がん細胞はなぜ、細胞死(アポトーシス)せずに増殖するのか―。山形大医学部の北中千史教授=腫瘍(しゅよう)分子医科学=らのグループは24日、がん細胞がエネルギーを生み出す際、あえて酸素を利用しないことでアポトーシスを防いでいるメカニズムを発見したと発表した。研究は、米国立がん研究所刊行の世界的ながん専門誌(18日付)に掲載された。
酸素を使わず、ブドウ糖でエネルギーをつくるがん細胞の性質は約80年前、ノーベル賞受賞者のオットー・ワールブルグ博士(ドイツ)が突き止めている。だが、増殖に多量のエネルギーが必要ながん細胞がなぜ、効率の悪い方法を行うのかは、長年の謎だった。
北中教授らは、がん細胞が酸素を使わないことで、細胞内のミトコンドリアの膜に付着し、アポトーシスを引き起こすBax、Bakという2つの分子の活性化を回避していることを発見した。
2つの分子は、一定のシグナルが細胞内に生じると急に暴れだし、ミトコンドリアに穴を開け、毒となる分子をまき散らす。いわば、アポトーシスの「スイッチ」。酸素を使ってエネルギー代謝する場合と、酸素を使わない状態で、これらの分子の働きの違いを調べた結果、酸素を使わない状態では「スイッチ」が動かず、アポトーシスも起きなかった。
がん細胞は正常の細胞と違い、ミトコンドリアではなく、細胞内の別の場所でブドウ糖を使ってエネルギーを産出していることも分かった。酸素を必要としないため、ミトコンドリアに付着する2つの分子が活性化しないという。
がん細胞を酸素を利用する状態に移すことができれば、アポトーシスに導くことが可能になる。研究グループは、がん細胞内のエネルギーの代謝状態を変えるため、幾つかの種類の薬品を組み合わせることで、臨床に応用できないか研究している。
北中教授は「がんに潜んでいる治療抵抗性に挑むための突破口になる。放射線や抗がん剤と併用すれば、より治療効果が向上するのではないか」と期待する。
[河北新聞 / 2006年10月25日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061025-00000006-khk-toh
(室蘭民報)
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2006102401000679
JNCI誌、アブストラクト
http://jncicancerspectrum.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/jnci;98/20/1462
酸素を使わず、ブドウ糖でエネルギーをつくるがん細胞の性質は約80年前、ノーベル賞受賞者のオットー・ワールブルグ博士(ドイツ)が突き止めている。だが、増殖に多量のエネルギーが必要ながん細胞がなぜ、効率の悪い方法を行うのかは、長年の謎だった。
北中教授らは、がん細胞が酸素を使わないことで、細胞内のミトコンドリアの膜に付着し、アポトーシスを引き起こすBax、Bakという2つの分子の活性化を回避していることを発見した。
2つの分子は、一定のシグナルが細胞内に生じると急に暴れだし、ミトコンドリアに穴を開け、毒となる分子をまき散らす。いわば、アポトーシスの「スイッチ」。酸素を使ってエネルギー代謝する場合と、酸素を使わない状態で、これらの分子の働きの違いを調べた結果、酸素を使わない状態では「スイッチ」が動かず、アポトーシスも起きなかった。
がん細胞は正常の細胞と違い、ミトコンドリアではなく、細胞内の別の場所でブドウ糖を使ってエネルギーを産出していることも分かった。酸素を必要としないため、ミトコンドリアに付着する2つの分子が活性化しないという。
がん細胞を酸素を利用する状態に移すことができれば、アポトーシスに導くことが可能になる。研究グループは、がん細胞内のエネルギーの代謝状態を変えるため、幾つかの種類の薬品を組み合わせることで、臨床に応用できないか研究している。
北中教授は「がんに潜んでいる治療抵抗性に挑むための突破口になる。放射線や抗がん剤と併用すれば、より治療効果が向上するのではないか」と期待する。
[河北新聞 / 2006年10月25日]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061025-00000006-khk-toh
(室蘭民報)
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=soci&NWID=2006102401000679
JNCI誌、アブストラクト
http://jncicancerspectrum.oxfordjournals.org/cgi/content/abstract/jnci;98/20/1462