ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

1カ月半で次世代誕生=マウス新技術、医学進展期待=理化学研究所ら

2009年03月31日 | 遺伝子組替マウス
 マウスの未成熟な雄から精子のもとの生殖細胞を採取し、人工授精を行うことで、従来の半分の約1カ月半で世代交代させることが可能となった。理化学研究所バイオリソースセンター(茨城県つくば市)と東京大大学院医学系研究科の研究チームが31日、米オンライン科学誌プロス・ワンに発表した。

 ヒトの遺伝性疾患のモデルマウスを生み出す際、子を親と交配させることを繰り返し、遺伝的背景を均一にして実験精度を向上させることが早くできるようになる。医学研究が一層進むと期待される。(2009/03/31-12:23)

[時事ドットコム 2009年03月31日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009033100436

絹で再生医療 素材を研究=東京農工大学

2009年03月31日 | 再生医療
 手術用縫合糸など長年医療現場で使われてきた絹を、人工血管などの再生医療材料として利用する研究が、東京農工大(東京都小金井市)で進められている。医療材料として有用な遺伝子をさらに導入したカイコが吐き出す新素材の絹。朝倉哲郎・同大教授は「血管、角膜、皮膚、耳、骨、歯などの再生医療材料が安定かつ安価に得られる可能性がある」と、幅広い応用に期待している。 (引野肇)

 【ラットに人工血管】
 研究開発が一番進んでいるのが人工血管。絹で作った直径一・五ミリの細い人工血管を、ラットの大動脈に移植。通常細い人工血管として使われているフッ素樹脂製の人工血管と比較した。その結果、フッ素樹脂製はすぐに詰まったが、絹製では一年間、85%のラットの血管が詰まらず正常に働いた。現在、生物系特定産業技術研究支援センター(さいたま市)の助成を受け、さらにブタへの移植実験も進められている。

 【角膜、骨、耳も】
 一般に絹は高強度で生体になじみやすい。さらに絹をいったん溶かして再度、分解されやすい再生繊維にしたり、フィルムやスポンジ、不織布にすることで、多様な再生医療材料にすることができる。フィルムは、傷の治療や目の角膜再生の足場材として、再生繊維や不織布は人工血管や吸収性の縫合糸に、スポンジは骨や歯の足場材に使える。耳や骨の形をした絹のスポンジ上で軟骨細胞や骨芽細胞を培養し、移植することも検討されている。歯に埋め込めば虫歯の再生も夢ではない。

 【二つのナゾ】
 朝倉教授がこの研究を始めたきっかけは「絹は同じ断面積の鋼鉄より強い。カイコがつくるタンパク質がなぜこんなに強いのか」という疑問。そして「カイコ体内にある絹の水溶液が、どうして口から出た瞬間に強い糸になるのか」ということだった。

 このナゾは八年前、最新の構造解析手法、核磁気共鳴分光法(NMR)を駆使してついに解明できた。二十年間追い続けたナゾが解明できた時、朝倉教授は「一週間ほど興奮して眠れなかった」と言う。

 絹は基本的に、グリシンとアラニンという二つの単純なアミノ酸が交互につながっている。これらのアミノ酸が、カイコの体内では、分子内での水素結合と分子間での水素結合を交互に繰り返し、ゆるく巻かれた構造となって水に溶けている。カイコが絹を吐く直前に受ける「ずり」(粘性流体内の摩擦)と、カイコが頭を8の字に振ることで発生する「延伸」の二つの力が絹分子にかかることで、水素結合の部分が切断され、瞬間的にすべて分子間の水素結合に移行する。これで、絹分子同士が強く引きつけられた構造となり、強い絹糸になる。

 【高機能絹へ】
 高強度の絹を作る「仕組み」が解き明かされれば、遺伝子を操作したり、再生繊維やフィルムへの加工プロセスを工夫することで、絹糸をさらに丈夫にしたり、再生医療用として細胞との接着性を高めたり、生分解性を高めたりできる。

 かつて、絹産業は日本の「お家芸」だった。バイオの力を借りて、再び新しい絹産業を興すことも夢ではない。朝倉教授は「社会の高齢化が進む中、絹の優れた特徴を背景に、それをさらに改変することで再生医療材料の基幹産業として創生することを目指す」と意気込む。

 絹は鋼鉄より強いが、クモの糸はさらに絹の三倍も強く、クモの糸も有力な再生医療材料。カイコはかつて「おカイコさま」と尊ばれた。朝倉教授の夢が実現すれば、「おカイコさま」や「おクモさま」など、カイコやクモが世界中から感謝される日がくるかもしれない。

[東京新聞 2009年03月31日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2009033102000146.html

ウミケムシの毒物質合成に成功 新しい抗炎症剤開発へ=慶応大学、名古屋大学

2009年03月31日 | 創薬
 素手で触ると炎症を引き起こす生物「ウミケムシ」の持つ毒の正体を突き止め、その毒物質を人工合成することに慶応大と名古屋大のチームが成功した。二十七-三十日に千葉県船橋市で開かれた日本化学会で発表した。新しい抗炎症剤の開発につながる可能性があるという。

 ウミケムシは体長一〇センチ前後の多毛類。比較的暖かい海を好み、日本では本州から沖縄の干潟などに生息する。体の側面に「剛毛」と呼ばれるとげがあり、触れるとかゆみを伴う炎症が起こる。炎症は数日続き、漁師や釣り人にとっては「嫌われ者」の海の生き物として知られる。

 炎症は毒物質によって引き起こされているとみられていたが、これまで特定されていなかった。チームは、沖縄県の泡瀬干潟でウミケムシの一種「ハナオレウミケムシ」を採集。アルコールで抽出した水溶性成分中の化合物をマウスの足の裏に注射して腫れ具合を観察するという手法を用いて、毒物質を探した。

 その結果、炭素が鎖状につながった構造の神経伝達物質「ガンマアミノ酪酸」を分子内に持つ有機化合物が毒物質と判明。ハナオレウミケムシの学名にちなんで「コンプラニン」と命名した。

 コンプラニンは、炎症を起こす際に重要な役割を果たしている酵素「プロテインキナーゼC」を活性化させていることが分かった。毒性はマウスなどを死なせるほど強くなく、有毒植物のアセビの百分の一程度だった。

 チームは、人工的に化学合成することにも成功。生物から抽出する必要がなくなり、合成物質で実験できるようになることから、物質の性質の解明が一層進むと期待される。

 慶応大の上村大輔教授は「炎症が起こる詳しい仕組みを今後さらに明らかにし、新しいタイプの抗炎症剤に応用する道を探りたい」と話している。

[東京新聞 2009年03月31日]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/technology/science/CK2009033102000145.html

考えるだけで…脳でロボット制御する技術=本田技研工業、島津製作所

2009年03月31日 | 心のしくみ
 ホンダは31日、島津製作所などと共同で、脳活動の変化を測定し、考えるだけでロボットを動かせる新技術を開発したと発表した。

 頭皮上の電位変化を計測する脳波計(EEG)と、脳血流の変化を計測する近赤外光脳計測装置(NIRS)を世界で初めて併用した。

 頭に装置を取り付け、「右手」「左手」など体の部位をイメージするだけで結果を受け取ったロボットがその部位を動かせる。

 スイッチを押すなど手足を使った動作が不要になるため、ホンダは「より人に優しい製品開発への応用を目指したい」としている。

[msn産経ニュース 2009年03月31日]
http://sankei.jp.msn.com/science/science/090331/scn0903311215002-n1.htm