徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザの流行が止められないわけ。

2016年12月09日 08時21分44秒 | 小児科診療
 先日のNHK「きょうの健康」(2016.10.20放送)でインフルエンザを扱っていました。
 その中で、下のようなイラストを使用し説明;



 インフルエンザ患者全体を、その重症度と人数によりピラミッドに例えています。
 頂点にある合併症を伴う重症者はほんの一部。
 「高熱・体がつらい・節々が痛い」という、いわゆるインフルエンザのイメージの症状がその下に来る構図。
 しかしこのイラストからすると、このような典型例も多数派ではなく一部と捉えることができます(20%くらい?)。
 典型例の下には、一般の軽い風邪症状(鼻汁・のどの痛み)で終わる軽症例がたくさんいて、
 その軽症例の下にはさらに多くの症状の出ない「無症候性感染」者がいる・・・。
 軽症者と無症候性感染者を合わせると、全体の3/4を占める?

 問題は人にうつす感染力です。
 このピラミッドの中の全員が感染力を有します。
 軽症者&無症候性感染者も、人にうつす感染力があるのでやっかいな存在です。

 軽症者は、医療機関を受診せず、せいぜい市販のかぜ薬を飲むくらいで済ませるでしょう。マスクくらいはしてくれるかもしれません。
 しかし無症候性感染者に至っては、ぜんぜんつらくはないのですから、ふつうに日常生活を送り、マスクもせずに満員電車に乗って通勤し、職場でも働き続け、商談ではウイルス飛沫を飛ばしまくり。

 つまり、軽症者・無症候性感染者という感染源が、インフルエンザ流行に大きく荷担しているのです。
 これは迅速診断が普及してわかってきたことです。
 昔は症状で診断していましたから、軽症患者はふつうの風邪として扱われていましたので。

 無症候感染者への対策は?
 インフルエンザ迅速検査を市販し、毎朝チェックする?
 お金がかかりすぎて無理無理。

 というわけで、インフルエンザ流行を止めるのは人類にとって至難の業。
 より有効率の高いワクチンを開発し、全世界で接種するしか・・・。
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