シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「家族はつらいよ2」 (2017年 日本映画)

2017年07月21日 | 映画の感想・批評


 4年前、世界の名作「東京物語」が「東京家族」を生み、さらに同じメンバーで「家族はつらいよ」が作られたのが昨年のこと。そして今年は「家族はつらいよ2」が公開と、この間他の作品には手を付けなかった山田洋次監督、よほどこの8人の俳優たちが生み出す世界がお気に入りのようだ。このままいくとこのシリーズ、観客に後押しされて48作まで続いた「男はつらいよ」に続く山田監督の代表シリーズになるかも。(長生きしてください!)
 喜劇とはいいながらも、しっかりしたテーマが貫かれているこのシリーズ、前作は『熟年離婚』だったが、今回は『無縁社会』とでもいおうか。少子高齢化が著しい日本では高齢者の独り暮らしが増え、認知症などで介護の必要があっても、なかなか親の面倒を見てやれないのが現実。自分のことで精いっぱいなのだ。だからこそ山田監督は“死”というものを前面に掲げ、そこからあらためて幸せというものとは何かということを考えさせるように図った。
 となると、今回のキーパーソンは小林稔侍が演じる周造の同級生・丸田だろうか。かつては大きな呉服屋の跡取りで、イケメンでかっこよかったことから女子生徒からもモテていたというが、離婚や事業の失敗などを経て、今は工事現場の誘導棒振り係。周造の計らいで開いた同窓会で久しぶりに楽しく過ごした夜に、泊まった平田家で息を引き取ることになるとは…。
 こうなると平田家で起こっている様々な騒動が、実は幸せな家族であることの証のように思えてくる。なんと平田家は三世代6人で暮らしているのだ。それも大都会の東京で。そのうえ兄弟が集まって家族会議が開かれることもしばしば。「もう、しょうがないなあ。」と言いながらも大勢の家族とかかわりあいながら生きていくって、やっぱりいいなあ。羨ましくも思えてくる。それにしても山田監督、確実に「男がつらいよ」の世界に回帰されたようで・・・、可笑しくて温かくて人情味溢れた作品がまた一つ誕生した。
(HIRO)

監督:山田洋次
脚本:山田洋次、平松恵美子
撮影:近森眞史
音楽:久石譲
出演:橋爪功、吉行和子、西村雅彦、夏川結衣、中島朋子、林家正蔵、妻夫木聡、蒼井優、小林稔侍、風吹ジュン


最新の画像もっと見る

コメントを投稿