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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

教育とマスメディア

2010-06-23 20:45:05 | 思索
人の世界観、つまり「存在に対する概念」は、見、聞き、教わることによって形作られていく。見、聞き、教わる物事を「情報」という言葉で表せば、幼児から小学生くらいの児童は、非常に多くの、新しい情報を旺盛に取り込み、自分の中に世の中の概念を形成して行く。もちろん20歳を過ぎるくらいのまでの青少年においても新しい情報の吸収力は十分高いが、この頃になると、個人の中の世界観はおおむね形状が完成し、未知の新しい情報は減少する。

自分の中に世界観を構築することは、いうまでもなく人の基本的行為であり、この構築した世界観を基準として、人は物事を評価判断し行為する。よって、人がそれぞれ異なる経験を通じて固有に所有する世界観は、個々人にとって最も重要な所有物である。ありていに言えば、その人の世界観が、その人のモノサシということだ。この世界観が内面に備わってこそ、人は自由に考え判断し行動することができる。しかしそれは、固有の世界観が、自分が属する社会の世界観に整合しているという前提においてである。特異な世界観に基づき、あえて強引に主張や行動をすれば変人扱いされるだろう。(ex ガリレオ・ガリレイ)

以上のことは、人の外の世界と内の世界の関係を示している。世界は人を介して2つに分かれる。外の世界は、それを認識しようがすまいが普遍的に存在する。しかし、ただ存在することには意味がなく、人の内の世界に投影され認識されてはじめて人にとっての存在となる。生まれたばかりの赤ん坊の周りに外の世界は確かにあるが、赤ん坊の内なる世界にはなにも存在しない。赤ん坊はこれからの成長に伴い、知覚した外の存在を内の世界に取り込み、配置し積み上げて、長い年月をかけて概念としての世界観を形成していく。

さて、一般に人は日々の営みとして、この外と内の世界を頻繁に往来している。例えば車を運転するときは、できるだけ外の世界に注力することで危険を回避している。また、本を読んでいるときは、手にしているのは紙に写された、ただのインクのしみであるにもかかわらず、何時間も読み続けることができる。これは意識がほとんど内の世界に存在している状態と言えるだろう。

ここで、人の世界観はどうのようにして形成されるかについて再度振り返る。世界観は、見、聞き、教わることによって組み立てられる。つまり世界観は外の存在に対する知覚が要素になっているのだ。ということは、実は一般的世界観は大きなリスクを内在していることに気づかなければならないだろう。見たもの、聞いたもの、教わったものは、果たしてその存在の多くの部分を確かに説明しているのかどうか。実は重要な意味を持つ存在が、表面的には見えていない、聞こえていない、教えられていない可能性があるのではないか。

ある偶然によって、そのような隠れた、あるいは隠された事実の存在を知ったとき、いままで長い期間を費やして組み上げた概念が根底から覆る。その瞬間は足場を失ってうろたえることだろう。知らないままでいた方が、どれだけ幸福だったことかと思うかも知れない。内の世界に構築した世界観を再構築することも、気の遠くなるような労力を強いられるだろう。

実は、私達が世の中の物事を知る方法は非常に制限され、限られているのだ。情報ソースの決定版であるインターネットも広く普及し、一見、どんなことでも知ることができるような世界に私達は住んでいると思っている。また、自分は何でも知っているという気がしている。しかしそれらは残念ながら錯覚だ。最も肝心で重要な事実は、そうかんたんに知りえるものではない。

裏を返せば、ある作為をもって集団の思想や価値観を統一すること、つまり集団的に人を洗脳することは簡単にできてしまう。例えば数年前、中国国民の露骨な反日感情が報道されたことがあった。もしこの報道に虚偽が無いとするなら、これはいったい何故なのか。中国の若者がなぜ日本に敵意を持つのか。何度も繰り返すが、人は見、聞き、教えられる(知らされる)ことによって世界観や価値観を形成する。この法則的流れには不思議なくらいブレーキがかからない。みんなが「そうだ!」と言えば、「そうなんだ」とたやすく思ってしまうのだ。「ほんとか?」と疑問視する者は極めて少ない。これも人の集団的行動特性のひとつなのだろう。

以上のことより、教育とマスメディアの「役割と責任」がいかに重大であるかが分かる。それ故、これらは極めて権力に利用されやすい。いかなる権力であれ、教育とマスメディアを支配することは、国民全体を支配することに等しい。過去、私たちは何度もこのような支配に苦しめられてきたし、現在もなお同様である。教育もマスメディアも、あらゆる権力から独立していなければ、その存在は悪でしかない。

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