発生すると報告されています。

すごく多いですよね。

でもこの“クスリ”、薬店やドラッグ・ストアで簡単で手に入りますし、
実はスーパーやコンビニでも販売されています。
この“クスリ”の名前、おわかりでしょうか?

答えはなんと「牛乳」です。

牛乳アレルギーで1000人に一人の学童がアナフィラキシーを起こすのです。
数年前に死亡事故も発生しました。
しかし「そんな危険なものをスーパーで販売しているなんておかしい」
とは誰も言いません。
もし、1000人に一人の頻度でアナフィラキシーが起こるクスリが開発されても、日本政府が認可することはあり得ないでしょう。

その事実を知る私には、
100万人に数人の頻度でアナフィラキシーが発生するより安全な薬って作れるのだろうか・・・と素朴な疑問が湧き上がります。

言い方を変えると、
副反応ゼロのワクチンは存在しない
のです。
もしあるとすれば、それは“効かない”ワクチンですね。

作用があれば副作用がある、
副作用が無いクスリは作用も期待できません。

ではどう考えるべきか?

要は「アナフィラキシーが起きても対応可能な体制で接種に臨む」ということに尽きると考えます。

従来、予防接種を受けた後は、
「30分程度、その場所に待機して副反応の有無を確認してから帰宅する」
というルールが予防接種ガイドラインや啓蒙書に記載されてきました。
しかし待合室が狭かったり、患者さん側が忙しかったりで、いつの間にか守られなくなることが増えてきたようです。

副反応が心配な割には、その有無を確認する時間を待っていられないなんて、日本人はワガママですねえ。

先日、新型コロナワクチンの説明会が地元医師会でありました。
その質疑応答で、ある医師から、
「ワクチン接種した後、何分くらい医院で観察すればよいのですか。インフルエンザみたいにすぐ帰ってもらうわけにはいかないですよね。」
という質問が出ました。

私は耳を疑いました。
インフルエンザワクチン接種後、すぐ帰宅している?
危ない橋を渡ってます・・・。

当院では開院以来、愚直に上記30分ルールを守っています。
なので、初めて知る患者さんは驚いたり、待たないことになれていない患者さんは怒って当院以外の医療機関に流れることもあります。

私って青臭いのでしょうか?
今回、ワクチンのリスクを再認識して、ルールを守るようになればいいな、と思っています。

それから新型コロナワクチンは「筋肉内注射」です。
これは、副反応が問題になったHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)と同じく、針を深く刺して接種する方法です。

そう聞くとすごく痛そうですが、実はあまり痛くありません。
筋肉には痛覚点が少ないからです。
もし、痛みが強い場合は、接種医の腰が引けて筋肉まで到達していない可能性が指摘されています。

他のワクチン(10歳以上のB型肝炎など)で筋肉注射することがありますが、
接種前に怖がった子ども達でも、
「あれ、思ったほど痛くなかった」
と平気な顔をして帰って行きますよ。
大丈夫、大丈夫。
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