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クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇熊本マリのモンポウ:ピアノ曲集

2008-06-26 18:42:56 | 器楽曲(ピアノ)

モンポウ:ピアノ曲集

ピアノ:熊本マリ

CD:ファンハウス 00ED-7112

 私はフェデリコ・モンポウというスペインの作曲者は、この熊本マリのCDが出るまで知らなかった。1893年4月にスペインのバルセロナに生まれた。母方がフランスの系統で、サティ、ドビッシー、ラヴェル、フォーレに次ぐ世代の作曲者である。作風はフランス音楽の流れを汲み、繊細で流れるようなメロディーを紡いでいくが、リズム感に独特なものを持っており、この辺はスペインの作曲者であることを証明しているようだ。熊本マリは、大好きなアリシア・デ・ラローチャのピアノコンサートである曲を聴き、すぐに虜になったが、それがモンポウであることが分かったのは大分経ってからであったという。それ以後、熊本マリは世界に向けてモンポウの発信者となり、今ではモンポウというと熊本マリの名が思い浮かぶほどだ。

 このCDは、スペインのマドリードで1989年に録音された「モンポウ国内初のピアノ作品集」であることが明記されている。元祖モンポウ弾きだけに、繊細なピアノタッチの中にリズムが躍動する感覚が心地よく響く。聴いていくうちにクラシック音楽なのか、民俗音楽なのか、ポピュラー音楽なのか分からなくなる。何か武満徹のようなところもある。私はモンポウの音楽自体が、今後のクラシック音楽あり方に示唆を与えているように思えてならない。クラシック音楽はこのままでは、年寄りの懐古趣味の音楽として衰退していくように思える。クラシック音楽はもっとほかのジャンルの音楽も取り込み、若者を引き付けなければなるまい。今、コンサート会場に行くと年寄りばかりで、若者の姿は少ない。モンポウは、ジャンルだなんてどうでもいいじゃないと問いかけているように思える。

 昨日、ペンデレッキ指揮のコンサートに行ってきた。ペンデレッキというと現代音楽の旗手と持てはやされた著名な作曲者であるが、最近ではロマン派の音楽の指揮をして世界で評価を高めているという。彼は「現代音楽は聴衆と離れすぎた」として、ロマン派の音楽を取り上げているという。何か裏切られた思いがする。現代音楽を分からずしてクラシック音楽を語るべからず的な雰囲気がクラシック音楽界を席巻していた時代があったし、今もある。ベートーベンもシューベルトも当時、革命的な活動を展開していたが聴衆とは常に一体であった。現代音楽はそれを分断している。良いのか、悪いのかも分からず、曲が終われば拍手をしている。これではクラシック音楽の将来は暗い。モンポウの音楽はクラシック音楽の将来の一つのあり方を明示しているように思えてならない。(蔵 志津久)


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