徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

インフルエンザワクチンと薬の最新情報

2012年12月26日 21時32分09秒 | 小児科診療
 この秋の学会で発表されたインフルエンザ関連情報を2つ。

園乳児、園幼児、小学校低学年でインフルエンザワクチンの有効性を認める
(第16回日本ワクチン学会学術集会)

 2011/12シーズンにおけるインフルエンザワクチンの効果を検討したところ、園乳児組、園幼児組、小学校低学年でインフルエンザワクチンの有効性が認められた。特に園乳児組では有効性が高く、未接種群のインフルエンザ罹患率が36.4%だったのに対し、園乳児組の1回接種群が22.2%、2回接種群が15.7%だった。三重県亀山市での検討結果で、落合小児科医院の落合仁氏らが11月17、18日に横浜で開催された第16回日本ワクチン学会学術集会で報告した。
 対象は亀山市内の13保育園に通院している園児の保護者1437人。園児およびその兄弟姉妹のインフルエンザワクチン接種歴とインフルエンザ流行期間におけるインフルエンザへの罹患についてアンケート調査を行った。今回の調査期間に流行していたのはAH3型だった。
 ワクチン未接種群の2回接種群に対するインフルエンザ罹患リスク比(相対危険度:RR)と有効率を求めたところ、未就園が1.298(有効率23.0%)、園乳児組が2.314(56.8%)、園幼児組が1.289(22.4%)、小学校低学年が1.677(40.4%)、小学校高学年が1.716(41.7%)だった。このうち園乳児組、園幼児組、小学校低学年において、統計的に有意な効果が認められた。


 「ワクチンが有効」と目を引く演題ですが、その数字を見て唖然としました。
 他のワクチンの有効率は、麻疹風疹ワクチンで90%以上、おたふくかぜや水痘ワクチンはやや効果が落ちて80%程度と云われています。
 しかし、インフルエンザワクチンの有効率はそれらを大幅に下回って20~50%台にとどまります。なんともはや、寂しい数字です。

 イギリスでは来年度からインフルエンザワクチンが定期接種として導入されるそうです。そのワクチンは日本で使用している注射の不活化ワクチンではなく、経鼻生ワクチンというモノで有効率はなんと90%です。うらやましい。
 こちらのワクチンの日本への早期導入を期待したいですね。

二峰性発熱例、イナビル治療群はリレンザ治療群より有意に多く
(第44回日本小児感染症学会)

 いったん37.5℃未満に解熱後、24時間以降に再び37.5℃以上に発熱するインフルエンザの二峰性発熱例は、イナビル治療群の方が同じ吸入薬であるリレンザ治療群よりも有意に多いことが示された。2011/12シーズンに北海道内の多施設医療機関で行われた前向き観察研究で明らかになったもの。北海道大学大学院医学研究科の小関直子氏らが、11月24、25日と北九州市で開催された第44回日本小児感染症学会総会・学術集会で報告した。
 演者らは小児インフルエンザ患者を対象に、吸入剤の抗インフルエンザ薬であるイナビルとリレンザの解熱効果の違いを検討した。対象は、2012年1~4月に北海道内の31医療機関で抗原検査によりインフルエンザと診断され、発熱後48時間以内にイナビルまたはリレンザによる治療を行った5~18歳の患者。
 両群比較で差が現れたのは二峰性発熱例の割合だった。リレンザ群ではA型で1.4%、B型で1.9%だったが、イナビル群ではそれぞれ7.0%、12.9%と有意に多く認められた(各P=0.005、P=0.003)。
 二峰性発熱に関与する因子を分析したところ、年齢と抗インフルエンザ薬が影響していた。年齢は1歳下がると二峰性発熱を起こす確率が1.19倍高く、またイナビルはリレンザに比べて5.80倍高いことが分かった(それぞれP=0.016、P<0.001。表1)。


 この4月から、インフルエンザ隔離期間が「発症(=発熱)した翌日から5日間、あるいは解熱後2日間(就学以前は3日間)の長い方」に変わりました。
 二峰性発熱のあるなしで、隔離期間に数日間の差が出ますから、この報告は見逃せません。
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