現在、沖縄南部地区からの遺骨混りの土砂調達問題が大きな問題となっている。そのきっかけとなったのが、糸満市「魂魄の塔」横の熊野鉱山開発計画だった。具志堅隆松さんのハンストをきっかけに県民世論が盛り上がり、沖縄県は自然公園法に基づく措置命令を出した。事業の中止や制限を求めたものではなく、「事前の遺骨の確認」「県との協議」等の内容にすぎなかったが、開発業者は措置命令の取消を求めて公害等調整委員会に裁定を申請した。
昨日(12月17日・水)、その第1回審理が開かれた。急な呼びかけだったが、公害等調整委員会がある総務省前には40名近くの人たちが集まった。
午後1時、近藤昭一衆議院議員のお世話で代表8名が公害等調整委員会事務局長に面談し、要請書を手渡した。この要請書では、今回の措置命令の根拠とされた自然公園法の「風景の保護」には、糸満市の意見書にもあるように、沖縄戦の戦跡や慰霊碑が集中した一帯の「歴史の風景」の重要性を指摘した。そして、特に現場付近の状況を確認するためにも、現地調査を実施してほしいと訴えた。8名の参加者も、それぞれの思いを述べた。事務局長は、この要請書は委員らに伝えると約束した。
午後1時半、傍聴券の抽選が始まった。コロナ禍を理由に傍聴席はマスコミを含めて5名に絞られ、30数名は別室に用意されたモニターで審理の様子を見守った。
審理の場には、申立人の開発業者と弁護士、沖縄県は弁護士と環境部参事、自然保護課長らが出席した。委員らは7名。委員長は元裁判官で、裁判と同じような手続きで審理は進められた。提出された準備書面や書証類を確認した後、委員長が現時点での委員会としての争点の整理としていくつか述べたが、最大の問題はやはり「風景」の解釈だった。
「遺骨収集への協力を求めるということが、自然公園法の範囲でできるのか。戦跡としての風景の保護の必要性については理解しているが、『風景』とは通常、外観を指す。対象への思いや信条のようなものが含まれるのか、遺骨収集への協力を求めることができるかについては議論が必要と思います。」
双方が、これらの指摘に対して書面、証拠を提出し、次回は、3月24日(木)午後3時半~ということになった。
もし公害等調整委員会で開発業者の申立てが認められ、県の措置命令が取り消されてしまうと、今後、糸満・八重瀬の沖縄戦跡国定公園内での鉱山開発に対して、遺骨の有無の確認等を求めることはできなくなる。その意味で、今回の公害等調整委員会の審理はきわめて大きな意味を持っている。
終了後、参議院議員会館で報告集会が開かれた。国会議員さんらの挨拶の後、私が今日の公害等調整委員会の審理内容についての説明と、「辺野古・設計変更申請不承認と今後の南部地区からの土砂調達問題」について話をさせてもらった。
集会の後半は、関東各地での自治体決議の状況が報告され、今後の取組についての意見交換が続いた。