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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽CD◇ドラティ/デトロイト響のラプソディ名曲集

2010-01-14 09:11:37 | 管弦楽曲

ラプソディ!

リスト:ハンガリー狂詩曲第2番
ドヴォルザーク:スラブ狂詩曲
エネスコ:ルーマニア狂詩曲第1番
ラヴェル:スペイン狂詩曲

指揮:アンタル・ドラティ

管弦楽:デトロイト交響楽団

CD:ポリドール(LONDON) F28L-20339

 狂詩曲(ラプソディ)とは何かと問われると返答に困ってしまう。そこでウイキーぺディアに助けてもらうことにした。それによると、「叙事的で民族的な内容を持つ自由な楽曲。既成のメロディーを用いて構成したり、メドレーのように構成したりすることが多い。特定の楽曲形式を指す言葉ではなく、表現する内容と表現の方法に関係する名称である」とある。うーん、分ったような分らないような、といったことが分った。要するに、民族音楽を、あたかもメドレー音楽のように次から次へと、休みなく繰り広げていく曲とでもいったらよいのであろうか。

 そのラプソディの極め付きの名曲を集めたのが今回のCDである。特に私が気に入ったのが、指揮のアンタル・ドラティ、それとエネスコのルーマニア狂詩曲第1番が収められていることである。アンタル・ドラティ(1906年ー1988年)は、もう死後30年近くが経っているので、若い方はご存知ないであろうが、年配のクラシック音楽リスナーにとっては、大変懐かしい名前なのではなかろうか。ブタペストに生まれ、1924年にハンガリー国立歌劇場で指揮者としてデビューしている。1947年には米国に帰化し、ダラス交響楽団を創設するなど、多くのオーケストラとコンビを組み、実に600点を上回る録音を残しているという。今回のCDのデトロイト交響楽団とは1977年ー1981年の4年間のコンビであったが、この間に同オーケストラを世界レベルにまで復活させた。

 ドラティの指揮は、聴いていて分りやすいのが私が一番好きなところだ。しかし決して聴衆の媚を売るのではなく、メリハリの効いた指揮をすると同時に、詩的な優雅なオーケストレーションで聴く者を酔わしてくれる。これはハンガリー人であるために、弦に対する人一倍の愛着がそうさせるのでは、と私は思っている。このCDでも、これらの特質が存分に生かされている。リストのハンガリー狂詩曲第2番なども、実にゆっくりとしたテンポで演奏し、決して走らない。この結果、実に詩情溢れるハンガリー狂詩曲が出来上がる。少し前に、あたかもバイクにでも乗ったように、猛スピードで演奏するカラヤン盤を聴いた後だけに、余計このことが身に沁みる。そして、極め付きが私が大好きなエネスコのルーマニア狂詩曲第1番である。繊細な弦の響き、それに軽快なテンポの舞曲調のメロディーは、一度聴いたら忘れられなくなる。ドラティの指揮ぶりも絶好調そのものだ。

 ところで、デトロイト交響楽団が気になってきた。ポール・パレーが音楽監督時代にアメリカ十大オーケストラの一つに数えられ、アンタル・ドラティ時代には黄金期を迎えている。最近の音楽監督は、ネーメ・ヤルヴィを経て、現在はレナード・スラットキンが就任しているようだ。デトロイトと言えば自動車産業の都市だ。今は多分経済的に大変厳しい状況にあるのではなかろうか。果たしてアンタル・ドラティ時代のデトロイト交響楽団のような演奏を、今も聴かせているのだろうか、気になるところだ。(蔵 志津久)


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