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「ROMA/ローマ」 (2018年 アメリカ映画)

2019年05月08日 | 映画の感想・批評


 映画を見る手段で最近注目を浴びているのが「ネット配信」という方法だ。以前は“映画は劇場(映画館)で”が定番だったが、TV、ビデオ、DVDと映画を見る手段は次々と広がっていき、ついにここまで来たのだ。その中でも現在世界中で1億人以上が利用しているのがNetflixというオンラインストリーミングサービス。「ROMA/ローマ」はそのNetflixが製作した注目すべき作品の一つである。ネット配信作品は、カンヌ国際映画祭ではフランスでの劇場公開の予定がないとコンペティションの対象外とされていたのだが、ヴェネチア国際映画祭では、昨年ついに門戸が開かれ「ROMA/ローマ」が最高賞の金獅子賞を受賞。先日の第91回アカデミー賞でも監督賞、撮影賞、外国語映画賞の三冠を獲得するという快挙を成し遂げたのである。
 「ローマ」と言ってもイタリアではない。舞台は1970年代のメキシコ。その首都の高級住宅地に「ローマ地区」はある。物語はそこに住む医師の家族と住み込みの家政婦クレオの日常生活を軸に展開されていく。実はこの作品、アルフォンソ・キュアロン監督の自伝的作品とも言われ、撮影も担当。主役のクレオ役をキャスティングするに当たっては、自分の家で働いていた“第2の母”と慕うメイドの出身地・オアハカ州まで出かけて、本人に似た現地の俳優を捜したそうで、ヒロインのヤリッツア・アパリシオはまさにクレオにピッタリの人だったようだ。また、生まれ育った70年代のメキシコシティを再現するに当たっては、街路まで忠実にセットを作り上げたそうで、そのリアル感は並大抵ではない。水をまいて掃除をする最初の場面から、この「リアル感」がしっかり貫かれていて、観客の心をぐいぐいと画面に引き込んでいく。クレオの恋人フェルミンが全裸で武術を披露する場面、今にもにおってきそうな犬の糞を始末する場面、実際にあったデモ隊と武装集団との衝突場面、その事件に遭遇してしまったショックで破水し死産してしまう場面、そして海岸で子どもたちが波にのまれる怖い怖い場面。どれもが本当にリアルで力強く、頭に焼き付いて離れないものばかりだ。さらにキュアロンは家族の日常を描きながら人種と階級の問題にもスポットを当て、それは全世界共通の問題でもあると示唆する。
 自分は幸運にもこの傑作を劇場で見る機会を得た。昨年京都にできた新しい映画館「出町座」で。そこは書店やカフェも併設されており、「映画」にじっくり浸ることができるまさに至福の空間。明るい部屋でディスプレーを通じてより、映画「ROMA/ローマ」を見るには最もふさわしい場所なのでは、と感じたのは自分だけではなさそうだ。
(HIRO)

原題:ROMA
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン
撮影:アルフォンソ・キュアロン
出演:ヤリッツア・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、マルコ・グラフ、ダニエラ・デメサ、カルロス・ペラルタ



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