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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇クレメンス・クラウスのヨハン・シュトラウス2世名演集

2009-01-27 15:48:11 | 管弦楽曲

ヨハン・シュトラウス2世:喜歌劇「ジプシー男爵」序曲/ポルカ
                「狩り」/ワルツ「我が家で」/ピチカ
                ート・ポルカ/ポルカ「クラップヘンの
                森で」/ワルツ「春の声」/ポルカ「観
                光列車」/ワルツ「ウィーンの森の物
                語」/常動曲

指揮:クレメンス・クラウス

管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

CD:キングレコード K35Y 1016

 毎年元旦は、ウィーンの楽友協会大ホールを会場に、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がウィンナワルツやポルカなどを演奏する「ウィーン・フィル ニューイヤーコンサート」の実況をテレビで見ないと正月が来た気がしないと感じている方も多いいであろう。私もその一人。今年はダニエル・バレンボイムが指揮をしたわけだが、バレンボイムも随分歳をとったものだと眺めつつ、その指揮ぶりを十分堪能できた。この「ウィーンフィル ニューイヤーコンサート」を聴いている時だけは“今年こそ世界が平和で、いい年になる予感がする”とお屠蘇をいただきながら毎年思うわけであるが、そう甘い結果とならないのが現実である。この「ウィーンフィル ニューイヤーコンサート」を1939年に開始したのが、このCDの指揮者、ウィーン生まれのクレメンス・クラウス(1893年3月31日ー1954年5月16日)なのである。

 このCDの録音は1951年ー1953年と記録されており、クレメンス・クラウスの死の3-1年前と最晩年の録音である。音質自体は少々硬く、十全とはいえないが、鑑賞にそう大きな支障はない。演奏自体はいかにも颯爽とし、優美で、粋なウィーン気質が前面に出ており、さらに気品があるということで、とても今風の指揮者には真似できない、格調の高い仕上がりとなっている。私生児だったクラウスは、外交官であった祖父の下で育ったが、父親はハプスブルク家の人間ではないかという噂が絶えなかったそうである。この録音を聴いても、どことなく貴族の雰囲気が漂ってくるようで、この噂は本当かもしれないと思わせる。

 クレメンス・クラウスは、1929年にウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任したが、翌年にはフルトヴェングラーの後任としてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任。さらに、ベルリン国立歌劇場の音楽監督、バイエルン国立歌劇場の音楽監督、ザルツブルク音楽祭総監督などを歴任し、戦前の楽団の大御所的存在であったわけである。戦後はナチスに協力したということで、一時活動を停止されたが、1947年には活動が解除された。こうみると何かカラヤンのたどった道に近いのかなと思わせる。ただ、カラヤンの録音が今でも愛聴されているのに比べ、録音の質にもよるのかクラウスの録音はあまり聴くチャンスに恵まれない。また、同時代のクナッパーツブッシュやシューリヒトへの関心が今でも高いのに対し、クレメンス・クラウスは何か過去の人として忘れ去られようとしている。この辺でクレメンス・クラウスの録音を掘り起こして、再評価するなどという企画は如何なものであろうか。(蔵 志津久)


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