BOXING観戦日記

WOWOWエキサイトマッチなどの観戦記

WBA・IBF世界Sライト級タイトルマッチ

2012-02-03 23:42:32 | Boxing
王者 アミール・カーン VS 挑戦者 レイモント・ピーターソン

ピーターソン 判定勝ち

考察 ~カーン~

単純な体全体のスピードならばメイウェザーを超えているのでは?
そう判断させるほどのスピードがどの試合でも序盤、特に初回にある。
ジュダー戦、マクロスキー戦などもそうで、
相手にとってはこのスピードに煽られるか否かが勝負の鍵を握ることになる。
カーンからすると序盤はほぼ無条件に主導権支配に成功できるわけで、
一度掴んだペースを離さないことが最低ライン。
しかし、この最低ラインが存外に高いハードルであることが判明した。
アインシュタインならずともスピードは相対的なもので、
ボクサーにとってのスピードも、スピード以外の要素で速度の増減はありうる。
それがつまりテクニック。
カーンにとってのスピードはフィジカル面のそれのみで、
たとえば相手が眼のフェイントをいれてきたときに
「まっすぐ」引いてしまう癖があることが露呈した。
スピードスターに特有の脆さと言うべきか、
たとえばM・マイダナ戦で絶体絶命のピンチに陥った経験から
フットワークの真髄を学んだに違いないと(勝手に)確信していたが、
中盤以降にピーターソンが強めてきたプレッシャーに飲み込まれていたようだ。
と言うのも、そのプレッシャーをいなす、もしくは軽減するような策が
何一つ実行できなかったから。
詰めてくる相手をジャブで止めるのか、
ワン・ツーで止めるのか、
カウンターで迎え撃つのか、それとも脚で翻弄するか。
カーンは第4の選択肢をメインに選んだが、
そのフットワークは翻弄するというよりも翻弄されたもので、
たとえばコットがマルガリートとの2戦で披露したような
小刻みなサイドステップを交えるでもなく、
シントロンがアングロ戦で見せた効果的なカウンターを打つわけでもなかった。

何か本質的に弱気の虫でも腹の中に飼っているのだろうか?
プレスコット戦は事故で片付けてよかったのかもしれないが、
今後は対戦相手もかなり強気で向かってくるだろう。
28歳で絶頂のまま引退というプランの実現が困難になってきた。



考察 ~ピーターソン~

初回のスリップは明らかにダウンで、
その後のダウンはスリップに見えた。
第一ラウンド早々のダウンはレフェリーも心理的にダウンを宣告しにくい。
これは河野もフィリピーノ相手に初回いきなりダウンして
レフェリーにスルーしてもらったことがある。
立ち上がりは最悪で、早い段階で連打を浴びてのTKOもありうるかと思わせたが、
カージョ、オルティス、ブラッドリーらと戦ってきた経歴は伊達ではなく、
コテルニク、マイダナ、マリナッジ、ジュダーに勝ってきたカーンよりも
あるいは濃密なキャリアと言えるかもしれない。
そのブラッドリー戦ではプレッシャーをかけても相手に軽くいなされたものだが、
この夜の相手はプレッシャーにもろに圧されてくれた。
あれよあれよとカーンを追い回し、ローブに詰めたが、
そこからのパンチに威力はあるが精度に欠け、
攻勢は取るものの、ダメージを与えるには至らないという、
序盤戦とは異なる意味のサスペンスがあった。

この試合の決め手は最終ラウンドの減点。
hometown advantageだと言ってしまえばそれまでだが、
あまり露骨にそう解釈されてしまうレフェリングもいかがなものかと思う。
確かにカーンのプッシングは見苦しかったのだが……
IBFの役員がリングサイドでどうだこうだという
スキャンダル手前の情報も聞こえてくる始末。
リマッチの機運が高まっているので、決着はリング上でつけてもらいたい。

今後はJ・M・マルケスとの対戦が取り沙汰されているが、
そんなマッチアップになにか意味があるというのだろうか。