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「ボヘミアン・ラプソディ」(2018年 アメリカ映画)

2018年12月12日 | 映画の感想・批評


 冷え切った今年の秋の映画興行界に救世主が現れた。それは伝説のイギリスのロックバンド「クイーン」の軌跡を、ヴォーカルのフレディ・マーキュリーを中心に描いた映画「ボヘミアン・ラプソディ」だ。何しろ観客動員数が第1週目より2週目、3週目と右肩上がりに増え、興行収入に至っては第5週までその状態が続いているというから驚きだ。
 クイーンといえば1970年に結成され73年にデビューしたのだが、当初本国イギリスではメンバーのアイメイクや派手な衣装が古くさいとあまりいい評価が得られなかったようで、なんと我が日本からその人気に火がつき始めたというのだから、今回の異例の大ヒットも頷けそうだ。特にロックには縁遠かった女性にファンが多かったようで、1975~85年の10年間に6度も来日し、最近TVでもよく流れる来日の様子を見ていると、当時の熱狂ぶりがよくわかる。
 映画はフレディがメンバーと出会い、革新的な音楽を次々と生み出し、スターダムに駆け上がっていく姿を描いているのだが、その中で世の中への反発、メンバーとの衝突、婚約者との別れなど、様々なプレッシャーにさいなまれる姿も映し出される。特に重点を置かれているのが自らのセクシュアリティに悩み、葛藤する姿で、母に人を殺めたと告白するところから始まる名曲「ボヘミアン・ラプソディ」は、その苦しい思いと決意を懸命に投げかけているようにも思え、心を打つ。
 フレディを演じるのはラミ・マレック。イギリス領ザンジバルで生まれ、その後インドからイギリスへと渡ったフレディのように、彼もエジプトからアメリカに移住したというよく似た境遇の持ち主で、その姿はフィレディそのもの。ほかの3人のメンバーも本当によく似ていて、その演奏場面は魂が乗り移ったようで全く違和感がない。監督は「XーMEN」シリーズや「ユージュアル・サスペクツ」のブライアン・シンガー。彼の演出だからこそ、フレディの繊細な感情、孤独感が鋭く描き出されたように思う。
 何といっても圧巻なのは、ラスト21分に及ぶチャリティコンサート「ライブ・エイド」の出演シーンだ。この場面の歌声は実際のフレディの音源を使っているそうだが、その歌唱力、観客と一体となって場を盛り上げていくパフォーマンス力の凄さは、音楽史上最高のスーパースターと称賛されるゆえんだろう。そしてこの映画を見てフレディの生き様を知り、1991年に45歳という若さで亡くなったという事実をしっかりと受け止められる今だからこそ、当時味わった以上の感動が押し寄せ、思わず涙する。
 是非もう一度見てみたい!今度は『応援上映』で。そして思いっきり叫びたい!「アンコール!!」と。
 (HIRO)

監督:ブライアン・シンガー
原題:Bohemian Rhapsody
脚本:アンソニー・マクカーテン
撮影:ニュートン・トーマス・サイジェル
出演:ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー、ベン・ハーディ、ジョー・マッゼロ、エイダン・ギレン


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