徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザワクチン情報-3:1回接種、それとも2回接種?

2015年08月31日 06時48分37秒 | 小児科診療
 小児に対するインフルエンザワクチン接種回数は、日本では2回が基本です(ただし13歳未満)。
 しかし外国を見回すと、これが世界標準ではないことに気づかされます。日本より接種回数が少ない方式が一般的なのです。
 特にアメリカはデータを元に細かくアップデートするので、毎年「今シーズンの接種スケジュールはどうなる?」と目が離せません。
 
 世界の接種スケジュールを比較してみましょう。
 日本推奨とWHO推奨、それから2015-16年シーズンのアメリカACIP推奨のスケジュールを列挙してみます;

<日本>
□ 6ヶ月~13歳未満:2回
□ 13歳以上:1回

<WHO>
□ 6ヶ月~3歳未満:2回
□ 3歳~9歳未満:1~2回(前年度ワクチン未接種者に対しては2回)
□ 9歳以上:1回

<米国>
□ 6ヶ月~8歳:1~2回(過去に2回接種歴があれば1回)
□ 9歳以上:1回


 米国のスケジュールを追加説明しますと、乳幼児に初年は2回、次の年からは1回が基本です。かつ、過去に2回接種歴があれば、それが同じ年でなくてもカウントしてよいことになっており、極端な話「3年前に1回、昨年1回接種した」のであっても今シーズンは1回接種でよいのです。


 では、日本より少ない接種回数で十分な効果が期待できるのでしょうか?
 前々項で記したように、もともとインフルエンザワクチンの「発症阻止効果」は低く期待できませんが、「症状軽減効果」は十分に期待できるデータがあります。
 つまり、日本の接種スケジュールを守っても「罹らないためではなく、軽く済ませるため」という目標になります。
 WHOや米国のスケジュールは、回数を減らしても上記の効果は変わらないというデータを元に作成されていると考えられます。

 ただし、ワクチンを接種しても重症化を100%防げるわけではありません。ワクチン接種者にもインフルエンザ性脳症の発生報告はあります。
 逆に、インフルエンザワクチンは2回接種してもまだ効果が不十分、と意地悪な見方をすることもできますね。

 今シーズンはワクチン接種料金が上がることが避けられず、兄弟の多い家庭では全員に2回接種すると経済的負担が重くのしかかります。
 その解決策・妥協策として、上述のWHO/米国方式の選択もありと開き直ってもいいのではないか、私は考えています。

 ただし、重症化のリスクを少しでもゼロに近づけたい方にはお勧めしがたく、重症化した場合に「2回接種しておけばよかった」と後悔してしまう方は日本式を選択すべきでしょう。
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